不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

家の売却でやってはいけないこと16選! 不動産売却に失敗しないで家を高く・早く売るコツをタイミング別に解説

家の売却でやってはいけない16のこととは? 失敗せず家を高く・早く売るコツ

長年暮らした思い入れのある家は、納得できる売り方をしたいと思う人は多いのではないでしょうか。家の売却額はとても高額になるため、売却方法には注意が必要です。この記事では、家の売却でやってはいけない16のことを解説します。

記事の目次

長年住んだ家を何も調べずに売ろうとしていませんか?

家を売却する時には、さまざまなことに気を付ける必要があります。「家の売却を大手の不動産会社に依頼したから大丈夫」「査定額を高くつけてくれた会社だからすべて任せておこう」など、自分では何も調べず任せきりになってしまうのは危険です。
家を売却してから「失敗した」「契約内容に納得できない」と後悔しないためにも、「家の売却でやってはいけないこと」を把握しておくことが大切です。

売却でやってはいけないことをタイミング別に解説!

家の売却でやってはいけないことは多岐にわたります。家を売る前、家の売却活動中、家を売った後の3つのタイミング別に、家を売る時の注意点を確認していきましょう。

不動産査定のイメージ

(画像/PIXTA)

売却前にやってはいけないこと8選

家の売却前には、不動産会社に家の査定を依頼する、媒介契約を結ぶ不動産会社を選ぶ、媒介契約の種類を決定する、リフォームまたは解体するかどうかを決めるといった流れで売却までの準備を進めます。家を売る前のタイミングでは、8つのやってはいけないことがあるため、売却の準備段階から注意点に気を付けて、効率よく売却につなげることが大切です。

1. 不動産会社を1社だけ見て選ぶ

売却活動を依頼する不動産会社の選び方は、最初に気を付けなければならない注意点のひとつです。不動産会社によって、家の査定価格や売却活動の方針には違いがあります。1社だけを見て選ぶのではなく複数の会社を見てから選ぶのがおすすめです。

不動産会社によって得意な物件の種類やエリアは異なります。また、エリアに顧客を多くもつ不動産会社に依頼すれば短期間での売却が実現するケースもあり、不動産会社の選び方次第で成約までの期間や価格が変わることもあります。

売主自身が相場を把握しておくことも重要です。自分で近隣で売り出し中の中古物件の価格を調べるなど相場の知識を身につけておくと、不動産仲介会社の出した査定額が妥当かどうかがわかりますし、よい条件で売却するための価格交渉にも活かせます。
単に査定額が高いだけでよい不動産仲介会社だと判断はできません。相場から離れた高い査定額を提示し、売却を仲介する媒介契約を結んだ後で、言葉巧みに値下げを持ちかけるケースや、担当者の経験不足から相場より高い金額を提示したため、売却活動が難航するケースなどもあります。複数の不動産会社と担当者を比較して、信頼できるかよく検討することが大切です。

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2. 「仲介」と「買取」の違いを知らないまま会社を選ぶ

家の売却方法には「仲介」と「買取」の2種類があります。それぞれ特徴が異なるため、不動産会社を選ぶ場合には、どちらの取り扱いをしているのか把握することが大切です。

仲介と買取の違い

<図版作成/かくたま>

仲介は、不動産会社が個人や企業の買主を探して、家の売買に関する手続きなどをサポートしてくれる売却方法です。広告を出して多くの人に物件情報を提供し買主を見つけるため、買取よりも成約金額が高額になりやすいメリットがあります。ただし、買取よりも売買契約成立までの期間が長くなる、仲介手数料がかかるなどのデメリットもあります。

買取は、不動産会社が直接不動産を買い取る販売方法です。不動産会社には、仲介によって買主を探すだけでなく自社で家を直接買い取り、再販をしているところもあります。買取では、不動産会社自身が買主となるため短期間で家を売ることが可能で、直接の取引となるため仲介手数料がかかりません。ただし売却金額が仲介よりも低くなる傾向がある点がデメリットです。買取は買主が見つかりにくい物件を販売するケースに適しています。

家を高く売りたい時には仲介、短期間で売りたい場合には買取を行っている不動産会社というように、希望に合う会社を選びましょう。

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3. 3種類ある媒介契約の特徴を把握せずに契約する(仲介の場合)

仲介で家を売る場合には、不動産会社と結ぶ媒介契約にも気を付けなければなりません。媒介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つの契約方法があります。どの契約方法を選ぶかは売主が選択するため、不動産会社に依頼する場合にはそれぞれ契約方法の特徴を知って選ぶことが大切です。

一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の違い

<図版作成/かくたま>
レインズへの登録期限は、営業日で数えた日数です
■一般媒介契約

複数の会社に仲介を依頼でき、自分で買主を見つける(自己発見取引)ことができる契約方法です。ただし、不動産会社には、不動産関係の業者が物件情報を共有するネットワークシステム「レインズ」への販売予定の家の登録や、売主への状況報告は義務付けられません。

■専任媒介契約

不動産会社1社にしか仲介を依頼できない契約です。不動産会社は媒介契約締結日の翌日から7営業日以内にレインズに登録する義務があり、売主に対して2週間に1度以上状況報告をしなければなりません。自分で買主を見つけて売却することも可能です。

■専属専任媒介契約

媒介契約締結日の翌日から5営業日以内にレインズへ登録し、1週間に1度以上の状況報告をしなければなりません。ただし、専属専任媒介契約では1社にしか仲介を依頼できない、自分で買主を見つけてはいけないなど、売主側の制限もあります。

専属専任媒介契約、専任媒介契約は、1社の不動産会社に売却活動を任せるため、積極的に動いてもらえることが期待できます。ただし、専任媒介契約や専属専任媒介契約では、悪徳業者が「囲い込み」を行うケースもあるため注意が必要です。

「囲い込み」とは、売主・買主両方から仲介手数料を得るために、他社から仲介された買主の購入申込みを受けないやり方です。囲い込みにより、売却期間が延びる、売却額が下がるといった問題が発生します。

また、物件の築年数、広さ、立地などに需要が少ない場合は、専任媒介契約・専属専任媒介を選んだとしても、売却価格や期間が希望通りにならないケースもあります。

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4. 査定額だけで不動産会社を決める

査定額だけで不動産会社を決めることも、やってはいけないことのひとつです。たとえ高額の査定額をつけた会社に仲介を依頼したとしても、査定額通りに売却できるとは限りません。
売り出し価格を高く設定していると、売れるまでにかなりの時間がかかったり、後から価格を下げざるを得ないケースもあるため注意が必要です。
自分でも近隣の物件情報の相場を調べたり、各社の査定額を比較してみたりすることで、適正な査定額か判断しやすくなります。

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5. 売却前にリフォーム・解体をする

売却前のリフォームや解体には注意が必要です。傷んでいる家や古い家を売る場合に、リフォームや解体をすると売りやすくなる可能性はありますが、工事費用が高額になって売却時の利益が下がるリスクも発生します。
たとえリフォームや解体をしたとしても、希望通りに売れるとは限りません。リフォームや解体をする時には、不動産会社にも相談して、かかる費用や実際に利益が出るかまで確認、計画を立てることが重要です。

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6. ローンを組んでいる金融機関へ相談せずに売り出す

住宅ローンの返済が完了する前に家を売るケースでは、ローンを組んでいる金融機関に相談しなければなりません。
住宅ローンが残っている状態の家には、抵当権がついており、そのままでは家を売ることができません。
そのため家を売りたい場合には、金融機関に対して住宅ローンの一括返済を行い、抵当権を抹消する必要があります。住宅ローンが残っている場合には、「自己資金で残債を返済」「売却金額で残債を返済」「自己資金と売却金額の合計から残債を返済」のいずれかでローンを完済しなければなりません。

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住宅ローンのイメージ

(画像/PIXTA)

7. 相場価格を調べずに売り出す

家を売る場合、周辺の相場価格を調べておくことはとても重要です。なるべく高く売れるほうがいいですが、売り出し価格を相場よりも大幅に高額にしてしまうと売れにくくなります。また、前述のとおり、周辺の相場価格を知っていると不動産会社の出した査定価格が適正かどうかを判断するのに役立ちますし、相場に合う売り出し価格設定ができていると、買主とのやり取りをスムーズに進めることが可能です。
相場の確認方法は、主に3種類あります。「不動産ポータルサイト(HOME'S・SUUMOなど)を使用する」「レインズで過去の取引履歴を閲覧する」「不動産取引価格情報検索で過去の取引事例を調べる」などです。自分で不動産情報を調べて相場価格を把握しておくと、適切な売り出し価格で家を売り出せます。
複数の不動産会社に一括査定を受ければ大体の相場がわかりますが、査定を受ける前に自分でも相場を知っておくのがおすすめです。ただし相場は変動するため、過去の情報は参考程度で考えるようにしましょう。

8. 相場価格とかけ離れた値段で売り出す

家を売る時に希望する売却価格があったとしても、相場とかけはなれた価格で売り出すことは避けましょう。相場よりもずっと高額な価格を設定して売り出した場合、家が売れるまでに長い期間がかかったり、売れずに残ってしまったりする恐れがあります。
売り出し価格は不動産会社の査定額と必ずしも同額にする必要はなく、最終的な売り出し価格を決めるのは売主です。値引き交渉を想定して少し高めに設定することが多いようですが、希望する価格にこだわりすぎず、相場を参考にして価格設定することが重要です。スムーズに家を売却するためには、各不動産会社の査定価格を比較し、自分でも相場価格を調べたうえで、相場にあった適正な価格を設定することが求められます。

売却活動中にやってはいけないこと5選

準備が整い売却活動中となってからも、やってはいけないことがあります。不動産広告のルール、物件の説明から、内見時、売買契約の締結時など、売却活動中のさまざまなタイミングで注意しなければならないことを押さえておきましょう。

1. 不動産広告のルールを調べずに掲載する

不動産広告を掲載する時には、「宅建業法」と「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」を守らなければなりません。

宅建業法では、主に「誇大広告の禁止」「広告開始時期の制限」「取引態様の明示」の3点が定められています。
これらの内容は、事実に相違する表示や誤認させる表示の禁止、開発許可や建築確認後にしか広告を開始できない制限などです。宅建業者(不動産会社)が広告を行う場合には、契約の当事者、代理人、媒介のどれになるかを明示しなければなりません。

表示規約では、「自主規制」「表示の基準」「用語の使用」が定められています。自主規制は提供する景品などの規制で、表示の基準は表示する項目や表記、文字サイズなどの基準、用語の使用では消費者に誤認を与える表現の使用を禁止しています。
広告ルールは不動産会社が守らなければならないものですが、自分でも把握しておくことで、広告を依頼する時の参考にでき、問題のある業者を見抜けるといったメリットにつながります。

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2. 物件の問題や買主に不利な情報を伝えない

物件の問題点や物件の評価が下がるような情報を隠して売却した場合、売主には「契約不適合責任」が生じます。売却した家の品質などが契約内容と合わない場合に生じる責任のことで、売主は履行の追完、代金減額、損害賠償、契約解除などを請求される恐れがあります。
なかでも、雨漏りやシロアリ被害、事故物件などの問題を抱えている「瑕疵(かし)物件」の場合は、買主に対して売買契約前にその欠陥を伝え契約書にその旨を明記しなければいけません。欠陥を伝え忘れていた場合や気づいていなかった場合でも、買主から、先に挙げた4つの請求(履行の追完、代金減額、損害賠償、契約解除)をされることがあるため注意が必要です。

天井の雨漏り箇所のイメージ

(画像/PIXTA)

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3. 不動産会社に丸投げする

不動産会社と媒介契約を結んだ後に、安心して家の売却活動を不動産会社に丸投げしてしまうのはおすすめできません。不動産会社に任せておくだけでは、いつのまにか「囲い込み」をされていたり、相場よりも価格を下げることになったりするリスクがあります。

不動産会社によっては、ほかの物件ばかりを優先されてしまったり、売却までの期間が延びるといった不利益を被る恐れもあります。売却をスムーズに進めてもらうためにも、売買に関する知識を身につけて、担当者に進捗を確認する、売却について相談するなど、こまめに連絡を取ることが大切です。

物件をレインズに登録すると発行される「登録証明書」を不動産会社から受け取り、記載されているURLとパスワードを使うと、自分が売却を依頼している家の取引状況をレインズで確認できます(※)。囲い込みを避けるためには、取引状況が「公開中」になっているか、何の連絡もなく「書面による購入申込みあり」や「売主都合で一時紹介停止中」になっていないかなど、情報の確認も必要です。

※ IDとパスが発行されるのは、専任媒介、専属専任媒介契約だけです。

4. 内見の時に掃除をしていない

家の売却活動を開始して、実際の家も見てみたいと希望する人が現れたら、内見が行われます。内見では、購入検討者に好印象を持ってもらえるように家の掃除をすることが大切です。内見時に清掃されていないと、第一印象が悪くなり、成約が遠ざかってしまいます。
内見前には、置いてある不用品を処分し、家具、インテリアなどの配置を整理します。照明器具の調整、キッチン・トイレ・浴室といった汚れやすい水回りの掃除、消臭(タバコを吸っている場合はとくに)などを行い、きれいで魅力的な家だとアピールしましょう。内見前にハウスクリーニングを依頼するのもおすすめです。

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5. 契約内容に目を通さずに署名する(媒介契約・売買契約など)

買主が決まってからは、売買契約書を作成して売買契約を結びます。不動産の売買契約時には、売買契約書の内容をよく確認して署名しなければいけません。一度売買契約書に署名をすると売買の内容を変更できなくなってしまいます。
売買契約書は不動産会社が作成するため、希望していた内容が反映されていない場合には不利益が生じる恐れもあります。売買契約書に記載されている内容は、売買代金、手付金、所有権の移転、引き渡し時期、付帯設備等の引継ぎ、契約解除に関する内容などです。
売買代金や支払期日、所有権の移転、契約解除に関することなど、ひとつひとつの数字から、問題が発生した時の取り扱いまでしっかりと確認して、不備がないかをチェックしてから署名・捺印します。

売却後にやってはいけないこと3選

家を売る時には、売却後にも注意しなければならないことがあります。売却後には、物件の引き渡しや売却収入の確定申告が必要です。ここで取り上げる点に注意することで、スムーズに売却を完了できます。

1. 引き渡し日になっても退去の準備を終えていない

家が売れた後は、売買契約時に合意した引き渡し日までに退去を済ませて当日物件を渡さなければなりません。買主の住宅ローン審査が終わる、契約から1ヵ月後くらいに引き渡し日を設定するケースが多く見られます。
引き渡し日になっても売主がまだ退去できていないと契約不履行となり、契約で定めていた場合、売主は買主に遅延損害金を支払わなければなりません。遅延損害金は、売買契約書に記載があればそのとおりに支払う必要があり、ない場合はケースバイケースで提示される違約金を支払います。引き渡し時のトラブルを避けるためには、早い時期から新居を決定しておくことが大切です。

段ボール、ガムテープのイメージ

(画像/PIXTA)

2. 不用品をそのまま残して引き渡す

家を売る際に、家具などの不用品を置いたまま引き渡しをすると、トラブルの原因になります。売買契約時に特約を結んでいない限り、家の中の不用品の処分は売主がしなければならないため、売主は引き渡し前に家の中を何もない状態に片づけなければなりません。不用品を残す特約を結んだ場合には、売主は不用品を残したまま退去可能です。ただし、その場合、不用品を処分する費用を家の代金から値引きしてほしいと、買主から要求される可能性があります。
ゴミや荷物が大量にあったり、事故物件だったりと、素人では掃除できないケースもあります。売主が自分で不用品を片づけられない場合には、回収業者などに依頼する方法がおすすめです。

3. 確定申告をせずに放置する

家を売却して利益が出た場合は、翌年の2月中旬から3月中旬までに確定申告をしなければなりません。確定申告は、1月1日から12月31日までの年間所得に対してかかる所得税を計算して、税務署に申告する手続きです。家を売却して得た利益を「譲渡所得」とよびますが、ここには譲渡所得税が課されます。そのため、普段は年末調整だけで済むサラリーマンの場合にも、確定申告をする必要があります。

譲渡所得は、家の売却額から不動産の取得費と仲介手数料などの諸費用を差し引いた金額です。家の売却によって利益が出ているのに確定申告をしないままにしていると、国税庁からの調査が入る場合があります。必要な申告をしていないペナルティとして、高額な「無申告加算税」が課せられてしまうため、家の売却利益が出た場合には確定申告をして、譲渡所得税を納税しましょう。

売却時に利益が出ずマイナスになった場合には、譲渡所得が発生しないため、確定申告は必須ではありません。ただし、マイホームの買い換えで損失が出た場合は、確定申告をすると翌年から数年間所得税や住民税を軽減できる「損益通算」が利用できます。基本的には、利益が出ていなくても、確定申告を行うことが利益につながります。

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失敗せずに家を売るには? 不動産売却の手順

これまで取り上げてきたように、家を売る際には、さまざまな注意点に気を付けなければなりません。これらの注意点を踏まえて、家を売るための手順も確認していきましょう。

不動産会社へ査定を依頼

家を売る時には、まず不動産会社へ査定を依頼します。査定は、1社だけでなく複数の不動産会社に依頼して、査定額を比較検討します。家の売却活動は不動産会社に任せる部分が多いですが、自分でも相場を調べるなど不動産売却の基礎知識をつけておくことが大切です。
査定には、物件の概要や周辺の取引事例をもとに机上で計算する「簡易査定」と、実際に物件を訪れて査定する「訪問査定」があります。訪問査定だと、詳しい査定が可能ですが、複数の会社に依頼する場合は時間や手間が問題になります。手軽に複数の会社に査定してもらうためには、一括査定サービスの利用がおすすめです。査定内容から、信頼できる不動産会社を調べることが可能です。
ただし、高い査定額をつけた不動産会社がいいとは限りません。そのエリアのことに詳しく、取引実績が豊富な不動産会社と、希望に合う契約を結ぶことが重要です。

媒介契約を結んでから売却活動を開始

家の売却では個人で買主を探すことが難しいため、通常は不動産会社と「媒介契約」を結んで、買主を探してもらう「仲介業務」を依頼します。媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。希望の条件は、担当者に相談しておくとスムーズに進められます。

媒介契約を結ぶ際は、下記のポイントをよく確認しましょう。

【媒介契約を結ぶ会社を選ぶポイント】
  • 売却の希望条件に合っているか
  • 成約時の仲介手数料はいくらか
【媒介契約の形式を選ぶポイント】
  • 複数の不動産会社と媒介契約が結べるか
  • 自分で買主を見つけた場合、仲介料なしで売買できるか
  • 契約期間は何カ月か
  • レインズへ登録するのか
  • 販売状況報告の頻度はどのくらいか

購入希望者と売買契約を締結し売却活動完了

売主と購入希望者による交渉後、売買が決定した場合は売買契約の締結が必要です。売買決定までに買主と売主が出した条件をもとに、不動産会社が売買契約書を作成します。売買契約締結は、主に不動産会社のオフィスなどで担当者と売主・買主が顔を合わせて行われることが多いです。
売買契約時には、「重要事項の説明」「売買契約書への署名・捺印」「手付金の受領」といった順で手続きを進めます。トラブルの発生を避けるためにも、売買契約書の内容はよく確認してから契約を結ぶことが大切です。
売買契約時には、さまざまな必要書類もそろえなければなりません。買主と売主が書類を準備し、買主は手付金を支払います。引き渡し日までに売買代金の精算、登記申請を行い、家の売却は完了します。

売買契約のイメージ

(画像/PIXTA)
【売主の必要書類等】

①登記済権利証(もしくは登記識別情報)
②本人確認書類、実印、印鑑証明書(共有名義の場合は全員分)
③固定資産税等納税通知書、固定資産税評価証明書
④建築確認済証、検査済証(一戸建ての場合)
⑤土地測量図・境界確認書(土地の場合)
⑥建築図書、建築協定書等
⑦付帯設備表、保証書、物件状況等報告書
⑧契約書用印紙代
⑨預金通帳:残金の振込先口座情報

【買主の必要書類等】

①本人確認書類(顔写真付きのもの)、印鑑(住宅ローンを組む場合は実印、印鑑証明書)
②契約書用印紙代
③手付金(売買代金の10%程度)
④仲介手数料(半額)

家を高く・早く売って安く引っ越すコツを5つ紹介

家を少しでも高く、早く売るには、コツを押さえることが大切です。不動産会社を比較する、早めに対応する、引越し時期を狙うなど、家を高値で早く売るコツから、家を売った後にかかる引越し代を安くするコツまで解説します。

1. 複数の不動産会社を比較する

前述のやってはいけないことと同様に、家を高く売るには不動産会社の選び方が重要になります。不動産会社を決める時には、複数の不動産会社に査定額を出してもらうことが大切です。
面倒だからと査定額を比較せずに不動産会社を決定してしまうと、相場より安い価格で家を売却しても気づかないケースがあります。

後から相場に気づいて取引を後悔しないためにも、査定額が適切かどうか調べるのがおすすめです。一括査定サービスを利用して自分でも相場を把握し、適切な金額で家を売るための準備をします。家は仲介のほうが高く売れることが多いですが、早く売りたくなった時のことを考えて、買取をしている不動産会社のことも確認しておくと安心です。

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2. 早めに行動して高く売る

中古住宅の場合は、相場に合った価格で、長引かせず早期に成約させるのが重要です。経済状況がよい時や不動産価格が上昇傾向にある時期など、相場が高い時に早めに売ることで、高い価格での売却につながります。
例年、家の売買市場が活発になるのは、進学、就職、転勤などで引越しする人が増加する3~4月です。「公益財団法人不動産流通推進センター」による「2022不動産業統計集(9月期改訂)3不動産流通」や「2022不動産業統計集(3月期改訂)3不動産流通」でも、3~4月に不動産の売り物件成約報告件数が増加する傾向を確認できます。

中古住宅の場合、売買需要の高まりに応じて相場が上がる可能性がありますが、基本的に賃貸住宅ほど季節ニーズに影響されたり市場の動きが激しく上下することはありません。さらに、売却活動が長くなると、不動産会社から価格の値下げを提案される可能性が高まるので、好条件で売却するには、よい時期に早く売ることが重要です。

引っ越しのイメージ

(画像/PIXTA)

3.閑散期に引越すよう調整する

家が売れた場合、新居への引越しもしなければなりません。引越し業者は、閑散期に依頼をすると引越し費用を抑えることが可能です。国土交通省の作成した「令和2年度における大手引越し事業者6者の引越件数」によると、年間の引越し件数は3月に集中していて、ほかの月の倍以上になっています。

3月4月などの繁忙期は予約が取りづらくなり、引越し代も高額になるため、費用を抑えるには、可能な限り引越し業者の閑散期を狙いましょう。引越し件数が比較的少ない12月や1月などを選ぶ、土日祝日を避ける、時間帯を指定しないなどが、おすすめの節約方法です。
ただし、売却時期よりもかなり早い時期に引越ししてしまうと、ダブルローンになったり、仮住まいの費用が必要になったりする場合があるため注意が必要です。

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4.不動産会社ごとの仲介手数料を比較する

仲介手数料とは、家の買主を見つけてくれた不動産会社に支払う成功報酬のことです。仲介手数料の上限額は法律によって定められており、売買価格に応じ、以下のようになっています。

【仲介手数料の上限額】
  • 売買価格200万円以下の部分=売買価格×5%+消費税
  • 売買価格200万円を超え400万円以下の部分=売買価格×4%+消費税
  • 400万円を超える部分=売買価格×3%+消費税

400万円を超える売買価格の仲介手数料は、以下の計算式で計算できます。

売買価格の3%×6万円+消費税

仲介手数料の上限額は定められているため、これ以上の金額を請求されても支払う必要はありません(遠方の物件などにかかった旅費など実費は除く)。この範囲内であれば、実際の仲介手数料は不動産会社が任意に設定できます。実際にはほとんどの不動産会社が上限額を設定していますが、交渉次第で仲介手数料を値引きしてもらうことが可能です。

値引き交渉はさまざまな方法で行えます。「専属専任契約・専任媒介契約にする」「ほかの不動産会社の査定を見せる」「値下げキャンペーンをしている不動産会社を選ぶ」などが主な交渉方法です。媒介契約を結ぶ前に交渉をして、仲介手数料を下げてもらえる場合に契約を結ぶなどのパターンで値引きが狙えます。

ただし、値引き交渉をしたとしても、ほかの物件より優先度を下げられる、広告費を削られる、物件価格の値引きを勧められるなど、対応に悪影響が出るケースもあるため注意が必要です。値引きではなく、希望に沿った売却活動を行ってくれるかを重視して選びましょう。

5.売却益や売却損の額にかかわらず確定申告をする

家を売却して利益が発生した時には、譲渡所得税がかかるため、確定申告をする必要があります。「不動産の売却価格-(物件の取得費+譲渡費用)」の計算式で算出される「譲渡所得」に、税率を掛けたものが、譲渡所得税の額です。利益が少なかった場合や損失が出た場合にも、確定申告をすることでさまざまなメリットが得られます。

譲渡所得の確定申告をすると「3000万円の特別控除」などの控除が受けられるため、家の売却によって発生した譲渡所得にかかる税額を抑えられます。

【「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」の適用条件】

①居住用の不動産(自宅)を売却したこと
②売った年の前年および前々年に本特例や、マイホームの譲渡損失についての特例の適用を受けていないこと
③売った年、前年、前々年にマイホームの買い換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
④売ったマイホームが、収用等の場合の特別控除など、ほかの特例の適用を受けていないこと
⑤災害によって滅失した家屋の場合は、そこに住まなくなった日から3年経過した年の12月31日までに売ること
⑥売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと

家の売却で損失が出ていた場合でも、申告をすることで得になるケースがあります。マイホームを譲渡した場合にのみ対象となる、譲渡損失の損益通算が適用になると、ほかの所得の税額を軽減することが可能です。給与所得がある場合には、給与所得から譲渡損失のマイナスを差し引いた額で所得税や住民税が計算されます。本来の給与所得にかかる税金を3年間軽減できるため、譲渡所得の確定申告をしておくと節税になってお得です。

まとめスーモくん

  • 家を売却する時には、売却活動開始前、売却活動中、売買契約成立後の、3つのタイミングに分けて「家の売却でやってはいけないこと」を確認する
  • 売却前の重要なポイントは、複数の不動産会社から査定を取り比較する、「仲介」と「買取」の違いや3種類ある媒介契約の特徴を把握する、リフォームや解体は不動産会社に相談する、ローンを組んでいる金融機関へ相談する、相場を調べて把握し、適正な売却価格を設定する、など
  • 売却中は適切な情報開示をし、不動産会社とこまめに連絡を取り、きちんと掃除をして内見に備えることと、契約内容をしっかり確認することが大切
  • 売却後は、引き渡し日までに不用品の処分を含む退去の準備をすべて終え、確定申告を忘れずに行う

取材・文/佐藤珠美 図版作成/かたくま

不動産売却マニュアル

●監修/髙野 友樹さん (公認 不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士) 株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役 不動産会社にて仲介、収益物件管理を経験した後、国内不動産ファンドでAM事業部のマネージャーとして従事。
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