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不動産売買の手付金とは。金額の目安や手付解除などポイント解説/不動産売却マニュアル#16

不動産売買の手付金とは。金額の目安や手付解除などポイント解説/不動産売却マニュアル#16

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マンションや土地・戸建の売買契約の際には、買主から売主に手付金が支払われるのが通常だ。手付金はあとで売買代金に充当されるお金だが、それ以外にも重要な意味があるので理解しておこう。

手付金には3つの意味がある

契約の証拠としての「証約手付」

売買契約時に買主が売主に支払うお金が手付金だ。手付金には、契約が成立したことの証拠としての性格があり、これを「証約手付」という。

解約の代償としての「解約手付」

民法の規定では買主は手付金を放棄すれば(手付放棄)、また売主は手付金の2倍の金額を買主に支払えば(手付倍返し)、契約を解除できる。これを「解約手付」という。

債務不履行に対する違約金としての「違約手付」

このほか、買主か売主のどちらかに債務不履行があった場合に、手付金が違約金として、損害賠償とは別に相手方に没収されると定めるケースがある。これを「違約手付」という。

手付金と頭金の違い

手付金と頭金はどちらも家を建てる(購入する)際に支払うお金だ。

手付金は売買契約成立時に支払う金銭であり、頭金とは、売買代金から住宅ローンの借入額を引いた部分のことだ。

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手付金の相場は売買代金の5%〜20%

金額が小さすぎても大きすぎてもだめ

手付金の額については特に法律で制限はされていない。だが金額が小さすぎると売主も買主も気軽に解約できてしまい、逆に金額が大きすぎると解約が難しくなり、どちらも解約手付としての意味をなさなくなってしまう。

不動産の売買契約では、手付金を売買代金の5%〜20%の範囲内で決めるケースが一般的だ。

手付解除できるのは相手が契約の「履行に着手」するまで

自分が履行に着手しても解除できる

売主は手付金を倍返しすれば契約を解除できるが、いつでも解除できるわけではない。民法の規定では、「相手方が契約の履行に着手した後」は手付による解除ができないとしている。

「履行に着手」とは聞き慣れない言葉だが、契約の履行、すなわち売買を成立させるために必要な行為をしたときといった意味だ。

売主が手付解除できるのは「買主が契約の履行に着手するまで」で、売主自身が履行に着手したかどうかは関係ない。

解除できる期限は契約書に明記するのが一般的

どんな場合が履行の着手にあたるのかは明確なルールがないが、例えば以下のようなケースが該当するとされる。

  • 売主が所有権移転登記の手続きをしたとき
  • 買主が中間金や残代金を支払ったとき

とはいえ、所有権の移転登記や残代金の支払いは引き渡しと同時が通常なので、その時点まで手付解除が可能とすると取引が不安定になってしまう。そのため、当事者の合意によって手付解除ができる期限を定め、売買契約書に明記するのが一般的だ。ただし買主は、売主が履行に着手するまでか所定の期日までのいずれか遅い時期までは手付解除できるとされている。

手付解除の方法

売主が手付解除をする場合は、契約解除の意思表示を買主に伝えるとともに、手付金の倍額を買主の銀行口座に振り込むなど、実際にお金を提供する必要がある。

逆に買主が手付解除をする場合は、解除するという意思表示だけでよい(口頭の連絡でもよい)。とはいえトラブルを防ぐために配達証明付き内容証明郵便で解除を伝えるといった方法もある。

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不動産売却マニュアル

●構成・取材・文/大森広司
住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う
●監修 明海大学不動産学部教授・中村喜久夫さん 宅建試験の人気テキスト「スッキリわかる宅建士」の著者。賃貸不動産経営管理士試験の5問免除講習や宅建士法定講習の講師も務める。YouTube「中村喜久夫チャンネル」で講義動画も公開中。 不動産鑑定士。(公財)日本賃貸住宅管理協会監事。
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