売却活動の結果、所有するマンションや土地、戸建など不動産の買主が決まったら売買契約を交わすが、その前に買主に対して不動産会社が重要事項説明書を説明する。どんな内容が書かれるのか、売主としても知っておこう。
重要事項説明書で説明される内容とは
取引物件・取引条件・その他の事項を説明
重要事項説明書には、以下の内容が記載され、宅地建物取引士が買主に説明することになっている。
【取引物件に関する事項】
(1)登記記録に記録された事項
(2)法令に基づく制限の概要
(3)私道に関する負担に関する事項
(4)飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況
(5)宅地造成または建物建築の工事完了前であるときは、完了時における形状・構造等
(6)建物が既存の建物であるときは、建物状況調査の概要等
(7)区分所有建物の場合の敷地に関する権利、共用部分に関する規約等の定めなどに関する事項
【取引条件に関する事項】
(1)代金、交換差金および借賃以外に授受される金銭に関する事項
(2)契約の解除に関する事項
(3)損害賠償額の予定または違約金に関する事項
(4)手付金等の保全措置の概要(不動産会社が自ら売主になる場合)
(5)支払金または預り金の保全措置の概要
(6)金銭の貸借のあっせんに関する事項
(7)担保責任の履行に関する措置の概要
【その他の事項】
(1)国土交通省令・内閣府令で定める事項
(2)割賦販売に係る事項
以下、順にみていこう。
取引物件に関する説明事項とは
(1)登記記録に記録された事項
土地や建物に登記されている所有権などの権利の内容のこと。売主が借りている住宅ローンの抵当権のように、決済・引き渡し時までに抹消されることが確実なものでも説明が必要になる。また、借地権や借家権のように登記記録に記録されていない権利も重要事項説明書には記載して説明しなければならない。
法令に基づく制限の概要
都市計画法や建築基準法などの法令に基づく制限のこと。建物の用途を制限する用途地域や、建物の大きさを規制する建ぺい率・容積率、敷地と道路の関係など、住宅の建築や増改築などに大きく影響する規制内容などが記載される。
(2)法令に基づく制限の概要
都市計画法や建築基準法などの法令に基づく制限のこと。建物の用途を制限する用途地域や、建物の大きさを規制する建蔽率(建ぺい率)・容積率、敷地と道路の関係など、住宅の建築や増改築などに大きく影響する規制内容などが記載される。
(3)私道に関する負担に関する事項
敷地が面している道路が私道の場合は、その位置や面積、権利関係、利用のための負担金の有無などを記載する。
(4)飲用水などの供給施設・排水施設
飲用水・電気・ガスの供給施設と排水施設がすぐに使える状態なのか。供給形態や給排水管・ガス管の埋設位置など。施設が未整備で将来整備される計画がある場合は、負担金の有無や金額、整備される予定時期などを説明する。
(5)宅地造成または建物建築の工事完了時における形状・構造等
宅地造成や建築工事が未完成のいわゆる「青田売り」の場合について、工事完了時の形状や構造、間取り、内外装の仕上げなどを平面図で説明する。
(6)建物状況調査の概要等
建物が既存の建物(中古住宅)であるときは、過去1年以内に建築士(既存住宅状況調査技術者)による建物状況調査が行われたかどうかを記載し、行われた場合は調査結果の概要も記載する。
(7)区分所有建物の場合
物件がマンションの場合、敷地の権利の種類、借地権の場合は地代など、管理規約や使用細則の内容、駐車場や専用庭などの使用料、管理費や修繕積立金の額、管理会社の名称や管理形態などを記載する。
特に売主が管理費や修繕積立金を滞納している場合は、買主が購入後に滞納額を負担しなければならなくなるので説明が必要だ。また、共用部分の修繕工事に必要な値上げや一時負担金が予定されている場合は、そのことも説明しなければならない。
取引条件に関する説明事項とは
(1)代金、交換差金および借賃以外に授受される金銭
「代金、交換差金および借賃以外に授受される金銭」とは、売買契約では手付金、固定資産税、管理費などの精算金、賃料などの精算金(オーナーチェンジ物件の場合)などのことで、その金額や目的、授受の時期などについて説明が必要となる(詳しくは「売買契約書のポイントを確認しよう」を参照)。
(2)契約の解除に関する事項
以下について記載し、説明する(同上リンク:「売買契約書のポイントを確認しよう」を参照)。
- どのような場合に解除できるのか
- どのような手続きが必要になるのか
- 解除によってどのような効果が発生するのか
(3)損害賠償額の予定または違約金に関する事項
損害賠償額の予定または違約金に関する定めがある場合、その額や内容を説明する。定めがない場合もその旨を説明しなければならない(同上リンク:「売買契約書のポイントを確認しよう」を参照)。
(4)手付金等の保全措置の概要
不動産会社が自ら売主となる売買では、一定の額または割合を超える手付金などを受領する場合には、その保全措置が義務付けられており、その内容を説明する必要がある(詳しくは「売買契約時に発生する手付金の意味とは」を参照)。
(5)支払金または預り金の保全措置の概要
不動産会社が買主から金銭を受領する場合、その金額が50万円以上のものは重要事項として保全措置の有無やその概要について説明しなければならない。
(6)金銭の貸借(ローン)のあっせんの内容
不動産会社が買主のためにローンのあっせんを行う場合は、金額や金利などの融資条件のほか、融資が受けられなかった場合にどのような措置を講じるかを説明する(同上リンク:「売買契約書のポイントを確認しよう」を参照)。
(7)担保責任の履行に関する措置の概要
担保責任の履行に関して保証保険契約の締結などの措置を講じるかどうか、講じる場合はその概要を説明する必要がある(詳しくは「不動産売却時の契約不適合責任」を参照)。
その他の事項とは
その他に説明しなければならない内容
土地・建物が土砂災害警戒区域内にあるときや、耐震診断を受けたものであるとき(1981年5月以前に着工したもののみ)、不動産会社が割賦販売をする場合、物件や周辺環境などに心理的に告知すべき事項などがある場合は、その旨やその内容について説明しなければならない。また水害ハザードマップにおける物件の所在地も説明することとなっている。
不動産売却マニュアル
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住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う