レインズとは、不動産会社が不動産物件の情報を交換するためのコンピューターネットワークシステムを指します。
レインズの情報を閲覧・検索・登録できるのは不動産会社です。一般の方も見ることができるサイトとしては、過去の取引情報を掲載した「レインズ・マーケット・インフォメーション」があります。
この記事では、レインズの仕組みのほか、売却物件をレインズ登録する方法や、レインズ登録に必要な媒介契約などについて解説します。

記事の目次
レインズとはどのようなシステム?
レインズ(REINS)とは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称で、不動産会社専用の「物件情報検索システム」のことです。法律で定められた公的なシステムで、国土交通省が指定した「指定流通機構」によって運営されています。
レインズ(不動産流通標準情報システム)の概要
レインズは、次のような仕組みになっています。
(1)売主から売却の依頼を受けた不動産会社(売主側)が、レインズに売却物件情報を「登録」。
(2)買主から物件探しの依頼を受けた不動産会社(買主側)がレインズで購入物件を「検索」。
売却物件のほか賃貸物件情報も登録され、売買と同じ様に利用されています。

不動産の売却活動は、かつて、店頭への貼紙、新聞広告、知り合いの業者との情報交換などを通じて行われていました。しかし、このやり方は迅速性に欠けるうえに、限定的な範囲での情報提供しかできませんでした。
そこで、広く迅速に取引の相手方や物件の検索を行えるよう、1990年5月から全国でレインズが導入されました。
レインズでは、全国に設置されたホストコンピュータと会員不動産会社の端末機(パソコン)を結び、物件の登録検索等をすべてオンラインで処理しています。
詳しくはこちら→レインズとは? | REINS TOWER
レインズは宅建業法(宅地建物取引業法)で登録が義務付けられている
不動産の売却・購入を依頼する際には、不動産会社(宅地建物取引業者)と媒介契約を結びます。
媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。
このうち、専属専任媒介契約・専任媒介契約については、宅建業法により、物件情報を「指定流通機構(レインズ)」に登録し、登録証明書を交付すること等が義務付けられています。
これに対し、一般媒介契約の場合は、レインズへの登録義務はありません。
レインズに登録すれば、全国の不動産会社が売却物件情報を閲覧することができ、購入者が見つかる可能性が高くなります。一方、レインズに登録されない不動産の情報は、限られたエリアでしか知られないことになります。
このため、売却物件のレインズへの登録を希望するなら、専属専任媒介契約か専任媒介契約を結ぶことをおすすめします。また、一般媒介契約を結ぶ場合でも、レインズへの登録を依頼することは可能です。不動産会社に聞いてみるとよいでしょう。

レインズの登録物件数と利用実績
レインズを運営する「指定流通機構」は、全国の地域ごとに以下の4つがあります。
- 公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)
- 公益社団法人中部圏不動産流通機構(中部レインズ)
- 公益社団法人近畿圏不動産流通機構(近畿レインズ)
- 公益社団法人西日本不動産流通機構(西日本レインズ)
2023年度における全国の指定流通機構への新規登録物件数は427万2,339件です。月に平均すると、35万6,028件の物件が登録されています。また、2023年度末の会員(宅地建物業者)の数は14万5241会員で、2014年度末から約10%増加しています。

レインズは一般人も閲覧できる?
レインズに掲載される建物や土地などの売却情報には、その物件の所在地など個人情報が含まれているため、レインズの検索や閲覧は、「指定流通機構」に会員登録された不動産会社しかできません。
ただし、不動産会社と売却の媒介契約を結び、物件が登録された「売主」は、自己所有の物件情報のみレインズで確認することができます。また、一般の方が不動産相場等を調べる際に利用できるレインズのサイトもあります。
一般人が閲覧できるのは「レインズ・マーケット・インフォメーション」
レインズ・マーケット・インフォメーションとは、指定流通機構が保有する不動産の成約価格などの取引情報を、広く一般の消費者向けに公開しているサイトです。 レインズに登録された物件の取引事例を、個人情報が明らかにならないかたちに加工して公開しています。
不動産取引情報は、沿線や駅、床面積などから情報検索できるため、自分が売りたいマンションや一戸建てに類似した物件の売買履歴を見ることができます。 レインズの客観的な情報をチェックすることで、不動産の大まかな相場を把握することができ、一般消費者も安心して不動産取引を行うことができるのです。
ただし、レインズ・マーケット・インフォメーションで公開しているのは過去の取引情報のみです。現在売り出されている物件情報を見ることはできません。

一般人(売主)がレインズを利用するメリット
買い手を見つけやすくなる
売主にとってレインズを利用する1番のメリットは、不動産の売り物件の情報を、広域に迅速に拡散できる点です。
個別の不動産会社の通常の広告活動では、告知できる地域が限られます。しかし、レインズに登録すれば全国の不動産会社が情報を閲覧し、より多くの購入者に紹介されることになります。
取引情報管理機能で登録状況を確認できる
売主がレインズにログインをすると「取引状況管理機能」により、自分が売りに出している不動産のステータス(取引状況)を確認できます。ステータスは以下の3つです。
(1)公開中-不動産会社からの申し込みを受け付けている段階
(2)書面による購入申込みありー不動産会社から書面による購入申し込みを受けた状態
(3)売主都合で一時紹介停止中-売主の事情などにより、一時的に物件の紹介ができない状態
レインズの取引状況管理機能を確認することで、売主は、登録された物件情報が、確実に公開されているかどうかを確認することができるのです。
囲い込みを防げる
「囲い込み」とは、不動産会社が、売却物件の情報を他の不動産会社に提供せず、自社内の購入客から買主を見つけようとすることです。不動産会社にとっては、売主と買主の2人分の仲介手数料が手に入る「両手仲介」になるメリットがあります。
しかし、売却物件の情報を会社内だけで留めてしまう「囲い込み」は、売主にとってはデメリットです。購入客を広域から探せないため、売却までの期間が長引くことが多く、満足な価格で売れないケースもあるからです。
レインズで情報を公開すると、他の不動産会社を通して購入希望者が見つかるケースが多くなります。この場合、不動産会社にとっては、「売主」1人分の仲介手数料だけが手に入る「片手仲介」になりますが、売主にとっては、売却情報が広範囲に提供されるというメリットがあります。
また、レインズに公開中の物件は、原則として不動産会社からの申し込みを拒否できないというルールもあり、不動産会社が不正な手段で売主の不動産を囲い込む、といったこともできなくなっています。国土交通省では2024年6月、宅建業法施行規則を改正。これにより、2025年1月1日以降に虚偽の取引申込情報の登録など「囲い込み」につながる行為が確認された宅建業者は是正指示処分の対象となります。

複数の不動産仲介会社に問い合わせる必要がなくなる
「専属専任媒介契約」または「専属媒介契約」は、他の不動産会社と契約を結ぶことができないため、不動産の売却を依頼するのは1社のみです。しかし、レインズへの物件登録が義務付けられているため、売却情報は他の不動産会社にも提供されます。
このため、複数の不動産会社に売却を依頼して、やり取りをする手間が省けます。
一般人(売主)がレインズを登録・見る方法
一般の方が「一戸建てやマンション、土地の売却にレインズを利用したい」と希望する場合、どうすればいいのでしょうか。ここでは、レインズを利用して不動産売却をスムーズに進める手順を解説します。
1.不動産会社に査定を依頼する
レインズを利用して売却する場合も、まずは不動産会社選びから始めます。「一括査定サイト」を使って複数社に査定を依頼し、比較検討した上で2~3社の候補に絞り込み、「訪問査定」をしてもらいます。
不動産会社には事前にレインズを利用したいことを伝え、訪問査定の際には、次の点について確認しましょう。
- レインズで公開されている「売却物件と条件が似ている物件(競合物件)」の情報を教えてくれるか。
- レインズ登録以外に、どのような売却活動を行うのか。
- 不動産会社独自の売却サービスがあるのか。
レインズに公開された競合物件の条件や価格は、売却価格を決めるための参考資料の一つです。レインズの競合物件の情報などを基に、査定額の根拠を客観的に説明されるかどうかは、不動産会社選びのポイントの一つです。
一方、レインズの登録は、ほぼすべての不動産会社ができることです。それ以外に不動産会社独自の売却活動やサービスの内容も比較して、不動産会社を選ぶことをおすすめします。
「価格査定」についてもっと詳しく→【基礎からわかる】不動産査定の流れや費用、相場の計算方法 - 【SUUMO】住まいの売却ガイド
2.不動産会社と媒介契約を結ぶ
依頼する不動産会社が決まったら「媒介契約」を結びます。先述の通り、媒介契約には、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。
レインズを利用して売却する場合、「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」を選ぶとよいでしょう。この契約を結ぶと、不動産会社は売却物件の情報を一定期間内に指定流通機構(レインズ)に登録し、広く積極的に買主を探すことが義務付けられるからです。
さらに、不動産会社は「売主への業務報告義務」もあるため、「レインズを通して物件に反響があったかどうか」など、売却の進捗状況も定期的に把握できます。
一方、専属専任媒介契約・専任媒介契約には、売主にも「契約期間中は他の会社と媒介契約を結ばない」という制約があります。媒介契約の期間は3カ月以内とされているため、3カ月は1社だけに売却を任せすることになるのが一般的です。
また、専属専任媒介契約の場合は、売主が自ら見つけた相手方との売買契約をする場合でも、不動産会社に仲介手数料の支払いをしなくてはなりません。
「一般媒介契約」を結ぶ場合、原則として、不動産会社にレインズの登録義務や売主への業務報告義務はありません。しかし、売主から、レインズへの登録や定期的な業務報告を依頼して、契約に付け加えることは可能です。
一般媒介契約は、複数の不動産会社と媒介契約を結べるため、魅力的なサービスのある会社が複数あり、売却を依頼する会社を1社に絞り込めない場合などは、一般媒介契約を検討するのも一手です。

「媒介契約」についてもっと詳しく→「媒介」とは? 「仲介」との違い、3種類の媒介契約、不動産売買の仲介手数料について解説 - 【SUUMO】住まいの売却ガイド
3.不動産会社へ、レインズへの物件情報登録を依頼する
レインズへの登録を約束する媒介契約を結んだら、不動産会社は、次の期間内に売却物件情報をレインズに登録します。
- 専属専任媒介契約-5日以内(契約の翌日から。休業日は除く)
- 専任媒介契約-7日以内(契約の翌日から。休業日は除く)
- 一般媒介契約-任意(売主と不動産会社が契約で定めた期間内)
レインズには、所在地や価格、面積など基本的な情報のほか、図面や写真などのビジュアルも掲載できます。
図面には、間取図や周辺の地図のほか、物件の特徴を入れることも可能です。
レインズの図面などに入れてほしい売却物件のアピールポイントがあれば、査定~媒介契約の間に伝えておくとよいでしょう。
4.不動産会社から「登録証明書」を受け取る
売却物件の情報がレインズに登録されると、「登録証明書」が発行されます。登録証明書には、売却価格や所在地、面積などレインズに登録されている物件情報の概要が記載されています。
専属専任媒介契約と専任媒介契約の場合、不動産会社はレインズに登録された証しとして、その証明書を売却の依頼者に交付しなければなりません。
証明書には「登録」以外に、「変更」「再登録」「成約登録」「削除」の4種類があります。
売却物件がレインズに登録され広く告知されているかどうかは、「登録証明書」によって確認しましょう。
5.売主専用確認画面にログインする
専任媒介契約または専属専任媒介契約を結んでレインズに登録した場合、売主は、インターネット上で公開中の物件情報や図面を閲覧できます。
先述したレインズの「登録証明書」に、専用確認画面を開くためのURLと物件のID・パスワードが記載されています。不動産会社から登録証明書を受け取ったら、ログインして内容を確認しておきましょう。
レインズ以外でも不動産の相場を確認しておこう
レインズは不動産会社専用のシステムのため、一般の方は、レインズに登録された物件情報を閲覧したり、検索することはできません。そこで、一般の方でも不動産相場を調べることができるサイトを紹介しましょう。
民間の不動産情報・住宅情報サイト
「SUUMO」をはじめとする民間の住宅情報サイトは、現在売出中のマンション・一戸建て・土地の情報を、沿線駅や住所ごとに検索できます。
購入者が物件を探すためだけでなく、売却を検討するときに周辺相場を調べるのにも役立ちます。
相場の調べ方についてもっと詳しく→不動産売却の「相場」の調べ方。インターネットで調べるときの注意点/不動産売却マニュアル#3 - 【SUUMO】住まいの売却ガイド
個人でも不動産相場を調べられるデータベース「不動産情報ライブラリ」
「不動産情報ライブラリ」は、2006年4月から制度化された「不動産の取引価格情報提供制度」に基づき、国土交通省が運営している不動産の取引情報サイトです。
不動産情報ライブラリでは、「レインズ・マーケット・インフォーメーション」の成約情報や、国土交通省が独自に収集した「不動産取引価格情報」を閲覧できます。また、地図や住所地からの検索も可能です。
いずれも過去の情報を基にしているため、購入物件は探せませんが、周辺相場を調べるのに役立つサイトの一つです。

売りたい不動産相場を知るには一括査定サイトを活用しよう
不動産一括査定サイトとは、売却したい不動産の情報を入力すると、複数の不動産会社に査定を依頼できるWebサービスのことです。
「不動産ライブラリ」などを利用する場合、売りたい物件と類似した物件情報が少ないために、相場が調べられないことがあります。これに対し、「一括査定依頼」は、売りたい物件のあるエリアの不動産相場に詳しい不動産会社からの回答が期待できます。
不動産一括サイトの「一括査定依頼」は無料で行えます。また、一括査定サイトを利用して不動産会社とコンタクトをとっても、査定結果や対応に納得できない場合は、売却を見合わせることもできます。スマートフォンでも一括査定依頼ができるので、気軽に利用してみてはいかがでしょうか。
「一括査定」についてもっと詳しく→不動産一括査定サイトとは?利用するメリットや査定の流れ、サイトの選び方を解説 - 【SUUMO】住まいの売却ガイド
まとめ
- レインズとは、全国の物件情報が登録された公的な「不動産情報交換ネットワークシステム」です
- レインズの物件を見られるのは不動産会社だけですが、一般の方々もレインズを通じて相場などの情報を得ることが可能です
- 売却の際に「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」を結ぶと、不動産会社はレインズへの物件登録が義務付けられます
- 売却のため価格相場を知りたいときは「不動産情報ライブラリ」や「不動産一括査定サイト」を利用する方法もあります
構成・取材・文/コハマジュンイチ
構成/サクラサクマーケティング株式会社
文/森島薫子


