不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

不動産売却情報で知っておきたい「レインズ(不動産流通標準情報システム)」とは?

不動産売却で知っておきたい「レインズ(不動産流通標準情報システム)」とは?

不動産を売却しようとするとき、よく耳にするのが「レインズ」という言葉。
不動産会社が売主から依頼を受けて、売却物件を登録するシステムをこう呼びます。
では、そのレインズはどんなシステムで、どのように運営され、利用されているのでしょうか?
レインズは、不動産会社しか使用することができませんが、売却活動をする上で、私たちもその知識を持つことは重要です。
そこで、日本の不動産流通には欠かせないレインズを理解するため、このシステムの詳細を解説していきましょう。

記事の目次

売却活動に役立つレインズとはどんなシステム?

レインズ(不動産流通標準情報システム)とは

レインズ(REINS)とは、REAL ESTATE INFORMATION NETWORK SYSTEM(不動産流通標準情報システム)の略称です。
不動産事業を管轄する国土交通省および不動産流通機構が開発した、不動産情報交換のためのコンピュータネットワークシステムをこう呼びます。

レインズは、宅地建物取引業法に基づき、国土交通大臣の指定を受けた「指定流通機構」である全国で4つの公益社団法人や公益財団法人によって運営されています。
全国に設置されたホストコンピュータと会員不動産会社の端末機(パソコン)を結び、物件の登録検索等をすべてオンラインで処理しています。

私たちが土地や中古の住宅を売りたいときや、逆に購入希望があれば、通常、不動産会社(宅地建物取引業者)を通じて希望にかなった物件を探したり、買主を探します。
不動産会社のこの業務を「媒介」と呼びますが、媒介を請け負った不動産会社はレインズシステムを通して、売り物件を登録したり、買い物件を検索したりします。
従来は、店頭への貼紙、新聞広告、知り合いの業者との情報交換などを通じて、売り物件の紹介や買い物件の情報収集を行っていましたが、これでは迅速性に欠け、また一部の人にしか紹介できませんでした。
この欠点を改め、広く迅速に取引の相手方や物件の検索を行うために、平成2年5月からレインズが導入されました。

不動産イメージ

(写真/PIXTA)

不動産指定流通機構のことをレインズと呼ぶことも

レインズ(REINS=不動産流通標準情報システム)を運営しているのは、指定流通機構と呼ばれる4団体です。
この機構は1988年に宅地建物取引業法が改正されたことによって始まった組織で、東日本・中部圏・近畿圏・西日本の4つに分かれています。
この4団体(不動産指定流通機構)を称してレインズと呼ぶこともあります。

レインズは宅建業法で登録が義務付けられている

私たちが、不動産物件を売りたいときに買主を探したり、あるいは買いたいときに物件を紹介したり取引に向けた業務を行うのが「媒介」あるいは「仲介」と呼ばれる業務です。

媒介契約とは、売主または買主が住まいや不動産の売買をするために媒介を依頼するための契約です。
売買の媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があり、このうち、専属専任媒介契約・専任媒介契約については、宅地建物取引業法により、指定流通機構(レインズ)への登録や登録証明書の交付等が義務付けられています。

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不動産イメージ

(写真/PIXTA)

レインズに登録・閲覧できるのは不動産事業者だけ

レインズは宅地建物取引業法でいう、唯一の指定流通機関です。
不動産を売却したい人が、不動産会社と媒介契約を結び売却を依頼すると、不動産会社はその物件情報をレインズに登録します。
他方、物件の購入希望をもつ人の依頼を受けた不動産会社は、その条件などをもとに、レインズ上で売り物件を検索します。
そして、物件の条件等が合えばレインズシステム上で「売り」と「買い」のマッチングが行われ、取引が進みます。
レインズへの登録と検索は、指定流通機関に登録された不動産会社しかできません。
つまり、不動産のプロフェッショナルだけが扱うことのできるネットワークが、レインズです。

不動産取引にレインズを利用するメリット

■売主のメリット
不動産の売り物件の基本的情報を、広域に迅速に拡散できることが最大のメリットです。
個別の不動産会社の通常の広告活動では、告知できる地域が限られますが、レインズに登録することによって、全国の不動産会社がその情報を共有することができ、売却機会を逃すことなく、買い手を探し出すことができます。
掲載される不動産物件の膨大な情報量もメリットです。
売り物件リストや過去の取引事例などは、市場動向を把握するためにも貴重な資料となります。
売却しようとしている物件の類似物件を検索し、価格動向を知ることは、適正な価格設定の資料となるばかりか、実際の取引交渉の場にも役立てることが可能となります。

■買主のメリット
掲載される物件の情報量が多く、物件選びの選択肢が多いことがメリットです。
またレインズに掲載されることによって、そこからさらに不動産ポータルサイト等へも情報が流れやすくなりますので、さらに情報入手の機会が大きく増えると言えます。
また、遠隔地の不動産情報の入手に際しても、全国規模のネットワークのメリットがあります。
転勤や転職に際して、地元では入手しにくい情報も、レインズ掲載物件であれば、容易に入手可能となります。

不動産イメージ

(写真/PIXTA)

レインズを利用した売却活動と媒介契約の種類

媒介契約の種類で登録義務が異なる

一般的に不動産を売却する場合、不動産会社に仲介(媒介)を依頼することになります。

不動産会社はこの媒介業務に当たり、依頼者の保護、取引の安全及び流通の円滑化を図るため、媒介契約の中身を書面化するこが義務付けられています。

媒介契約には3つの種類があり、不動産会社は、媒介契約を締結する際には、依頼者に「専属専任媒介契約」、「専任媒介契約」、「一般媒介契約」の相違点を十分に説明し、依頼者の意思を十分確認した上で、媒介契約を締結し媒介契約書面を交付することになっています。

専属専任媒介契約または専任媒介契約を締結した物件については、不動産会社は指定流通機構(レインズ)に登録し、広く積極的に買主を探し出すことが義務付けられています。

3つの媒介契約とレインズとの関係について説明しましたが、もう少し詳しく各契約についてご説明します。

仲介業務を行う多くの不動産会社の営業担当者は、専任媒介契約(専属専任を含む)の契約を望んでいます。

理由は売主側の仲介を一社で独占できるからです。そのため、担当者の販売意欲も高まり、多くの広告費が投入されます。また、レインズ掲載によって広く不動産会社へも周知されます。

これは、もちろん売主にとってもメリットで、早期の販売が見込まれることにつながります。

業務報告によって、反響の具合が報告されるのも、メリットといえます。

では、一般媒介契約はどのような売物件のときに、選ぶべきか。

不動産の購入意欲をもった多くの買主が望むような、言葉を換えれば人気物件になりそうな物件の場合は、一般媒介契約を選ぶといいでしょう。

人気物件となりそうな物件は、多くの不動産会社が売主側の仲介としてビジネスが成立するため、競って販売活動を展開します。各社の見込み顧客に紹介される機会も増え、販売機会も多くなります。

媒介契約3種類の契約形態

■専属専任媒介契約
売主である依頼者が他の不動産会社に重ねて媒介を依頼することができない契約です。
依頼者が自ら見つけた相手方と売買契約することもできません。
指定流通機構(レインズ)には、媒介契約締結の翌日から5日以内に登録する義務があります。

■専任媒介契約
売主である依頼者が他の不動産会社に重ねて媒介を依頼することができない契約です。
ただし、依頼者が自ら見つけた相手方と売買契約することはできます。
指定流通機構(レインズ)には、媒介契約締結の翌日から7日以内に登録する義務があります。

■一般媒介契約
売主である依頼者が他の不動産会社に重ねて媒介を依頼することができる契約です。
また依頼者が自ら見つけた相手方と売買契約することもできます。
指定流通機構(レインズ)への登録は任意で行えます。

  一般媒介解約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
複数の会社との契約 × ×
自分で買主を見つけること ×
レインズへの登録義務 任意 契約日翌日から7日以内 契約日翌日から5日以内
売主への業務報告義務 任意 2週間に1回以上 1週間に1回以上

レインズの登録証明書を確認しよう

不動産会社に所有する不動産の売却を依頼し、媒介契約を締結すると、不動産会社はその情報を国土交通大臣が指定した指定流通機構のシステム「レインズ」に登録します。
レインズに登録されると、指定流通機構により「登録証明書」が発行されます。
不動産会社はレインズに登録された証として、その証明書を売却の依頼者に交付しなければなりません。

証明書には「登録」以外に「変更」「再登録」「成約登録」「削除」の合計5種類の証明書があります。
売却物件が、レインズに登録され広く告知されているかどうか、「登録証明書」によって確認しましょう。

片手仲介と両手仲介の違い

仲介業務を行う不動産会社は、仲介手数料が営業収入です。
仲介手数料は、宅地建物取引業法でその上限額が決められており、物件価格が400万円以上の場合、物件価格×3%+6万円(税別)となります。
宅地建物取引業法では、その仲介手数料の上限額を、売主側と買主側それぞれから受け取ることができます。
不動産会社が売却の依頼を受け、買主をレインズ上で見つけた場合、不動産会社は売主の方からしか、仲介手数料を受け取ることができません。
もし、依頼を受けた不動産の仲介会社がレインズに登録することなく自ら買主を探しだし、取引を成立させた場合はどうでしょう。
この場合、買主からも仲介手数料は入ります。
レインズ上で買主を見つけた場合は、ほかの不動産会社が買主の仲介をし、仲介手数料もその会社が受け取ります。
つまり、買主を自分で探した場合、ビジネスとしては倍の売り上げになるわけです。
これを両手仲介といいます。

売主と買主の両方から仲介手数料を受け取るという意味です。

しかし、売主の側から見れば、もし依頼した不動産会社が自ら買主を見つけたいと、レインズ登録を先に延ばすようなことがあれば、売却の機会を逃すリスクがあります。
1社だけが持つ買主顧客数と、レインズに登録されている不動産会社が持つ買主顧客数では大きな違いがあるからです。
また、売主と買主では本来、利益は相反するものとされています。
それを1社に任せることは、大きなリスクを伴うものとも言われています。
不動産の仲介業務においてはレインズで情報を開示し、片手仲介での迅速な取引こそが、売主の利益にかなうものと言えます。

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両手仲介と片手仲介のイメージ

レインズを利用した不動産売却の流れ

不動産会社がレインズを利用して不動産売却を行う場合の流れは以下のようになります。

1.依頼を受けた不動産会社と売主の間で不動産売却に向けて媒介契約が結ばれます。
2.不動産会社は物件の詳細を図面や写真とともに、レインズに「売り物件」として登録。
3.レインズに登録された物件は売り物件データとして、図面や写真とともに全国の不動産会社で検索されます。
マッチング登録を行っている不動会社へは、プッシュ型通知が届きます(マッチング登録とは、不動産会社があらかじめ、探している不動産の条件を入力しておくと、 その条件にヒットする物件が登録されると、即座に通知がいくシステム)。
4.レインズに登録された物件である旨の「登録証明書」が発行され、売主に交付されます。
5.不動産会社は売り物件を、売主の承諾を得て広告媒体に掲載。
6.レインズ検索で買い物件を探す不動産会社は、条件が合えば、売主側の不動産会社に購入希望の連絡をします。
7.売買契約に向けた交渉が始まります。
8.交渉がまとまれば売買契約を結び、物件を引き渡します。
9.最初に売り物件を登録した不動産会社は、売れた物件を成約物件として成約価格等を登録します。

レインズと広告の関係

レインズ掲載物件のなかには、広告不可とする条件の付いた物件も多数あります。
通常、不動産会社は、売主と媒介契約を結んだ不動産会社の承諾を得ることを前提に、レインズに登録されている物件をポータルサイト等の広告に掲載することで、買主を探します。
しかし売主側の事情で、物件が売り出されていることをご近所や周囲に知られたくない場合など、広告不可を前提にレインズに掲載されているものもあります。
つまり広告には掲載されることのない物件が、レインズにだけ登録されていることもあるということです。

不動産売却にレインズをうまく利用しよう

売り物件としての不動産の情報をスピーディーに全国に知らしめることのできるシステムがレインズです。
まず、売却を依頼した不動産会社と媒介契約を結んだら、売り出し価格の参考にレインズ・マーケットインフォメーションを検索してみてください。
そこには、自分が売りたい不動産の類似物件や近傍物件の成約事例が掲載されており、価格トレンドをつかむことができます。
また、自分が売却を依頼した物件が掲載された際の確認も必要です。レインズに登録が完了したことを証明する「登録証明書」は、不動産会社を通じて交付されますから、物件データは正確か、間取り図面、写真等の間違いはないかどうかよく見ましょう。
このようにレインズに掲載されたら、不動産会社の仲介業務の報告書で問い合わせがあったかなど反響を知ることができます。
その結果をもとに仲介会社と相談し、売却に向けた活動を行っていきましょう。

レインズの登録物件数と利用実績

2020年1月度の新規登録物件数は40万8265件

公益財団法人不動産流通推進センターではレインズに関係する、各種統計や市場データの分析を行っており、その成果をウエブ上で公開しています。
そのデータによりますと、2020年1月度の新規登録物件数は40万8265件で、総登録物件数は78万6094件となっています。

報告によると2020年1月期におけるレインズの利用状況は、新規登録物件数は40万8265件となり、
3カ月ぶりにプラスに転じたということです。

不動産流通推進センター「指定流通機構の活用状況について(令和2年1月分)」

※公益財団法人 不動産流通推進センター「指定流通機構の活用状況について(令和2年1月分)」より抜粋

個人でも不動産相場を調べられる物件データベース

レインズ・マーケットインフォメーション

レインズ・マーケット・インフォメーションとは、指定流通機構が保有する、不動産の成約価格などの取引情報を広く一般の消費者向けに公開しているものです。

指定流通機構は、宅地建物取引業法に基づいて国土交通大臣が指定した不動産流通機構で「レインズ」と呼ばれ、全国に4法人(東日本レインズ、中部レインズ、近畿レインズ、西日本レインズ)が設立されています。
レインズは不動産会社の持つ不動産情報が登録され、不動産流通市場の透明性を確保する役割を果たしています。

レインズでは、指定流通機構の会員である不動産会社が、売り物件や賃貸物件等の情報を登録することで、買主、借主との間でリアルタイムに取り引きへ向けて円滑な情報交換を行っています。
このレインズの情報は免許業者である不動産会社が法的に背負っている守秘義務を前提として交換されているため、一般には公開されていません。

しかし、レインズを通じて不動産流通市場では、日々成約事例をはじめ取引データが積み重ねられています。
レインズ・マーケットインフォメーションは、これらを収集、公開することで、一般消費者が安心して不動産取引を行うことができるようにという観点から開発、公開されています。

レインズ・マーケットインフォメーションシステム

国土交通省「土地総合情報システム」

2006年4月から制度化された「不動産の取引価格情報提供制度」に基づき、国土交通省が運営している不動産の取引情報サイトが「土地総合情報システム」です。
土地総合情報システムは、長年、相場が把握しにくく不透明性が課題とされていた不動産市場の信頼性や透明性を高めるために公開されました。

従来では中古の不動産物件は、相場価格が広く知れ渡っているとは言い切れない状況にありました。
相場が分かりにくい市場では、価格の妥当性が問われ、取引が活発に行われない状況が生まれます。
そこで、不動産市場の活性化に向けて、不動産の取引相場を広く一般の人に認識してもらうためにできたのが土地総合情報システムです。

土地総合情報システム

まとめ

レインズの仕組みや役割などを紹介しました。
現在の不動産取引において、市場の情報公開と透明性の確保は大きな課題で、レインズはその一翼を担うシステムです。
私たちは直接レインズに触れることはできませんが、不動産会社を通じて情報を得ることは可能です。
また、不動産を売却するときは不動産会社に物件をレインズ登録してもらうことで、効率よく買主を見つけることができます。

イラスト/のりメッコ

●構成・取材・文/コハマジュンイチ
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