マンションや土地、戸建などの不動産を売却するときには、手数料や税金などいろいろと費用がかかる。どんな費用がいくらくらいかかるのか、事前に確認しておこう。
売却にかかる費用の内訳は
仲介手数料、印紙税、登記費用などがかかる
不動産を売却するときにかかる費用には、仲介手数料や印紙税、登記費用といった、以下のような費用がある。
(1)仲介手数料
(2)印紙税(売買契約書に課税)
(3)登記費用(抵当権抹消などの費用、司法書士報酬)
(4)その他必要に応じて支払う費用(測量費、解体費、廃棄物処分費など)
(5)引越し費用
不動産会社に仲介手数料を支払う
仲介手数料の上限は売買価格の3%+6万円+消費税
売却を依頼する不動産会社に支払うのが仲介手数料だ。媒介契約を結んだときではなく、売却が成立したときに成功報酬として支払う。具体的には買主と売買契約を結んだときに半額を、物件を引き渡したときに残りの半額を支払うのが通常だ(詳しくは「売却時の仲介手数料とは?いくらかかる?」を参照)。
仲介手数料の金額は、売買価格が400万円を超える場合は以下の計算式で算出する(消費税率10%の場合)。
仲介手数料=売買価格×3.3%+6万6000円
売買価格が5000万円とすると、以下の金額となる。
仲介手数料=5000万円×3.3%+6万6000円=171万6000円
売買契約書に印紙税がかかる
印紙を貼り消印を押して納税
売却時にかかる税金としては、印紙税が挙げられる。印紙税とは売買契約書に貼る印紙のことで、定められた金額の印紙を貼って消印(印鑑などによる割印のこと)することで納税したとみなされる。
売買契約書に貼る印紙の金額(印紙税額)は、契約書の記載金額、つまり物件の売買価格によって以下のように決められている。税額は2027年3月31日まで軽減措置が実施されており、売買価格が1000万円超5000万円以下の場合は1万円、5000万円超1億円以下の場合は3万円だ。
記載された契約金額 | 稅額 |
---|---|
100万円超500万円以下 | 1000円 |
500万円超1000万円以下 | 5000円 |
1000万円超5000万円以下 | 1万円 |
5000万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
売買契約書は売主保管用と買主保管用の2通作成されるので、2通分の印紙税が必要となるが、売主と買主それぞれが1通分ずつ負担するのが通常だ。なお、仲介会社と締結する媒介契約書には印紙税はかからない。
抵当権を抹消する登記費用が必要
司法書士への報酬などで2万~3万円
不動産を売却するときには所有権を買主に移転する「所有権移転登記」が必要だが、その際の登記費用は買主が負担する。売主が負担するのは、売却物件に住宅ローンが残っていた場合の「抵当権抹消登記」などの費用だ。
「抵当権抹消には登録免許税のほか、司法書士に支払う報酬が必要です。金額はケースバイケースですが、税額も含めて2万~3万円程度が一般的でしょう」と、不動産売買に詳しいフリーダムリンクの久谷真理子さんは教えてくれた。
そのほかにかかる費用もある
必要に応じて処分費や解体費がかかる
このほか、売却時には必要に応じてかかる以下のような費用もある。金額は一律ではないが、一般的なケースでの目安額も示しておこう。
- 廃棄物の処分費……………10万円~50万円程度
- 敷地の測量費………………50万円~80万円程度
- 建物の解体費………………100万円~300万円程度
- ハウスクリーニング費……5万円~15万円程度
これらの費用は仲介会社に依頼すれば概算を教えてくれて、専門会社も紹介してくれるだろう。あるいは自分で探して依頼したほうが安く済むケースもあるので、インターネットなどで検索して直接連絡してもいい。ただし、注意すべき点もあるという。
「解体業者を比較するときは見積額だけでなく、作業内容についても確認を。また、近隣への配慮も忘れないようにしましょう」(久谷さん)
仮住まいする場合は引越し費用が2回分
引越し費用も同様に、インターネットを使って自分で数社に見積もりをとってもいい。なお、買い替えの場合で旧居を売却してから新居に入居するまで仮住まいが必要になるケースでは、「旧居から仮住まい先まで」と「仮住まい先から新居まで」の2回分の引越し費用がかかるので準備しておこう。
●お話を伺った方
フリーダムリンク・久谷真理子さん
相続・不動産のコンサルティングを手がけるフリーダムリンク所属。資金面を中心とした不動産に関する執筆やセミナーなどで活躍中。ファイナンシャル・プランナー CFP(R)認定者
●監修
税理士法人タクトコンサルティング
構成・取材・文/大森広司
不動産売却マニュアル
- 6-1. 不動産売却のダンドリ・流れを知ろう
- 不動産売却の流れとは。売り出す前に知っておきたいポイントを解説
- 不動産売却の「売り時」とは。相場、シーズン、税制などポイント解説
- 不動産売却の「相場」の調べ方。インターネットで調べるときの注意点
- 不動産査定とは。査定方法、査定額に差が出る理由などを解説
- 売り出し価格の決め方。査定額、相場、ローン残債などのポイントを解説
- 6-2. 売却依頼をする会社の選び方
- 不動産売却を依頼する会社の選び方。査定依頼のコツや仲介手数料などを解説
- 不動産売却を依頼する会社の選び方。中小と大手のメリットデメリットなど
- 不動産売却の媒介契約の種類とは。一般媒介、専属媒介、専属専任媒介の違い
- 不動産売却の仲介手数料とは。上限額、割引、支払う時期などポイント解説
- 6-3. 売却活動のコツを知ろう
- 売却活動の流れとは?広告活動、内見対応、買主との交渉などポイント解説
- スムーズに不動産を売るコツ。内見前の準備、各種の交渉、値引きのタイミングなど
- 値引き交渉(指し値)への対応。売り出し価格や引き渡し条件などポイント解説
- 不動産売却時のホームステージングとは。効果や依頼の流れなどを解説
- 6-4. 売買契約の流れと注意点
- 重要事項説明書とは。売主が知っておきたい説明事項をポイント解説
- 不動産売買契約書とは。売主が知っておきたい説明事項をポイント解説
- 不動産売買の手付金とは。金額の目安や手付解除などポイント解説
- 不動産売却時の契約不適合責任とは。期間、保証サービスなどポイント解説
- 物件引き渡しの手続きや必要書類。抵当権抹消や所有権移転登記も解説
- 6-5. 不動産売却にかかる税金
- 不動産売却にかかる税金と節税ポイント。3000万円特別控除をポイント解説
- 不動産売却時の譲渡費用とは。譲渡所得の計算方法をポイント解説
- 不動産売却後の確定申告の流れ。申請時期や必要書類、手続きを解説
- 相続した家の売却にかかる税金の計算方法。相続税との関連も解説
- 相続した家の売却にかかる税金と控除。3000万円の特別控除などポイント解説
- 不動産売却にかかる譲渡所得税とは。計算方法と所有期間による軽減税率など
- 不動産売却の取得費とは。計算方法を解説
- 不動産売却で損をした時に使える税金の特例。譲渡損失の繰越控除を解説
- 不動産売却にかかる諸費用とは。仲介手数料、印紙税、登記費用など解説
- 6-6. 買いかえのポイント
- 家の買い替えタイミング。売り先行・買い先行それぞれのポイントと注意点
- 買い替えの決済・引き渡しの注意点。購入・売却のタイミングを合わせるコツ
- 買換え特例とは。制度の内容や利用できる要件をポイント解説
住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う
資産税コンサルティングの草分けとして、長年にわたり、個人の相続・譲渡や贈与など、法人の事業承継、組織再編、M&Aなど、個人・法人の資産税に関わるコンサルティングを手がけている。