買主と不動産の売買契約が成立したら、あとは物件を引き渡すばかり。だが、契約から引き渡しまでは、業者任せにできず売主が自分ですべきことも多い。どんなダンドリが必要なのか確認しておこう。
引き渡しまでには3つの手続きが必要
登記の準備、物件の確認、退去・解体を済ませておく
契約から引き渡しまでに必要なことは、主に以下の3つだ。
●登記の準備
土地・建物に設定されている抵当権を抹消し、買主に所有権を移転するために必要な手続き
●物件の確認
引き渡す物件が契約の条件どおりか。特に土地・一戸建ての場合は境界の確認が重要
●退去・解体
建物付きの場合はそこから引越し、不要な荷物を撤去。更地で引き渡す場合は建物の解体などが必要
抵当権の抹消と所有権の移転を登記する
引き渡しに必要な手続きを項目ごとにみていこう。まずは登記手続きからだ。
住宅ローンの抵当権を抹消する
住宅ローンを借りている自宅を引き渡す場合など、金融機関の抵当権が設定されている場合は抹消しなければならない。そのためには住宅ローンを完済して金融機関から必要な書類を受け取り、司法書士に依頼して抵当権の抹消手続をする必要がある。買主から購入代金を受け取ると同時に手続きするのが通常だ。
所有権の移転登記を行う
売主から買主に所有権を移転するための登記手続きも、通常は抵当権の抹消手続と同時に行われる。買主がローンを利用して購入する場合、買主に所有権が移った物件に金融機関が新たに抵当権を設定して融資を実行し、そのお金で購入代金を支払う必要があるからだ。この場合の登記手続きは、買主がローンを借りる金融機関が指定する司法書士が行う場合が多い。
当事者が立ち会って物件の状態や境界を確認する
建物や設備の状態を現地でチェック
物件の形状や間取り、広さなどが契約内容と同一かどうか、売主と買主、不動産会社が立ち会って現地で確認する。付帯設備の有無や状態が契約書に添付された一覧表どおりか、不具合や瑕疵(欠陥)などがないかをチェックする。
隣地所有者立ち会いで境界を確定させる
土地や一戸建ての場合は境界の確認が欠かせない。売主と不動産会社が現地で確認するが、その際に隣地の所有者にも立ち会ってもらうことが重要だ。境界があいまいだったり、越境などのトラブルがあると最悪の場合は引き渡しができず、債務不履行で損害賠償を請求されることにもなりかねないので注意しよう。必要に応じて土地家屋調査士に測量を依頼することもある。
物件を引き渡せる状態にする
自分が引越すか、借家人に退去してもらう
自宅を売却する場合は、建物から引越して不要なものを撤去し、買主に引き渡せる状態にする必要がある。自分が引越すだけならさほど問題はないが、人に貸している物件の場合は賃借人付きで売るオーナーチェンジの場合の除き、賃借人に退去してもらう必要があるので早めの準備が重要だ。
建物を解体して更地にする
建物の立っている土地を更地で引き渡す場合は、解体も必要だ。解体には費用と時間がかかるので、引き渡しまでに間に合うよう手配しよう。不動産会社に頼めば手配してくれる場合が多い。売主と買主のどちらが費用負担するかの確認も必要だ(詳しくは「購入希望者との賢い交渉の仕方とは?」参照)。
固定資産税や管理費の精算が必要
このほか、固定資産税や都市計画税、マンションの場合は管理費などの精算が必要になる。引き渡し日までは売主、それ以降は買主の負担となるよう、日割りで計算すればよい。
平日の日中に当事者が集まって手続きする
買主がローンを借りる金融機関で行う
実際の引き渡し手続きは、買主が住宅ローンを借りる銀行に売主と買主、双方が媒介契約を結んだ不動産会社(両手取引の場合は1社のみ)、司法書士が集まって行われる、金融機関は平日の日中しか営業していないケースがほとんどなので、会社員の場合は勤務先を休む必要があるので注意しよう。手順は以下のとおりだ。
(1)買主側の金融機関が買主にローンを実行
(2)買主から売主(の口座)に購入代金を振り込み、売主のローンを完済
(3)売主側の金融機関が抵当権抹消書類を司法書士に交付
(4)司法書士が登記所で所有権の移転と抵当権の設定登記を手続き
(5)固定資産税や管理費の精算
(6)売主から買主に必要書類・鍵の引き渡し
(7)仲介手数料(通常は半額)の支払い
買主の住宅ローン実行に合わせて日程を調整する
「引き渡しがいつ行われるかは、買主が借りる住宅ローンがいつ実行できるかに左右されるので、仲介会社の担当者と連絡をとりあって日程を調整する必要があります。売主側の金融機関からの抵当権抹消書類の受け取りは、以前は売主も立ち会っていましたが、今は司法書士だけが赴くケースが一般的です」と教えてくれたのは、売買の実情に詳しいフリーダムリンクの永田博宣さんだ。
必要な書類などは早めに手配する
なお、引き渡し手続きに必要な書類などは以下のとおりなので、スムーズなダンドリのためにも早めに手配しておこう。
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住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う