不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

不動産売却の「売り時」とは。相場、シーズン、税制などポイント解説/不動産売却マニュアル#2

不動産売却の「売り時」とは。相場、シーズン、税制などポイント解説/不動産売却マニュアル#2

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マンションや土地、戸建てなどの不動産を売却するときは、まず初めに売り出しのタイミングについて考える必要がある。タイミングの良し悪しが売却価格に影響を与えることもあるからだ。ではタイミングをどのような観点から見計らえばいいのか。

不動産相場の動きからタイミングを計る

相場が安いときに買って高いときに売るのが理想

まず相場の観点から売却のタイミングを考えてみよう。金銭的に考えておトクな売却とは、価格が安い時期に買ったものを高い時期に売ることだ。

不動産の相場には波があると言われる。過去十数年間を振り返ると、2007年から2008年にかけては相場が上昇傾向だったが、2008年9月のリーマンショックを機に大幅な下落に転じた。その後は2011年の東日本大震災を経て相場の下落傾向が続いたが、アベノミクスが始まった2013年以降は上昇に転じている。

こうしてみると、リーマンショックの前の価格が低めだった2000年代前半に不動産を買った人や、相場が下がり切った2010年代前半に買った人は、2013年以降の上昇相場のタイミングで売ればトクすることが期待できるだろう。

相場の変わり目を見極めるのはプロでも難しい

さらに理想を言えば、相場が底を打ったときに買って、ピークに達したときに売るのが最もおトクといえる。だが、いつ相場が変わり目を迎えるかを見極めることは、不動産のプロでも難しい。なぜなら不動産の相場は細かい上下動を繰り返しながら大きな波を形成するからだ。

相場が下落傾向の時期に少し価格が上がったからといって慌てて買うと、その後にさらに大きく下がらないとも限らない。同じように、上昇気味の相場が多少下がったとしても、直後に回復して上昇が続く場合もあるだろう。

買ったときより相場が上がっていれば「売りどき」

だが、少なくとも「今売れば、買ったときより高く売れるか、安くしか売れないか」はある程度は判断できるはずだ。もし買ったときより高く売れるのであれば、売却のタイミングとして悪くない、つまり「売りどき」だといえる。

もちろん、不動産の価格は建物の築年数にも左右されることも知っておきたい。詳しくは「不動産売却の相場の調べ方」を参照してほしい。

季節による売りやすさの違いに着目する

年度末の1~3月が最も売りやすいシーズン

不動産売却のタイミングを考える際には、季節による売りやすさの違いにも着目する必要がある。日本では年度の変わり目が4月なので、新学期や新年度が始まる4月までに引越しを検討する人が多い。つまり、新年度の少し前の1月から3月に住宅を買う人が多いので、この時期なら不動産の売却がしやすいのだ。

同じような現象は、規模は小さくなるものの秋の移動シーズンにも見られる。

買い替えのタイミングに合わせる

建物の完成にあわせて売却

とはいえ、必ずしも移動シーズンに合わせて売却できるとは限らない。「自分が住む住宅を買い替える場合、買い替え先の物件のスケジュールに合わせる必要があります。例えば未完成の新築マンションに買い替える場合や、土地を買って家を建てる場合は、建物の完成時期に合わせて売却することで、仮住まいや二重ローンなどの負担を軽減することができるでしょう」(フリーダムリンク・永田博宣さん)

大規模マンションの引き渡し前の時期は要注意

また、特定の時期に限られたエリアで売却が集中すると、相場に影響が出る場合もあるので注意が必要だ。例えば新築マンションは3月末に引き渡されるケースが多く、その物件に買い替える人たちが引き渡しにあわせていっせいに売却を開始することがある。

すると似たような広さや築年数の中古物件が数多く売りに出され、周辺の相場が下がり気味になることもあり得る。特に相場が下落気味の時期に大規模なマンションが分譲されると、周辺の中古相場が値崩れするケースがあるので、その場合はあえて早めに売りに出すなどの戦略も必要になるだろう。

税制との関連も売却のタイミングに影響する

所有期間5年以下で売却すると税率が重くなる

売却に適したタイミングは、税制との関連も影響してくる。不動産を売却して手に入れた利益を「譲渡所得」というが、この譲渡所得には所得税(復興特別所得税を含む)や住民税が課税される。この税金を計算するときの税率が、売却した不動産を所有していた期間によって変わるのだ。具体的な税率は以下のとおりになっている。

所有期間による譲渡所得の税率の違い

上の表から分かるように、所有期間が短いほど税率が高くなるので注意が必要だ。また所有期間は「売却した年の1月1日時点」でカウントされる点も気を付けたい。買ってから5年経ったからといってその年のうちにすぐに売るのではなく、年をまたいで翌年になってから売らないと、短期譲渡と見なされて重い税金がかかってしまうのだ。詳しくは「不動産売却にかかる税金」を参照してほしい。

各種の特例にも所有期間の要件がある

同様に、自宅(居住用財産)を売却した場合に譲渡所得への課税が軽減される各種特例があるが、それらの特例にも所有期間に要件が付く場合がある。これらの特例を受けたいのであれば、所有期間の要件を満たしてから売却するようにしたい。(詳細は「不動産売却で、節税できるポイント」「売って損したときに利用できる税金の特例」を参照)

■居住用財産の各種特例を受けるための所有期間の要件
特例 所有期間
3000万円特別控除 問われない
買い換え特例 10年超
譲渡損失の繰越控除 5年超

このように不動産を売却するときには、相場や季節、税制などの要因に気を配りつつ、最適なタイミングで売りに出すようにしたいものだ。

 

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不動産売却マニュアル

●構成・取材・文/大森広司
住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う
●お話を伺った方 フリーダムリンク・永田博宣さん 相続・不動産のコンサルティングを手がけるフリーダムリンク代表取締役。不動産の売主をサポートする「不動産適正売却研究所」を主宰。ファイナンシャル・プランナー CFP(R)認定者
●監修/税理士法人タクトコンサルティング
資産税コンサルティングの草分けとして、長年にわたり、個人の相続・譲渡や贈与など、法人の事業承継、組織再編、M&Aなど、個人・法人の資産税に関わるコンサルティングを手がけている。
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