不動産会社に価格を査定してもらったら、いよいよ価格を決めて、自分のマンションや土地、戸建の不動産を売り出すことになる。ここで肝心なのは、売り出し価格をどのように決めればいいかということだ。
査定価格と売り出し価格は同じではない
複数の不動産会社に査定を依頼して相場観を養う
不動産会社による査定価格は、その不動産会社が「この価格なら売れる」とはじき出した価格だ。とはいえ、不動産会社によって査定価格が異なることは珍しくない。さらに不動産会社の思惑によって、査定価格を高めに提示したり、逆に低めの価格を出してきたりすることもある。
そこで重要になるのは、複数の業者に査定を依頼することだ。不動産会社が提示する価格やその根拠を何回か聞けば、その価格が高めなのか、それとも低めなのかがある程度分かるようになるだろう。自分なりに、「このくらいの価格なら確実に売れそうだ」という相場観が養えればしめたものだ。
売主の希望価格も考慮する余地はある
いくらくらいで売れそうかが見えてきたからといって、必ずしもその価格で売りに出さなければいけないわけではない。「このくらいの価格で売りたい」と希望する金額を、考慮する余地はあるのだ。とはいえ、最終的な売却価格は売主と買主との交渉によって決まる。
「特に中古の一戸建ての場合、売主の思い入れが強いケースも見られます。眺望がすばらしいとか、内装にこだわったとか、良い部材を使って建てたといった具合です。ところが建物についての売主の思い入れは、価格に反映されにくいのが現実です。それどころか十分に使えると思われる建物でも、売却後に取り壊されるケースもあります」
そう話してくれたのは、フリーダムリンクの永田博宣さんだ。自分が住んでいた住宅の場合は思い入れが強くなるのも無理はないが、ここは客観的に価格を見極める冷静さが求められる。
どのくらいの金額でいつまでに売ればいいかを考える
住宅ローンを完済し、費用を払っても手元に資金が残るか
資金計画も確認したい。例えば自宅を売って買い替えるのであれば、買い替え先の住宅を買うのに必要な頭金の一部を、売却によって確保したいと考えるのが普通だろう。その場合、もし今の自宅に住宅ローンが残っているのであれば、住宅ローンの残高を完済して仲介手数料などの売却費用を支払ったうえで、ある程度の金額が残るようにする必要がある。つまり、以下のような計算式だ。
希望価格 ≧ 住宅ローン残高 + 売却費用 + 買い替え先の住宅の頭金(の一部)
売却の期限や相場の動きも考慮する必要がある
不動産を売却するのに適したタイミングを計るには、主に以下の方法がある。不動産相場の動きから判断する方法、年間の人の移動シーズンから判断する方法、自分の買い替えなどの時期から判断する方法、それに税制の特例期限から判断する方法などだ。
売却するときの相場を調べる
金額だけでなく、売却期限についても考える必要がある。「いつまでに売りたいのか」によっても、売り出し価格をどのくらいに設定するかが左右されるからだ。期限に余裕があるのなら、当初は高めの価格で売り出して様子を見る方法もあり得るだろう。だが、買い替えなどで期限に余裕のない場合はそうとも言っていられない。
「『最初は高めに売り出して、1カ月たっても売れない場合は価格を見直しましょう』と提案してくる不動産会社が多いようです。相場が上昇している時期なら、高めに売り出して様子を見る戦略も検討できるでしょう。ただ、相場が下がり気味の時期は価格を見直すタイミングを短くしたほうが得策です」(永田さん)
売り出し価格の決定は売主の事情や希望だけで決められるものではない。不動産会社とよく相談して、「いつまでに売れなかったら価格をどの程度見直せばよいか」といった見通しも立てながら決めるようにしたいものだ。
不動産売却マニュアル
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住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う