不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

【基礎からわかる】不動産査定の流れや費用、相場の計算方法

【基礎からわかる】不動産査定の流れや費用、相場の計算方法

家を売るために、まず必要なのが「不動産査定」です。不動産査定を受けることで、物件の売却価格の目安や、売るための戦略が立てられるようになります。では、不動産査定はどう行なうのが適切なのか。

この記事では、不動産査定の流れや費用、査定価格の計算方法や相場の調べ方、無料の査定方法、大切な住まいを高く売るためのコツなどについて、わかりやすく解説します。

記事の目次

今すぐ家を売りたいと考える方はまずは、上記の「査定依頼スタート」から査定を行なってみましょう。複数の不動産会社による査定結果を比較することで、所有する不動産のおおよその査定価格が見えてきます。

不動産査定の基礎知識

不動産査定のイメージ

(画像/PIXTA)

不動産査定を初めて行なう方は、まず不動産査定とは何か、不動産査定の種類にはどのようなものがあるか、について知っておくことが重要です。不動産査定を行なう前に基礎知識を身に付けておけば、自身の売却ニーズに合わせた適切な査定方法を選択できるようになります。

不動産査定とは

不動産査定とは、ある不動産の市場価値を不動産会社や専門家が算出することを指し、土地や建物、マンションやアパート、倉庫や事務所などの不動産を売却する際に行なわれるのが一般的です。

不動産査定では、物件の状態や広さ、設備や立地条件、周辺環境、市場動向、競合物件などのさまざまな要素が考慮されます。実際に不動産の訪問査定を行なう際には、不動産業者の査定を行なう担当者が、依頼主から不動産の状態に関してヒアリングを行ないます。

適正な査定価格を算出するためには、不動産の状態や売却のタイミングについて正確に伝えることが大切です。

不動産査定額は不動産鑑定額と違い、国土交通省の明確な評価基準をもとにした算出ではなく、その時々の不動産市場価格を参考に算出します。そのため、「需要が高い不動産かどうか」といった要素が査定額に影響します。

不動産査定の種類

不動産査定の方法には、面積や築年数など簡単なデータだけで求める「簡易査定(机上査定)」と、不動産会社が現地を調査して行なう「訪問査定(詳細査定)」の2種類があります。

実際に不動産査定をしてもらう場合は、まず複数の不動産会社に簡易査定を依頼し、そのなかから対応の良かった不動産会社を選んで訪問査定を依頼する手順が一般的です。

さらに訪問査定の結果、納得のいく不動産査定をしてくれた不動産会社を選んで媒介契約を結び、不動産を売り出すことになります。

売却査定する

不動産の査定価格がすぐにわかる「簡易査定(机上査定)」

不動産査定の方法には2種類あります。その一つが「簡易査定」です。

簡易査定とは、不動産の住所や土地・建物の面積、建物の築年数、マンションの場合は階数やバルコニーの向きなどの物件データをもとに売却価格を査定する方法のこと。簡易査定は土地やマンションのデータだけで売却査定をするので、「机上査定」とも呼ばれます。

簡易査定の依頼は、不動産一括査定サイトなどのWebサイトや電話などで行なうのが一般的です。不動産に関するデータを入力したり伝えたりするだけで査定価格がわかるので、手軽で便利といえます。

簡易査定から訪問査定までのイメージ

ただし簡易査定は実際の不動産を見るわけではなく、限られたデータだけで判断するので、精度の高さには限界があります。また不動産査定をする不動産会社によって査定価格にもバラつきが出やすいので、複数の不動産会社に査定を依頼することが大切です。1社にだけ簡易査定を依頼すると、提示された査定額が適切なものかどうか比較検討することができません。

簡易査定で提示された複数の不動産会社による査定価格を見比べてみると、金額に多少のバラつきがあるかもしれませんが、ある程度の範囲内に収まっているケースが通常です。複数の不動産会社が提示した標準的な査定価格の価格帯が、その不動産のだいたいの価格相場だと考えてよいでしょう。

夫婦のイメージ

(画像/PIXTA)
売却査定する

現地で詳細に調べる「訪問査定(詳細査定)」

簡易査定でだいたいの価格相場がわかったら、次の段階として訪問査定の依頼に移ります。訪問査定とは、不動産会社が実際にその不動産のある現地を訪れ、さまざまな査定項目を実際にチェックする不動産査定の方法で、詳細査定とも呼ばれます。

不動産会社による査定項目は多岐にわたります。例えば土地の場合は、その土地が面している道路(前面道路)の幅や面している部分の長さ、隣の土地との境界標の有無、水道管やガス管の埋設状況、方位、日照の状況、土地の形状や擁壁の有無といった項目が挙げられます。

またマンションの場合は外壁やエントランス、外廊下など共用部分の清掃・管理の状況、 敷地内の植栽の手入れの状態、住戸のバルコニーからの日照や眺望、住宅設備の状態、建具の建て付け、室内の傷み具合、雨漏りやカビの有無などがチェックされます。

このように訪問査定では不動産会社がさまざまな項目を詳細に確認するので、査定結果が出るまでにはある程度の時間を要します。不動産会社にもよりますが、訪問査定から査定価格の提示までは1週間前後かかるのが通常です。

訪問査定では詳細な項目がチェックされますが、だからといってどの不動産会社でも同じ査定価格が提示されるわけではありません。どの項目を重視するかは不動産会社によって多少異なる場合がありますし、後ほど述べるように媒介契約を結んでもらうためにあえて高めの査定価格を提示するケースもあるからです。

訪問査定による査定価格が妥当かどうかを判断し、信頼できる不動産会社と媒介契約を結ぶためにも、訪問査定も複数の不動産会社に依頼することをおすすめします。

不動産査定のイメージ

(画像/PIXTA)
売却査定する

不動産査定は基本的に「無料」

不動産査定を行なう場合の費用はどうなるのでしょうか。一般的に不動産の売却時に不動産会社に依頼して行なう査定は、基本的に無料になっています。不動産会社が行なう査定がなぜ無料なのか。それは「査定を依頼する人=将来的に不動産売却を検討している人」に当たるため、自社に仲介や買い取りを依頼してくれる顧客になるかもしれないからです。

有料で行なわれる査定は「不動産鑑定士による査定」

ただし、有料で行なわれる不動産査定もあります。それは国家資格である不動産鑑定士による査定の場合。無料の査定に比べて、土地や建物の詳細な鑑定評価がわかります。費用はおよそ20万~30万円。この有料査定は、遺産相続の際や法人同士での不動産取引を行なう場合に利用されます。

匿名での査定は二度手間に?不動産査定の注意点

不動産査定を行なう際には匿名の査定は避けたほうがよいでしょう。名前や電話番号など個人情報を入れずに受けられる査定もありますが、しかしそもそも簡易査定の結果はおおよそのものでしかなく、あくまで参考程度にしかなりません。よって匿名での査定をしたあとに再度名前などを明かして査定を行なう形になり、二度手間になる可能性が高いでしょう。

「不動産査定書」でわかる、査定額や不動産会社の信頼性

不動産査定を受けたら、届いた査定書をしっかりチェックすることも必要です。査定書には「査定額」以外にも、比較対象となる「事例不動産の情報」「事例不動産との相対評価」「査定額の計算式」などが載っています。

この際に、査定額の根拠がしっかり明記されているかどうかが、信頼できる不動産会社か否かにもつながります。査定額に幅を持たせている場合も、その根拠となる理由がしっかり示されているかをチェックしましょう。

査定の根拠が明確でない場合には、のちの売却価格の決定や売買契約時に不動産会社と揉める要因になりかねないので注意が必要です。

売却査定する

不動産査定の流れは?

不動産査定の大まかな流れは、「一括査定サイトで複数の不動産会社に簡易査定を依頼」し、「対応の良かった不動産会社に訪問査定を依頼」して「訪問査定」を行ない、最後に「納得のいく査定をしてくれた不動産会社と媒介契約」を結びます。契約が完了したら「不動産の売出」を行ない、買い主を探して、条件に合う買い主が見つかれば売買契約を結び、不動産を売約する形になります。

一括査定サイトで不動産会社に簡易査定を依頼する

不動産査定の依頼イメージ

(画像/PIXTA)

まずは、不動産会社に簡易査定(机上査定)を依頼します。その際には、必ず複数の不動産会社に依頼しましょう。1社だけに査定依頼をすると、査定額が市場相場に沿っているかどうかが判断できず、不動産売却の適切なタイミングを把握できないためです。
なお、簡易査定をはさまずに最初から訪問査定を依頼することもできます。

訪問日時の確定

不動産とカレンダー

(画像/PIXTA)

複数の不動産会社に簡易査定を依頼し、各不動産会社が算出した不動産査定額の目安を知ったあとは、訪問査定を依頼します。

訪問査定では、不動産会社の担当者が現地に向かうため、スケジュール調整はもちろんのこと、当日のヒアリングに備えて不動産の情報をなるべく整理し、必要書類をそろえておくことが大切です。ヒアリングされる項目については、後述します。また、不動産査定が滞りなく行えるように、不動産内部の清掃や欠損部位の修理も前もって行なっておきましょう。

なお、簡易査定を依頼した不動産会社から訪問査定を依頼する不動産会社を選定する際は、下記のようなポイントをチェックすると信頼できる不動産会社を選べます。

チェックすべきポイント 内容
査定額の根拠 査定額やその根拠について、詳細に説明してくれるかどうかをチェックすることで信頼できる不動産会社を選べます。
経験と実績が豊富 不動産会社の経験や実績を担当者に確認しましょう。特に、自身が保有する不動産の種類や目的に応じた売却経験がある会社なら、スムーズな売却活動が期待できます。
対応が丁寧かつスピーディーか 不動産査定を依頼した際のやり取りが丁寧か、査定結果をわかりやすく迅速に提示してくれるかどうかを確認しましょう。簡易査定時の対応が丁寧であれば、その後の対応も丁寧であることが期待できます。
口コミや評判の有無 不動産会社の口コミや評判を調べると、信頼できる会社を選べます。インターネット上のレビューサイトやSNSなどを利用して、実際に利用した人の評価を確認しましょう。

訪問査定(現地査定)

不動産の訪問査定のイメージ

(画像/PIXTA)

不動産会社の担当者が訪問査定を行なう際は、以下のような事柄をヒアリングされるため、事前に情報をそろえておきましょう。

  • 不動産内部・外部の状態
  • 不動産の築年数
  • 建物の構造・土地の境界
  • 建物の付帯設備
  • 周辺環境
  • アクセス状況
  • 住環境としての不動産の状態
  • 住宅ローンなどの残債状況
  • リフォーム履歴

これらの情報は、より正確な不動産査定額の算出に必要な情報であるため、たとえマイナスになるような情報があったとしても、包み隠さず伝えることが重要です。

不動産の劣化状況や構造、周辺環境など不利な情報を隠したい気持ちがある人もいるかもしれません。しかし、「保有する不動産を高く売ってしまえばそれで良い」という考えでは、売却後にトラブルへと発展しかねないため、しっかりと実際の状態を伝えることが大切です。

不動産査定に必要な書類の確認

不動産査定の書類のイメージ

(画像/PIXTA)

不動産の簡易査定・訪問査定を受ける際には、以下の書類が必要になります。

不動産査定を受ける際に必要な書類 詳細
本人確認書類 免許証、パスポート、住民票など
登記済権利証または登記識別情報通知 土地・建物の所有権登記時に法務局から交付される書類
固定資産税(・都市計画税)納税通知書 市区町村から毎年送られてくる書類
公図、地積測量図、境界確認書など 隣接地との境界線を確認するために必要
建築確認済証や検査済証 建築基準法を守って建てられた建物であることを証明する書類
売買契約書や重要事項説明書 面積など物件情報の確認に必要

これらの書類は、忘れずに準備しておきましょう。

封筒に入った書類のイメージ

(画像/PIXTA)

訪問査定を終えてから1~2週間ほどで、不動産査定額と査定の根拠などが記載された「不動産査定書」をもらうことができます。不動産査定書には以下のような内容が記載され、このあとどういった形で売却へと進むべきかに関する情報が整理されています。

  • 査定した不動産の情報
  • 査定額
  • 査定の根拠(過去の取引事例なども含む)
  • 売り出し価格の提案
  • 担当者からのコメント

複数の不動産会社で同様のステップを繰り返し、どの会社と媒介契約を結ぶかを検討しましょう。

不動産査定での査定価格はどうやって決まる?査定方法と査定額シミュレーション

不動産査定を依頼すると、不動産会社は物件のデータに基づいて査定価格を算出します。どのように査定価格を計算するのでしょうか。査定価格が決まるまでの考え方と、査定を計算して決めるための「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」という3つの方法について見ていきましょう。

マンションや土地の売買に使用される「取引事例比較法」

取引事例比較法とは、物件の周辺で直近に取引された類似事例の売却価格と比較する方法です。近所で似たような物件の取引事例があれば、査定する物件も同じような価格で売れるだろうというのが、計算の発想となっています。

「似たような物件」というのは、立地や築年数、広さ、間取りなどの条件が似ている物件のことです。例えば立地であれば物件から近い場所にあったり、同じ最寄り駅からの徒歩分数が同程度だったりする物件が対象になります。ただ、どのくらいの距離や分数までを対象にするかは不動産会社の判断や実際の取引事例の有無によって異なります。

同様に、築年数や面積、間取り、取引された時期なども、どの範囲までを「似たような物件」に含めるかはケースバイケースです。

では具体的な計算例を見てみましょう。下の表は専有面積66m2のマンション(査定物件)を査定するケースです。

広さのほか、立地や築年数などが似ている取引事例の物件A~Cについて、まずはそれぞれ「取引価格÷専有面積」によりm2単価を算出します。

次に、それぞれのm2単価を合計して3で割り、平均m2単価を求めます。ここでは72.3万円/m2(1,000円未満四捨五入、以下同)となりました。

さらに、平均m2単価に査定物件の専有面積をかけて査定価格を計算します。その結果、査定価格は4772万円(万円未満四捨五入、以下同)となりました。

取引事例比較法による不動産査定価格の計算例(マンションの例)

【取引事例の物件】
・物件A 取引価格4500万円 専有面積60m2 75万円/m2
・物件B 取引価格4900万円 専有面積70m2 70万円/m2
・物件C 取引価格4680万円 専有面積65m2 72万円/m2

【査定物件】
専有面積66m2

物件A、B、Cの平均m2単価を計算
平均m2単価:{(A)75万円/m2+(B)70万円/m2+(C)72万円/m2}÷3=72.3万円/m2

平均m2単価に査定物件の専有面積をかけて、査定価格を計算

査定価格:72.3万円/m2×66m2=4,772万円

おもに戸建てに使用される「原価法」

原価法とは、建物を新築で建てた場合の建築費(「再調達価格」と呼ぶ)を求め、そこから築年数による減価分を差し引く「減価修正」により建物価格を査定する方法です。

求めた建物価格に土地価格をプラスして査定価格を算出するもので、おもに一戸建ての不動産査定を想定しています。

原価法による不動産査定は、以下の計算式で行なわれます。

【原価法の計算式】
査定価格=再調達価格(m2単価)× 延床面積 × 減価修正(残法定耐用年数 ÷ 法定耐用年数)

ここで再調達価格と法定耐用年数は、建物の構造により以下のような数値となっています。一戸建ては木造が多く、マンションの住戸はRC造(鉄筋コンクリート造)が一般的です。法定耐用年数は文字どおり法律で定められていますが、再調達価格は目安なので下の数値と異なる場合もあります。

再調達価格の目安と法定耐用年数
構造 再調達価格(m2単価) 法定耐用年数
木造 12万~15万円/m2 22年
軽量鉄骨造 12万~15万円/m2 19年または27年
重量鉄骨造 15万~18万円/m2 34年
RC造 18万~20万円/m2 47年

原価法による具体的な計算例を見ていきましょう。 査定する物件は築15年の木造一戸建てで延床面積120m2、土地価格は3,000万円とします。

まず木造の建物の再調達単価を15万円/m2とすると、新築時の再調達価格は1,800万円。
これに耐用年数から割り出した減価修正「(22年 - 15年)÷ 22年」をかけると、査定物件の建物価格は573万円と算出されました。

最後に建物価格と土地価格を合計すると、査定価格は3,573万円となります。

【原価法による不動産査定価格の計算例(木造一戸建ての例)】

査定物件:延床面積120m2、築15年、土地価格3,000万円

建物価格を計算
建物価格:再調達価格(15万円/m2)× 延床面積(120m2)× 減価修正(7年 ÷ 22年)=573万円

建物価格と土地価格を合計して査定価格を計算

査定価格:573万円 + 3,000万円 = 3,573万円

投資用不動産の査定に用いられる「収益還元法」

収益還元法とは、物件から得られる家賃収入によって査定価格を算出する方法で、おもに投資用不動産に用いられる査定方法です。収益還元法にはさらに「直接還元法」と「DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法」の2種類があります。

収益還元法は、年間の家賃収入から管理費や修繕費などの経費を差し引いた純利益を「還元利回り」と呼ばれる数値で割って計算する方法です。計算方法が簡易なため、一般的に広く利用されています。

一方のDCF法は、一定期間後に物件を売却することを前提に、期間中の家賃収入(純収益)と将来の売却価格をともに現在価値に割り引いて算出する方法です。DCF法はより精緻な査定価格の計算方法といえますが、計算式が複雑になり、金融機関が融資の際に不動産を評価するために利用するケースが一般的です。

では収益還元法の計算方法について、直接還元法を用いて説明しましょう。収益還元法による査定価格は以下の計算式で求められます。

【収益還元法(直接還元法)の計算式】
査定価格 =(年間家賃収入 - 年間経費)÷ 還元利回り

「年間家賃収入」は文字通り、月額家賃の12ヶ月分です。また「年間経費」は管理費や修繕費の合計で、築年数が古くなるほど修繕費などが高くなるのが通常です。実際にかかる経費がわかればその金額を使いますが、一般的には年間家賃収入の20~30%として計算します。

そして「還元利回り」は不動産によって得られる投資利回りのことで、キャップレートとも呼ばれます。還元利回りはエリアごとに相場があるため、周辺の似たような条件の物件を参考に設定します。その際、築年数や駅からの距離などの条件による調整が必要です。

では、直接還元法による不動産査定価格の計算例を見ていきましょう。

査定物件の年間家賃収入が280万円、年間経費が60万円、還元利回りが4%とすると、年間家賃収入から年間経費を引いた純収益は220万円です。

この純収益を還元利回り4%(0.04)で割ると、査定価格は5,500万円になります

【直接還元法による不動産査定価格の計算例】
査定物件:年間家賃収入280万円、年間経費60万円、還元利回り4%

直接還元法により査定価格を計算
査定価格:(280万円 - 60万円)÷ 4%(0.04)=5,500万円

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売却価格の適性相場を自分で調べる方法

ここまで、不動産の売却価格の確認について、不動産会社に査定依頼する方法を紹介してきましたが、個人で不動産売却価格の適正相場を知りたいと考えている方もいることでしょう。個人で不動産売却価格の適正相場を知りたい場合は、以下の方法で知ることができます。

レインズ(REINS/不動産流通機構)

レインズ(REINS/不動産流通機構)とは、不動産流通機構が国土交通大臣の指定により運営している、不動産情報をまとめたネットワークシステムです。

不動産を売りたい人と買いたい人がスムーズに不動産取引を行なえるよう、不動産の市況データや戸建て・マンションの成約価格、在庫価格などを一般に公開しています。これらのデータを活用すれば、自身が保有する不動産を売却する場合の適正相場を把握できます。

なおレインズは、北海道から首都圏までを管理する東日本レインズ、中部圏を管理する中部レインズ、近畿地方を管理する近畿レインズ、中国地方から沖縄県までを管理する西日本レインズに分かれています。自身の保有する不動産が位置する地域の統計データを確認しましょう。

国土交通省の不動産取引価格情報検索

国土交通省が運営する「土地総合情報システム」でも、不動産を売却する際の適性相場を確認できます。

不動産取引価格情報検索の地図上から、保有する不動産が位置する都道府県を選択すると、地図上に実際に行なわれた不動産取引の期間や件数が表示され、その取引価格を調べることが可能です。このシステムを活用すれば、周辺地域の取引価格情報を参考に適性相場を探れます。

なお、不動産取引価格情報検索では、住宅地だけでなく商業施設などの取引価格情報も表示されます。自宅の売却を検討している場合は、間違って住宅以外の不動産取引を参考にしないよう注意しましょう。取引時期を調整すると、検索結果を変えられます。

不動産情報サイトの売却価格相場ページ

不動産情報サイトの売却価格相場ページでも、売却したい不動産がある地域の売却価格相場や、売出物件などを調べることで、自身の不動産の適正相場を調べられます。

例えばSUUMOでは、売却価格相場をエリアごとに「土地面積」「建物面積」「築年数」「駅徒歩」といった項目とかけ合わせて表示できるため、「どの価格帯の不動産が多いか」といった情報も知ることが可能です。また、各エリアの売却価格相場の推移も1ヵ月ごとに確認できます。

自身が保有する不動産の種類に応じて、以下から売却相場を調べてみてください。

【一戸建ての売却相場】

【マンションの売却相場】

【土地の売却相場】

また、売却する不動産の競合物件となりうる、近隣の売り出し物件情報も確認しておくといいでしょう。自分の物件と築年数・広さなどが近い条件がいくらくらいで売り出されているかを知っておくことで、相場を推察することができます。

不動産をより高く査定してもらうためのポイント

不動産を売却する立場としては、なるべく高く売りたいと考えるのは当然です。高く売るにはまず、入口となる査定価格を不動産会社に高く出してもらう必要があります。そのために必要な4つのポイントを解説しましょう。

不動産をより高く査定してもらうためのポイント

ポイント1.不動産査定に必要な書類を準備

不動産を高く査定してもらうということは「適正な価格で査定してもらう」ことでもあります。不動産の「実力」に見合わない高額な査定価格を提示されても、その価格で実際に売却できなければ意味がありません。不動産の実力を適正に査定してもらうためには、まず必要な書類をそろえることがポイントになります。

不動産査定に必要な書類とは、主に以下の書類です。

【不動産査定を受けるときに必要な主な書類】

本人確認書類:
免許証、パスポート、住民票など

登記済権利証または登記識別情報通知:
土地・建物の所有権登記時に法務局から交付される書類

固定資産税(・都市計画税)納税通知書:
市区町村から毎年送られてくる書類

公図、地積測量図、境界確認書など:
隣接地との境界線を確認するために必要

建築確認済証や検査済証:
建築基準法を守って建てられた建物であることを証明する書類

売買契約書や重要事項説明書:
面積など物件情報の確認に必要

本人確認書類

本人確認としては免許証やパスポート、マイナンバーカードなどが使用できます。もしいずれも手元にない場合は、住民票でもかまいません。なお、不動産が親子や夫婦など複数の人による共有になっている場合は、共有者全員の本人確認書類を準備しましょう。

登記済権利証または登記識別情報通知

登記済権利証とは土地・建物に所有権を登記したとき、つまりその不動産を購入したときに法務局から交付される書類で「権利証」とも呼ばれるものです。2005年以降に取得した不動産の場合は、登記済権利証ではなく登記識別情報通知という書類が交付されています。

登記済権利証も登記識別情報通知も再発行はしてもらえないので、大切に保管しておきましょう。

固定資産税(・都市計画税)納税通知書

不動産を所有していると毎年、市区町村から送られてくるのが固定資産税(・都市計画税)納税通知書です。売却した年分の固定資産税や都市計画税(地域によっては固定資産税のみ)は、売り主と買い主とで按分して精算するため、納税額の確認のために必要になります。

また通知書に記載されている固定資産税評価額は、そのほかの税額を計算する基準にもなるので、重要な情報といえるものです。

公図、地積測量図、境界確認書など

一戸建てや土地の売却では、土地の面積や隣接地との境界線の確定が重要となります。それらを確認する書類が、公図や地積測量図です。公図は不動産の取得時に売り主から受け取るケースが多いのですが、情報が古く現況に合致していないケースも少なくありません。

そこでより正確な情報を知ることができるのが地積測量図や境界確認書ですが、手元にない場合は隣接地の土地所有者と協議のうえ、作成することも可能です。

建築確認済証や検査済証

建築確認済証や検査済証は、建物が建築基準法を守って建てられたことを証明する書類です。この書類がないと住宅ローンを借りる際にも支障が出る場合があるので、こちらも紛失しないよう注意しましょう。

売買契約書や重要事項説明書

不動産を購入したときの売買契約書・重要事項説明書は、物件の情報を知るための重要な書類です。特にマンションの場合は、広告などに記載する専有面積(壁芯面積)を確認するために必要になるので、不動産査定を受けるときに用意しておきましょう。

ポイント2.物件の見栄えを良くする

物件を高く売るには、部屋を片付けて清掃するなど、少しでも見栄えを良くすることが望まれます。ただし、これは一般人である買い主に対して必要なことであり、不動産査定を依頼する不動産会社に対しては見栄えを気にする必要はありません

とはいえ、見栄えが買い主の印象に影響することは事実であるため、不動産会社も見栄えを良くすることを前提に不動産査定をするはずです。

不動産査定をしてもらう時点では現状のままでかまいませんが、高く査定してもらうために片付けるべき場所や清掃のポイントなどがあれば教えてもらうようにしましょう

清掃のポイントを不動産会社の担当者に聞いてみよう

なお、売却時に物件をリフォームすべきかどうかという問題がありますが、基本的にはリフォームは不要です。というのも、大きな金額をかけてリフォームしたとしても、その分を売却価格に上乗せできるとは限らないからです。

最近は中古住宅の購入と同時にリフォームをするケースが増えているので、リフォームするかどうかの判断は買い主に任せたほうが賢明でしょう。

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ポイント3.物件の不具合を確認する

不動産査定の前に実施したいのが、住宅設備の故障やドアの建て付けの悪さ、壁紙のはがれなどを確認しておくことです。こうした不具合は売却価格が下がる要因になる可能性が高く、査定価格にも影響します。
ただし修繕した分を査定価格に上乗せできるとは限らないので、修繕しないまま売却するという選択肢もあります。その場合はどこに不具合があるかを明らかにしたうえで査定を受け、契約した不動産仲介会社に相談するとよいでしょう。
なお、雨漏りやシロアリといった重大な不具合は「瑕疵(かし)」と呼ばれ、特に注意が必要です。瑕疵に気が付かないまま売却し、そのあとに瑕疵が発覚した場合は、引き渡しから一定期間(3ヶ月程度が一般的です)は売り主が修繕費用を補償しなければならないという内容で契約するケースが少なくないためです。

  • 雨漏りやシロアリ被害、建物の傾き、柱の腐食
  • 土壌汚染や地盤沈下
  • 現行の耐震基準や建ぺい率、容積率などを満たしていない物件である
  • 過度な騒音被害を受ける、近隣のゴミ屋敷から悪臭がする
  • 事件や事故があった物件である

瑕疵については不動産査定の際に不動産会社にも確認してもらい、見つかった場合には対応策について相談するとよいでしょう。

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ポイント4.複数の不動産会社に査定してもらう

一般の住宅では、不動産査定は取引事例比較法が用いられるケースがほとんどです。ただしどの物件と比較するかなどは各社それぞれなので、実際の査定価格も不動産会社によって差があります。

1社だけに不動産査定を依頼しても、その査定価格が高いのか低いのか比較ができません。そのため査定依頼をする場合は、複数の不動産会社に査定してもらう必要があるのです。

不動産会社が現地で詳細に調べる訪問査定については、最低でも3社程度に不動産査定を依頼し、比較するようにしましょう。

不動産査定は複数の会社に依頼しよう

不動産査定の方法と高く査定してもらうためのポイントをまとめると、以下のようになります。

不動産会社に依頼する査定の方法には「簡易査定(机上査定)」と「訪問査定(詳細査定)」の2種類があります。この2つはどちらかを選ぶという関係ではなく、まず簡易査定を受けてから次のステップとして訪問査定を受ける形です。

不動産を高く査定してもらうには、まず登記関係や建築確認関係など査定に必要な書類をそろえることがポイントになります。またハウスクリーニングなどで物件の見栄えをよくしたり、設備や建具などの不具合を修繕したりしておくことも大切です。

さらに最も重要なポイントは、複数の不動産会社に査定をしてもらい、納得のいく価格を提示してくれた会社に売却を依頼するということ。また不動産査定を行なった際には、不動産査定書の内容をしっかりと確認をしましょう。

不動産会社に査定を依頼する場合は、上記のポイントを理解したうえでコンタクトをとり、複数の不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。多くの不動産会社ではインターネットで24時間いつでも自宅で査定を受け付けているので、自身に合う最適な不動産査定が見つかるはずです。まずは簡単な査定から始めてみてはどうでしょうか。

売却査定する

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(画像/PIXTA)

まとめ

  • 不動産査定には「簡易査定(机上査定)」と「訪問査定(詳細査定)」がある
  • 査定前に必要書類を準備したり、物件の状態を把握したりしておくと、スムーズに査定できる
  • 客観的な相場をつかむために、複数の不動産会社に不動産査定を依頼することが大切

イラスト/カワモトトモカ

●構成・取材・文/大森広司
住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う
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