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古家付き土地の売却を成功させる完全ガイド。売却方法や売れない理由とその対処法を解説

古家付き土地の売却を成功させるためには、売却方法の選択肢やメリットとデメリット、売却までのステップ、中古一戸建ての売却との違いや損しないための必要手続きや税金制度など、正しい知識を得ることが大切です。
いざ売却が必要になった際に「売り方がわからない!」「更地にしなければよかった!」「買主とトラブルになった!」と後悔しないために、今回は古家付き土地の売却を成功に導くためのガイドをまとめてお届けします。

古家付き土地を売却したい!中古一戸建てや更地とはどこが違う?トラブルを避ける注意点、解体費用などを解説

“古家付き土地の売却を成功させる完全ガイド。売却方法や売れない理由とその対処法を解説

記事の目次

古家付き土地とは

あまり聞き馴染みの無い「古家付き土地」という言葉。まずはその定義や、「中古一戸建て」との違いについてご紹介します。

古家付き土地の定義

古家付き土地とは、明確な法律上の区分などではなく、文字通り「古い建物が建っている土地」を指す不動産業界の通称です。一般的に、建物の市場価値がほぼゼロ、または土地の価値に比べて非常に低いケースで、この表現が使用されます。

多くの場合、建物の築年数が20〜30年以上経過しており、現状の建物を解体して新築することを前提に、ほぼ土地のみの価値で取引される物件を意味します。

古家付き土地と中古一戸建ての違い

古家付き土地と中古一戸建てに法律上の明確な区分はありません。最大の違いは、「売買の主な目的が建物にあるか土地にあるか」という点にあると言えるでしょう。

また中古一戸建ての取引で売主は、契約内容と適合しない建物の雨漏りや設備の故障などに対して「契約不適合責任」を負うのが通常です。

一方、古家付き土地の場合は、建物が古い場合やメンテナンスが行われていない場合が多いため、建物の契約不適合責任を「免責」とする特約を設けるのが一般的です。

古家付き土地と中古一戸建ての主な違い
  古家付き土地 中古一戸建て
主な価値 土地 建物と土地の両方
建物の利用 解体・建て替えが前提 そのまま利用するのが前提
築年数目安 20年〜30年以上(もしくは建物の価値が低い) 比較的新しい、またはリフォーム等で価値が維持されている
買主の傾向 自身での新築を求める層、建築業者 早期の入居を求める層、リフォームを検討する層
契約不適合責任 建物は免責(責任を負わない)とすることが多い 建物や設備に責任を負うことが多い

2023年に施行された空家対策特別措置法が売却に与える影響

古家付き土地の中でも、特に長期間空き家となっていた物件の売却を検討する際に覚えておくべきトピックが、2023年12月に改正施行された「空家対策特別措置法」の影響です。

2023年に施行された空家対策特別措置法が売却に与える影響

(画像/PIXTA)

空家対策特別措置法の「特定空家」指定とは

空家対策特別措置法の主な目的は、管理が適切に行われていない空き家を減らし、地域の環境保全や安全の確保などを促進することです。この法律において、「特定空家」とは、以下のいずれかの状態にある空き家を指します。

  • 倒壊等の著しい危険性がある状態
  • ゴミの放置や害獣など、著しく衛生上有害となる状態
  • 立木や落書きなど、景観を著しく損なっている状態
  • その他、地域の生活環境に悪影響を及ぼしている状態

2023年の改正法では、これまでの「特定空家」に加え、「特定空家」になる前の段階にある「管理不全空家」という区分が新設されました。

「特定空家」「管理不全空家」に指定されるリスクと売却への影響

古家付き土地が「特定空家」または「管理不全空家」に指定されると、売却活動全体に大きな悪影響が及ぶと言えます。主な影響は下記の通りです。

1、固定資産税の優遇措置の解除

最も大きな影響は、土地にかかる固定資産税の優遇措置(住宅用地の特例)が解除されることです。

通常、住宅が建っている土地は固定資産税が通常の1/6に軽減されて計算されますが(小規模宅地の場合)、特定空家に指定され、軽減措置が解除されると、土地の固定資産税が最大で6倍になり、売主の維持コストが急増します。これは「特定空家」と「管理不全空家」のどちらに指定された場合も可能性があります。

2、行政代執行のリスクと費用徴収

「特定空家」と判断された場合、市町村は所有者に対して修繕や解体などの「助言・指導→勧告→命令→行政代執行」といった段階的な措置を取ることができます。

最終的に行政代執行で建物が解体された場合、解体費用は所有者に請求されます。

3、買い手の敬遠

「特定空家」や「管理不全空家」に指定された物件は、管理状態が悪いと公的に認められたことになり、買い手からの印象が悪化し、売却がより難しくなります。また、将来的な行政指導を懸念し、購入を敬遠する可能性も考えられます。

以上のような理由から、古家付き土地を売却する際は、「特定空家」や「管理不全空家」に指定される前に、速やかに売却活動を開始するか、適切な管理を行うことが重要です。

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古家付き土地を売却する3つの方法

古家付き土地を売却する方法として、主に以下の3つの選択肢があります。

古家付き土地を売却する3つの方法
  概要 主なメリット 主なデメリット
古家付き土地として売却する 現状のまま、古家付き土地として売り出す 解体費用がかからない、固定資産税の優遇継続 買い手がつきにくい、買い手の解体費用負担により売却価格が安くなる可能性
更地にして売却する 古家を解体し、土地のみを売り出す 買い手を見つけやすい、買い手の解体費用負担がないことで売却価格が高くなる可能性 解体費用がかかる、解体時期と売却時期によっては固定資産税の優遇がなくなる
中古一戸建てとして売却する リフォーム等で建物の価値を高め、中古一戸建てとして売り出す 買主が住宅ローンを利用しやすく売却がスムーズ リフォーム費用がかかる、建物の契約不適合責任を負うリスク

古家付き土地として売却する

建物を解体したりリフォームしたりせずに、現状のまま売り出す方法です。買主は、購入後に建物を解体するか、リフォームするかなどを自由に決められます。主に、買主が建物を解体して新築することを前提にしているか、古い建物に何らかの価値を見出してる場合に選ばれます。

更地にして売却する

売主が費用を負担して建物を解体して、更地の状態で「土地」として売り出す方法です。売主のコストは増加しますが、建物が存在しないため土地の状態が明確になり活用イメージも湧きやすいため、広さや形状など土地そのものの評価がダイレクトに売却額にも反映されます。

中古一戸建てとして売却する

古家にリフォームやクリーニングなどを行い、「建物を使い続ける前提の中古住宅物件」として売り出す方法です。建物が古いとはいえ、立地や間取り、建物の維持管理状態によっては一定のニーズがあるケースも。この場合、古い建物特有の雰囲気を活かしたリフォーム物件を探す層をターゲットにできます。

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古家付き土地として売却するメリット

古家付き土地として売却する方法には、売主にとって以下のようなメリットがあります。

解体費用がかからない

最も直接的なメリットは、建物解体にかかる数十万から数百万円に及ぶ費用を売主が負担しなくて済むことです。

買主からの手付金で解体費用を賄うケースや、解体費用を売買代金から差し引く形で精算するケースもありますが、手付金や売買代金が手元に入る前に解体費用を捻出する必要がなく、初期費用を抑えられます。

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固定資産税の優遇措置が継続される

不動産が「住宅用地」である場合、土地にかかる固定資産税が最大1/6に軽減される特例措置(小規模宅地の場合)が適用されます。建物を解体して更地にしてしまうとこの特例措置は解除され、翌年度から固定資産税額が大幅に増加します。 古家付き土地として、建物が立っている状態で売却活動を行う期間中はこの軽減措置が継続されるため、売却が長期化した場合の維持コストを抑えることが可能です。

優遇措置による土地の固定資産税/都市計画税の軽減率
  固定資産税の軽減率 都市計画税の軽減率 土地の広さ
小規模宅地 1/6に軽減 1/3に軽減 200m2までの部分
一般住宅用地 1/3に軽減 2/3に軽減 200m2を超える部分

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建物の契約不適合責任を免責にしやすい

前述の通り、古家付き土地として売却する場合、「建物は利用を目的とせず、解体を前提とする」という認識のもと、建物の雨漏り、シロアリ被害、設備故障などに対する契約不適合責任を売主が負わない特約を契約書に盛り込むことが容易です。

これにより、売主は引き渡し後の建物の不具合に関する買主とのトラブルや賠償リスクを回避できます。

3000万円特別控除が適用される期間が長い

売却する古家付き土地などの不動産が自宅であった場合、譲渡所得(売却益)から最大3000万円を控除できる特例(居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)を利用できる可能性があります。

この特例は、自宅に「住まなくなった日」から3年を経過した日の属する年の12月31日までに売却した場合に適用されます。古家付き土地の場合は、更地にしてしまうと、解体した日から1年以内に売却しなければこの特例が使えなくなるなどの条件が発生します。

古家付き土地として売却活動を行うことで、建物が残っている期間は「住まなくなった日から3年以内」という比較的長い適用期間を最大限活用できることもメリットと言えます。

特別控除が適用された際の所得計算式
譲渡所得4000万円 − (特別控除3000万円)=課税対象所得1000万円
→この場合、1000万円が所得として課税の対象になる。

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買主が住宅ローンを利用できる可能性がある

古家付き土地の場合でも、買主が建物をリフォームして住むことを目的とする場合、中古物件として金利が低い住宅ローンを利用できる可能性があります。

また、建物を担保にできない場合でも、土地と新築予定の建物を一体とした「つなぎ融資」や「土地先行融資」などの特殊なローンを利用できる可能性があり、この「住宅ローンを組める選択肢がある」という点は、買主とっては大きな利点であり、購入層を広げることに繋がります。

古家付き土地として売却するデメリット

メリットがある一方で、古家付き土地として売却する方法にはデメリットも存在します。主なものは以下の通りです。

古家付き土地として売却するデメリット

(画像/PIXTA)

買い手を見つけにくい

古家付き土地は、更地や築浅の中古一戸建てに比べて、買主の層が限定され、売却期間が長期化しやすい傾向にあります。限定される主な理由としては、総費用の不透明さや手続きの煩雑さなどが挙げられます。

総費用の不透明さ

買主は購入費用に加え、建物の解体費用、新築時の建築費用を別途見積もる必要があり、場合によっては建物解体後に改めて土地の調査や測量などが必要になる可能性があります。これによって買主は資金計画が立て難くなる場合があります。

手続きの多さ

解体から新築まで、手続きが多岐にわたり、その分時間や手間がかかるため、早くその土地での居住や利用を始めたい買主には敬遠されてしまいます。

住宅ローン融資の制約

通常のマンション購入や中古一戸建て購入よりも、住宅ローンを組むために複雑な手続きが必要になることがあります。土地の購入費と建物の建築費に別々で融資を受けたり、つなぎ融資と言われる住宅ローンを借りるまでの一時的な融資を受ける必要があるケースも考えられます、

売却価格が安くなる可能性

一戸建てを新築する前提での購入を考える買主は、古家付き土地を購入後、必ず発生する解体費用を織り込んで購入価格を提示してきます。

その結果、更地として売却した場合の市場価格から、解体費用相当額が差し引かれた価格での取引となることが一般的です。特に、古い井戸などの地下埋設物や、建材のアスベスト含有など、解体費用が高額になるリスクがある場合、さらに売却価格が低く抑えられる可能性があります。

土地に関する契約不適合責任のリスクがある

古家付き土地の場合、建物の状態に関する責任は免責にできても、土地そのものに関する契約不適合責任は売主が負うことがほとんどです。

古家付き土地の場合に特に発生しやすい契約不適合責任のリスクには、以下のようなケースがあります。

古家付き土地の売却で発生しやすい契約不適合責任のリスク
 
土壌汚染 建物の下の土地に特定有害物質による汚染が判明するなど
地中埋設物 過去の建物の基礎や浄化槽、古い井戸などが埋まったままになっているなど
擁壁の欠陥 土地を支える古い擁壁などに構造上の欠陥があるなど

契約時に建物に関する免責を行っていたとしても、土地に関して売主がこれらの事実を事前に告知しなかった場合、損害賠償や契約解除を求められるリスクがあります。

過去の土地利用歴や建物の情報を可能な限り調査・開示し、リスクを低減することが重要です。

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古家付き土地を売却する際に損しないための4つのポイント

古家付き土地の売却を成功させ、金銭面やトラブルに見舞われるなどの損をしないためには、さまざまな事前の準備や確認が必要です。その中でも覚えておきたい4つのポイントをご説明します。

古家付き土地を売却する際に損しないための4つのポイント

(画像/PIXTA)

1、どの方法で売却するかの見極めを行う

古家付き土地として売るか、更地にして売るか、中古一戸建てとしてリフォームして売るかの「見極め」が最も重要なポイントの一つです。

周辺相場とエリアのニーズを確認し、周辺地がとても需要の高いエリアであれば、買主が古家の解体費用を負担する古家付き土地のまま売却しても有利でしょう。レトロな雰囲気が人気のエリアであれば、最低限のリフォームを行って中古一戸建てとして売るという選択肢もあります。

建物の状態と解体費用、周辺地域の現状などを見極めながら、金銭的にも手間的にも売主の負担が少ない売却方法を選択することが重要です。

2、境界線を確認する

土地の境界線が不明確であることは、買主が購入をためらう大きな要因となります。特に古くから所有する土地や、隣家との目に見える境界が無い土地などは、以下のような確認を行い、土地の境界線を確認しましょう。

境界杭の有無

境界杭とは、隣地や道路との境界線を示すために打ち込まれている杭のことです。隣地との境界が確定された境界杭があることで、買主は安心して土地を購入できます。売主の費用負担で測量を行い、境界を明確にしておくことは、売却期間の短縮と価格交渉の優位性につながります。

確定測量図の有無

確定測量図と言われる土地の正確な形状や面積、境界を示す測量図や、隣地所有者との境界確認書などが存在するかの確認を行い、もしなければ確定測量を行うことを不動産会社から推奨される場合が多いです。

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3、再建築不可物件ではないか確認する

「再建築不可物件」とは、現在の建物を取り壊した場合、現在の建築基準法などの制限により、新しい建物を建てることができない土地のことです。

建築基準法では、原則として、幅4m以上の道路に2m以上接している(接道義務)ことを満たしていないと、建築が認められません。現在の建築基準法が制定される前に建物が建てられた土地には接道義務を満たしていない土地も存在するため、注意が必要です。

再建築不可物件は、建て替えを目的とする買主にとっては検討対象とならず、買い手が極端に限られたり、売却価格が大幅に安くなったりと、価値が大きく下がる要因になります。

売却後のトラブルへの対処法としては、再建築不可の場合、契約書に「再建築不可であること」を明記し、契約不適合責任の免責を行うなど、売主側のリスクを最小限にする対応が不可欠です。

また、再建築不可物件の場合でも、現状の建物をリフォーム・リノベーションした上で住宅として使用し続けることは可能なので、リフォームなどを行った上での売却や、買取業者への売却なども検討してみましょう。

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4、最低限の整備と清掃を行う

契約時に建物に関する契約不適合責任の免責条項を入れる前提だとしても、建物の最低限の整備と清掃を行うことで、買主に与える印象が大きく改善し、売却をスムーズに進められる場合があります。

土地の整備

可能な限りの敷地内の雑草や庭木の剪定などを行い、土地の形や広さが明確にわかるようにすることで買主が利用方法をイメージしやすくなります。

建物の清掃

建物内に残ったゴミや、残置物と呼ばれる建物内に残ったままの不要な家具や家電などをできる限り撤去し、清掃することで、買主が解体や新築のイメージをしやすくなり、売却期間の長期化や売却額の低下のリスクを避けられる可能性があります。

複数の不動産会社に相談をする

古家付き土地の売却では複数の不動産会社に査定を依頼し、比較検討することが重要です。

大手や地場の不動産会社など、複数社に査定を依頼することで、そのエリアにおける古家付き土地の適正な相場を正確に把握できます。また、会社によって「古家付き土地としての売却を推奨するか」「更地化を推奨するか」「建物のリフォームを推奨するか」などの戦略が異なるため、複数社に相談することでさまざまな視点から最適な売却方法を検討できるはずです。

特に古家付き土地や再建築不可物件の取り扱い経験が豊富な会社は、そうした物件の買い手となる建築業者やリフォーム業社、または特殊なニーズを持つ個人とのネットワークを持っている場合も多く、物件の状態に応じたスムーズな売却が期待できます。

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古家付き土地が売れない時のよくある理由と対処法

古家付き土地の売却活動をスタートしたものの、なかなか買主が見つからない場合に考えられる理由と、その具体的な対処法を解説します。

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古家付き土地が売れない時のよくある理由と対処法

(画像/PIXTA)

売り出し価格が高すぎる

売主の希望や不動産会社に言われるがまま、周辺相場や土地の状態(再建築不可など)を考慮せずに高すぎる価格設定をしてしまっている場合があります。

対処法
不動産会社の査定価格だけでなく、周辺の成約事例を基に価格を市場の適正水準まで引き下げるなど、価格を見直しましょう。また、購入検討者が現れた場合は、買主からの価格交渉に対して柔軟に対応することも検討が必要です。

土地の境界が不明確

前述の確定測量を行っておらず、隣地との境界が曖昧な状態の場合、買主は将来的なトラブルを懸念し、契約をためらう場合があります。

対処法
売主の責任で測量や土地家屋調査士に依頼し、確定測量を実施しましょう。費用はかかりますが、確定測量を行うことによって、境界がわからないことを理由に売れないという問題は解決が可能です。

解体費用が高い

建物が大きい、重機やトラックが入りづらい場所に土地がある、またはアスベストなどが含まれる可能性がある場合、買主が解体費用の見積もりを行った際に高額となり、売却が難航するケースがあります。

対処法
売主が信頼できる解体業者から具体的な解体費用の見積もりを取得し、買主に提示しましょう。売主が見積もりを用意することで買主側の解体費用計算を透明化し、不安要素を取り除くことができます。

建物の解体が売却のネックとなる場合、売主が解体を行ってから売却活動をスタートするのではなく、売却が決定してから売主の負担で解体まで行って更地として引き渡すという「条件付き」での売却も選択肢として考えられます。

再建築不可物件である

建築基準法の接道義務を満たしていないなどの理由で建て替えができない再建築不可物件は、一般的な建て替え目的の買主からは敬遠されてしまいます。

対処法
建築会社やリフォーム会社による買取を検討しましょう。再建築不可物件であっても、建物にリフォームやリノベーションを施して売却することが前提のリフォーム会社であれば、物件の再利用や特殊な建築条件への対応ノウハウを持っているため、買取を検討してくれる可能性があります。

また、隣接する土地の所有者に協力をお願いし、共同で接道義務を満たすための土地の交換や購入を検討するという方法も検討してみましょう。

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古家を解体する場合の登記と解体業者の選び方

古家付き土地を更地にして売却する場合、建物の解体とそれに伴う法的な手続きが必要です。主な手続きと、解体業者の選び方などをご紹介します。

古家を解体する場合の登記と解体業者の選び方

(画像/PIXTA)

解体時に必要な手続き

建物を解体した場合、売主は以下のような法的手続きを行う必要があります。

建物滅失登記の申請

建物が解体されたことを登記簿に反映させるための手続きです。建物を取り壊した日から1カ月以内に申請する義務があります。申請先は土地の所在地を管轄する法務局です。

この登記を行わないと、固定資産税の課税台帳から建物が抹消されず、存在しない建物の固定資産税を払い続けることになったり、売却時の手続きに支障をきたしますので、必ず行う必要があります。

固定資産税の確認

翌年度の固定資産税の賦課期日(毎年1月1日時点)に間に合うよう、解体工事完了後、市町村の市税事務所などに建物の取り壊しを届け出て、建物を課税の対象から外してもらう必要があります。

ただし、賦課期日以降に建物が解体されても、土地にかかる固定資産税等の軽減が受けられるケースもあります。解体してから売却したい場合、賦課期日の後、かつその年の早い時期に解体し、その年内に売却できれば、売主は固定資産税等の軽減の恩恵が受けられます。

また、買主が更地となったその土地を取得し、年内に建物の新築をできれば、買主も翌年の賦課期日以降の固定資産税等について軽減の恩恵を享受できます。ですから、建物を解体して更地で売るなら、固定資産税等の軽減という観点では、解体は年の初めがより良いということになります。

解体業者の選び方と見積もり比較のコツ

解体するには、信頼できる解体業者を選び、見積もりを比較検討することが重要と言えます。比較の際の確認すべき主なコツは以下の通りです。

許認可の確認

悪質な業者に依頼してしまわないために、見積もり業者が建設業の許可や解体工事業の登録を受けているかを確認しましょう。登録業者は自治体のホームページなどで確認できます。

相見積もりをとる

複数の業者の見積もりを確認することで、相場や含まれる項目の違いなども確認することができます。必ず複数の解体業者から見積もりを取得し、比較検討を行いましょう。

見積もり範囲の確認

見積もりに含まれる範囲は業者によって細かな違いがある場合が多いです。建物本体の解体工事に加え、ガレキ処理やごみ回収、庭木撤去や根の処分などの庭部分の処置、整地、ライフラインの撤去や切り離しなどの付帯工事などが、どこまで含まれているかの確認を行う必要があります。

別途工事の確認

詳細な調査を行っていない相見積もり段階では、見積もりに含まれず「別途工事」となることが多い項目として、アスベスト処理、地下埋設物撤去などがあります。それらは可能な限り事前に確認し、最終的な総額がいくらになるかを把握しておきましょう。

ただし、地下埋設物(浄化槽や廃棄ガラなど)は、実際に掘削してみないとわからないため、見積もり額には反映できないという限界もあることも注意が必要です。

古家付き土地を売却するステップと必要書類

古家付き土地を売却する際は、中古一戸建ての売却などと比べ手順や必要書類が煩雑になる場合が多くあります。希望の期間内に売却を完了するために、事前に売却までのステップと必要書類を把握しましょう。

売却活動開始から引き渡しまでのステップと目安期間

古家付き土地の売却は、以下のステップで進行します。目安期間は、スムーズに取引が進んだ場合であり、実際には数カ月から1年以上に及ぶこともあります。

古家付き土地の主な売却ステップ

(画像/SUUMO編集部)

準備すべき書類リスト

売却活動を開始する前に、以下の重要書類を準備しておくことで、スムーズな手続きが可能です。

■権利証(登記済証)または登記識別情報
■登記簿謄本(登記事項証明書)
■固定資産税・都市計画税納税通知書(評価額の確認に必要)
■測量図(確定測量図、または地積測量図)
■建築確認済証
■検査済証
■建築設計図書
■その他/住民票、印鑑証明書、身分証明書、委任状(代理人がいる場合)など

まとめスーモくん

  • 古家付き土地の売却は、古家付きのままで売るか、更地にするかといった売却方法の選択を考える必要がある
  • 古家付きのまま売却すれば、住宅用地の特例による固定資産税の優遇が維持でき、解体費用の発生も避けることができる。しかし、その分売却額が低くなる可能性も。かかる費用と売却額を慎重に計算しながら進めることが重要
  • 再建築不可物件ではないか、境界線が明確かなどを確認し、建物の契約不適合責任の免責特約を利用して、売却後のトラブルや賠償リスクを最小限に抑える
  • 古家付き土地の売却経験が豊富な複数の不動産会社に相談し、客観的な査定と戦略的なアドバイスを得ることが、高額売却や早期売却を成功させる近道
●監修/田中 歩さん
株式会社あゆみリアルティーサービス。1991年、三菱UFJ信託銀行(旧三菱信託銀行)入社。企業不動産のコンサルティングや不動産相続コンサルティング、不動産売買仲介などの業務に17年間従事する。2009年あゆみリアルティーサービス設立。不動産相続・不動産投資コンサルティング、空き家再生投資、売買仲介などを手掛ける。宅地建物取引士、FP1級、MBA。
●構成・取材・文/ヨシカワユウスケ
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