
相続などによりボロ家(古家)を所有しているものの、古いため売却が難しく放置している方も多いのではないでしょうか。しかし、ボロ家をそのまま所有していてもさらにデメリットが生じるため、できるだけ早く売却したほうがよいでしょう。
この記事ではボロ家(古家)を早く売却したほうが良い理由や、ボロ家の売却方法、売却する際の注意点などを解説します。
ボロ家(古家)の売却を早く始めたほうが良い理由

ボロ家(古家)の売却は、できるだけ早く始めることがおすすめです。その理由を4点解説します。
住んでいなくても税金がかかる
1つ目の理由は、住んでいなくても税金がかかるためです。
住宅は、実際に住んでいなくても固定資産税や都市計画税が発生するため、経済的な負担が大きくなりがちです。また、ボロ家(古家)を売らずに家族へ相続する際には、相続税や登録免許税などが発生します。ボロ家とはいっても不動産は一般的に高額であるため、相続税の負担が大きくなる可能性があるでしょう。
このように、ボロ家を長年所有し続けることは、自分だけでなく家族にも経済的なデメリットが生じるのです。
「特定空家等」に指定される可能性がある
2つ目の理由は、誰も住んでおらず管理もされていないボロ家(古家)は、自治体から「特定空家等」に指定される可能性があるためです。
特定空家等とは、空家等対策特別措置法により以下のいずれかに該当するものとされています。
- 放置すれば倒壊などの危険がある
- 放置すれば衛生上有害になるおそれがある
- 適切な管理がされていないため景観を損なっている
- 周辺の生活環境を保全するために放置できない状態である
具体的には、家が壊れている状態や、いわゆるゴミ屋敷の状態、野良猫のすみかになっている状態などが考えられます。
通常の住宅の場合は、土地の固定資産税について住宅用地の特例が受けられるため、課税対象となる額が最大で1/6になり、税負担が軽減されます。しかし、特定空家等に指定されるとこの特例が受けられなくなるため、課税対象となる額が最大6倍になり、経済的な負担がより大きくなるでしょう。
また、特定空家等に指定されると、自治体から勧告や命令などが出されますが、それらに従わなければ、行政代執行により強制的に解体される場合もあります。この場合の解体費用は所有者負担になることからも、特定空家等に指定される前に売却したほうがよいでしょう。
犯罪に利用される可能性がある
3つ目の理由は、犯罪に利用される可能性があるためです。
空き家になっているボロ家(古家)は、犯罪者の隠れ家や犯罪の拠点として悪用される可能性があります。例えば、犯罪者が住人になりすまして空き家に入り込み、特殊詐欺の被害金や密輸された不正薬物の受け取りなどに利用したケースがあります。また、空き家は放火の被害に遭う可能性もあるでしょう。
犯罪に利用された場合、所有者も管理責任を問われ、損害賠償を請求される可能性があります。
近隣住民にも被害が出る
4つ目の理由は、近隣住民にも被害が出る可能性があるためです。
適切に管理されていないボロ家(古家)は、庭などの衛生状態が悪くなり、草木が伸び放題になるほか害虫などが発生しやすくなります。また、ゴミが不法投棄されやすくなることなどから、近隣住民にも悪影響が生じるでしょう。
さらに、長年住んでいないボロ家は、壁や屋根の倒壊、火災などのリスクも高く、最悪の場合、近隣住民や通行人などの命を奪ってしまう可能性もあります。被害が出てしまった場合には、損害賠償を請求されるケースも考えられるでしょう。
ボロ家(古家)のおもな売却方法

ボロ家(古家)を所有していると、さまざまなデメリットがあることがわかりました。それでは、ボロ家をどのように売却すればよいのでしょうか。ここでは、おもな売却方法を紹介します。
現状のまま売却する
まず考えられるのは、家屋などにはあえてなにも施さず、現状のままボロ家(古家)を売却する方法です。
この場合、最初からリフォームするつもりで住宅を探している人に売れやすいでしょう。売却に必要な経費以外かからないため、売却した利益を最大限手に入れられる点がメリットです。
一方で、ボロ家ではない築浅の住宅などと同じ市場での売却となるため、立地などの条件が悪いとなかなか買い手が見つからない点がデメリットです。
現状のまま不動産会社へ買い取ってもらう
個人に売却するのではなく、現状のままボロ家(古家)を不動産会社へ買い取ってもらう方法もあります。
不動産会社は買い取った物件を、リフォーム・リノベーションしてから商品として再び販売します。不動産会社から買い取り可能だと判断されれば、物件を確実に売却できるほか、個人に売却する場合と比べて、より早い現金化が可能です。また、仲介手数料が不要な点や、売却後に不備が見つかった場合でも、損害賠償などの責任を負わなくて良い点などもメリットです。
一方で、不動産会社は物件の買い取り後にリフォームなどを行ってから、商品として再販売し利益を上げるため、リフォームなどに必要な費用は、物件の買取金額から差し引かれます。個人に売る場合よりも物件の売却金額は低くなるでしょう。
一部またはすべてをリフォームして売却する
ボロ家(古家)の一部またはすべてをリフォームして売却する方法もあります。
設備などを新しくすれば買い手が見つかりやすくなりますし、建物の価値も高くできます。現状のまま売却すると、修繕費用や解体費用などを値引きしなければならないケースもありますが、リフォームしてから売却すれば値引きしなくて済んだり、より高値で売却できたりする可能性があるでしょう。
一方で、リフォームには当然費用が必要で、建物の状態によっては金額が高くなる可能性もあります。また、自分の好みに合わせてリフォームしたい人からは購入を避けられやすくなるなど、費用をかけたからといって必ず売却できるとは限らない点などがデメリットです。
解体して更地にしてから売却する
ボロ家(古家)の場合は家屋よりも土地の需要が高くなるケースもあるため、解体して更地にしてから売却する方法も考えられます。
家屋付きで売却すると、ボロ家だけに欠陥や不具合でトラブルが発生する可能性がありますが、更地ならそういったトラブルは起こりません。また、更地での売却は、購入後すぐに住宅建設に取りかかれるなど、買い手が自由に土地を活用できることがメリットです。
一方で、解体費用がかかることや、更地にしてから売れるまでの間に年をまたぐと、固定資産税の負担が増すことなどがデメリットです。
古家付き土地として売却する
古家付き土地は、古家+土地で売るのではなく、家屋の価値をゼロとして、土地に古家がおまけでついている形で売却する方法です。住みたい人からすれば格安で購入でき、土地として購入したい人からすればすぐに解体して利用できるなど、どちらのニーズにもアプローチできます。
ただし、家屋が古すぎると買い手からの印象が悪くなる点や、解体費用など買い手の負担を考慮した価格で売却するため、売却価格が安くなりやすい点はデメリットでしょう。
空き家バンクを活用する
ボロ家(古家)が空き家の場合、自治体や社団法人などが運営している「空き家バンク」を利用する方法もあります。
空き家だから購入したいという人にアプローチでき、買い手は空き家であることを承知で購入するため、あとでトラブルになる可能性が低い点がメリットです。自治体によっては、空き家をVR化していつでも室内を確認できるようにしているところもあり、買い手が見つかりやすいでしょう。
そうはいっても、空き家バンクで空き家を探す人はそれほど多くないため、売却まで時間がかかりやすい点がデメリットです。また、自治体や社団法人によっては、人が住めない状態の空き家や安全性に問題がある空き家などは登録できない場合もあるため、利用する際は登録できる条件をあらかじめ確認しておいたほうがよいでしょう。
ボロ家(古家)を売却するときの注意点

ボロ家(古家)を売却する際には、いくつか押さえたほうが良いポイントがあります。ここでは、ボロ家を売却する際の注意点を4点紹介します。
固定資産税の上昇タイミング
ボロ家(古家)を売却する際は、固定資産税の上昇タイミングを考慮しましょう。住宅用地は固定資産税の負担が軽減されますが、更地にすると、この特例が受けられなくなります。したがって、更地にしてから売却することを考えている場合は、固定資産税が上昇するため注意が必要です。 固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対して課税されます。例えば、11月や12月に更地にするよりも、1月や2月に更地にしたほうが、固定資産税の負担が増えずに済む可能性が高くなるでしょう。
新耐震基準かどうかを確認
ボロ家(古家)を売却する際は、耐震基準についても考慮しましょう。耐震基準は1981年6月に大きく変更されており、それ以前に建てられた家屋は旧耐震基準、それ以降は新耐震基準に沿っています。また、2000年には新耐震基準をより強化した、現行の耐震基準が定められています。 新耐震基準で求められているのは、震度6強~7程度の地震でも倒壊・崩壊しないことです。しかし、旧耐震基準では、震度5程度の地震には耐えられるようにはなっているものの、それ以上の地震については倒壊する可能性があるのです。 旧耐震基準で建てられている家屋は、地震による倒壊リスクが高いため、家屋付きで売却する場合は耐震補強工事をしないと買い手がつかないケースもあるでしょう。
リフォーム・更地化はすぐにしない
ボロ家(古家)を売却する際は、すぐにリフォームや更地化をしないようにしましょう。リフォームや更地化は買い手が増える可能性があるものの、物件によってはリフォームなどをしなくても買い手がつく場合があります。 リフォームなどを行うと費用がかかるだけでなく、元に戻せなくなるため、不動産会社とよく相談しながら進めることが大切です。
古い家の買い取りに特化した会社に相談する
ボロ家(古家)の売却には、一般的な家屋の売却とは異なり、専門的なノウハウが必要なため、ボロ家の買い取りに特化した会社を選ぶことが大切です。一般的な会社だと低い買取価格を提示されるかもしれませんが、専門会社であれば、実績に基づいた最適な買取価格を提示してもらえるため、高値で売却できる可能性があるでしょう。
ボロ家(古家)の売却を決めたらやるべきこと

ボロ家(古家)を売却すると決めたら、売却前にやっておいたほうが良いことがいくつかあります。ここでは、ボロ家の売却を決めたらやるべきことを4点紹介します。
複数の不動産会社に査定してもらう
1点目は複数の不動産会社に査定してもらうことです。家屋や土地の売却には、ある程度の相場はあるものの決まった金額はないため、場合によっては安く買い叩かれる可能性があります。
そのため、必ず複数会社に査定してもらい、そのなかから高い買取価格を提示した会社へ相談・依頼することが大切です。
ただし、会社のなかには査定時に高い買取価格を提示するものの、契約直前になってさまざまな理由をつけて買取価格を下げてくるところもあります。したがって、複数査定のなかで著しく買取価格が高い場合にも注意が必要でしょう。
家財を撤去する
2点目は家財の撤去です。家具や家電製品などをそのまま残しておくと、不動産会社や解体会社、買い主が撤去しなければならなくなります。そうなると、撤去に必要な費用が買取価格から差し引かれます。
また、家財が残っているとそもそも買い取ってくれない会社もあるため、売却を決めたら家財は撤去しておきましょう。
利用できる補助金制度を確認する
3点目は補助金制度の確認です。古家の解体や耐震リフォームに、自治体が補助金を出しているケースがあります。ただし、補助金に上限があって新規申し込みが打ち切られているケースや、昨年まであった制度が今年はなくなったり、逆に今年新たな制度が新設されたりするケースもあります。解体やリフォームを行うのであれば、補助金制度が確実に利用できるようにあらかじめ調べておきましょう。
隣地との境界を決める
4点目は隣地との境界を確定することです。古くから所有している土地の場合、隣地との境界が明確になっていないケースがあります。境界が変われば売却の際の金額も変わります。また、どこまでが自分の土地なのか不明確な状態では買い手がつきにくいことからも、売却前に境界を定めておく必要があるでしょう。
境界確定は隣人の協力が必要であるため、日頃から良好な関係を維持しておくことも必要です。
まとめ
- ボロ家(古家)の売却はできるだけ早く始めたほうが良い
- ボロ家の売却方法は複数あり、物件の条件などに応じて選ぶ必要がある
- ボロ家の買い取りに特化した会社に相談しながら、売却を進めることがおすすめ
取材・文/サクラサクマーケティング株式会社
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不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。賃貸住宅の建築提案営業を中心に従事。宅地建物取引士、FP技能士2級、日商簿記2級。不動産・金融系のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。


