不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

家が売れない人の共通点、理由は?不動産売却でやってはいけないことを解説

東日本不動産流通機構の調査では、2024年度の売却期間は、2024年度に家の売却にかかった期間は、中古マンションは約3カ月、中古戸建住宅は約3カ月強でした。 そのため、家の売却に4カ月以上かかる不動産は「買い手のモチベーションを下げていないか」「買い手のニーズに合っているか」「売却活動が足りているか」などを確認する必要があります。
この記事では、家の売却でやってはいけないこと、売却をスムーズに行うためのコツについて解説します。

家が売れない人の共通点、理由は?不動産売却でやってはいけないことを解説

記事の目次

みんなどのくらいの期間で売れている?

■2024年度の登録から成約に至る日数
建物種類 平均日数(1カ月=30日とすると)
中古マンション 84.3日(≒2.81カ月)
中古戸建住宅 99.4日(≒3.31カ月)

■2014年〜2024年の登録から成約に至る日数の推移

2014年〜2024年の登録から成約に至る日数の推移

東日本不動産流通機構によれば、レインズ(不動産会社が不動産物件の情報を交換するためのコンピューターネットワークシステム)への登録から成約までの平均日数は、中古マンションが84.3日、中古戸建住宅が99.4日だった。 また2014年〜2024年の11年間の推移を見ると、中古マンションよりも中古戸建住宅のほうが成約までに時間がかかりがちであることがわかる。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、物件の内覧や契約手続きなどに通常よりも時間がかかった2020年をピークに、一度は成約までの日数は短くなったが、2023年以降は再び長期化傾向にあり、特に中古マンションは2020年に近い日数になっている。期間は物件や立地条件、価格などによっても変動するが、急な転勤や買い替えなどで転居時期が確定している人はもちろん、そうでない人も、売却するとなったら早めの行動が肝心だ。 ※東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2024年度)」より

不動産売却にかかる期間はどのくらい?平均・流れ・長引くリスクと短縮のコツ

失敗と感じている人の症状診断 売却活動、こうなっていない?

【診察室1】買い手のモチベーションを下げているのかも!?

【ありがち症状1】片付けられない症候群

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部屋に物があふれ雑然とした状態で、生活感が丸出し。部屋の埃や水まわりの汚れも放置。部屋に染み付いたタバコやペットのにおいに対して鈍感。無自覚のまま放置したこれらの症状は、見学者に「もう見たくない」と思わせてしまう。

【処方箋1】部屋をきれいにして第一印象を良くしましょう

売却は部屋の第一印象で決まります。汚れやにおい、湿気のある部屋では「この家で暮らす将来」が想像できず敬遠されます。ポイントは部屋を明るく広く、すっきり見せて、良い印象をもってもらうこと。そのため整理整頓や清掃が必須となります。暮らしていると自分たちでは汚れなどに気付きにくいので、営業担当者に客観的なアドバイスをもらうことも効果的。自分で掃除するのが無理な場合は、ハウスクリーニング業者に依頼するのもよいでしょう。

以下3点に注意してクリーンUP!

  • 整理整頓:不要物はリサイクルしたり処分を。使う物を出し放しにせず、定位置に収納を
  • 清掃:汚れ、カビなどのないよう部屋中をピカピカに磨き上げよう。消臭、換気も万全に。「中古で一番気になるのは水まわり」というアンケート結果もある。水まわりが汚れていると買う気をなくす人が多い
  • インテリア・雰囲気:明るく、広く、すっきり見える家は印象がよい。少しでも広く見えるような家具配置にするなどの工夫を

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【ありがち症状2】接客機能不全

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見学者が来ても、挨拶はおざなりで、子どもが興奮してさわぎまくり、夫はベランダでタバコをぷかぷか……。営業担当者が案内するとはいえ、出迎える側がこれでは、買い手に「この人たちの住んだ家に住みたくない」と思われてしまう。

【処方箋2】この人なら買ってもOKと思われる接客を心がけましょう

見学者は家だけでなく、そこにどんな人が住んでいるのかも見ています。挨拶や服装など出迎え時にはマナーを心がけましょう。見学者の質問に的確に答えられるよう、営業担当者と一緒に案内するとよい場合も。物件情報を事前に整理しておくと効率的に魅力を伝えられます。また、見学の邪魔にならないよう、家族全員で出迎えるより、夫か妻が1人で対応する方がベター。やんちゃな子どもやペットは外に連れ出しておくとよいでしょう。

見学者にはこんなことを聞かれる!

  • 設備、間取りなど、気に入っている点、不便な点
  • 日当たりや風通し
  • 周辺の音環境
  • 保育園(待機児童の有無など)小学校(教育方針など)の情報
  • 交通情報(バス便の場合は本数など)
  • 転出時に残しておく物(エアコンなど)
  • 近隣住人についての簡単な情報

住宅の健康診断「住宅診断(ホーム・インスペクション)」を活用する

ホーム・インスペクション(住宅診断)とは、住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所や時期、おおよその費用などを、専門家が第三者的な立場でチェックして持ち主にアドバイスするというもの。素人目では気付かない物件の状況を、購入検討者に正確に伝えることで、安心して納得のいく価格で購入してもらうための資料となり、売却のアピール要素となることも。費用は会社によって異なるが、目視での劣化診断の場合、5万~6万円程度(専有面積100平米程度のマンション)。

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【診断室2】価格が買い手のニーズに合っていないのかも!?

【ありがち症状3】高額査定依存症

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3社に査定をしてもらって、一番高額だった会社に依頼。しかし、その査定額は適正な相場価格より単純に高いだけで、根拠のない金額だった。そのため、買い手のニーズとかけ離れ、見学者ゼロという事態を引き起こしてしまう。

【処方箋3】価格が適正か不動産仲介会社に提示してもらいましょう

見学者が来ないのは、販売価格が相場より高いためかもしれません。見学者が来ても話が進まないのは、周辺環境や外観などの印象が良くないため、価格とのバランスが悪い可能性も。改めて、媒介契約した会社に販売価格とその根拠を示してもらい、価格を見直しましょう。
例えば、東日本不動産流通機構(REINS)が公表した「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)」によると、中古マンションでは、新規登録(売り出し)時点の平均価格・単価が成約価格を上回っています。例えば築0〜5年の場合なら、新規登録平均価格が9520万円なのに対し、成約価格は7808万円と1712万円の差があります。㎡単価の金額を比較しても新規登録では166.81万円/㎡なのに対し、成約では126.08万円/㎡と、40.73万円/㎡下がっています。
もちろんこの数字は実際の値下げ額そのものではありませんが、市場全体で売出価格と成約価格がどれほど乖離しているかを把握する参考指標にはなるのではないでしょうか。そのため、媒介契約期間終了後、別の会社にアドバイスしてもらうのもよいでしょう。

販売価格は臨機応変に見直しを!

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【ありがち症状4】査定額時差ぼけ症

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査定を受けてから販売を開始するまであれこれ悩んで、必要以上に時間が経過した。その間の不動産の需給の変化、物件条件の変化などで、買い手のニーズと価格が合わなくなっているにもかかわらず、そのことに気付いていない。

【処方箋4】現時点の物件価格をきちんと把握しましょう

査定では「直近の過去で売れた周辺物件の販売価格」をもとに「販売開始から3カ月程度で売れると思われる額」が算出されます。そのため、査定結果が出てから販売開始までの時差が大きければ、相場価格と大きなズレが生じることがあります。原因は、不動産需給の変化による相場価格の下落や、物件の条件そのものが変わったためということがあげられます。不動産会社の担当者にタイムリーな査定額を示してもらい、価格見直しの相談をしてみましょう。

早さ重視! 買取保証制度のある会社を選ぶ

早く売却したい、買い替えなので○月までに確実に売りたい、という場合は「買取保証制度」のある不動産会社と契約するのも手だ。この制度は、設定期間内に売却できない場合、契約先の不動産会社が買い取ってくれるという制度。ただし、買取価格は通常の売却価格より安くなるのが一般的なので、納得した上で契約しよう。どこの会社も制度を設けているわけではなく、制度の内容も会社によって異なる。市場で売り出さずに直接物件を購入してくれる「買取制度」を設けている会社もある。

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【診断室3】仲介会社の売却活動が足りていないのかも!?

【ありがち症状5】売却活動欠乏症

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一般媒介契約で数社に依頼した場合に起こりがちな症状。一般媒介契約では売主への報告義務がないため、営業担当者と信頼関係が築けていないと、営業活動に力が入らず、幅広い広告活動などをしないなど、売却活動が放置され気味に

【処方箋5】担当者と信頼関係を築きましょう

一般媒介契約の場合、力の入れ具合は会社によってマチマチで、一般的に、専任媒介契約よりケアが少ないことが多いようです。本来、信頼関係を結べる会社と契約すべきなのですが、現時点で信頼関係がないなら、担当者にアドバイスを求めるなどマメに働きかけることが大切。そうすることで担当者も本気を出してくれるのです。それが難しければ、契約終了時に専任媒介への切り替えも視野に入れてみましょう。

  複数社との契約 メリット デメリット
専属専任媒介契約 × *会社が積極的に販売してくれる
*週1回以上の活動報告がある
*売主が見つけた相手と直接取引できない
*契約期間中は他社と契約できない
専任媒介契約 × *会社が積極的に販売してくれる
*2週間に1回以上の活動報告がある
*売主が見つけた相手と直接取引できる
*契約期間中は他社と契約できない
一般媒介契約 *複数の仲介会社の得意分野に応じた集客が期待できる *会社に活動報告の義務がない
*複数の情報を自分で整理する必要がある

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【ありがち症状6】専任性囲い込み不全症

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専任媒介契約または専属専任媒介契約で1社に依頼したものの、物件情報を他社に対してあまり積極的に開示せず、自社の顧客しか連れて来ない会社も。そんな会社は幅広い集客が難しいという傾向が顕著で、結果、売却が遅れがちに

【処方箋6】販売活動の内容をチェックしましょう

条件はそれほど悪くないのに売れないというのは、販売活動が順調でない可能性が。専任契約なら一定期間ごとに販売活動報告があるので、どんな活動をしたか、その内容は信頼できるかチェックしましょう。他社への情報開示などを含め、適切な活動をしていなければ専任契約を途中解約できることも。会社によって物件種別やエリアなどの得意・不得意があります。契約終了後に信頼できる会社を見つけましょう。

専任媒介契約とは?期間、解除方法、他の媒介契約との違いなど気になるポイントも解説!

マンションの売却価格査定例を見る

一戸建ての売却価格査定例を見る

記事のおさらい

家を売るにはどれくらいの期間がかかる?

東日本不動産流通機構が行った調査によると、2024年度に家の売却にかかった期間は、中古マンションが平均84.3日、中古戸建住宅が平均99.4日。「みんなどのくらいの期間で売れている?」を参照してください。

見学者は来るのに家が売れないのは?

内見に購入検討者が来ているのになかなか家が売れない場合は、買い手の購入意欲を下げていることが考えられます。詳しくは、「【診察室1】買い手のモチベーションを下げているのかも!?」を参照してください。

内見に見学者が来ません

内見に人が集まらないのは、購入検討者のニーズに対して価格が高すぎる可能性が考えられます。詳しくは、「【診断室2】価格が買い手のニーズに合っていないのかも!?」を参照してください。

物件の条件も価格も悪くないのに、なぜか反応がありません

売却活動開始からしばらくたっても購入検討者から反応がない場合は、仲介会社の売却活動がうまくいっていない可能性も考えられます。詳しくは「【診断室3】仲介会社の売却活動が足りていないのかも!?」を参照してください。

●取材・文/金井直子、籠島康弘 イラスト/いぢちひろゆき

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