不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

空き家の処分はどうすればいい?売却や買取、譲渡など空き家のさまざまな処分方法や注意点を解説

空き家の処分はどうすればいい?売却や買取、譲渡など空き家の様々な処分方法や注意点を解説

現在社会問題になっている空き家。
少子高齢化社会の進行などで空き家が急激に増加しています。

空き家が増えることは防災や衛生面などの観点からさまざまな悪影響をおよぼすため、リスクを防ぐためにも、適切に処分を行いたいところです。

さらに、両親が所有していた空き家を相続してしまい、処分方法や引き取りを回避するための相談をする人も増えています。

こうしたリスクや問題を防ぐためにも、不要な空き家は適切に処分することが重要です。そこで、空き家を処分する方法について、ポイントや注意すべき点を紹介します。

記事の目次

空き家を放置するリスクと危険性

  • 固定資産税増加のリスク
  • 火災発生などのリスク
  • 資産価値の低下
  • 近隣トラブルの危険性
  • 代襲相続による相続人の増加

それぞれリスクや危険性について解説をします。

固定資産税増加のリスク

不動産を所有している人には、固定資産税が課税されます。

ただし、居住用の土地については「住宅用地特例」が適用されるため、多くの方が軽減措置を受けています。

具体的には、小規模住宅用地であれば評価額の1/6、一般住宅用地であれば評価額の1/3に減額されます。

しかし、後述する2023年12月より施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」により、住宅用地特例が解除される範囲が拡大されました。

その結果、放置しているなど、特定空家になる可能性がある空き家(管理不全空家)は、住宅用地特例が解除できるようになったのです。
そのため、今までよりも高額な固定資産税を納めなければいけなくなります。

関連記事:

suumo.jp

火災発生などのリスク

消防庁が発表した「令和5年(1月~9月)における火災の概要について(概数)」によると、2023年1~9月に起こった住宅火災8157件のうち、519件が放火、236件が放火の疑いがあったと報告されています。

空き家は居住者がいないことから、放火の標的になりやすいため、放火による火災が発生するリスクは一般的な住宅よりも高くなるでしょう。

空き家が出火元となって起こった火災が、第三者による放火から起こったものの場合、基本的に所有者は責任を問われません。

しかし、空き家の管理状況の過失によって火災が起き、さらに近隣の住宅に延焼した場合は、空き家の所有者に賠償責任がおよぶ可能性があります。

火災保険に加入していない空き家では、賠償責任が発生したときの負担は非常に大きくなるでしょう。

また、雨風で瓦が落ちる、壁が崩落するなどで通行人や近隣住民にケガをさせる恐れもあります。

資産価値の低下

住宅は時間が経つほど劣化しますが、人が住んでいない住宅はより早く劣化が進んでいきます。

さらに、長く放置された空き家は修繕できず、解体する以外に選択肢がなくなる可能性が高いです。

そのため、放置しているだけで資産価値は大きく低下し、売却しようとしても相場よりも大幅に低い金額でしか売れなくなる可能性があります。

近隣トラブルの危険性

空き家を放置すると、不法侵入されるリスクが高まり、犯罪の温床となり、地域住民に不安を与える可能性があります。

また、管理を怠ったことで、害虫や害獣の増殖を招き、周辺環境に悪影響をおよぼすこともあるでしょう。

こうした問題が発生すると、空き家周辺の居住者に大きな迷惑をかけてしまうため、近隣トラブルに発展するリスクがあります。

代襲相続による相続人の増加

空き家の所有者として登記した名義人が亡くなり、現在の所有者を確定できないときには、戸籍から法定相続人を調査し適切な管理をするよう、自治体から通知が送付されます。

相続人が知らない間に空き家の相続人となり、相続や相続放棄などの対応を迫られる可能性があるのです。

また、自分が所有している空き家を放置したまま亡くなると、自分の法定相続人に空き家を押し付けることになります。

空き家を所有して亡くなると、法定相続人にその管理を負担させることになるため、不要な空き家は自分の代で処分することが大切です。

このように空き家を放置することには多くのリスクがあるため、住む予定がないのであれば早急に処分しましょう。

空き家のおもな処分方法は「無償譲渡」「売却」「買取」「空き家バンクの活用」「相続放棄」の5つ

無償譲渡

読んで字のごとく、空き家を無償で譲る方法です。個人に譲る場合は、物件周辺の地権者や家を探している知人などが候補として挙げられます。

そのほか、それほど一般的ではないものの、自治体に寄付をするという方法もあります。
寄付をすることで、公園や公共施設などで活用してもらえる可能性がありますが、自治体が寄付を受け付けているかどうかを事前に確認しましょう。

空き家を無償譲渡するメリットとしては、売却活動にかかるコストを抑えられる点があります。
特に、初期費用を抑えて家を探したいという人を取り込みやすいでしょう。

注意点としては、空き家の無償譲渡を個人間の取引で行う場合、トラブルにつながる可能性があります。

専門家に入ってもらい、事前に契約書の内容などをしっかりと確認することが大事です。

関連記事:

suumo.jp

売却

空き家を第三者に対して売り渡す方法です。
不動産売買には法律、税制上のルールがいくつもあるため、一般的にはプロの不動産仲介会社に売却依頼することが多いでしょう。

不動産仲介会社を介して、買いたい人とマッチングしてもらい、売却することで空き家を処分します。

空き家となっている建物の状態によっては、解体して更地として売ることもありますし、古家付きとして建物を残したまま売る方法もあります。

建物自体にニーズがありそうかどうか、更地にしないと売れないかどうかを判断することが大切です。

その意味でも、周辺地域のマーケットニーズをよく知っている不動産仲介会社に仲介を依頼する方が、自分で売却相手を探すよりもスムーズになるでしょう。

メリットは、活用していない空き家を売却することで、売却益を得ることができる点です。
また、維持費などがかかっていた場合、そのコストを払い続ける必要がなくなります。

注意点としては、空き家の状態や立地によっては市場に需要がなく、売却先が見つからない可能性があります。

その場合は、後述する「買取」も検討をするといいでしょう。

買取

3つめは買取会社に買い取ってもらうという方法です。

買取会社は、空き家を買い取ったのち、建物の解体やリフォームなどを行って、第三者に売却を行い、その売却益を会社の利益とします。

空き家の買取のメリットは、買取会社に直接空き家を売却するため、買主を探す手間がかからず、仲介手数料も不要になる点です。需要がある空き家であればすぐに買取金額を得ることができます。

いっぽう注意点としては、一般的には買取価格は仲介による売却価格よりも低く抑えられがちということがあります。
これは不動産会社が買取をした後に売却益を出すためです。価格に納得することができればすぐに空き家が処分できます。

また、すべての空き家が買取対象となるわけではなく、不動産会社が求める条件でないと買取を拒否される可能性もあるので注意が必要です。

空き家の買取額が適正かどうかは、一般の人が判断をするには難しいケースが多いかもしれません。

その際、適正価格なのかどうかの判断基準として有用なのが、一括査定サービスの活用です。
複数の不動産仲介会社に査定を依頼して、自分の空き家の相場をつかみましょう。そのうえで自分が納得できる買取額を提示してくれる買取会社を探して、空き家処分を目指すのがおススメです。

空き家の買取に関しては後述する「スピーディーさが一番の魅力。空き家の「買取」サービスとは」で詳しく解説をしています。

空き家バンクの活用

ここまでの3つの方法に加えて、「空き家バンク」を活用するという方法も覚えておきましょう。

空き家バンクとは、地方公共団体などが運営を行う、空き家情報を提供するサービスです。
空き家を手放したい人と空き家を求める人をつなげることで、効率よく空き家の利用ができる仕組みとなっています。

また、不動産仲介会社で取り扱いができないような物件でも、賃貸したり売り出したりすることが可能なことも空き家バンクのメリットです。

ただし、最低限人が住める状態でなければ登録できない自治体もあるため、登録条件や空き家の状況をきちんと確かめておきましょう。

空き家バンクのチラシイメージ

(写真/PIXTA)

相続放棄

相続や遺贈により取得した土地に対して、管理しきれないなどの理由で相続を破棄するケースもあります。
相続放棄することで、不要な空き家の相続を避けることができます。

しかし、空き家だけの相続放棄はできず、相続放棄をする際は相続したい財産もすべて放棄しなければいけません。
また、相続破棄をしても空き家に対する管理義務が残る可能性があります。

そのようなときに活用できる制度が、「相続土地国庫帰属法」に基づき国に土地を引き取ってもらう方法です。
条件を満たせばすぐに空き家を手放すことが可能ですが、国に引き取ってもらうには所定の費用が必要になります。

参考:
法務省「相続土地国庫帰属制度について

空き家を譲渡するイメージ

(写真/PIXTA)

空き家の処分にかかる費用を比較!

空き家の取引手段 費用の発生 税金の支払い その他費用 備考
無償譲渡 登記費用等 贈与税(場合による) - 受贈者が贈与税を負担する可能性あり
仲介による売却 仲介手数料(売却価格の3%+6万円+消費税程度)、登記費用 譲渡所得税 必要に応じて清掃・修繕費用  
買取 - 譲渡所得税 査定費用、必要に応じて清掃・修繕費用 仲介手数料が不要で迅速な取引が可能
空き家バンクの活用 - - 必要に応じて清掃・修繕費用 地方自治体によって条件が異なる
相続放棄 - - - 空き家だけを相続破棄することはできない
国庫帰属の活用 - - 国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額の負担金を納付 制度利用の条件を満たす必要があり、審査に時間や労力がかかる可能性がある

上記の表からわかるように、所有者の負担が最も少ない処分方法は空き家バンクの活用です。

取引費用や税金などの負担がないため、低額で空き家を処分できるでしょう。

一方で、費用や税金の負担はあるものの、売却や買取の場合は売却代金を得られます。

そのため、売却・買取金額によっては、プラスになることもあるので、まずは不動産仲介会社に相談をすることが大事です。

空き家の処分を考えるときに考えておきたいポイント

空き家の価値を確認しよう

無償譲渡や売却、買取、空き家バンク、国庫帰属の活用いずれの方法で処分するにせよ、処分する空き家の価値を把握しておくことが大切になります。

しっかり価値をとらえておかないと、特に売却や買取の打診をする際に、適正ではない値段で買いたたかれてしまう可能性があります。

では、空き家の価値を確認するにはどのような方法があるのでしょうか?

  • 固定資産税の納税通知書で確認
  • 不動産仲介会社による不動産査定
  • 不動産鑑定士による不動産査定

それぞれの調査方法について解説をします。

固定資産税の納税通知書で確認

空き家の価値の確認方法の一つが「固定資産税の積算根拠」です。
毎年5月末頃、自治体から固定資産税の納税通知書が届きます。通知書には、固定資産税の積算根拠を記した課税明細が記載されていて、課税対象となる土地や家屋の一覧と税金の積算根拠となる金額が記載されています。

課税明細書のイメージ図

実際に送られてくる課税明細書の一例(マンションの場合)。自治体によって様式が違う(SUUMO編集部にて作成)

この積算根拠の金額は、自治体による基準で、経年劣化を考慮したうえで建物や土地の価値を算定したものです。
一般的に建物や土地の価値を示す金額として認知されています。

関連記事:

suumo.jp

不動産仲介会社による不動産査定

また、もう一つは不動産仲介会社による査定です。

周辺エリアの「今」の不動産価格やニーズは、不動産仲介会社が最もよく知っています。
SUUMOなどの不動産情報サイトで近い場所、似ている条件の物件情報から売り出し相場を測ることもできますが、

不動産はまったく同じものがないため、あくまで参考の一つになります。

不動産仲介会社は該当エリアの需要動向や成約状況などを把握していますし、売りたい物件の情報をもとにより適正な価値を判断してくれるでしょう。

不動産鑑定士に依頼をして確認

さらに信頼性という観点では、不動産鑑定士に鑑定依頼を出すことも考えられます。
不動産鑑定士は、地域の環境や諸条件を考慮して不動産の有効利用を判定し、適正な地価を判断してくれます。それが不動産鑑定評価額です。

不動産鑑定士の鑑定はマーケットニーズだけでなく、プロの目からその土地の価値を判断してくれるのが大きな違いになります。

関連記事:

suumo.jp

空き家の価値を調べるイメージ

(写真/PIXTA)

空き家の名義を確認しよう

都市開発などの妨げとなる所有者不明土地が発生するのは、多くが相続による所有権移転の未登記によるものです。

この問題を解決するため、2024年4月1日より、相続登記の義務化が始まりました。

相続登記の義務化によって、以下のようにルールが設定されます。

(1) 相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

(2) 遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。

(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。

(※)相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の資料収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケースなど。

参考:
東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地!~

相続登記を正しく行わないと、過料の適用対象となるため、行政書士などに確認を依頼するようにしましょう。

2023年12月に行われた空き家法改正とは

2023年12月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(空き家法改正)」は、2015年施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」では対応しきれなかった「特定空き家」への対応力を強化するために実施されました。

この改正の重要なポイントは、特定空き家を増やさないための「管理不全空き家」の新設です。

管理不全空き家とは、特定空き家になりうる空き家を指します。管理不全空き家に対しては、固定資産税の住宅用地の特例の解除が可能になりました。

つまり、特定空き家に指定されなければ放置しても良いという考え方は通用しなくなり、早急な対策を講じる必要が生まれたことが、従来の空き家法との大きな違いです。

関連記事:

suumo.jp

参考:
国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について
e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法

空き家の費用負担イメージ

(写真/PIXTA)

空き家を譲るときにかかる費用・税金

空き家はたとえ無償で譲渡したとしても、譲渡する側、譲渡される側の双方に税金が課せられることがあります。

税金が発生するかどうかは、譲渡する側とされる側が、個人か法人かなどの条件によって変わります。

個人間の譲渡で発生するのが、不動産の登記費用や贈与税、不動産取得税や固定資産税です。

登記費用や取得税などは、無償譲渡される分、譲渡を受ける側が払うことが一般的ですが、絶対ではないので相手と費用をどのようにするかを話し合いましょう。

場合によっては登記などの手続きが煩雑になるので、専門家に依頼するのも良いかもしれません。

一点注意しておきたいのが、空き家にかかる税金です。

古家付きの場合、税制特例を受けているので、更地にしてしまうと古家があったときよりも高くなっていまいます。

解体して譲渡する際には気を付けておきましょう。

もし解体する場合、費用助成をはじめ、税金や再利用方法についてなどさまざまな相談にのってくれる自治体も増えているので、最寄りの自治体へ相談してみるのも手です。

無償譲渡には贈与税がかかる!トラブルとその防止策

たとえ空き家をタダで譲渡しても、贈与にあたると判断されることがあります。
贈与にあたるということは、贈与税の対象になるということです。

空き家では家屋に不具合があることも多いので、本人たちがその空き家には価値がないと言い張りたくなりますが、税金の有無は客観的価値で判断されます。

特に家屋よりも土地に対して贈与税が課せられることが多いので注意しましょう。
贈与税の基礎控除額は110万円です。空き家全体の評価額が110万円を超えたら、規定にしたがって譲渡される側が贈与税を支払う必要があります。

また、個人から法人に譲渡した場合、譲渡する側にみなし譲渡所得税が課せられます。
無償譲渡、または時価の半額未満の低い価格で取引されたとしても、不動産時価で譲渡したものとされ、そこから譲渡費用や取得費を差し引いて計算されるものです。

通常の不動産売却で課せられる譲渡所得税と同じで、条件を満たしていれば特別控除なども適用されます。

資産を贈与した個人は法人からお金を受け取らないため、譲渡所得は発生しませんが、実際の時価が高いにもかかわらず、無償贈与すれば、本当は支払うべきだった所得税の負担を回避することができてしまいます。

このような抜け道を防ぐために資産を時価で譲渡したとみなして譲渡所得を計算するのがこの制度です。

譲渡する際に発生する税金について
個人に譲渡する場合 法人に譲渡する場合
譲渡側:なし 譲渡側:みなし譲渡所得税
譲渡される側:贈与税 譲渡される側:法人税
関連記事:

suumo.jp

もしかしたら売れるかも?空き家を売却するときメリット・デメリット

次は空き家売却に関して紹介します。

一般的に空き家売却の流れは、中古物件の売却と同じく不動産仲介会社に相談し、買いたい人とのマッチングを行います。

売り出し価格は不動産仲介会社と相談して、個人個人の事情に合わせて決めましょう。
とにかく早く売却してしまいたい人は安めに設定、じっくり腰を据えてもいいという人は周辺の中古物件の相場を見比べながら、当初は高く設定するなどです。

契約にかかわる基本的な内容は中古物件売買と変わらないので、依頼する不動産仲介会社と確認しながら進めましょう。

売却のメリット「契約上のトラブルが少なくスムーズ」

プロである不動産仲介会社が仲介してくれるので、「無償譲渡」に比べて、とかく煩雑になりがちな売買契約でのトラブルやストレスが少なくすむことが挙げられます。

また、先述したように売却を急いでいない場合、納得できるどころか、思ったよりも高額で売却できることもあります。

空き家を売却するイメージ

(写真/PIXTA)

売却のデメリット「いつ売れるのか時期がわかりにくい」

築浅の中古物件と違い、空き家は築年数が経過し、状態によっては買い手がつきにくいことがあります。

その場合はなかなか買い手が現れず、長期戦になることもあるでしょう。

売却が達成できない期間が長くなればなるほど、税金や維持管理費用などランニングコストがかさんでいきます。

その場合は、税金や費用とのバランスを考えながら、建物を解体し、土地のみで売却活動を行ったほうが良い場合もあります。

そうした判断は素人ではジャッジするのが難しいので、不動産仲介会社の担当者とよく相談しながら進めましょう。

空き家にかかる税金イメージ

(写真/PIXTA)

なかなか空き家が売れないときはどうすればいい?

空き家を処分するために売却活動を始めても、すぐに売れるとは限りません。そこで、空き家を売りに出してもなかなか売れないときの対処法について解説します。

買取も検討する

不動産仲介で空き家が売れないときは、空き家買取を利用するのもよいでしょう。

空き家買取とは、買取会社に空き家を購入してもらう方法です。
買取会社が求める条件にマッチし、提示した買取価格に売主が同意すれば売却が成立するため、仲介よりも早く売却できます。

ただし、空き家買取の場合は相場よりも査定額が下がるため、売却益が少なくなりがちです。

ですが、売却までに期間がかかるほど、維持管理の手間や費用負担が発生してしまうので、ある程度期間を設けて売れないときは、ぜひ空き家買取の活用も検討しましょう。

リフォームを検討する

空き家が売れない要因として、建物や設備の老朽化などが考えられます。
そこで、リフォームを実施して外観や設備を整えることが、空き家を売れやすくするために有効です。

しかし、リフォームをしたからといって必ず売れるとは限りません。
さらに、リフォームの内容によっては、不動産仲介会社の売却戦略に沿わなくなる可能性もあります。

リフォームをして売却を有利に進めたいと思ったら、必ず不動産仲介会社へ相談し、一緒にリフォームの必要性を検討することが重要です。

建物を解体して土地のみを売却する

空き家を解体して、更地(土地)として売却をする方法もあります。
しかし、空き家の解体をするには解体費用が発生します。

空き家の解体費用については解体業者によって異なりますが、仮に坪5万円とすると、30坪の木造家屋を解体するのにかかる費用は150万円となります。

空き家の解体費用は、自治体によっては補助金制度を設けているところもあります。
例えば、東京都江東区の場合、老朽建築物の除却助成として除却に要する費用の2分の1が補助されます。
※令和6年度分の申請受付は、令和7年1月31日(金)をもって終了しました

しかし、空き家を解体する際の注意点として、空き家を解体して更地にしても売れる保証はない点と、仮に再建築不可物件にある空き家を解体してしまうと、新たに家を建てることができなくなる点が挙げられます。

また、空き家を相続していた場合、小規模宅地等の特例による固定資産税が安くなっているケースもありますが、解体をすると対象外になるため、固定資産税が上がるリスクもあるので注意が必要です。

参考:
国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

関連記事:

suumo.jp

空き家を売却する際の重要なポイント

売却で知っておきたいポイント1「契約不適合責任」

売却する側は、買主に対して契約不適合責任を負っています。

建物の状況をよく調べずに売却した場合、売却後に思わぬ不具合が発生して責任を問われ、トラブルになることがあります。

特に空き家は経年劣化が激しい場合が多いので、トラブルの予防は重要です。
おすすめは、インスペクションと呼ばれる建物診断を実施し、建物の状態をしっかり確認しておくこと。

診断から建物の不具合を買主に伝えることで契約不適合責任を追及されるリスクを極力減らすことができるようになります。

関連記事:

suumo.jp

suumo.jp

売却で知っておきたいポイント2「仲介会社選び」

仲介による売却では、適正な市場価値や売却価格を見極めることが成功のカギを握ります。
それには信頼できる不動産業者を見つけて相談することが大切です。

一括査定サイトを使うことなどで複数の不動産仲介会社の話を聞き、空き家の知識を豊富に持ち、売却に強い不動産仲介会社を見つけることから始めてみましょう。

関連記事:

suumo.jp

空き家の媒介を依頼する仲介会社選びのイメージ

(写真/PIXTA)

スピーディーさが一番の魅力。空き家の「買取」サービスとは

買取サービスのポイント

最後に紹介するのが買取(買取サービス)の活用です。

これは買取会社に直接空き家を買い取ってもらうことです。

空き家を買い取った買取会社は、その後、建物をリノベーションして再販したり、解体して土地だけで販売したりするなどさまざまな方法で活用します。

依頼する際は売却時と同じく一括査定で買取会社を見つけましょう。並行検討できるので、より希望に合った会社が見つけやすくなります。

買取のメリット「すぐに処分しやすい」

一般的な仲介売却と比べると、買い手を探す期間が要らないため、スピーディーに手放せるというのが大きなメリットです。

特に空き家になるような物件の場合、建物の価値が著しく低くなっている場合もあるため、個人への売却では買い手がつきにくいことがあります。

また、遠方に住んでいて、税金支払いや管理負担から早く開放されたいという人や、建物が倒壊寸前など特定空き家になってしまうような空き家を持っている場合、いち早く処分することが重要になります。 そんな場合、きっと大きな力になってくれるでしょう。

買取のメリットまとめ

  • すぐに売却できて処分がスムーズ
  • 管理など負担が重たく、早く開放されたい人におすすめ

買取のデメリット「売却金額が低くなりがち」

買取サービスの弱点として挙げられるのが、売却金額が安くなりがちということです。
一般的に買取サービスで売却した場合、金額が相場の5~8割程度に下がってしまうといわれます。

通常の売却に比べて売却価格面で損を感じてしまうこともあるでしょう。
また、買取会社によっては、古家付きの空き家を買い取る際、解体費用を含んだ額で買い取り価格を提示されることがあります。

その場合は、費用が適正なのかどうか、自身で解体して更地にする場合とどちらが得なのか、解体業者に見積もりを取ってみましょう。

買取のデメリットまとめ

  • 買取価格は一般的に売却価格より低くなる
  • 解体含んだ費用を提示されることがあるので注意

買取で知っておきたいポイント

通常の売却に比べて金額が下がってしまうのが買取サービスの弱点です。
そこで最初は仲介による売却と買取の並行で進めてみましょう。想定したよりも早く、高値で売却することができるかもしれません。

また、買取も売却と同じく、どのような買取会社に依頼するかが成功のカギになります。

何社もの買取会社へ一度に査定を依頼できる一括査定を活用しましょう。
査定額や対応力などを比べやすくなるので、より理想に近い買取会社を見つけられるでしょう。

関連記事:

suumo.jp

suumo.jp

空き家の査定イメージ

(写真/PIXTA)

処分だけでない 空き家の活用方法

賃貸や民泊、地域活性などで活用されている

SDGsが叫ばれている現在。処分だけでなく、活用することで限りある資源を有効に活用することもできます。

所有する空き家の建物自体が比較的新しい、また人気の立地に恵まれているなら、賃貸物件にして家賃収入を得るという方策もとれます。

家賃収入によっては、毎年の税金やランニングコストを支払いつつ、家賃収入を得ることで資産を増やすことも可能かもしれません。

むろん賃貸の需要が見込める、例えば都心部のような人口集積性のある街かどうかがポイントでしょう。

その他の活用方法としては思い切って解体し、更地にして土地活用に使う手もあります。
駐車場にしたり、倉庫スペース、コンビニチェーンに賃貸したりするなど活用の幅も広がるでしょう。

さらに、地域活性の場としても活用されています。

例えば長年放置されて買い手も解体もできなかった空き家を改修し、DIYスペースとして提供。アート系学生の工房やアトリエとして活躍している空き家もあります。

もちろん空き家の状態によって、どの程度のリフォームが必要になるのかは違います。
最低限のリフォームですむかどうかをジャッジすることが必要です。

現在はこうした空き家を再生し、地域活性や資産を社会貢献に使うサービスを行っている企業も増えています。

維持する税金との兼ね合いやニーズを正確に把握するなど、専門的な知識が必要になることが多いものの、思い入れのある家を単純に処分するのではなく活用することで、思い出を大切にしながら社会貢献もできます。

築70年超の放置されてきた空き家(左)を改修して学生が使える工房に(右)

築70年超の放置されてきた空き家(左)を改修して学生が使える工房に(右)(画像提供/NPO法人住まいと資産の相談窓口)

相談できる不動産仲介会社を見つけることが近道

空き家の処分には3つの方法がありますが、いずれも専門的な知識、アドバイスがあるとスムーズに進めやすいものです。

なかでも売却や買取については、現在の市場価値がどの程度なのか客観的に判断すること、適正な売却価格を見極めることがとても重要です。

それには信頼して任せられる不動産業者を見つけることが大切です。

一括査定サイトを活用するなどして空き家の知識を豊富に持ち、売却や買取、譲渡など、親身になってくれる不動産仲介会社を見つけましょう。

空き家の活用イメージ

(写真/PIXTA)

まとめ

  • 空き家の処分方法は大きく分けて無償譲渡・売却・買取の3つ
  • 無償譲渡でも税金が発生する場合があるので注意する
  • 一括査定で空き家売却や買取に詳しい不動産仲介会社を見つけて相談するのが近道

取材協力/杉山 勝さん NPO法人 空き家解決センター 代表
監修/弁護士 横山宗祐さん
イラスト/タバタ画房
構成・取材・文/山口俊介
文/サクラサクマーケティング株式会社

ページトップへ戻る