不動産売却を検討する際、どんな売却方法を選びますか?
今回、株式会社リクルート・住まい領域の調査研究機関である「SUUMOリサーチセンター」は、不動産売却検討者と実際の売却経験者を対象に調査を実施しました。
この記事では、SUUMO副編集長・笠松美香さんの解説を交えながら、不動産売却経験者や検討者が実際にどのような売却方法を検討したのか、また、売却完了までの過程で手間だと感じた点、仲介会社への満足度といった調査結果を紹介します。

記事の目次
不動産売却調査の概要
株式会社リクルート「SUUMOリサーチセンター」は2024年12月、過去1年間に不動産売却を検討、実施した首都圏(東京都/千葉県/埼玉県/神奈川県)在住の20歳~69歳男女を対象に、「住まいの売却検討者&実施者調査(首都圏)」を実施しました。不動産の売却に関する意識と行動の把握を目的としたもので、リクルートは調査結果を分析した「住まいの売却検討者&実施者調査(首都圏)」調査報告書を公表しています。
不動産所有者の売却検討率・売却完了率ともに4年連続で上昇
過去1年間の土地・居住用不動産所有者の売却検討率を見てみると、2024年は全体の20.2%で、2020年と比較すると7.7ポイント、2022年からは1.9ポイント上昇しています。また、検討した人の中で実際に売却を完了した人は39.6%で、2020年以降4年連続で増加しており、近年不動産の売却を検討する人も、その中で実際に売却を完了する人も、どちらの割合も増えていることが分かりました。


売却実施者が実際に売却した方法とは?
土地・居住用不動産所有者で売却を検討した人の中で、2024年に実際に売却を完了した人は39.6%という結果でしたが、実際に売却した方法はどういうものだったのか見ていきましょう。
売却時には「仲介業者に依頼」する人が約半数
2022年から3年連続で「仲介業者に依頼、売却する」人が一番多い結果となりました。具体的には2024年には45.8%、2023年は44.3%、2022年は47.1%で、どの年度も約半数が仲介業者に依頼して売却していることが分かります。次に多かった「不動産会社に買い取ってもらう」は2022年には26.0%ですが、2023年は24.9%、2024年は21.1%で、なだらかに下降しています。
注目したいのは、「仲介業者に依頼、売却する」と「不動産会社に買い取ってもらう」を合わせた不動産会社が関与する売却方法が毎年微減していること。一方で2022年には27.0%だった「その他」が、2023年には30.9%、2024年には33.0%と、3年間で6ポイント上昇しており、2024年には実際に住まいを売却した3人に1人が、「仲介業者に依頼、売却する」または「不動産会社に買い取ってもらう」以外の売却方法を選んだことになります。
不動産仲介会社に依頼するのは50代~60代では約8割。若い世代ほどその割合は低い
年代別に見ていくと、50代、60代は「仲介業者に依頼、売却する」または「不動産会社に買い取ってもらう」という人が全体の8割を超え、「その他」は2割に満たないのですが、40代では「その他」の売却方法を選んだ人は29.7%、30代は42.9%、20代は54.5%です。
20代で「仲介会社に依頼、売却」「不動産会社に買い取ってもらう」を選択した人は合わせて45.4%で、60代の82.9%、50代の81.4%との差はそれぞれ37.5ポイント、36ポイントとなり、若い世代ほど最初から仲介会社や不動産会社に依頼する割合は低いようです。
SUUMO副編集長・笠松美香さん(以下同)「任意売却、知人や親族などへの売却などがわずかずつですが増えており、多様な状況に置かれている現代の不動産の様子が見て取れます。少しでも条件よく売るためにも、さまざまな手段を検討することは大事ですが、焦って重要な点を見落としてしまっては元も子もありません。プロの手を借りるところはしっかり見極めましょう。」

売却価格が低い層は、不動産会社に頼らずに売却する傾向
売却価格別のデータを見てみましょう。
全体では「仲介会社に依頼し売却する」人が多いですが、売却価格が1000万~1500万円未満の人のみ「仲介会社に依頼し売却する」より「不動産会社に買い取ってもらう」割合が高い結果でした。この価格帯では「任意売却する」が17.6%、「仲介業者に依頼せずに見つけた買い手に売却する(自己発見取引)」が11.8%、「売却はしないで賃貸に出すことにした、賃貸物件を建てることにした」が7.8%となっています。
そのほか、1000万円未満で「親族・知人に買い取ってもらう」人が10.1%とほかより高い数値になっています。
「仲介会社に依頼し売却する」割合は売却価格帯が高いほどその傾向が強く、1000万円未満、1000万~1500万円未満など低い価格帯では、不動産会社に頼らずに売却しようとする傾向があるようです。
「例えば地価の安い地方の物件や、立地条件や広さなどの面であまり市場で評価されにくいタイプの物件の場合、時間をかけて集客活動をしても、その分、高値で取引できるとは限りません。そのため期間を優先して買取りにしたり、その土地の魅力をよく知っている地縁のある人、例えばご近所さんや親族にだけ情報を出して売るという選択をする方が多いと考えられます。また、2024年7月から不動産の仲介手数料に関する法改正が行われ、特に800万円以下の低廉な不動産売買において、仲介手数料の上限が引き上げられました。これは取引価格が低い物件は仲介手数料が低く、不動産会社が手間をかけられないためあまり扱わないという問題に対応したもの。これにより、仲介手数料はかかるものの、不動産会社の専門性やネットワークを生かして販売を手伝ってもらえる物件の範囲は広がっているので、扱ってくれないかも、と決めつけないで査定の依頼や、相談をしてみることが重要です。」

住まいの売却方法はどんなものがある?
データにも登場した売却方法は具体的にどんな方法なのか、チェックしておきましょう。
1.仲介会社に依頼、売却する
売主と買主それぞれが仲介会社と媒介契約を結び、主に個人に不動産を売買する方法です。
買い手が見つかるまで時間がかかる可能性があるほか、購入を検討している人が物件を内見に来たときに対応する必要があります。
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2.不動産会社に買い取ってもらう
不動産会社が物件を買い取る方法で、売主は不動産会社と売買契約を結びます。
売買契約なので仲介手数料がかからず、内見に対応する必要がありません。ただし、買取り価格は仲介の場合の7割〜8割程度になることが多いです。
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3.競売
住宅ローンを借り入れている人が返済できなくなった場合、金融機関などの債権者が裁判所に申し立てることで担保となっていた不動産などの財産を差し押さえ、裁判所の権限で強制的に売却することをいいます。一番高く買ってくれる人に売却し、その代金は債務返済に充てられます。競売物件は一般的な相場よりも価格が安くなる傾向にあります。
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4.任意売却
住宅ローンを借り入れている人が返済できなくなった場合に担保となっていた不動産を売却する点は競売と同じですが、裁判所ではなく不動産所有者が自らの意思で売却するのが任意売却で、ローンの滞納があることが前提となります。
競売よりも市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。一方で債権者である金融機関の同意がないと任意売却ができないのがデメリットです。
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・自己発見取引
不動産会社を介さず、不動産所有者が自分で買主を見つけて個人間で直接取引を行います。直接取引を行うので不動産会社に仲介手数料を支払う必要がありませんが、トラブルが起こりやすく手続きの手間がかかる可能性があります。また、買主が住宅ローンを利用する際には、重要事項説明書を入手するために宅地建物取引士がいる不動産会社に依頼する必要があります。
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・リースバック
不動産の所有者が買主と賃貸契約を結び、売却した不動産に引き続き住み続ける仕組みです。「住宅ローンが苦しいが、自宅には住み続けたい」「まとまった資金が必要だが、引っ越しはしたくない」といった人に適しています。不動産会社やリースバック事業者など専門業者が買い取るため売却期間が短くて済みますが、売却金額が住宅ローンの残債を下回る場合、自己資金等で住宅ローンが完済しないとリースバックの利用はできません。
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不動産会社を関与しない売却方法検討層が微増?売却時に検討した売却方法は
次に、売却前に検討した売却方法はどのようなものだったのか、見ていきましょう。
「自己発見取引」や「任意売却」が3年連続で微増
「あなたが過去1年以内に不動産を売却しようと思ったときに検討した売却方法をすべてお選びください」という質問に対して、全体では2022年から3年連続で「仲介会社に依頼、売却する」人が一番多い結果になりました。2024年には56.8%、2023年は55.6%、2022年は59.0%と、半数以上がまず仲介会社への相談を検討していることが分かります。次に多かった「不動産会社に買い取ってもらう」は2022年には46.1%、2023年は44.0%、2024年は44.7%となっています。
一方で、「仲介会社に依頼せずに見つけた買い手に売却する(自己発見取引)」は2022年に16.9%でしたが、2023年には17.1%、2024年は18.8%と2年で1.9ポイント上昇しています。同じく「任意売却する」も、2022年に16.0%だったのが、2023年には16.9%、2024年は18.7%とこちらも2年で2.7ポイント上がっています。
20代を中心に、不動産会社に依頼せずに売却する方法を検討する人が増加傾向に
年代別に見ると、20代は「仲介会社に依頼、売却する」は38.9%、「不動産会社に買い取ってもらう」も39.4%で、ほかの年代に比べると多くありません。そして、「仲介会社に依頼せずに見つけた買い手に売却する(自己発見取引)」24.2%、「任意売却する」27.3%、「売却はしないで賃貸に出すことにした。賃貸物件を建てることにした」19.7%、「親族・知人に買い取ってもらう」21.7%など、不動産会社に依頼しない方法も幅広く検討をしていることが分かります。
このことから、近年、不動産会社を介さない幅広い売却方法が若年層を中心に検討されていることが読み取れます。
「近年、若い世代で資産形成のために投資用マンションを購入するなど、不動産投資に関心を持つ人が増えているといわれています。ただ現実には想定外のことが起き、売却せざるを得ない状況になっている人もいらっしゃるのでしょう。空室で収入が得られない場合はどうするかなど、事前に想定はしていると思いますが、改めて購入時にはさまざまなシミュレーションをしておくことをお勧めします。」

仲介会社への満足度は、シニア層はマナーを、若い世代は情報量や回答の妥当性も重視
不動産の売却を検討し、仲介業者への問い合わせ、査定、媒介契約を行った人の仲介会社への対応満足度を見ていきましょう。
年代別の満足度を見ると、40代から60代では「担当者の態度や言葉遣い」への満足度が67%を超え、「担当者の説明の分かりやすさ」や「問い合わせへの返答の早さ」でも約6割が満足と回答しています。
一方、20代、30代では、「査定価格の妥当性」や「提供される情報の量」も同程度の割合で満足度が高い傾向にあります。このことから、若年層は担当者のマナーや対応スピードだけでなく、相談内容に対する具体的な回答や情報提供にも高い関心を持っていることがうかがえます。
「不動産売却にあたり、不動産会社の担当者には、スピードや交渉力、知識などいろいろなスキル・スタンスが求められます。出会いがしらの1社にすぐ決めてしまわないで、一括査定で感触のよかった複数の会社に、一通りお話を聞いてみて選んでください。周辺マーケットの状況把握や、売却活動方針など違いが見えてきますよ。」

売却過程で手間なのは「必要な書類の準備をすること」
最後に、実際に売却した人が売却検討する過程でどんなことを手間だと感じたのか、具体的に見ていきましょう。
最も手間なのは「必要書類の準備をすること」
「必要書類の準備をすること」が24.0%(2024年)で、4人に1人が手間だと感じていることが分かりました。媒介契約を結ぶ際や、売買契約をする際、引き渡しをする際など、シーンによって複数の書類が必要なため、準備をするのが面倒だと感じる人が多いようです。
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20代は仲介会社の比較や情報収集も手間だと感じている
不動産の売却を検討する中で最も手間だと思ったことについては、「必要な書類の準備をすること」がどの年代も高いのですが、20代は「仲介会社の比較をすること」や「売却するまでの手順などの情報収集をすること」も20.7%と高めの数値でした。ほかにも「仲介会社とやりとりをすること」が17.7%で、同じように手間と感じているようです。
「仲介会社とのやりとりすること」や「仲介会社の比較をすること」は、30代~60代でも手間と感じる人が一定の割合でいるようです。
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30代~50代を中心に内覧の対応をすることが手間に感じている
「内覧の対応をすること」は30代~50代を中心に手間だと感じているようです。一方、20代は12.1%、60代は10.3%で、若い層、シニア層は他人が自宅に入ることに対してそれほど手間と感じていないようです。
手間と感じる理由としては、内覧に来る前の準備や掃除などが挙げられます。30代~50代は子育て世代であり、さらに日々働いていると内覧のために家の中を掃除することに対して面倒と感じる人も多いのもかもしれません。
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今回の調査結果から、不動産所有者の売却検討率・売却完了率はともに4年連続で上昇しており、検討・実施した売却方法は若い世代を中心にさまざまな方法が選択されていることが分かりました。売却の際には、一括査定を活用しながら、自分に合った売却方法を選択し、後悔のない売却を目指しましょう。
<調査概要>
■調査目的:不動産売却検討者&実施者の意識と行動の把握
■調査対象:下記条件を満たすマクロミルモニター
【スクリーニング調査】
首都圏(東京都/千葉県/埼玉県/神奈川県) 在住の20歳~69歳男女
【本調査】
過去1年以内に居住用不動産の売却を主体的に検討し、以下いずれかの行動をした方
情報収集、仲介会社へ問い合わせ、訪問査定、媒介・代理契約、売却
■調査方法:インターネットリサーチ
■調査時期・回答数:
スクリーニング調査 2024年12月20日(金)~2025年1月 8日(水) 有効回答数:20000
本調査 2024年12月23日(月)~2024年12月25日(水) 有効回答数: 1238
●取材協力
笠松美香さん

SUUMO副編集長
「SUUMOジャーナル」をはじめとする情報コンテンツを担当。またSUUMOリサーチセンター研究員も兼務。住まいに関するカスタマー動向、物件の最新トレンド全般や住まいに関わる制度や住宅ローンほか、住宅購入や賃貸を借りるためのノウハウ等について幅広くメディア出演や講演などを行う。
文/荒川文乃


