マンション価格は、都心エリアを中心に上昇基調が継続しています。一方、2026年は、住宅ローン金利の上昇やマンションの転売規制など、マーケットに大きく影響しかねない動きも予測されます。すでに価格調整に入っているエリアもあることから「売り時」の判断は、これまで以上に慎重さが求められるでしょう。
そこで今回は、東京カンテイの上席主任研究員である高橋 雅之さんに、マンションの売り時を検討する際の重要な判断指標となる相場の動きや築年帯ごとの売却のポイント、マンション売却の適切なタイミングなどについて話を聞きました。

記事の目次
【2026年】マンションは売り時なのか?
ーーマンションの売り時の大きな判断指標となる「相場価格」ですが、ここ数年は上昇基調が継続しています。その理由について、どのようにご覧になっていますか?

高橋雅之さん(以下、高橋):2025年の一年間で、都心エリアを中心にマンション価格は大きく上昇しました。ただ、全国的に価格上昇が波及しているかというとそうではなく、都心エリアが一本調子で上がっている一方で、それ以外の多くのエリアは上値が重く、二極化が進行している状況です。都心エリアとは、具体的には東京23区や大阪市、福岡市など、将来的にも人口や世帯数の維持・増加に期待できる地域を指します。
一般的な収入の世帯が売買するエリアについては、相場価格が「限界」に近づいているのだと思います。都心部のように前年比10%増、20%増のペースでマンション価格が上がる状況は、すでに多くの実需層にとって現実的とは言えません。一方で、都心エリアのマンションの購入層は、比較的、資金に余裕のあるパワーカップルやパワーファミリー、国内外の投資家、富裕層、あるいは法人などが中心です。こうした層は、昨今の株高や円安を背景に資金力をさらに高めていますから、まだ「限界」には達しておらず、その限界自体も引き上がっている状況です。これが、都心部とその他大半の地域の二極化を加速させているのだと思います。
ーー2025年は、2024年と比べると都心エリアのマンションの価格上昇がやや鈍化しているように見えます。その理由についてはいかがでしょうか。

高橋:これまで資金に余裕のある方々のニーズを集めた都心エリアといえども、少し「上がりすぎた」ということなのだと思います。実は、2024年後半頃からじわじわ都心エリアの在庫物件数が増え始めています。やはり在庫の数が増えてくるとなると、今までのような強気な価格での売り出しはしにくくなります。
ーー2024年に日本銀行がマイナス金利政策を解除して以降、複数回の利上げによって住宅ローン金利も上昇基調にあります。金利上昇はマンション価格上昇のブレーキになることはあるのでしょうか?
高橋:金利上昇の影響についても、地域差があると思います。一般的な収入の世帯は総じて住宅ローン比率が高いため、金利上昇がマンションの需要や価格に影響する向きがあります。一方、都心エリアのマンションの購入層はキャッシュで購入する方も多く、金利以上に資産性や節税効果が重視されやすい傾向があるため、緩やかな金利上昇では大きな影響を受けないのではないでしょうか。
ーー2026年はどのような市場になると予想されていますか?
高橋:ファンダメンタルズ※として、先述のとおり、行き過ぎた価格上昇と在庫の増加により上昇圧力が若干弱まっていますが、2026年は「アクセル」になる要素と「ブレーキ」になる要素が混在しており、マンション市場の予測は非常に難しいところです。
例えば、2025年秋ごろから海外の方によるマンション購入が停滞しているという話を複数のチャネルから聞いています。一方で、2025年末に閣議決定した2026年度税制改正大綱では、住宅ローン控除の制度延長と中古住宅の控除の拡充案が盛り込まれました。これは「アクセル」となり得る改正ですが「ブレーキ」を相殺するまでの効果があるのかは不透明です。今年の3月までの春商戦で、こうした「アクセル」と「ブレーキ」の影響が見えてくるはずですので、この間のマーケットの動きが2026年のマンション市場を占ううえでも重要になってくると思います。
※国や企業などの経済状況を示す指標のこと
【築年数別】マンションの相場価格と売り時の判断ポイント
ーー続いて、「築年帯」ごとの売り時の判断ポイントを教えていただけますか。まず、首都圏では築5年以内の中古マンションの坪単価が新築を上回っています。その理由と売り時を判断するうえでのポイントを教えてください。

高橋:新築マンションの供給数は年々、減少傾向にあり、契約から引き渡しまでに時間を要するということもあって、築浅マンションの需要が高まっているのだと思います。とはいえ、本来、中古マンションは市場原理が働いて価格が決まるものですから、新築より高く売れるというのは異様です。おそらくこうした状況は長く続かず、水面下で在庫が積み上がっているという状況も鑑みると、価格上昇の最終局面に入りつつあるという見方もできます。
ただ、短期的に2割も3割も価格が落ちるというのも考えにくいので、売り時を検討するうえでは、周辺の物件や同じマンションの売却事例を注視しておくと良いでしょう。ポータルサイトをウォッチしているだけでも、価格変更や売却期間などもある程度は把握できますし、不動産会社に相談しながら売り時を見定めるというのも良いと思います。
ーー築6年〜築10年の中古マンションも新築と同等の坪単価で推移しているようですが、この築年帯の売り時の判断ポイントは?
高橋:築5年以内のマンションは、新築マンションをも凌駕する価格で取引されていますので、予算感に合う物件を探して築6年〜築10年程度の物件に行き着くケースも多いのだと思います。ただ、上記のグラフでは新築と同等の金額で売れているようにも見えても、築浅の段階で市場に出てくるのは流動性が高い好立地の物件が中心ですので、どのようなエリアでも新築より高く売れるということではありません。この築年帯についても、いつまでも新築と同等やそれに近い金額で売れると楽観視するのは危険でしょう。
ーー築10年を超えると「築浅」とは言いにくくなりますが、近年の上昇率でいえば、築浅物件と同じような軌道を描いています。築20年までの築年帯のマンションの需要も高いということでしょうか?
高橋:価格が比較的安いということはもちろん、築20年までのマンションは品確法※施行以降の分譲ということもあって、今のマンションと設備や間取り、造りに大きな遜色はありません。また、2000年代はまだ今と比べて地価が安かったので、好立地の物件が多く、広々とした間取りも魅力です。昨今、新築マンションの狭小化が進んでいることもあって、広さを求めてこの築年帯を選ぶ方もいるのだと思います。
※品確法:2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略称。住宅の性能表示基準や新築住宅等の瑕疵担保責任について定めた法律
ーー築21年〜築30年の中古マンションは、それ以前の築年帯と比べると目立ちませんが、やはり上昇傾向にあり、2024年後半以降はそれが加速しているように見えます。この築年帯のマンションのポイントは?
高橋:売却に際して、手を加えるかどうかをよく検討することでしょうか。この築年帯になると、建具の劣化や設備の故障などが出てきますが、意外と「手つかず」のほうが売りやすいということもあります。リフォーム・リノベーションにかけた費用の分だけ高く売れるとも限りません。判断は難しいものの、まずは手を加えない状態で不動産会社に相談されてみると良いと思います。
これくらいの築年帯になると「管理状態」も需要を分ける重要な要素のひとつになってきます。近年は、管理計画認定制度※1やマンション管理適正評価制度※2の創設、修繕積立金に関するガイドラインの改定、そして高経年マンションの増加などを受け、マンションの管理を重視する方が増えています。これまで管理というと、清潔感や美観などが重視されていましたが、今後は「財政面」や「経営面」がマンションの価値を左右する時代になっていくはずです。
※1:マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、マンション管理組合に対して地方公共団体が適切な管理計画を持つマンションとして認定する制度
※2:マンションの管理状態や管理組合運営の状態を6段階で評価し、インターネットを通じて情報を公開する仕組み
ーー築30年を超えてくると、近年のマンション高騰期においても坪単価はほぼ横ばいで、上昇していません。築古物件の売却のポイントを教えてください。
高橋:専有部はリフォーム・リノベーションすればきれいになりますが、構造躯体や配管の更新は難しいので、築30年、40年を超えてくると耐震性や設備の劣化などに不安を感じる方が増えると思います。また、購入後のランニングコストを気にされる方もいます。
買取再販業者に売ることもひとつの選択肢になってきますが、近年は買取再販市場にも変化が出てきているようです。古いマンションを買って再販するという従来のビジネスモデルから、築浅の物件を買って軽微な改修をして再販するというモデルへと移行する動きもあるようなので、条件によっては「買い取ってくれる業者が見つからない」ということもあるかもしれません。
この場合は一般の方に向けて売却していくことになると思いますが、ここでも判断が分かれるのが、改修してから売るべきかどうかだと思います。リフォームプランを付けて売却するといった方法もありますので、周辺エリアの需要や競合物件の状況なども見て、不動産会社とともに判断していかれるのが良いと思います。
マンションの売り時は何月? 適した「タイミング」とは
ーーマンションの売却に適した「月」というのもあるのでしょうか?

高橋:例年、年度末の3月と異動や転勤が多い秋ごろに中古マンションの成約件数が伸びる傾向にあります。ただ賃貸住宅のように、時期による差がそこまで顕著なわけではありません。成約価格についても、この時期を逃したら大きく下がるということも起きにくいので、基本的には自分たちの都合や事情を優先して売却を検討していかれるのが良いと思います。
ーーマンションは一戸建て以上に「競合物件」と比較されることが多いと思いますが、競合となる物件の数や売り出し価格なども、売り時の判断に影響してきますか?
高橋:競合物件より高い金額で売り出すとなかなか売れないということはあると思います。とはいえ、競合物件が早期に売れる可能性もありますので、競合の有無や価格だけでなく、できれば反響の様子までわかると売り時が判断しやすくなります。ポータルサイトでは反響まではわからないので、不動産会社に相談しながら判断していくのが良いのではないでしょうか。
ーー日本銀行は2025年末に利上げを決定し、2026年4月にも変動型の住宅ローン金利が上がる可能性が高くなっています。現在も利上げの機運が高まっていますが、住宅ローン金利が上がる前に売り切ってしまったほうがいいという見方もありますか?
高橋:ローン比率が高くなりやすい価格帯のマンションを売却するのであれば、金利が上昇する前に売るというのは、ひとつの戦略になってくると思います。一方、金利上昇の影響を受けにくい都心エリアのマンションについては、このまま価格が上昇基調を維持するのであれば、急いで判断する必要はないかもしれません。
ーーマンションを所有していた期間によって、譲渡所得(売却益)にかかる税率は変わります。最近はマンション価格の高騰により、譲渡所得が出るケースも増えていると思いますが、税率が変わる5年を待つというのもひとつの選択肢になってきますか?
| 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 (所有期間5年超) |
15% | 5% | 0.315% |
| 短期譲渡所得 (所有期間5年以下) |
30% | 9% | 0.63% |
高橋:たしかに税率の差により税額には開きが出るケースもありますが、所有期間が5年を超えるまで待ったことで市況が変わり、売値が下がる可能性もゼロではありません。大きく下がるようであれば、多少、税額が高くても5年を待たずして売ったほうが良かったということにもなるでしょうし、大きく崩れないのであれば税率が下がったほうが手残りが増えることもあるでしょう。一概には言えないので、市況を見ながら判断していくことになると思います。
ただ自己居住用財産であれば「3000万円特別控除」や「軽減税率の特例」などの適用によって、税額を抑えられる可能性があります。こうした控除特例を適用できる場合は、控除適用後の税額をシミュレーションして売り時を検討する必要があるでしょう。
マンションの売り時を逃さないためのポイント
ーー2024年の中古マンションの平均成約期間は、5カ月程度。近年は、中古マンションの売却にかかる期間が長期化しているのでしょうか?

高橋:新築マンションは、竣工後に一定の時間をかけて売るスタイルがスタンダードになっていますが、近年は中古マンションもじっくり売却する動きが見られます。ただ、売り出し価格と成約価格の乖離率は縮小傾向にあります。
従来は、一定期間売れないと「売れ残り感」が出てしまうということから早く処分したいと考える方が多く、実際に売却期間が長期化すると、売り出し価格と成約価格の乖離率が大きくなる傾向にありました。しかし、2024年のデータからは、早期かつ大幅な価格改定をせず、じっくりと買い手が現れるのを待っている様子がうかがえます。ただ2024年と現在ではまた市況を取り巻く環境も変わっていますし、マンションの条件によってもこの辺りの見極めや売却戦略は変わってくると思います。
ーーとなると、売り時を判断するうえでは、こうしたデータを参考にしつつも、やはり最新のデータを取り入れるようにするということも大切になってきそうですね。
高橋:とくに近年は市況が目まぐるしく変化していますので、公表データに縛られてしまうと商機を逃すことにもなりかねません。表立って見える売り出し価格は上昇傾向にあっても、水面下ではすでに下落傾向になっている可能性もあります。こうした時期だからこそ、鮮度の高い情報を取りに行く重要性は高いと思います。
鮮度の高い情報を有しているのは、やはり不動産会社です。良い情報ばかりではなく、最新のデータを用いた見立てや競合物件の動きなどを包み隠さず教えてくれる不動産会社は信用できるのではないでしょうか。
ーー先ほどお話しいただいた住宅ローン控除の改正に加え、2025年に千代田区が不動産協会に要望した転売規制や、高市政権が議論している外国人の不動産購入に対する規制などが、マンションの売り時の判断に影響することもあるのでしょうか?
高橋:国や自治体が危惧しているのは、行き過ぎた投機目的によるマンション購入と、それによる過度な価格上昇だと思います。規制によって行き過ぎた価格上昇が抑制される可能性はあるものの、マンション価格を2割も3割も下げて、多くの方が購入できるようにすることを目的とした政策ではないはずです。個人的には、こうした政策を含め、昨今の住宅政策は「建物が20年で価値がなくなる」といった従来の「経年劣化」という常識を「経年優化」に持っていくための壮大な社会実験の一環だと思っています。維持・管理を評価する制度をつくり、住宅性能の向上を推進しているのも、質の高い住宅ストックを増やすためなのではないでしょうか。マンションの価格を下げるというのは、こうした方向性に見合いません。
住宅ローン控除については、中古住宅の控除期間・借入限度額の引き上げ以外に、2028年から災害レッドゾーンの新築住宅を対象から外す改正も加えられる予定です。この改正からも、持続可能な社会のため高品質な住宅ストックを増やし、将来に引き継いでいこうとする政策的な意図を感じます。良質な物件に対する助成や優遇は、おそらく今後さらに強化されていくことになるでしょう。性能基準なども、さらに引き上げられることになると思います。「売り時」ということでいえば、災害リスクが高いエリアや管理不全に陥ってしまっているようなマンションは、できる限り早く売却したほうがいいということにもなるかもしれません。
まとめ
2026年は、市場を下支えする「アクセル」と市場を冷やしかねない「ブレーキ」の要素が混在するため、市況が読みづらく、売り時が見極めにくい1年になるでしょう。こうした状況ではとくに、「首都圏」や「都道府県」の相場価格といったマクロな情報だけで判断するのではなく、売却を検討しているマンションや周辺の物件の成約状況や反響といったミクロな視点にも目を向けることが大切です。
東京カンテイ市場調査部 上席主任研究員
膨大な不動産データを基に市況動向を鋭く読み解くアナリスト。メディア出演多数。東京カンテイの不動産マーケット情報誌「Kantei eye」の企画・編集・執筆にも従事。


