不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

不動産の競売・公売・任意売却の違いは?メリットやデメリットを解説

不動産における競売(けいばい)とは、不動産を所有する人(債務者)が何らかの理由で債権者へ金銭の支払いができなくなった場合に、債権者の申し立てをもとに、裁判所が差し押さえた不動産を強制的に売却する制度のことを指します。
例えば「住宅を担保にして借り入れをしていたが、返済が滞ったため、債権者の申し立てで担保にしていた不動産を裁判所が差し押さえて競売にかける」といったケースなどが該当します。

同じく、住宅ローンの返済のために行われる「任意売却」や、税金の滞納で差し押さえられた不動産が売却される「公売」もあります。
この「競売」と「任意売却」「公売」は、どんな特徴があり、どこに違いがあるのでしょうか。不動産の競売に関するメリットやデメリット、住宅ローン返済に困ったときの対策などと合わせて解説します。

不動産の競売・公売・任意売却の違いは?メリットやデメリットを解説

記事の目次

競売(きょうばい・けいばい)とは?

不動産の「競売」とは

一般的に「競売(きょうばい・けいばい)」という言葉が使われるときは、特定の場に出された品物を最もよい購入条件を提示した人(買い手、入札者)に売却する方法のことを指します。市場での「セリ(競り)」やネットオークションもこの「競売」に該当します。一方、不動産用語での「競売」は、不動産を所有する人(債務者)が何らかの理由で債権者へ金銭の支払いができなくなった場合に、債権者の申し立てをもとに、裁判所が差し押さえた不動産を強制的に売却する制度のことを指します。

広義・狭義での「競売」

「競売」は、広義では上に述べたように、複数の買い手が競争して値をつけ、その中で最高価額を申し出た相手に販売する、いわゆるオークションやセリなどのことです。一方、不動産業界における「競売」は「民事執行法による公の競売」を指し、意味合いとしてはこちらのほうが多く用いられています。例えば「住宅を担保にして借り入れをしていたが、返済が滞ったため、債権者の申し立てで担保にしていた不動産を裁判所が差し押さえて競売にかける」といったケースなどが該当します。

法律上の読み方は「けいばい」

競売は「きょうばい」または「けいばい」と読みます。一般的にはどちらの読み方も正しいとされていますが、法律用語としては「けいばい」が用いられます。

売地の看板

(画像/PIXTA)

任意売却・公売と競売の違い

任意売却、公売、競売の違いをまとめると以下のようになります。

項目 任意売却 公売 競売
主な目的 債務整理(住宅ローン返済困難時など) 税金滞納による差押物件の換価 債権回収(担保権実行など)
売却方法 一般の不動産売買と同様 入札または競り売り(インターネット公売など) 期間入札または特別売却
情報公開 通常の不動産売買と同様 官報、インターネットなどで公告 裁判所の掲示板、BITシステムなどで公告
プライバシー 比較的保たれやすい 公開されるため、プライバシー保護は限定的 公開されるため、プライバシー保護は限定的
残債務の扱い 債権者との交渉により、分割返済の可能性あり 売却代金で滞納税に充当、残りは別途請求される 売却代金で債務に充当、残債務は残る
主な対象者 住宅ローン返済に困窮している債務者 税金を滞納している個人や法人 担保不動産の債務者、破産管財人など

それぞれの違いについて解説します。

任意売却とは

「競売」ではなく「任意売却」という方法をとることもあります。任意売却は、文字通り任意の売却、つまり債務者が自主的に財産を売却することを指します。競売と違う点は裁判所が介入せず、不動産会社の仲介によって担保の不動産を売却する点です。不動産を所有する債務者の意思に沿って売却の手続きを進める任意売却は、一般的な不動産売買とほぼ同じです。

公売とは

「競売」に似ている不動産の売却方法に「公売」があります。公売は所得税や相続税、固定資産税などの国税や地方税の滞納があった場合に、国や地方自治体が税金を回収するため、差し押さえた財産を売却する手続きを指します。最近は、インターネット公売なども行われ、不動産以外にも自動車や美術品、時計など、さまざまな財産が公売の対象になっています。

任意売却のメリットとデメリット

任意売却は、任意という文字が示す通り、「債務者の意思で住宅を売却する」こと。不動産を売却するための手続きを債務者が主体となって行うため、通常の不動産取引に近い形で売却を進められます。債権者との調整などは発生しますが、一般的に任意売却で不動産を手放す場合は、競売よりも高く売却できるケースが多いのはメリットといえるでしょう。また、競売のように情報が公になることはないため、プライバシーが守られます。金融機関が認めてくれれば、売却代金の中から引っ越し費用をねん出できる点もメリットです。

一方のデメリットは、債権者である金融機関の同意がないと、任意売却ができないことです。特に、不動産の評価額よりローンの残債が多い場合には、金融機関の同意を得るのが難しいケースがあるようです。

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住宅ローンの滞納イメージ

(画像/PIXTA)

競売のメリット・デメリットを解説

競売のメリット・デメリットを表でまとめると以下のようになります。

  競売 任意売却
メリット 売却まで住み続けられる 債務者の意向を反映できる
相場に近い値で売れる
引っ越し費用支給の可能性
プライバシーが守れる
住み続けられる可能性
デメリット 価格が下がる
自腹で引っ越し
プライバシーが損なわれる
条件が厳しい

それぞれについて詳しく解説します。

メリット1 売却までの期間が比較的長い

競売のメリットのひとつは、売却に至るまでの期間が比較的長いこと。競売はローンを滞納してからいくつかの段階を経て手続きが始まるため、売却が決まるまで早くて半年、一般的には1年以上かかるといわれています。売却先が決まれば引渡命令が出るため立ち退かなければなりませんが、それまでは住み続けることができます。とはいえ、ローンや借入金の返済が滞っている状態ですから、住んでいる間も遅延日数や所定の利率に応じて遅延損害金が発生するため注意が必要です。

メリット2 現状渡し、欠陥への責任がない

競売は現状渡しとなるため、あとから土地や建物に欠陥があることが分かっても、責任を追及されることがないのはメリットです。一般的な不動産取引では重要事項説明が義務付けられており、雨漏りや建物の腐食、水回りの水漏れなど契約書に記載のない不具合が見つかると、「売主の契約不適合責任」として買い手に損害賠償を請求されたり、売買契約を解除されたりすることがあります。しかし、競売の場合は現状渡しが原則で、入札者も事前に開示された情報をもとに入札金額を決めているため、債務者は一切の責任を負うことがありません。また、裁判所が強制的に売却する制度であるため、売却にかかる詳細な手続きはすべて裁判所と債権者が行います。債務者はほとんど何もする必要がないのはメリットといえるでしょう。

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デメリット1 相場より大きく価格が下がる

競売のメリットを紹介しましたが、競売は一般的な不動産取引よりデメリットが多いかもしれません。最大のデメリットは、落札価格が一般的な不動産相場より安くなるケースが多いことです。安値で落札されればローンの返済に充てられる金額が減り、そこから競売費用が差し引かれれば、想定していたより返済額が増えてしまうこともあります。

デメリット2 自腹で退去

競売で不動産が落札され、代金が支払われれば、不動産の所有権は債務者から落札者に移ります。以前の所有者である債務者は不動産に住み続けられないので、速やかに退去しなければなりません。もちろん、退去時にかかる引越費用は債務者が自腹で支払います。居座ると、購入者からの不服申し立てによる「強制執行」で、強引に退去させられるおそれもあります。

デメリット3 プライバシーが損なわれる

競売にかけられた物件には、一般的な不動産売買のように購入(入札)を検討している人が内見に入ることはありません。その代わり、裁判所の「執行官」や、裁判所が物件の売却基準価額を決めるために選任した不動産鑑定の専門家「評価人」が調査に入ります。また、物件情報は裁判所で公開され、インターネット上の不動産競売物件情報サイト 『BIT』などにも掲載されるので、関心を持った人や不動産業者が周辺の様子を見に来たり、周辺住民に聞き込みをしたりするといったことも考えられます。そのため、近所の人に家が競売にかけられていることが知れ渡ってしまうなど、プライバシーが損なわれてしまうことがあります。

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不動産価値のイメージ

(画像/PIXTA)

競売にいたるまでの流れ

競売に至るまでの流れとしては、以下のようになります。

  1. 住宅ローンの滞納通知が届く
  2. 滞納通知の期限を超えると、債権者から競売に関する通達が届く
  3. 競売が決まると裁判所から通知が届く
  4. 競売に必要な物件の調査や入札期間の設定が行われる
  5. 入札完了後、立ち退きを求められる

それぞれ詳しく解説します。

住宅ローンの滞納

競売は「住宅ローンや借入金の返済遅延(滞納)が3カ月から6カ月続く」といった状況がきっかけになります。督促状などが届いているにもかかわらず、滞納が3カ月以上続けばその状況が信用情報として登録され、いわゆるブラックリスト入りになります。

一般的には滞納が6カ月続くと、「借入金を分割払いで期限までに支払えばよい」という「期限の利益」が喪失し、分割払いの契約は継続できなくなります。そして、債権者(銀行など)から「期日までに残金を一括返済できなければ担保物件を競売にかける」旨の通知が届きます。金融機関によっては、この段階で保証会社から債務者の残債について返済を受け、債権者が保証会社へ代わることがあります。その後は競売手続きに進み、債権者から裁判所へ「競売申し立て」が行われるのが一般的ですが、ケースによっては任意売却の交渉に応じてくれることもあります。

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裁判所から通知が届く

競売が決定すると、裁判所から「競売開始決定の通知」が届きます。この通知が届くと、まもなく担保物件が差し押さえられ、競売へかけられます。これ以降、債務者は自分の意思で物件を処分することができなくなります。

物件の調査と入札期間の設定

競売開始決定の通知が届いてからしばらくすると、「現況調査のための連絡書」が届きます。その後、裁判所の執行官と評価人(不動産鑑定士)が訪れて、実際に現地の様子を見て不動産の状態を調べる現況調査が行われます(競売開始決定の通知が届いてから約2カ月後までに行われるケースが多いようです)。執行官と評価人は現況を確認するため、室内に立ち入るなどして写真撮影をしたり、債務者に様子を聞いたりして「物件調査報告書」を作成します。屋内への立ち入りは債務者としては拒否したい場合もあるかもしれませんが、執行官と評価人には強制的に調査を行う権限があるため、拒否することはできません。

物件の調査が行われてから4カ月ほど経過すると、売却基準価額(競売の目安となる価格)が公表され、入札期間が設定されます。競売から任意売却への切り替えは、この期間を過ぎると難しくなります。

落札後は直ちに立ち退き

入札期間を終えて物件が落札され、代金が納付されると不動産の所有権は落札者に移行します。「競売のデメリット」の項で説明した通り、所有権が落札者へ移行すると、不動産は債務者のものではなくなるため、住み続けることはできません。「不法占拠」の状態になりますから、速やかに物件を明け渡さなければなりません。競売の場合、所有権の移転後に落札者が引渡命令を申し立てれば、最短3日程度で強制執行の手続きへと進めることができます。ちなみに、落札から支払いまではおおよそ2カ月弱程度かかるのが一般的ですので、この間に明け渡しできる状況にしておくべきでしょう。

一方、落札されなかった場合は退去の必要はありませんが、物件の落札価格はさらに下がってしまう可能性があります。「競売のデメリット」の項目で説明した通り、ローンの遅延損害金も発生しますから「売れなければ住み続けられて得だ」というわけではありません。

競売イメージ

(画像/PIXTA)

不動産の競売情報を知る方法

不動産の競売に出された物件は、BIT(不動産競売物件情報サイト)や国税庁の公売情報を見ることが誰でも閲覧することが可能です。

不動産競売物件専用サイトを検索する

ここまで債務者の視点で解説してきましたが、競売に出た不動産を落札する側(落札者)の視点で見ると、競売は良質な不動産を一般の相場よりも安く手に入れる方法のひとつといえます。もしも落札する側になったとしたら、どんなところで不動産の競売情報を探せるのでしょうか。ひとつは、不動産競売物件専用サイトを検索する方法です。全国各地で競売に出される不動産(競売物件)情報はほぼすべて、最高裁判所からの委託により運営されている公式競売情報サイト『BIT(不動産競売物件情報サイト)』に公開されます。物件情報を簡単に閲覧できるほか、入札の手続きや落札までの流れも分かりやすく説明されています。

BIT(不動産競売物件情報サイト)

国税庁の公売情報を閲覧する

銀行などの民間金融機関ではなく、国または地方自治体が債権者となって差し押さえて競売にかける公売物件については、国税庁の公売物件サイト『公売情報』で検索できます。

国税庁 公売情報

競売物件とは?メリット・デメリットは? 買い方と注意点・公売物件とは?違いを解説

競売イメージ

(画像/PIXTA)

競売を回避するためには

不動産が競売にかけられると、落札されると強制的に退去をすることになります。
そのため、競売を回避するには住宅ローンの滞納をしないように気を付けることが大切です。

住宅ローン滞納を2カ月までで食い止める

競売はデメリットがメリットを大きく上回るうえに、債務者の意図にかかわらず強制的に進められてしまい、落札されれば半ば追われるように我が家を立ち退くことになってしまいます。つらい思いをしないためにも、なるべく競売は回避したいものです。

競売を回避するためには、第一に住宅ローンや借入金の返済を滞納させないこと。競売は、不動産にかけた借金を何カ月にもわたって滞納し続けた結果です。滞納するとブラックリストに載ってしまい、返済能力がないと見なされてクレジットカードの契約などにも影響が出てきます。返済が厳しくなってきたら金融機関に早めに相談をして、できれば2カ月までで滞納を食い止めましょう。

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任意交渉や個人再生手続きで住宅ローンをリスケジュール

債権者が法的手続きに協力的な金融機関であるならば、任意交渉やADR(裁判外紛争解決手続)によってローン返済のリスケジュールができる場合があります。滞納していて返済する見込みが立たない住宅ローンを、「残金の一括払いや競売を避けて、元の分割払いへ戻す」「返済期間を延長して1回あたりの支払いを減らす」「元本の一部を猶予してもらい、一定期間中の返済額を減らす」など、返済可能なプランに変更してもらいましょう。

また、裁判所の認可によって返済総額を減額し、減額後の金額を分割返済していく「個人再生」を利用してリスケジュールできることがあります。特に住宅ローンに加えて消費者金融などのローンもある人は、個人再生の手続きの際に「住宅ローンについての特則」を付け加えることで、他の債務の減額が認められる可能性があります。選択肢として検討するといいかもしれません(住宅ローンの返済総額は、他の債務のように少なくすることはできません)。

早めに任意売却を手配する

住宅ローンなど借入金の滞納が始まってから「競売開始決定の通知」が届くまでの間は、通常の不動産売買とほぼ同じ取引形態の「任意売却」ができる期間でもあります。借入金返済の見通しが立たないケースや、個人再生なども避けたいという意思があるのなら、早めに任意売却の意向を固め、手配を進めていくことも競売を回避するための方法です。任意売却であれば、競売より高い価格で売却できる可能性があり、強制退去させられることもありません。愛着のある我が家を、他人の介入によって退去せざるを得ない状況に陥るのはつらいこと。そうなる前になるべく早く解決策を考え、より良い条件で売却できるように努力しましょう。

住宅ローン返済に困ったら早めに解決策を考えよう

競売も任意売却も「ローンや借入金の返済のために住宅を売却する」状況は同じですが、それぞれのメリット・デメリットには大きな差があります。滞納したまま何もしなければ競売に至りますが、その前に思い切って行動することで競売を回避できる可能性は高まります。専門家の手も借りながら、より良い解決策を探っていきましょう。

まとめ

  • 競売とは、債権者(金融機関など)が債務者(借り入れをした人など)から差し押さえた不動産を、裁判所が主体となって売却すること
  • 滞納してから競売にかけられるまで半年~1年半。早めに対処すれば、通常の不動産売買とほぼ同じ任意売却が可能になることもある
  • 競売は債務者にデメリットが多いため、回避するためにも早めに対策を講じよう

取材・文/ライトアップ

●監修/弁護士 横山宗祐さん
平成16年(2004年)弁護士登録。令和4年(2022年)より日本弁護士連合会 司法制度調査会委員。また、令和6年(2024年)より東京弁護士会法制委員会委員長を務める。民事・家事事件全般、会社法務全般と幅広い案件を手がけている。現在「BACeLL法律会計事務所」に所属。
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