不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

実家の相続は何から始める?5つの対応策と3つのやってはいけないこと

親が亡くなって実家を相続する際は、遺言書の確認、資産(負債)の確認、相続放棄の判断、また仮に相続することを決めた場合は所得税の準確定申告や相続税の申告・納付などやるべきことが多々あります。
また、実際に相続した実家も、自分で住む以外に賃貸に出す、売却するといった様々な活用の方法が考えられます。
相続した金額の評価額によっては、相続税を抑えるために「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などの相続税を抑える特例の活用も検討することが大事です。
この記事では、実家を相続した際に検討したい5つの対応策を解説するとともに、相続時に避けるべき3つの事項も紹介します。

実家を相続するときはどうする?5つの対応策と3つの避けるべきこと

記事の目次

実家を相続する際の流れ

まずは、実家を相続する際の流れを確認していきましょう。なお、不動産相続の手続きに関しては、こちらの記事で詳しく紹介しているので併せてご覧ください。
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ステップ1:死亡届の提出と遺言書の検認

被相続人が亡くなると相続が発生します。実家の所有者が被相続人だった場合、通常実家の土地・建物も相続財産となります。被相続人が作成した遺言書がないかを確認します。遺言書が発見されれば、その内容に沿って相続するのが原則です

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ステップ2:相続人と相続財産確定

被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取得し、財産を相続する権利がある法定相続人を明らかにします。また、被相続人の財産もすべて確認が必要です。住宅ローンのようなマイナスの財産(負債)も相続対象に含まれます。

ステップ3:相続放棄や限定承認の検討

相続放棄する場合、相続開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申立てをする必要があります。

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ステップ4:所得税の準確定申告

被相続人に一定の所得があり、確定申告が必要な場合には準確定申告の手続きが必要です。所得税を納める必要がある場合、相続開始を知った日から4カ月以内に申告・納付を実施しましょう。

ステップ5:遺産分割協議書の作成

遺言書がない場合には、相続人全員で遺産をどう分けるか話し合いで決定します。これを遺産分割協議と呼び、結果を記した遺産分割協議書を作成する必要があります。作成に際し期限は設けられていませんが、相続税申告期限までに作成できていないと、相続税を減額する特例の適用から外れる可能性があるため注意が必要です。

ステップ6:相続税の申告・納付

納めるべき相続税の額を計算し、被相続人の住所地を管轄する税務署へ申告・納付を行います。申告・納付の期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内です。たとえ非課税であっても申告は必要になるケースがあるため注意しましょう。

不動産相続の手続きに関しては、こちらの記事で詳しく紹介しているので併せてご覧ください。
不動産(家と土地)相続の手続きと相続税を徹底解説!名義変更、かかる費用、節税方法、トラブル防止のコツも

ステップ7:不動産の名義変更(相続登記)

相続登記を行ない、相続した不動産の名義を相続人に変更します。相続登記申請書を作成し、必要な証明書類等を添えて管轄の法務局へ申請しましょう。申請は相続人が行なう必要がありますが、司法書士や弁護士に依頼して申請してもらうこともできます。なお、相続登記にあたっては登録免許税や各種証明書の取得費用などがかかります。
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相続関係を明らかにする家系図のイメージ

(画像/PIXTA)

実家相続時にかかる税金の種類

実家を相続した場合、相続人が税金を納めなければならない可能性があります。相続時に発生する可能性がある税金の種類とそれぞれの内容を見ていきましょう。

相続税

相続した財産に応じて、相続人が納めなければならない税金が相続税です。相続税には基礎控除が設定されているため、実際に相続税がかかるケースは限られます。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で計算され、法定相続人が被相続人の配偶者と子1人だった場合「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」が控除額です。このケースでは、実家の相続税評価額や、その他の相続財産の課税価格が4,200万円以下であれば相続税はかからないことになります。

国税庁「令和3年分 相続税の申告実績の概要」によれば、2021年に発生した相続のうち、相続税が課税された割合は9.3%に留まっている状況です。自身の相続において相続税の申告が必要かどうかは、国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」を使えば、大まかに確認することができます。結果的に相続税を納めなければならない場合は、相続発生を知った日の翌日から10カ月以内の申告・納税が必須です。

なお、実家を相続する場合に相続税を算出するには、土地・建物それぞれに相続税評価額を明らかにする必要があります。相続税評価額は、建物は固定資産税評価額、土地は国税庁の路線価をベースに算出されるものです。これらが相続税額の計算に用いられることになります。v

また、相続税の税率は、相続財産の総額が高いほど税率も高くなる累進課税(10%〜最大55%)が採用されています。

登録免許税

実家を相続するにあたり、所有権移転登記(相続登記)によって所有者の名義を被相続人から相続人へ変更する必要があります。その際にかかる税金が登録免許税です。

相続登記にかかる登録免許税は土地・建物ともに「固定資産税評価額×0.4%」となっており、不動産売買時の税率2.0%に比べて低い設定です。加えて、個人が2027年3月31日までに土地の相続登記を行う場合、課税標準額が100万円以下であれば土地分の登録免許税が免除される特例があり、登録免許税の負担が軽減されています。

相続税を抑える3つの特例

一定の条件を満たせば、相続税を抑える特例を利用できます。ここでは、「小規模宅地等の特例」「配偶者の税額軽減」「相次相続控除」の3つを解説します。

小規模宅地等の特例

土地を相続する場合、土地のうち一定の面積までの部分について、相続税の課税価格における土地の評価額を最大80%まで減額できる制度です。亡くなった方の配偶者や一定の条件を満たした同居親族・別居親族が特例を受けられます。特例を適用するには、相続税の申告書に特例を受ける旨を記入する必要があります。また、遺産分割協議書なども併せて提出するため、事前に必要な書類を確認しておきましょう。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

配偶者の税額軽減

課税対象となる配偶者の相続財産のうち、1億6000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額まで、相続税がかからない制度です。この制度の適用を受けるには、相続税の申告期限までに遺産分割の方法が決まっていなければなりません。相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヵ月以内と定められているため、早めに遺産分割方法を決定しておきましょう。なお、税額軽減によって相続税額が0円になった場合でも申告は必要です。

参考:No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁

相次相続控除

相次相続控除は、被相続人が相続や遺贈、相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得し、その相続開始前10年以内に開始した相続について相続税が課されていた場合に、今回の相続で財産を取得したその相続人に対して適用される制度です。短い期間に相続が相次いで発生することにより、相続税が何度も課税され、相続人の税負担が重くなることを緩和する目的があります。相次相続控除の控除額は、前回の相続で課税された相続税額を、前回の相続からの経過年数に応じて1年につき10%ずつ逓減させて算出されます。したがって、前回の相続からの経過年数が短いほど控除額は大きくなります。なお、相次相続控除を受けるには、相続税申告書内の控除適用欄への記入が必要です。

参考:No.4168 相次相続控除|国税庁

相続した実家はどうすべき?活用・処分5つの対応策

実家を相続したものの、活用や処分の方法について迷う人も多いのではないでしょうか。実家を相続した場合に考えるべき、活用もしくは処分の対応策を5つ紹介します。

(1)自分が住む

実家の活用方法として最もシンプルなのは相続した実家に自分で住むことです。現在賃貸に住んでいるのであれば、相続でマイホームを手に入れられるでしょう。すでにマイホームを所有している場合でも、住んでいる自宅の売却代金で住宅ローンを完済できるなら、売却して実家に引っ越すと経済的に余裕ができるかもしれません。

ただし、実家の築年数が経過しているケースでは、内外装や設備のリフォームが必要になる可能性もあります。築古だと、場合によっては耐震補強工事が必要になり、まとまった費用がかかることもあるため要注意です。修繕が必要になったとしても、土地代をかけずに取得できるため、リフォームやリノベーションに予算を振り分けられるのは大きなメリットといえます。

自分で住む予定がなければ、親族に利用してもらってもよいでしょう。

(2)賃貸しする

自分の家族や親族で相続した実家を利用する予定が特になければ、賃貸住宅として第三者に貸すという方法もあります。築年数や建物の状態によってはリフォーム費用の負担が発生する可能性があるものの、入居者さえ見つかれば定期的に安定した家賃収入を得られるのが魅力です。

この方法で気を付けなければならないのが、賃貸経営のノウハウが必要になることです。賃貸経営を軌道に乗せるには信頼できる不動産会社や管理会社との連携は欠かせません。実家の立地する地域が賃貸ニーズの見込めないエリアだと入居付けに苦労することもあるため、事前の綿密なマーケティングが必要です。

(3)現状有姿で売却する

「自宅や賃貸物件として利用するには状態が悪く、リフォームするにも莫大な費用がかかるために難しい」「更地にするにも建物の解体費用を負担するだけの経済的余裕がない」 といった場合、特に手を加えず現状有姿のまま売却するのも一つの方法です。経済的価値のない古い建物が立つ土地は「古家付き土地」と呼ばれます。

古家付き土地としての売却にはリフォーム費用や建物の解体費用がかかりません。しかし、買い主側に費用負担が発生するため、土地取得を目的に物件を探している購入希望者にとっては更地に比べて優先順位が下がりがちです。古家付き土地は更地よりも売却価格が低くなりやすいことは認識しておきましょう。

(4)更地にして活用または売却する

建物は「有効な活用方法が見つからない」「老朽化の程度が激しい」といった状態であっても、土地のニーズは見込めるケースもあります。このような場合には、建物を処分し更地にしたうえでの活用を検討するのも有効です。

更地のよくある活用方法として挙げられるのが、駐車場に転用するという方法です。コンテナを置いてトランクルームを経営することもできます。実家の所在地が土地に対するニーズの高いエリアであれば、解体費用を負担してでも更地にしたほうが一般的に借り手や買い手がつきやすくなるでしょう。

ただし、自分やきょうだいの思い出が詰まった実家がなくなることになるため、関係する家族と十分に話し合って判断する必要があります。

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(5)活用方法が見当たらなければ相続放棄する

賃貸住宅や土地のニーズが高いエリアにある実家なら、上記4つのいずれかの方法で活用・売却できる可能性があります。しかし、相続したとしても十分な資産価値が見込めないと考えられるときは、思い切って相続放棄するのも有効な方法です。

相続放棄にあたって注意したいのが、一部の財産のみ放棄することはできない点です。実家以外にも相続財産がある場合、実家の相続を放棄するとほかの財産についても相続放棄となります。相続放棄は、実家以外の財産も勘案したうえで判断するようにしましょう。

なお、先述のとおり、住宅ローンのような債務(マイナスの資産)も相続財産に含まれます。実家の評価額を上回る債務が残っているケースでは、債務ごと相続放棄するのは有力な選択肢です。

相続人夫婦が実家の活用法を検討するイメージ

(画像/PIXTA)

実家の相続で避けるべき3つのこと

相続した実家の取り扱いに困ったときでも、できる限り採らないほうが良い方法が3点あります。どのような点が問題なのかも解説するのでしっかりと心に留めておきましょう。

(1)空き家にして放置する

実家の相続で1つ目に避けるべきなのは、実家を空き家のまま放置することです。相続した実家の土地・建物には毎年固定資産税が課されますが、土地については「住宅用地の特例」が適用されて課税額が低く抑えられます。

住宅用地の特例とは、現に住宅の敷地として使われている土地における税負担を軽減するために設けられている制度です。住宅1戸につき200平方メートルまでの敷地は「小規模住宅用地」とされ、固定資産税の課税標準額が1/6(都市計画税は1/3)となります。1戸当たり200平方メートルを超える「一般住宅用地」についても固定資産税の課税標準額が1/3(都市計画税は2/3)になり、大きな節税効果が期待できるのです。

一方で、放置によって倒壊の危険性が高い「特定空き家」に指定されない限り、空き家が立つ土地でも特例を適用できたことから、空き家をそのまま放置する例が多くありました。そこで、2023年12月13日より管理が不十分な「特定空き家予備軍」の位置付けとして「管理不全空き家」が新設されました。「管理不全空き家」については行政指導により改善が促され、それでも改善が見られない場合には特例が解除される措置が取られています。

つまり、相続した実家を空き家のまま十分な管理もせず放置していると、固定資産税や都市計画税の負担が一気に重くなるリスクがあります。

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(2)考えもなく更地にする

上で紹介した固定資産税・都市計画税の「住宅用地の特例」は、現に住宅が立っている敷地であることが適用の要件となっています。実家が老朽化しているからといって、建物を除却して更地にしてしまうと特例の適用外となり、固定資産税や都市計画税の納税額が高くなってしまうでしょう。
先述の5つの対応策を踏まえ、更地にするメリットが見えてから建物を除却するのが安心です。

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(3)共有名義のまま長期間保有する

実家を相続するにあたり、急な相続や相続財産に占める不動産の割合が高いケースなどでは、一時的にきょうだいや被相続人の配偶者や子などと共有名義とすることも考えられるでしょう。しかし、共有名義の長期化はリスクが高いので極力避けたいところです。
共有名義だと、将来共有者が亡くなった際にその配偶者や子への二次相続が発生し、権利関係が複雑になってしまいます。用途変更や売却などを行うにあたっては共有者全員の同意が必要になるので、思うように処分できなくなる危険性もあります。やむなく共有名義で相続した場合、不動産をどうするのか共有者間で速やかに方針を決めるとよいでしょう。
相続財産の大部分を不動産が占めるケースでは代償分割という手段も検討できます。代償分割とは、相続人のうちの1人が相続財産を取得する代わりに、ほかの相続人に対して代償金を支払うという分割のやり方です。不動産の共有名義を防げるうえ、相続人間で公平感のある遺産分割が可能となります。

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親族間で争わないための3つのルール

相続にあたり、遺産の分割方法などをめぐって親族間でトラブルになってしまうケースもあります。親族間で争わないためにも、次の3つのルールを守りましょう。

ルール1:遺産協議は全員参加で話し合う

争いが発生しないよう、遺産協議は全員参加で行ないましょう。一部の相続人だけで協議してしまうと、話し合いに参加しなかった相続人から不満が出る可能性が高くなります。全員で話し合い、その内容を記録しておきましょう。

ルール2:不動産は「換価分割」も視野に

遺産分割でトラブルになりやすいのが不動産の分割です。現金や株式などの分割は容易ですが、不動産を相続人の数で均等に分けるのは現実的ではありません。遺産分割の方法には、財産を現物のまま分割する「現物分割」、財産を売却して得られた売却金を分割する「換価分割」、特定の相続人が相続する代わりにほかの相続人に代償金を支払う「代償分割」の3つがあります。不動産を相続したい人がいない場合や、不動産を特定の相続人が相続することに不満が出た場合、代償分割したいけれど代償金を支払えない場合などには、換価分割も視野に入れましょう。

ルール3:話がこじれる前に専門家を活用しよう

話し合いを重ねても折り合いがつかない場合もあります。遺産分割協議が進まなければ相続財産を有効活用できず、相続税を正確に申告することもできません。場合によってはさらに相続人が増え、相続が複雑化することもあるでしょう。親族間で話し合いができないと判断したら、話がこじれる前に弁護士などの専門家に相談しましょう。

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2024年4月から相続登記が義務化された

不動産を相続した際、相続登記が必要です。従来、相続登記を行うかどうかは相続人の任意とされてきましたが、2024年4月から義務化されました。

これにより、相続人は所有権を取得したことを知った日から3年以内の相続登記申請が必須となります。正当な理由(遺産相続に関する係争があるような事例)がないにもかかわらず相続登記申請を怠ると、10万円以下の過料を科せられる可能性があるため注意しましょう。

正当な理由があって期限までの登記が困難なケースでは、2024年4月より新設された「相続人申告登記」の活用が効果的です。相続人申告登記を行えば、登記申請の義務を一応は果たしたとみなされ、過料を免れることができます。各相続人が単独で申請できるうえ、登録免許税の負担がないので申請のハードルが低い点が特徴です。

ただし、相続登記の義務を果たしたとされるのは相続人申告登記を申請した相続人本人のみであり、ほかの相続人には効力がおよびません。加えて、相続人申告登記だけでは所有権が移転したことにならず、実家は被相続人名義のままです。相続登記によって名義変更しない限り、第三者へ売却できない点も注意しましょう。

相続登記の申請書と遺産分割協議書のイメージ

(画像/PIXTA)

まとめスーモ

  • 相続した実家には相続税が課せられるが、基礎控除により多くは非課税となる
  • 相続した実家は自分で住むか、賃貸・売却などの活用方法が考えられる
  • 実家を空き家のまま放置したり更地にしたりすると、固定資産税の負担が重くなる可能性があるため要注意

取材・文/サクラサクマーケティング株式会社

●取材協力/高槻翔太(たかつき しょうた) さん
不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。賃貸住宅の建築提案営業を中心に従事。宅地建物取引士、FP技能士2級、日商簿記2級。不動産・金融系のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。
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