不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

住宅ローン完済後に自分で抵当権抹消手続きを行う方法! 必要書類や費用も解説

住宅ローン完済後に自分で抵当権抹消手続きを行う方法! 必要書類や費用も解説

住宅ローンを完済したあと、抵当権抹消手続きを自分で行えるのかと疑問を抱いている人もいるかもしれません。抵当権の抹消手続きは自分でも行えますが、初めての人にとっては難易度が高く、スムーズに進められないケースも考えられます。
本記事では、不動産の抵当権抹消手続きを自分で行いたい人を対象に、必要書類や具体的な手続きの方法、流れ、費用などについて解説します。

記事の目次

抵当権とは

抵当権を抹消する手続きを学ぶ前に、そもそも抵当権がどのような権利なのか理解しておく必要があります。

住宅ローンを借りると抵当権が設定される

抵当権とは、住宅ローンの利用時に債権担保の目的で設定される権利です。金融機関はビジネスで融資を行っているため、貸したお金を返済してもらえない事態に陥ることを最もおそれます。万が一、債務者が失職などを理由に住宅ローンの返済ができなくなったとしても、物件に抵当権を設定しておけば、金融機関は物件を競売にかけて元金を回収できます。
つまり、抵当権は金融機関が貸し倒れのリスクを回避するために設定する権利です。金融機関はリスクを軽減でき、消費者は物件を担保により大きな金額を借りられます。

ただ、登記上に抵当権が記載されたままでは、物件の売却ができないなどの問題が発生します。住宅ローンを完済していれば抵当権の効力も切れていますが、第三者からはそこまで分かりません。また、抵当権の記載は自動的に消滅する仕組みではなく、抵当権者である銀行なども基本的に登記上の抵当権の抹消までは行わないため、住宅ローンを完済した後に自分で抹消手続きを行う必要があります。

適切な手順と方法で抹消手続きを行うことによって、登記事項証明書に書かれている抵当権の記載を削除できます。

住宅ローンを借りると抵当権が設定される

登記簿の「乙」欄に記載されている

不動産登記簿は、「表題部」「甲」「乙」の記載区からなります。

まず、証明書の一番上にあるのが表題部で、ここには土地と建物に関する項目が記載されます。土地に関しては、所在地や面積、登記した日付などが記載され、建物では所在地や家屋番号のほか、居宅なのか物置なのかといった建物の目的や、木造、鉄骨といった建物の構造などが記載されます。

抵当権に関する記載があるのは乙区です。乙区には権利関連の記述があり、順位番号や登記の目的、受付番号、その他の事項などが記載されています。ほかにも、債権額や債務者名、抵当権者なども記載されるのが一般的です。

■不動産登記簿の記載区と記載内容
記載区 記載内容
表題部

土地・建物に関する物理的状況を記載

【土地】
所在・地番・地目・地積・原因・日付・所有者住所氏名
【建物】
所在・家屋番号・種類・構造・床面積・原因・日付・所有者住所氏名

甲区 権利部「甲区」には所有権に関する内容を記載
順位番号・登記の目的・受付年月日・受付番号・権利
乙区 権利部「乙区」には所有権以外の権利に関する内容を記載
順位番号・登記の目的・受付年月日・受付番号・権利者その他の事項

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住宅ローンを完済しても抵当権は抹消されない

住宅ローンを完済すると、設定されていた抵当権の効力は失効します。
しかし、不動産登記簿から抵当権の記載が削除されるわけではありません。
ローンを完済しても、自動的に抵当権が抹消されるわけではなく、物件の所有者が自ら抹消手続きを行う必要があります。

抹消手続きを行っていないと、実際には住宅ローンを完済し抵当権がなくなってていても、登記上で抵当権が記載されていれば、第三者からは住宅ローンを完済していないようにみなされます。

抵当権抹消手続きが必要となるケース

抵当権抹消手続きが必要となるのは、不動産売却を行うときや住宅ローンの完済後に金融機関から新たに融資を受けるときなどです。

不動産売却を行うとき

不動産売却時には、抵当権抹消の手続きが必要です。
住宅ローンがすでに完済されていても、抵当権が記載されたままでは、登記簿上ではそれが分からないため、信用されないからです。
不動産売買では、抵当権の登記がない状態での所有権の移転が一般的です。売買契約書には通常、「買主の所有権の完全な行使を阻害する一切の負担を、除去・抹消します」との記載があります。つまり、所有権以外の権利がついたままでは、売買できないという意味です。

ただし、ローン返済中の物件を売却するとき、その売却代金をもって完済するのであれば、「抹消登記」と「所有権移転登記」を決済の日に同時に行うこともできます。登記簿の乙区欄に抵当権の記載がある物件を売買するときには、その旨を説明すれば売買契約から決済まで行うことができます。最終的に契約書の条文どおり、所有権以外の権利を除去・抹消し、移転することになるからです。

登記申請のイメージ

(写真/PIXTA)

住宅ローンを完済したとき

住宅ローンを完済しても、登記簿に記載された抵当権は自動的に削除されるわけではありません。所有者は費用を負担し、抵当権を抹消する手続きを行う必要があります。

住宅ローンを完済していても、抵当権に関する事項が記載されたままでは、第三者から見れば残債があるとみなされます。住宅ローンを完済したら、確実に抵当権の抹消手続きを行いましょう。

新規融資を受けるとき

自宅を担保に新たな融資を受ける際にも、事前に抵当権の抹消手続きを行う必要があります。例えば、物件を担保にリフォームローンを申し込む場合など、抵当権を抹消していないと審査に通らない可能性があります。

住宅ローンを完済していても、抵当権が登記簿に残っていると、残債があるとみなされる可能性があり、融資の審査にも影響を及ぼすことがあります。また抵当権の抹消手続きを後回しにすると、その証拠を提出するために多大な時間がかかることもあります。そのため、抵当権の抹消は早めに行うことが重要です。

抵当権抹消手続きは自分で行えない場合もある

必要な書類がそろっている場合、抵当権抹消手続きは自分で行うことができますが、場合によっては専門家への依頼が必要です。
例えば、物件の売却によって住宅ローンの残債を完済する場合、同時にさまざまな手続きを進める必要があり、素人がスムーズに行うのは困難です。このようなケースでは、登記の専門家である司法書士に依頼することを検討しましょう。また、手続きに必要な書類を紛失した場合や、日中は仕事で法務局に足を運べない場合も、司法書士への依頼がおすすめです。

抵当権設定のイメージ

(写真/PIXTA)

自分で行う!抵当権抹消手続きの流れ

抵当権抹消手続きを自分で行う場合、正しい流れを把握しておきましょう。
抵当権抹消手続きは、法務省の出先機関である法務局で行います。法務局は、本局をはじめ、支局、出張所が各地にあり、不動産の所在地によって担当の局や出張所が異なります。以下に手続きのプロセスを詳しく解説しますので、参考にしてください。

抵当権抹消手続きの流れ

1. 金融機関から書類が届く

住宅ローンを完済すると、金融機関から抵当権抹消に必要な書類が届きます。金融機関によって異なりますが、一般的にローン完済から約10日後に書類が郵送されることが多いです。 送付される書類は以下のとおりです。

弁済証明書・抵当権解除証書 金融機関によって名称は違うが、債務を完済したという証明書。
抵当権設定契約証書 金融機関との抵当権設定契約証書の原本が返還されます。
代表者事項証明書・登記事項証明書 金融機関等の登記関係証明 金融機関の商業登記関係の証明書です。
委任状 金融機関の代わりに債務書である申請人が、抵当権抹消登記を申請するための委任状です。代理人欄に申請する本人の署名捺印が必要。

登記事項証明書については、手続きに使用する際には発行から3カ月以内のものが必要です。したがって、書類が送られてきたときには必ずその期限を確認しましょう。

2. 管轄の法務局を調べる

法務省の地方組織である法務局は、不動産や法人の登記を担当する機関です。抵当権抹消の手続きも法務局で行いますが、物件の所在地によって管轄の法務局が異なります。そのため、売却する物件を管轄する法務局がどこなのか、事前に確認しておくことが重要です。

管轄の法務局はインターネットで確認することができます。法務局の公式サイトへアクセスし、「管轄のご案内」を参照します。管轄一覧や地図が掲載されており、売却予定の物件の地域を管轄している法務局を容易に特定できます。

3. 書類を準備する

抵当権抹消の手続きに必要な書類は以下のとおりです。

  • 登記済証または登記識別情報
  • 登記原因証明情報(抵当権解除証書)
  • 委任状(代理権限証明情報)
  • 金融機関の資格証明書
  • 抵当権抹消登記申請書
  • 登記事項証明書

金融機関から送られてくる登記原因証明情報を受け取った時点で、正式にローンの返済が完了します。抵当権抹消の日付項目に何も記載されていないのなら、ローンの完済日を記入しましょう。

資格証明書もローン完済後に金融機関から届く書類の一種です。登記事項証明書や代表者事項証明書などと呼ばれることもあります。この書類は発行から3カ月たつと効力を失いますが、法務局で再取得が可能です。

4. 法務局の相談窓口へ行く

管轄の法務局へ事前に相談することで、その後の手続きをスムーズに進められます。手続きに必要な書類がすべてそろっているか、書類への記載内容に問題はないかなどを確認できるため、法務局の窓口を訪れることをおすすめします。

ただし、法務局によっては予約なしでの相談が受け付けられないこともあります。したがって、訪問前に電話で事前確認を行い、必要であれば予約を取ってから訪れるようにしましょう。

5. 書類を書いて申請する

登記申請書に必要事項を記入し、作成しましょう。登記申請書には記載する項目が多く、初めて目にする人はどのように書けばよいのか混乱してしまうかもしれません。法務局の公式サイトでは、申請書への記載例を公開しているので、参考にしながら作成しましょう。

作成し終わったら、書類を法務局へ提出します。提出方法は、窓口に直接提出するほか、郵送とオンラインが利用できます。窓口では、その場で書類の不備などを指摘してもらえるため、事前相談をせずに手続きを進める場合におすすめです。

オンライン申請を行う場合には事前の準備が必要です。マイナンバーカードが必要であり、あらかじめ申請者情報の登録もしなくてはなりません。手間はかかるものの、自宅から一歩も出ることなく手続きを進められる点が魅力です。

6. 書類が受理される

提出した書類に不備などがなければ、そのまま受理してもらえます。書類への捺印が求められることがあるため、認印を持参しましょう。受理が確認されたら、抵当権抹消の手続きは一段落です。

しかし、手続きが完了したとしても、抵当権が直ちに抹消されるわけではありません。法務局では提出された書類の内容や書式などに入念なチェックが行われます。問題がなければ、手続きが正式に完了します。

7. 不備があれば連絡がある

提出した書類に不備がある場合、法務局から連絡が入ります。指摘された箇所を修正し、再度提出する必要があります。登記完了予定日を過ぎても連絡がなければ、問題なく受理されたとみなすことができます。

オンラインで申請した場合も同様に、申請内容に不備があれば通知が届きます。申請手続きに使用する申請用総合ソフトに補正のお知らせが表示されるので、内容を確認して修正を行いましょう。

なお、定められた期間内に不備の補正が行われなかった場合、申請そのものが却下されるため注意が必要です。

8. 補正申請を行う

書類の補正には期日が設定されているため、期限を守るようにしましょう。期日を過ぎてしまうと、申請が却下される可能性があります。申請が却下されると、手続きを再度行うためには、窓口や郵送などから一から手続きを進める必要が生じ、時間と手間がかかります。

オンライン申請を行った場合も同様に、指定期日内に補正を完了し、その後再度オンラインで申請を行いましょう。また、オンラインで抵当権抹消の申請を行った場合、補正もすべてオンラインで行う必要があります。

9. 手続きが完了する

提出した書類に不備がなければ、手続きは完了です。最短1日で終わることもあれば、1週間から10日前後かかることもあります。登記完了予定日を過ぎても、法務局から何の連絡もなければ、無事に手続きは完了したと考えられます。

オンライン申請の場合は、手続き終了の通知が送られてきたら手続きは完了です。そのまま、オンラインで登記完了証をダウンロードしましょう。

抵当権抹消登記申請書の書き方

抵当権抹消登記申請書は、記入すべき項目が数多く設定されているため、初めて目にする人は困惑してしまうかもしれません。項目は多いものの、それほど難しい内容は求められないので、落ち着いて作成を進めましょう。

抵当権抹消登記申請書

*画像は法務局ホームページより

登記の目的

抵当権抹消と記載し、記載する順位番号は乙区の順位番号を記載します。順位番号については、登記識別情報通知書、登記事項証明書等で確認します。

原因

抵当権が効力を失った日と原因を記載します。例えば債務を完済し、令和1年7月1日に抵当権が消滅したのなら「令和1年7月1日解除」と記載します。

権利者

現在の所有者の住所、氏名を記載します。登記事項証明書に記載されている住所、氏名と一致しない場合、手続きが受理されない可能性があるため注意が必要です。一致しない場合、登記上の氏名や住所を変更する必要があります。

義務者

義務者とは、抵当権を設定した金融機関を指します。金融機関の情報として、所在地、社名、代表者の氏名などを正確に記載しましょう。登記事項証明書の発行から1カ月以内の場合、法人番号の記載は不要です。

もし記載内容が登記記録と一致しない場合、名称や住所がどのように変更されたのかを明らかにするために、閉鎖謄本や履歴事項証明書などの書類を添付する必要があります。

添付情報

抵当権抹消の登記申請を行う際は、以下の書類の提出が必要です。

登記識別情報または登記済証

登記識別情報を記載した書面を封筒の中に入れて提出します。また、封筒には、登記の目的および抵当権者の名称、登記識別情報が記された書面が封入されていることを明記しておかなければなりません。

登記原因証明情報

登記原因証明情報は、登記手続きに必要な書類の一種であり、権利変動や取引発生の事実などを証明するために用いられます。例えば、銀行から発行された抵当権解除証書が該当します。住宅ローンの返済が完了したら、金融機関から送られてくるので、届かないようなら窓口へ問い合わせをしてみましょう。

会社法人等番号

会社法人等番号は、法人を識別するために設けられる数字であり、12桁の数字で構成されています。会社法人等番号を申請人欄へ記載するときには、「会社法人等番号」と記します。登記事項証明書を添付するのなら、「登記事項証明書」と記載しましょう。

代理権限証明情報

代理権限証明情報とは委任状のことです。通常、あらゆる登記は当事者しか行えません。ただし、委任状などで手続きを委任することによって、代理人が登記を行えます。

抵当権抹消手続きも、本来なら抵当権者である金融機関しか行えません。しかし、金融機関から送られてきた委任状があれば、代理人として抹消手続きを行えます。住宅ローンの完済後に、自宅へ届いていないのなら一度問い合わせてみましょう。

登記識別情報

登記識別情報または登記済証を提供することができない場合、その理由の□にチェックをします。
なお、登記識別情報や登記済証の提供が難しいのなら、添付情報欄には、「登記識別情報(または登記済証)」と書かないようにしましょう。

申請年月日および申請法務局

申請年月日および申請法務局名を記載します。

申請人兼義務者代理人

抵当権者から登記の申請の委任を受けた現在の所有者(所有権の登記名義人)の住所氏名を記載し、氏名の横に認印を押します。なお、この記載は、権利者の住所および氏名の記載と一致している必要があります。

連絡先

申請書の記載内容等に補正すべき点があるのなら、修正した上で再度提出しなくてはなりません。補正が必要なときは担当者から連絡があるので、そのための連絡先を記載します。日中に連絡がつく電話番号を記載しておくと安心です。

登録免許税

抹消の登記の登録免許税は、土地または建物1個につき1000円です。
登録免許税を現金納付するのなら、領収書を貼り付けた用紙を、収入印紙で納付するのなら割印や消印をしていない収入印紙を貼り付けた用紙を申請書と一括してつづり、つづり目に契印します。契印は、2枚以上の契約書がひとつの連続した文書であることを証明するために、両ページにまたがって押すはんこのことです。

不動産の表示

不動産番号を記載した場合は、土地の所在・地番・地目および地積(建物の所在・家屋番号・種類・構造および床面積)の記載を省略できます。

契印

申請書が複数枚にわたる場合は、申請人またはその代理人は、各用紙のつづり目に必ず契印をします。

抵当権抹消手続きを行うときの必要書類と費用

抵当権抹消手続きに必要な書類は、登記申請書や弁済証書、登記事項証明書などです。それぞれの書類がどのような意味を持つのか、どうやって取得するのかなどを確認しておきましょう。

【登記申請書】法務省法務局のWebサイトからダウンロードで取得可能

法務局のサイトからダウンロードが可能です。
まずは、法務局のトップページから、「不動産登記申請手続」へと進みましょう。「不動産登記の申請書様式について」に進むと、申請目的にあわせた20以上の書類がダウンロードできます。抵当権の抹消に必要な書類は、「抵当権抹消登記申請書」の項目にあります。Word形式、PDF形式などがあるため、好きなものをダウンロードしてください。

こちらをクリックしても法務局の「不動産登記申請手続」ページへと飛びます。

■ダウンロードできる申請書類一覧

  • 土地地目変更登記
  • 所有権保存登記
  • 合筆登記
  • 所有権移転登記(売買)
  • 所有権移転登記(贈与)
  • 財産分与による所有権移転登記
  • 抵当権設定登記
  • 根抵当権設定登記
  • 共同根抵当権設定登記
  • 登記名義人住所氏名変更登記(移転の場合)
  • 登記名義人住所氏名変更登記(住居表示実施の場合)
  • 登記名義人住所氏名変更登記(氏名変更の場合)
  • 登記名義人住所氏名変更登記(住所および氏名変更の場合)
  • 登記名義人住所氏名変更登記(住所および氏名変更の場合 敷地権付区分建物の場合)
  • 登記名義人住所氏名変更登記(会社の商号または本店を変更または移転した場合)
  • 抵当権抹消登記
  • 根抵当権抹消登記
  • 所有権移転登記(相続・公正証書遺言)
  • 所有権移転登記(相続・自筆証書遺言)
  • 所有権移転登記(相続・法定相続)
  • 所有権移転登記(相続・遺産分割)
  • 所有権移転登記(相続・遺産分割)(数次相続)
  • 建物滅失登記
  • 配偶者居住権の登記

【弁済証書】ローンを完済したことを証明する銀行の書類

抵当権解除証書や弁済証書、抵当権放棄証書など、金融機関によって書面の名称は異なりますが、債務が完済された旨を金融機関が証明し、登記原因を明示する文書です。通常、住宅ローンを完済したあと、10日前後で、金融機関から登記申請に必要なほかの書類と一緒に送られてきます。

【登記済証または登記識別情報】権利証とよばれる書類

抵当権設定時に交付される書面。登記済の印が押されています。
平成17(2005)年の不動産登記法改正によって、現在では権利証が発行されなくなり、それに代わるものが登記識別情報です。登記識別番号が記載されており、従来の権利証の代わりとして用いられています。

【登記事項証明書】登記簿謄本

登記簿謄本とは従来の不動産登記の原本を紙にコピーした書面です。
現在では、登記簿そのものがデータとして保存されています。そのため、その内容を紙で出力したものを、登記事項証明書と呼びます。 抹消登記申請にあたっては、不動産に関する事項等が登記簿の内容と一致しなければならないため、最新の登記事項証明書を入手する必要があります。
登記事項証明書は、法務局で入手します。法務局に出向き備えてある請求書に物件を特定する事項を記入し、窓口に提出します。発行にかかる手数料は、請求書に収入印紙を貼付することで納付します。登記事項証明書の発行手数料は、1通600円です。郵送で請求書を送付することも、インターネットでのオンライン請求もできます。オンライン請求の場合は、手数料は1通500円です。

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【委任状】抵当権者である銀行に代わって抹消手続きを行うための委任状

抵当権者である金融機関に代わって抵当権の抹消手続きを行うため、金融機関の委任状が必要です。
所有者自身が、金融機関の代理人として申請します。代理人の欄には、所有者の住所、氏名を記入し押印します。

【登録免許税】抵当権抹消登記の際に納める税金

申請にあたっては、登録免許税の納付が必要です。登録免許税とは、登録免許税法に基づき、登記や登録、許可、免許に際して課せられる国税です。
納付は、申請書面に相当額の印紙を貼付して納めます。 登録免許税額は以下のとおりです。

■抵当権抹消登記にかかる「登録免許税額」
土地 一筆に対して1000円 ※敷地に地番が複数存在する場合にはその数分
一戸建て住宅 建物一棟に対して1000円 ※家屋番号が複数存在する場合にはその数分
土地一筆に対して1000円 ※敷地に地番が複数存在する場合にはその数分
マンション 区分所有建物分1000円+敷地権(土地)分1000円 計2000円

登記申請書のイメージ

(写真/PIXTA)

住宅ローン完済後、抵当権の登記をそのままにしておくとどうなる?

ローンを完済後も抵当権を抹消しないでおくと、さまざまなデメリットが発生します。前述しているように、物件が売却しづらくなること以外にも、注意すべき点があるので確認しておきましょう。

抵当権がついた物件は、売却しづらい

抵当権を抹消しないことによって生じる問題のひとつは、物件を売却しづらいことです。なぜなら、住宅ローンを完済しているとしても、登記簿上では抵当権が設定されたままになっているため、第三者からはいまだに物件が担保設定されていると受け取られてしまうためです。

不動産の所有権移転は、抵当権を抹消してから行います。不動産取引の世界では常識であり、売買契約書にもそれを示す一文が記載されているケースがほとんどです。

なお、住宅ローンの残債があり、売却代金で完済するケースでは、抵当権抹消と所有権移転の手続きを同日に行えます。

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相続が発生したときの手続きが複雑になる

抵当権が抹消されないまま相続が発生すると、手続きは複雑化します。新たな所有者となった相続人が手続きを行うことになるため、新たな所有者が決まるまで抹消手続きを進められない事態にも発展します。

相続人の調査に時間がかかる、遺産分割協議でもめるといった事態も考えられ、なかなか抹消手続きが進まないかもしれません。

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新たに融資を受けることができない

乙区の権利には順位番号が振られています。順位とはその番号が小さい順番に、優先的に配当(返済)が受けられるという意味で、通常住宅ローンの場合、第一順位の抵当権が設定されます。

仮にその不動産を担保にさらに融資を受けようとした場合、第一順位抵当権の登記が残ったままでは、有効な第一順位の抵当権が設定できないため、融資を受けられない可能性があります。

抵当権抹消登記の手続きは自分でもできる?

自分で抵当権抹消登記を行うためには平日の日中に法務局に出向く必要があります。間違いがあったときの対応など、場合によっては複数回出向く必要もあります。
法務局は平日しか業務を行っていないため、仕事をしている人は時間をつくるのが難しいケースもあるでしょう。
間違った申請をすることによるリスクも伴いますので、少しでも不安がある場合は登記申請は司法書士に依頼するといいでしょう。

抵当権抹消手続きを自分で行うのは大変

抵当権抹消登記の手続きを司法書士に依頼するメリット

司法書士は、法律と登記のプロフェッショナルであるため、確実に抵当権抹消手続きを進めてもらえるメリットがあります。また、登記に関連する法的な問題も、法律のプロである司法書士なら解決してもらえます。

確実に手続きをしてもらえる

抵当権抹消登記は、必要書類がそろえば、所有者個人でも行うことができる、登記申請の中でも比較的ハードルの低い手続きです。 しかし、申請書面の書き方や必要書類の準備など難しい面があるのも否めません。
そのため、登記のプロと言える司法書士に依頼するのが一般的で、最も確実な方法です。司法書士に代行してもらえば、必要書類の準備から一括して任せることができ、確実かつスムーズに登記を完了してくれます。
費用も必要経費を加えても、高いものではありません。一般的な一戸建て住宅の場合、抹消登記に必要な登録免許税も含めて1万円から1.5万円が相場です。
大切な資産である不動産の登記に関する手続きは、司法書士に任せるのが安心です。

なお、司法書士とひと口に言ってもさまざまな人がいるため、選定は慎重に行いましょう。経験が少ない司法書士へ依頼した場合、スムーズに手続きを進めてもらえないかもしれません。費用が安いから、自宅の近所に事務所があるからといった理由で選定するのではなく、豊富な実績や経験があるかどうかをまずはチェックしましょう。
こちらの話を丁寧に聞いてくれるか、費用は明確かといった部分も確認し、信頼できる司法書士であると判断したら依頼を検討しましょう。

法的な問題を解決してもらえる

債権者から送られてくる書面を使って申請する抵当権抹消登記は、簡単なようでうっかりしたミスにより滞ってしまうことにもなりかねません。
一番多いのが、所有者の住所の問題です。所有者が転居していても不動産登記簿の住所はそのままというケースが多くあります。抵当権抹消登記を行うには、その前に住所変更登記をあわせて行う必要があります。
抵当権抹消登記を司法書士に一括して依頼すれば、そのあたりも事前にチェックしてくれますので、住所変更登記に必要な書類をあわせて用意すれば、一括してスムーズに登記を完了できます。

また、ローンを返済し終えてから年数がたっている物件で、抵当権の抹消をせずに登記を放置してしまっていたケースも、司法書士に依頼するのがおすすめです。
この場合には、当時送られてきているはずの抵当権解除証書や登記識別情報といった書類を紛失してしまっているケースなどが考えられます。
司法書士に依頼すれば、抵当権者である銀行等に再発行の手続きを行ってもらえます。
銀行そのものが合併などで名前が変わっているケースなどでも、存続会社を調査して手続きをしてくれます。

■司法書士に抵当権抹消登記を依頼する場合の費用
◇実費 ◇司法書士報酬
【土地付一戸建て住宅の場合】
■登録免許税 2000円 (建物1000円+土地1000円)
■登記記録閲覧 664円 (332円×2)
■登記事項証明書 1200円 (600円×2)
1万円~1万5000円
※交通費・郵送代は別途
【区分所有マンションの場合】
■登録免許税 2000円 (建物1000円+土地(敷地権)1000円)
■登記記録閲覧 664円 (332円×2)
■登記事項証明書 1200円 (600円×2)

司法書士に抵当権抹消登記を依頼するイメージ

(写真/PIXTA)

抵当権抹消手続きの実例

抵当権抹消手続きは自分で行うことも可能ですが、さまざまな事情により手続きが複雑化することも考えられます。以下では、抵当権抹消手続きを司法書士に依頼したケースを紹介しています。司法書士に相談するかどうか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

【実例1】マンションを売ろうとしたら抵当権がついていた!

大都市郊外私鉄沿線、急行停車駅から徒歩7分にAさん家族のマンションはありました。
住み始めてから25年、子どもたちが社会人になり独立するのを機会に、Aさんは引越しを考えていました。
高齢になった両親のすぐ近くに、中古の一戸建てを買って住み替える予定です。
新しい家は、もう契約済みです。あとは今住んでいるマンションを売却するだけでした。
Aさんは、このマンションを購入するとき、20年の住宅ローンを組みました。ローンは5年前にすでに返し終わっています。
売却を依頼した不動産会社で、登記に購入時のローンの抵当権が残っていることを指摘されました。
登記簿謄本を見て、Aさんは「そういえば、5年前銀行からなにか書類が送られてきていたなあ」と思い出しました。
今となっては、その書類も見当たりません。
合併により、かつて住宅ローンを借りた銀行の名前はもうありません。Aさんは、あの書類をもう一度発行してもらえないか問い合わせたいのですが、どこに電話していいかも分かりません。
そこで、不動産会社の提案で、抵当権の抹消手続きを司法書士に依頼しました。
司法書士が合併後の銀行に問い合わせて「弁済証明書」を再発行してもらうことになりました。
このようにして、Aさんの所有するマンションの登記簿乙区に記載されていた第一順位抵当権には、文字の下に横線が引かれることになり、これが抹消された証となりました。

【実例2】相続した土地に抵当権がついていた!

Bさんには、兄弟が3人います。先日亡くなった両親の家を、誰が相続するのかについて話し合いを始めたばかりです。
相続財産であるこの一戸建て住宅は、古くからの住宅地にあり、敷地面積も200平米近くあります。
しかし、Bさん兄弟はみんなそれぞれ家族を持ち、違うところで暮らしています。
この家を相続して、暮らすということを誰も望んでいません。
そこでBさんは、相続にあたり、この家を売却しその他の相続財産をあわせて、みんなで分ける提案をしました。
売却にあたってはBさん名義に相続登記をすることになりました。
ところが、改めて不動産登記簿を見てみると、亡くなった父親が事業のために借りたお金の抵当権が登記簿に残ったままです。
Bさんにしてみれば、まず、この土地の買い手を探してもらい、相続登記後になるべく早く現金化して兄弟に渡したかったのですが、まず抵当権抹消登記が必要と聞かされて、司法書士に相談しました。
亡くなった所有者が抵当権設定者の場合、相続が完了しなければ抹消できないと聞かされました。
しかし、相続登記には、亡くなった父親の相続人全員のはんこを押印した遺産分割協議書が必要です。
ところが、司法書士から相続人調査に時間がかかると聞かされました。
兄弟のためにも利用しない相続不動産を早く現金化したかったBさん。
父親の存命中に抵当権のことに気がついていればと後悔したのでした。

まとめ

  • 抵当権とは、債務者から優先的に弁済を受ける権利。住宅ローンを利用する際には金融機関が物件を担保とし、債務者が返済不能に陥ったときは物件が売却され、そのお金が金融機関への返済に使用される
  • 抵当権は登記簿の乙区に記載され、住宅ローンの返済が終わっても自動的に削除されない。登記簿から削除するには抹消手続きを行う必要がある
  • 抵当権抹消手続きが必要なのは、不動産売却を行うときや住宅ローンを完済したとき、新規融資を受けるときなどがある
  • 抵当権を抹消していない場合、新たな融資を受けられない、物件の売却が難しいといった問題が発生する
  • 抵当権抹消登記は自分でも可能であるものの、煩雑かつ複雑な手続きを行わなければならないため、できることなら登記の専門家である司法書士への依頼が安心

記事のおさらい

抵当権の登記を放置してしまうリスクは?

住宅ローンを完済したら、抵当権の効力は失われます。ただ、抵当権の効力は失われても、登記簿の記載が削除されるわけではありません。登記簿に記載が残り続けると、相続時に余計なトラブルが発生したり、物件の売却に難航したりといった事態を招きます。詳しくは「抵当権抹消手続きが必要となるケース」を参照してください。

抵当権抹消手続きをプロに頼まず自分でしたい

抵当権抹消手続きは、司法書士に依頼せずとも行えます。手続きに必要な書類をそろえ、法務局の窓口で手続きを進めましょう。あらかじめ法務局の窓口へ相談しておくと、必要な書類や手続きの流れなどを教えてもらえるため、スムーズに抹消手続きを進められます。手続きの流れや必要書類は、「自分で行う!抵当権抹消手続きの流れ」を参照してください。

抵当権抹消手続きを第三者に任せることはできる?

抵当権抹消手続きは、第三者である司法書士へ依頼できます。抵当権抹消手続きは法手続きの一種であるため、誤りがないよう手続きを進めなくてはなりません。法律や登記の専門家である司法書士であれば、正しい知識や経験のもと粛々と手続きを進めてくれるため安心です。詳しくは「抵当権抹消登記の手続きを司法書士に依頼するメリット」を参照してください。

監修/司法書士 武田十三事務所
構成・取材・文/コハマジュンイチ
イラスト/松尾達

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