不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

【一戸建ての売却相場は?】相場を知る方法と高く売るコツ!費用、流れも解説

【一戸建ての売却相場は?】相場を知る方法と高く売るコツ

手持ちの一戸建てを売却しようと思ったとき、「いくらで売却できるのか?」「売却するにはなにをどうすればよいのか?」など、知りたいことがいろいろあるはず。ここでは一戸建ての売却方法や相場の調べ方、高く売るコツなど、不動産売却の基礎知識について解説します。

記事の目次

一戸建てイメージ

(写真/PIXTA)

一戸建ての売却相場を調べる方法

一戸建ての築年数による売却相場への影響

一戸建ての売却で気になるのは、建物が売却価格にどう影響するかということでしょう。
この場合、土地売却と違い、建物の築年数の経過でどのくらい売却価格が変化するかが問題になります。

一般的に木造一戸建ての中古住宅は、築15年~20年ほどで新築時の価格の10%~20%まで下がり、築30年を超えると価格がほぼゼロになるといわれています。

そのため、築30年超の住宅が建っている土地は「古家付き土地」とされ、ほぼ土地の価格だけで売却されているのが実情です。

下のグラフは2020年1月~6月に東京都で売却された一戸建ての平均価格と平均土地面積を、築年数ごとにデータ化したものです(図表1)。

東日本不動産流通機構データ

平均価格は築10年まで4500万円を超えていますが、築10年を超えると低下傾向にあることがわかります。

築25年超30年以内の平均価格が少し高くなっていますが、これは平均土地面積が134.5m2と突出して広くなっているためでしょう。

平均価格を平均土地面積で割った土地面積単価をグラフ化すると、築10年を超えると単価が大きく下がり、さらに築30年を超えると一段と下がっていることがわかります(図表2)。

東日本不動産流通機構データ

一方、マンションの場合は、一戸建てより価格が下落するペースが緩やかなので、中古マンションの売却を検討している方は、比較的に時間的余裕があるといえるでしょう。

suumo.jp

レインズで成約価格を確認する

一戸建ての売却活動を始めるには、まず周辺の売却相場を調べることが大切です。手持ちの一戸建てがいくらぐらいで売れるのかを知っておけば、その後の売却活動をスムーズに進めることができるでしょう。

一戸建ての売却相場を調べる方法としては、まずレインズの成約価格データの確認があげられます。
レインズとは不動産会社を対象とした物件情報ネットワークのことで、売り出された物件やその成約価格などの情報が登録されています。

レインズは不動産会社向けのネットワークですが、物件の平均価格や面積などの累計データは各エリアの不動産流通機構のサイトから誰でも見ることができます。

レインズで成約価格を調べる

不動産情報ライブラリで調べる

国土交通省では不動産の取引当事者にアンケート調査を行い、物件が簡単に特定できない形に加工して不動産取引価格情報として公表しています。
データは3カ月ごとに集計され、約4カ月後にサイトにアップされます。
例えば1~3月のデータであれば、7月に公表される仕組みです。

不動産取引価格情報を調べるには、同省の検索サイト「不動産情報ライブラリ」を利用します。
トップ画面を開き「地図表示」または「地図検索」を選ぶと、見たい場所を開くことができます。地図が表示されたら、上のタブから「価格情報」を選び、「不動産取引価格情報」の条件設定から物件の種類、取引時期を選択できます。

取引時期は四半期ごとに過去5年分までさかのぼって設定できます。
一戸建ての取引価格を調べる場合は、物件種類で「土地と建物」を選びます。

地図検索では住所または路線・駅名で絞り込みます。
住所は都道府県→市区町村→地区まで絞り込みが可能です。地図上には公示地価や基準地価のデータ表示することもできます。

地図上に表示されたマークをクリックすると、その地点の価格情報の件数が表示されるので、さらに「詳細表示」をクリックすると物件情報が一覧で表示されます。
一覧には所在地や最寄駅、土地・建物の面積、建物の建築年・構造などが表示され、物件ごとのより詳細な情報も確認できます。

不動産情報ライブラリ

(写真/国土交通省「不動産情報ライブラリ」)

SUUMOの売却価格相場ページを活用する

民間の情報サイトでも売却相場を確認することができます。
例えばSUUMOには一戸建て売却価格相場のページがあり、都道府県別にデータを見ることが可能です。

SUUMO 一戸建ての売却価格相場イメージ

例えば東京都を選択すると、さらに市区町村単位で検索できる画面が表示されます。
そのまま下にスクロールすると、東京都の一戸建て売却価格相場のデータが表示されます。
東京都の一戸建て売却価格相場は4280万円、建物面積(中央値)は95m2、土地面積(中央値)は100m2、築年数(中央値)は19年となっています(2020年8月現在)。

また、東京都の一戸建て最新売却実績が一覧で表示され、沿線・駅や売却価格、間取り、土地・建物面積、築年数、売却時期が確認できます。

SUUMO 一戸建ての売却価格相場イメージ

さらに画面をスクロールすると、一戸建ての掲載実績件数を価格や面積、築年数などで区分したデータが掲載されています。
「土地面積×価格」を選択すると、縦方向が土地面積、横方向が価格帯のマトリクス表が表示されます。
例えば土地面積100~120m2の一戸建てでは、3000万~4000万円の価格帯が最も多く570件です(2020年8月時点)。

SUUMO 一戸建ての売却価格相場イメージ

その下には一戸建て売却価格相場の推移グラフも表示されます。
最新月の前年比と前月比の数値もわかるので、価格相場の動きを視覚的に捉えられるでしょう。

SUUMO 一戸建ての売却価格相場イメージ

売却査定する

東京カンテイの市況データで確認する

一戸建て売却価格相場に関する民間サイトとしては、東京カンテイの中古一戸建て価格推移のデータを参照するのがおすすめです。
首都圏・近畿圏の各都府県のほか、中部圏・愛知県と福岡県について、平均価格・平均土地面積・平均建物面積・平均築年がわかります。

データは月ごとに集計されており、前年同月比や前月比も掲載されています。
過去のデータを見ることも可能なので、価格相場の動向を確認することが可能です。

 

東京カンテイの市況データ

【番外編】公示地価(公示価格)・路線価(相続税評価額)・固定資産税評価額(固定資産税路線価)などの土地評価額を調べる

上記のデータベースで調べられる価格は、該当のエリアで売買された一戸建ての相場価格です。周辺エリアに取引事例がなく相場を判断できない場合や、築年数が古い一戸建てで建物分の評価がほとんど見込めない場合は、土地価格から相場を推測することもできます。

土地には、「公示地価」、「基準地価」、「路線価」、「固定資産税評価額」など省庁や自治体が定める評価額があり、それぞれ管轄省庁・自治体のホームページで調べることができます。一戸建ての売却相場に関連する評価額は以下のようになります。

(1)公示地価・基準地価
公示地価とは、国土交通省が公示するその年の1月1日時点における全国の標準地の土地価格のことです。毎年3月に公表され、一般的な土地取引や固定資産税などの目安となる公的な指標です。公示価格は「不動産情報ライブラリ」の検索機能を使って、調べたい不動産の都道府県・市町村などの場所を選択することで確認できます。

また、公示地価と同様、公的な土地の基準価格の指標となるのが「基準地価」です。評価方法は公示地価と同じですが、主体が各都道府県であり、公表されるのが7月1日時点の地価ということが大きく異なります。下半期に地価を調べたい際に有用なほか、その年の公示地価と比較することで半年間の土地価格の変動も確認できるでしょう。基準地価も公示地価と同じく「不動産情報ライブラリ」で調べられます。加えて、各都道府県のホームページでも公開されています。

(2)路線価(相続税評価額)
路線価とは相続税や贈与税などの税金を計算する際の基準になる土地の価格のことで、国税庁によって定められています。 路線価は国税庁のホームページにある「路線価図・評価倍率表」によって調べることが可能です。

トップページから調べたい地域を選択すれば、路線価が表示された地図が閲覧できるようになっています。
ただし、路線価は公示地価の80%程度になっており、あくまで税金の計算のための価格なので、実際の取引が成立する土地価格(実勢価格)の目安を求めたい場合は、以下の計算式を用います

・実勢価格の目安=路線価による土地の評価額 ÷ 0.8 × 1.1
※1.1をかける理由は、実勢価格の目安が公示地価の1.1倍程度と考えられているため

(3)固定資産税路線価
固定資産税路線価から調べる方法もあります。
固定資産税路線価とは、固定資産税を算出するための路線価であり、この数値に基づいて計算された地価は「固定資産税評価額」と呼ばれます。
固定資産税を評価しているのは国ではなく市町村なので、各市町村のホームページで公開されており、誰でも調べることができます。
路線価と同様、公示地価を基準としていますが、価格の目安とされるのは公示地価の70%程度となっています。

ただし、これらは土地の価格を調べる方法なのので、建物部分の価格は別に考える必要があります。
建物に関しては、立地や築年数のほか、構造ごとに定められている法定耐用年数の残数なども資産価値を調べるうえで重要な要因となります。

また、このほかに一括査定サイトを通して、不動産査定を依頼する方法もあります。
一括査定サイトでは複数の大手不動産会社に一括で物件の無料査定を依頼することができるため、物件売却する場合の適正価格や時価の目安を知りたい場合に便利です。

一戸建てを売却するときの流れを理解しよう

一戸建てを売却するには手順に従って進める必要があります。
順を追って進め方や注意点などを見ていきましょう。

一戸建ての売却相場を調べる

まずすべきことは、冒頭で述べたように一戸建ての売却相場を調べることです。
同じエリア内で駅徒歩分数や土地・建物の広さ、間取り、築年数が同じぐらいの物件がいくらで売却されているかを確認します。

事前に売却相場を調べておくことは、不動産会社に売却査定を依頼するときや、売り出し価格を決めるときに、価格が適正かどうかを判断するのに役立ちます。
もちろん実際の売却価格はプロである不動産会社の査定が必要ですが、おおよその相場観をつかむ意味でも売却相場の確認は重要です。

売却相場を調べるためのデータは冒頭で紹介したとおりです。 平均価格や平均面積の時系列データは、相場が上昇しているのか下落しているのか、それとも横ばいなのかといった価格の変動を把握するのに役立ちます。

一戸建ての売却相場をイメージしている女性

(写真/PIXTA)

一戸建ての売却価格査定例を見る

また売却物件の個別データは、自分の持っている一戸建てに条件が近い類似物件の情報を探すことで、より具体的な売却相場がイメージしやすいでしょう。

売却価格の査定を依頼する

一戸建ての売却相場がイメージできたら、不動産会社に売却価格の査定を依頼します。
査定とは、一戸建てがいくらで売れるかを不動産会社に提示してもらうことです。

不動産査定には簡易査定(机上査定ともいいます)と詳細査定(訪問査定ともいいます)の2つの方法があります。
一般的にはまず簡易査定を依頼し、その後に詳細査定に進みます。

簡易査定では物件の所在地や土地・建物の面積、間取り、築年数といった基本的な情報を電話やメールで不動産会社に伝え、売却価格を査定してもらいます。
簡易査定は通常、1~2営業日程度で査定価格が提示され、用意するものも少ないため気軽に依頼できますが、あくまで机上による査定なので実際の売却価格との誤差が大きくなる可能性があります。

これに対し、詳細査定では実際に不動産会社が一戸建てに足を運び、周辺環境や窓からの眺め、日当たりは隣家の状況、内装や設備の傷み具合など、机上データだけではわからない詳細な部分まで調査します。
詳細査定は簡易査定よりも調査に時間がかかり、査定価格の提示まで1週間前後が通常です。

査定価格は不動産会社によって異なるので、複数の不動産会社に依頼し、納得のいく価格を提示してくれた会社を選ぶようにしましょう。

一戸建ての売却査定をする不動産会社のイメージ

(写真/PIXTA)

目安としては簡易査定を5社前後に依頼し、そのなかから3社前後に詳細査定を依頼するのが一般的です。
なお、手軽に売却額の目安を知る方法としては、不動産一括査定サイトの利用がおすすめです。
一括査定サイトでは、複数の会社へ物件の査定を依頼でき、相場情報を知るのに便利です。

suumo.jp

不動産会社と媒介契約を結ぶ

一戸建ての査定を依頼し、査定価格の提示を受けたら、そのなかから安心して任せられそうな不動産会社を選んで媒介契約を結びます。
媒介契約には一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があり、それぞれ異なるルールが適用されます。

大きな違いは契約できる不動産会社の数です。
一般媒介契約は複数の不動産会社と同時に契約できますが、専任媒介契約と専属専任媒介契約は1社としか契約できません。

また一般媒介契約と専任媒介契約は売主が自分で買主を見つけて売却することができますが、専属専任媒介契約では禁止されています。

専任媒介契約と専属専任媒介契約では契約後の一定期間内に指定流通機構(レインズ)に物件情報を登録し、すべての不動産会社に情報を公開しなければなりません。
これに対し、一般媒介契約ではレインズへの登録は任意です。

売却活動中の不動産会社から売主への業務報告は、一般媒介契約では任意ですが、専任媒介契約と専属専任媒介契約では定期的な報告が義務付けられます。

このほか、契約期間は専任媒介契約と専属専任媒介契約では3カ月以内と定められています。
一般媒介契約では法律による契約期間の制限はありませんが、国土交通省が推奨する標準媒介契約約款では3カ月以内とされています。

不動産会社と媒介契約を結ぶときは、3つのタイプの違いを理解して選ぶようにしましょう。

媒介契約のタイプによる違い
  一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
複数社との契約 × ×
売主自らが発見した相手との取引 ×
指定流通機構への登録 任意 7営業日以内(※1) 5営業日以内(※1)
売主への業務報告 任意 2週間に1回以上 1週間に1回以上
契約期間 制限なし(※2) 3カ月以内 3カ月以内
(※1)媒介契約締結日の翌日から (※2)標準媒介契約約款では3カ月以内

売却活動を行う

不動産会社と媒介契約を結んだら、物件を売り出して売却活動を行います。
売り出しの際はまず売り出し価格を決めなければなりません。

売り出し価格は不動産会社から提示された査定価格を参考に決めますが、査定価格と同額にしなければならないわけではありません。

査定価格は「確実に売れそうな価格」でもあるので、むしろ査定価格より高値で売り出し価格を設定するケースが一般的です。

特に需要の大きい人気エリアでは、多少強気の価格で売り出しても、買い手がつきやすい傾向にあります。

とはいえ売り出し価格が相場より高すぎると買い手がなかなか見つからず、あとで大幅に値下げしなければならなくなることも考えられます。
売り出し価格をどの程度に設定するかは、不動産会社と相談して慎重に決めましょう。

売却活動は物件情報のサイトへの掲載やチラシの配布、購入検討者が一戸建てを内覧する際の対応や価格交渉など多岐にわたります。
いずれも基本的には不動産会社に任せればよいのですが、内覧に備えて室内を片付けたり、内覧に立ち会って見学者の質問に答えるなど、売主としてもかかわりが必要です。

また最終的に売却を決めるときには、売却価格や引き渡し時期などを売主として決断する必要があります。
納得のいく条件で売却するためには、パートナーとなる不動産会社との信頼関係が重要になるのです。

一戸建てを仲介する不動産会社のイメージ

(写真/PIXTA)

売買契約を交わす

買主との交渉が成立し、売却価格や引き渡し日が決まったら、売買契約を交わします。
契約の際には重要事項説明書や契約書が必要になりますが、これらは不動産会社が用意する書類です。

売主側で用意すべき書類としては、本人確認資料や実印、印鑑証明書などがあげられます。
また一戸建てを取得する際に受け取った登記済権利証や登記識別情報通知書も必要です。

このほか、購入時の契約書や重要事項説明書も必要なので準備しておきましょう。
パンフレットなども残っていれば用意しておきます。

なお、引き渡しの日には所有権の移転登記や買主による住宅ローンの借り入れ、残代金の決済を同時に行うため、売主と買主のほかにそれぞれの媒介を担当する不動産会社、司法書士などが銀行に集まって手続きをします。

不動産会社への仲介手数料は、売買契約時と引き渡し時に半額ずつ支払うのが通常です。

売買契約に必要な書類・資料
書類・資料名 内容
本人確認資料 運転免許証やパスポートなど
実印 共有の場合は共有者全員分
印鑑証明書 発行から3カ月以内のもの。共有の場合は共有者全員分
登記済権利証または登記識別情報通知書 物件の内容確認や登記の際に必要
固定資産税納税通知書や固定資産評価証明書 固定資産税・都市計画税の税額確認に必要
その他 購入時の契約書・重要事項説明書、パンフレットなど

確定申告をして納税する

一戸建てを買主に引き渡したら売却活動は完了ですが、売主にはまだすべき手続きが残っています。

それが税金の申告と納税です。

一戸建てを売却したときは、売却によって得た金額に応じて所得税と住民税が課税されます。
この譲渡所得課税は所得に税率をかけて税額を算出しますが、税率は物件を所有していた期間によって異なります。

また譲渡所得課税には各種の特例があり、特例が適用されれば税額が軽くなったり、場合によっては税金が戻ってくるケースもあります。
詳しくは後述する税金の項目を参照してください。

一戸建てを売却した税金を計算するイメージ

(写真/PIXTA)

一戸建て売却にかかる費用を知ろう

一戸建て売却に必要な費用一覧

一戸建てを売却するときには、売主にも費用がかかります。
どのタイミングでいくらぐらいの費用がかかるのか、前もって確認しておきましょう。

売却費用のなかでも金額が大きいのが不動産会社への仲介手数料です。
仲介手数料は金額の上限が決められており、売買契約時と引き渡し時に半額ずつ支払うケースが一般的です。

一戸建てに住宅ローンが残っている場合に必要なのが住宅ローンの完済費用です。
費用の内訳は、司法書士などに支払う抵当権抹消費用と、金融機関に支払う繰り上げ返済手数料です。

売買契約時には、印紙税がかかります。
契約書に収入印紙を貼り、印鑑を押すことで納税します。

またケースによってはハウスクリーニングやリフォーム費用などがかかる場合があります。
リフォームをする場合は大きな出費となるので、必要かどうかは不動産会社とも相談して判断しましょう。

一戸建て売却にかかる費用
項目 内容
住宅ローン完済費用 一戸建てに住宅ローンが残っている場合、繰り上げ完済にかかる費用。抵当権抹消費用と繰り上げ返済手数料
売買契約時の費用 売買契約時にかかる印紙税
仲介手数料 売却を仲介した不動産会社に支払う手数料
その他 ハウスクリーニングやリフォーム費用など

住宅ローン繰り上げ返済にかかる費用

売却する一戸建てが自宅だった場合、住宅ローンの返済が終わっていないケースもあるでしょう。
その場合は住宅ローンを完済してから買主に引き渡さなければなりません。

住宅ローンを完済する場合には、金融機関に手数料を支払うことになります。
住宅ローンを一部だけ繰り上げ返済する場合は、インターネットで手続きすれば手数料がかからない金融機関がほとんどです。
しかしローン残高をまとめて返済する一括繰上げ返済の場合は、多くの金融機関で手数料がかかります。
金額は金融機関によって異なりますが、5000~3万円程度が一般的です。

住宅ローンを完済したときには、金融機関が設定していた抵当権を抹消しなければなりません。
この抵当権の抹消手続きには、司法書士に依頼するための費用などがかかります。

抵当権抹消の際には、登録免許税がかかります。
税額は土地・建物それぞれ1件につき1000円かかり、登記の際に収入印紙で収めます。
このほか司法書士への報酬として3万円前後かかるケースが通常です。

抵当権の抹消登記に必要な書類は金融機関に用意してもらう必要があります。
書類を受け取るには数日かかるので、一戸建ての売却が決まったら早めに金融機関に連絡しましょう。

なお、住宅ローンの残高が大きいために手持ちの資金で繰り上げ完済できない場合は、買主から受け取る代金で完済することになります。
その場合は物件代金を受け取ると同時に住宅ローンを繰り上げ完済し、金融機関から書類を受け取って抹消登記の手続きを行います。

住宅ローン一完済にかかる費用

◆一括繰り上げ返済手数料
金融機関に対して支払う
費用の目安:5000~3万円程度

◆登録免許税
抵当権抹消登記の際に印紙で納める
費用の目安:1件1000円

◆司法書士報酬
抵当権抹消登記の手続きの際に支払う
費用の目安:3万円前後

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売買契約時にかかる費用

買主と売買契約を交わすときには印紙税がかかります。
これは売買契約書に貼る収入印紙のことで、決められた額の印紙を貼って印鑑で消印を押すことで納税が完了します。

税額は契約書に記載された金額、つまり売却価格によって下表のように決められています。
また、2027年3月31日までの契約は軽減措置が適用され、本来の税額より低い額になっています。

例えば売却価格が1000万円超5000万円以下の場合、本来の税額は2万円ですが、軽減措置により1万円に軽減されます。

売買契約書は売主と買主それぞれに1通ずつ同じものが作成されるので、印紙税もそれぞれが1通分ずつ納税する形です。

売買契約にかかる印紙税(抜粋)
契約金額 本来の税額 軽減税額※
500万円超1000万円以下 1万円 5000円
1000万円超5000万円以下 2万円 1万円
5000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円
※2027年3月31日までの契約に適用

不動産会社に支払う仲介手数料

買主との売買契約が成立したら、不動産会社への成功報酬として仲介手数料を支払います。
仲介手数料の金額は不動産会社との交渉で決めますが、宅地建物取引業法(宅建業法)で上限額が以下のように定められています。

仲介手数料の上限額(売却価格400万円超の場合の上限額)
売却価格×3%+6万円+消費税

例えば売却価格が4000万円の場合、仲介手数料の上限額は以下のように計算されます。

4000万円×3%+6万円+消費税(10%)=138万6000円

なお、売買契約を交わした時点ではまだ売却活動は終わっていないので、仲介手数料の半額を支払い、残りの半額は引き渡し時に支払うのが通例です。
上記の金額の場合、売買契約時に半額の69万3000円を支払い、引き渡し時に残りの69万3000円を支払う形です。

売却後にかかる税金

一軒家を売却すると、売却後にかかる税金もあります。
売却して利益が出た場合に、所得税と住民税がかかるのです。

売却して得た利益のことを譲渡所得と呼びます。
譲渡所得は物件の売却代金(収入金額)からその物件を取得したときの費用(取得費)と売却したときの費用(譲渡費用)を差し引いて計算します。

取得費には一戸建てを購入したときの代金のほか、購入時にかかった仲介手数料や印紙税・登録免許税といった税金などが含まれます。
また譲渡費用に含まれるものは、売却時の仲介手数料や印紙税などです。

譲渡所得への課税は、譲渡所得に一定の税率をかけて計算します。
税率は物件を所有していた期間によって異なり、所有期間5年以下の短期譲渡所得の場合は39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)、所有期間5年超の長期譲渡所得の場合は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)です。

この譲渡所得課税には、各種の控除や特例があり、適用されると税額が軽くなったり、場合によっては戻ってくることもあります。

代表的なものが居住用財産の3000万円特別控除です。
これは譲渡所得から3000万円を控除するというもので、譲渡所得が3000万円以下であれば税額はゼロになります。

自宅の売却で所有期間が10年を超えていると、軽減税率が受けられます。
譲渡所得のうち6000万円以下の部分について、税率が14.21%に軽減される制度です。

自宅を売却して買い替えるときに、売却した価格よりも高い価格の住宅に買い替えると、譲渡所得への課税が繰り延べられる特例もあります。
この特例が適用されると、次回の売却まで譲渡所得に課税されません。

さらに自宅の売却によって売却損(譲渡損失)が発生した場合は、売却した年の他の所得と相殺して所得税などを軽減することができます。
譲渡損失が他の所得より大きくて相殺しきれなかった場合は、翌年から最長3年間の所得と繰り越して控除が可能です。
つまり最大で4年間の所得税などがゼロになる場合もあるのです。

一戸建ての売却後にかかる税金と主な特例

◆譲渡所得税
一戸建ての売却で利益が出た場合に納める所得税と住民税
短期譲渡所得(所有期間5年以下)の税率:譲渡所得×39.63%
長期譲渡所得(所有期間5年超)の税率:譲渡所得×20.315%

◆居住用財産の3000万円特別控除
自宅として住んでいた土地・建物を売却した場合、譲渡所得から3000万円を控除

◆所有期間10年超の自宅を売却したときの軽減税率
譲渡所得6000万円以下の部分について、税率を14.21%に軽減

◆居住用財産の買換え特例
元の住宅を売却した価格よりも高い価格の住宅に買い替えると、譲渡所得への課税の次回の売却時まで繰り延べられる(2025年末まで)

◆譲渡損失の損益通算・繰越控除
自宅として住んでいた土地・建物を売却して譲渡損失が発生した場合、売却した年の他の所得と相殺でき、相殺しきれなかった損失を翌年から最長3年間の繰越控除が可能(2025年末まで)

その他の費用

一戸建ての売却ではほかにも、ケースによってかかる場合がある費用もあります。

例えば専門会社に依頼して家の中をきれいにしてもらうハウスクリーニング費用が挙げられます。
掃除や片付け程度なら自分でもできそうですが、水まわりの汚れなどきれいに仕上げてもらうことで印象がアップし、買い手が早く見つかるケースもあるでしょう。

ハウスクリーニングの費用はケースにより異なりますが、一般的には5万~10万円程度です。
費用を抑えるため、浴室やトイレなど水まわりだけクリーニングしてもらう方法もあります。

一戸建てを売却するときにリフォームをしてから売り出すケースもあります。
リフォーム済みの物件は買ってすぐに住めるので買い手が見つかりやすく、高く売れる可能性もあるでしょう。

リフォームの費用は数十万円から数百万円程度までと幅がありますが、かけた費用をそのまま売却価格に上乗せできるとは限りません。
むしろ築年数の古い一戸建ての場合は買主による建て替えを前提としたほうが売りやすいケースもあるので、リフォームするかどうかは不動産会社と相談して決めるとよいでしょう。

家の中の見栄えをよくする方法としては、ホームステージングもあります。
これは家具や小物をモデルルームのように飾りつけるというものです。

最近はホームステージングの専門会社も増えており、10万~30万円前後で依頼することができます。
リフォームするほど費用をかけたくない場合は検討してみてもよいでしょう。

ホームステージングのイメージ

このほか、築年数が30年を超える古い一戸建ての場合は、建物を解体して更地にしてから売却したほうが売りやすいケースもあります。
解体費用は最低でも100万円以上は必要と考えておきましょう。
土地の形状や敷地面積、建物の床面積や構造などによって費用は変わります。 また、前面道路の幅が狭かったり、道路が入り組んでいたりすると、工事車両の通行が困難になり、費用が割高になるケースが考えられるので注意してください。

一戸建てを高く売るコツ

一戸建ての仲介に実績のある不動産会社を選ぶ

世の中に不動産会社はたくさんありますが、それぞれ得意分野をもっています。
なかには賃貸専門やマンション専門という不動産会社も少なくありません。
そうした不動産会社に一戸建ての売却を依頼しても、時間がかかるばかりで希望の価格で売るのが難しい場合が多いでしょう。

一戸建ての売却を依頼するには、一戸建ての仲介に実績のある不動産会社を選ぶことが大切です。
会社のホームページなどをチェックし、扱っている物件や営業エリアなどを確認するようにしてください。
インターネットでよくわからない場合は、電話やメールで直接訪ねてもよいでしょう。

売却を依頼する不動産会社を探しているイメージ

(写真/PIXTA)

信頼できる担当者を見定める

一戸建ての売却を成功させるには、売却相場を読み取って適切な売り出し価格を設定し、購入希望者の動向を見ながら内覧対応や価格の見直しなどの売却活動を行う必要があります。
そのため、パートナーとなる不動産会社の担当者が豊富な経験や知識をもち、信頼できる人物かどうかはたいへん重要です。

担当者の信頼度を見定めるには、媒介契約を結ぶ前の売却査定の段階でチェックします。
電話やメールでの机上査定から実際に面談しながらの訪問査定へと段階を経ながら、他の不動産会社の担当者とも比較しつつ確認していきましょう。

媒介契約を結んだあとの売却活動中に担当者の能力に疑問がわくこともあるかもしれません。
そんなときは担当者の上司に相談し、場合によっては担当者を変更してもらうよう交渉してみてください。

suumo.jp

不動産会社と打ち合わせするイメージ

(写真/PIXTA)

査定価格が妥当かどうかを判断する

机上査定や訪問査定で不動産会社から査定価格が提示されたら、その価格が妥当かどうかを判断しましょう。
売主としては査定価格が高い方が高く売れると期待しがちですが、必ずしもそうとは限りません。

というのも、査定価格が高いほうが売主からの依頼を獲得しやすいと考え、相場価格よりもかなり高い査定価格を提示してくるケースもあり得るからです。
しかし相場価格よりも明らかに高い価格で売りに出しても買い手がなかなか現れず、しばらくたってから大幅な値下げをせざるを得なくなることも考えられます。
そうなると売却に余計な時間がかかるだけでなく、結果的に相場価格を下回る価格で売却することにもなりかねません。

査定価格が妥当かどうかを見極めるには、複数の不動産会社に査定してもらって提示された価格を比較することが大切です。
査定価格が高すぎたり低すぎたりする場合はその根拠を聞き、納得のいく説明がなければその不動産会社に依頼するのは見合わせたほうがよいでしょう。

不動産の査定価格を検討するイメージ

(写真/PIXTA)

売り出し価格が適正かをチェックする

不動産会社と媒介契約を結んだら一戸建てを売り出しますが、このときの売り出し価格をいくらにするかも重要です。
不動産会社から提示された査定価格は「この価格なら売れるだろう」というものなので、査定価格どおりに売り出せばすぐに売れる可能性は高いでしょう。

しかし売主としては物件を少しでも高く売りたいと考えるのが通常です。
売却する一戸建てに高い価値を見出して、相場価格よりも高めでも買ってくれる買主が見つからないとも限りません。

そこで物件を売り出すときは、査定価格よりも少し高めの価格で市場に出すケースが多いようです。
とはいえあまり高すぎるとなかなか買い手が見つからず、購入希望者が現れても大幅な値下げ交渉をされて逆効果になる場合もあります。

査定価格からいくら上乗せするのが適正なのかはケースバイケースなので、いつまでに売りたいか見通しを立てたうえで、不動産会社と相談して慎重に決めるようにしてください。

不動産会社と売り出し価格を打ち合わせするイメージ

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掃除・片付けをしっかり行う

一戸建ての売却活動では、購入検討者による物件の内覧も重要なステップとなります。
見学者が訪問してきたときに印象を悪くしないよう、住んでいる自宅を売却する場合はできるだけ掃除や片付けをしておくことが大切です。

床などに置いてある荷物が多いと、それだけ部屋が狭く見えてマイナス効果です。
余計な荷物は収納に仕舞うか、売却活動を機会に思い切って処分してはいかがでしょう。

内覧の方法では週末などに不動産会社の担当者が常駐し、いつでも見学者が訪問できるようオープンハウスとするケースが多くみられます。
その場合はあらかじめ室内を片付けておき、担当者に任せて売主は外出する方法もあります。

しかし購入検討者の希望によっては、平日でも急に内覧が入る可能性もあるのです。
そうした場合に備えて、売却活動中はすぐに片付けられるよう室内を整理しておくようにしましょう。

売却活動のために掃除するイメージ

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適切に価格を見直す

一戸建てを売り出したものの、買い手がなかなか見つからないこともあるでしょう。
売れない理由の多くは、価格が高すぎることにあると考えられます。

売却活動が長引いている場合は、価格を見直すことも必要です。
目安としては1カ月程度たっても買い手が見つからない場合、価格の見直しを検討したほうがよいでしょう。

価格を見直す場合はある程度思い切って値下げしたほうが高い効果が得られる場合が多いようです。
価格帯が変わることでこれまでとは異なる購入希望者が現れる可能性が高まるからです。
逆に少しずつ小刻みに値下げしていくと、「もう少し待てばまた値下げするだろう」と思われてなかなか売れないケースも少なくありません。

いずれにしても、価格の見直しは売却活動の重要なポイントになるので、不動産会社の担当者とよく相談して決めるようにしましょう。

不動産の売却価格を見直すイメージ

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一戸建ての売却Q&A

今住んでいる自宅でも売却できる?

自分が現に住んでいる自宅であっても、住みながら売却活動をすることは可能です。
一般的には売買契約を結んでから1週間程度たってから引き渡しを行うので、それまでに自宅を引き払って空き家にしておけばよいのです。
引き渡しの時期は買主と交渉して決めるので、売買契約の1カ月後などとすることも可能な場合があります。

自宅を住んだまま売却する場合は、内覧のたびに掃除や片付けなどをしなければならない点に注意しましょう。
とはいえ自宅を売却する前に次の自宅に引越すとなると、買い替えのための資金繰りや仮住まいの家賃といった負担が生じてしまいます。

また自宅の買い替えでは売却して得たお金で住宅ローンを完済し、手元に残ったお金を買い替え先の購入資金とするケースが少なくありません。
そうなると買主から売却代金を受け取るまでは住宅ローンを返済し続けなければならないため、仮住まいによる家賃との二重負担を避けるためにも、なるべく引き渡しの直前まで住み続けていたほうが得策でしょう。

したがって自宅を売却する場合は、住みながら売却活動をするケースが一般的といえるのです。

一戸建ての売却について相談するイメージ

(写真/PIXTA)

買い替えは「買い」と「売り」どちらが先?

自宅を買い替える場合、新しい自宅の購入と古い自宅の売却を同時に進めなければならないわけではありません。
むしろ「買い」を先行させたり、逆に「売り」を先行させたほうが有利となるケースもあります。

「買い先行」が有利なのは、相場が上昇している局面です。
相場が上昇しているときは、新しい自宅を早めに購入したほうが安く買えて、その後に古い自宅を売却したほうが高く売れる特徴があるためです。

逆に「売り先行」が有利なのは、相場下落の局面になります。
相場が下落しているときは、古い自宅を早めに売却したほうが高く売れ、新しい自宅は遅めに購入したほうが安く買えるでしょう。

もちろん相場が上昇しているのか、下落しているのかを正確に判断するのは難しいので、これはあくまで理論上の話です。 このほかにも買い先行と売り先行ではそれぞれメリットとデメリットがあります。

買い先行のメリットとしては、新居の購入期限が決まっていないのでじっくり探すことができる点があげられます。
また古い自宅を引き払ってすぐに新居に引越せるので、仮住まいの家賃負担が発生しません。

逆に買い先行のデメリットは、古い自宅がいくらで売れるか決まっていないので、新居の購入資金も決めにくいことです。
また古い自宅に住宅ローンが残っている場合は新居のローンと二重払いとなるため、新居を先に購入した場合はなるべく早く売却しなければならず、値下げしなければならなくなるリスクがあります。

一方、売り先行のメリットとしては、売却価格が決まっているので新居を買うときの予算を確定できる点があげられます。 また売却の期限が決まっていないので売り急ぐ必要がありません。

売り先行のデメリットは、古い自宅を売ってから新居を買うまでの間に仮住まいの家賃負担が発生することです。
そのため新居をなるべく早く購入する必要があり、じっくりと探す時間がなくなるかもしれません。

「買い先行」と「売り先行」のメリット・デメリット

買い先行と売り先行のメリット・デメリットをまとめると以下の通りです。

買い先行
〈メリット〉
・新居をじっくり探してから売却すればよい ・売却後すぐ新居に移れるので仮住まいの家賃負担が発生しない
〈デメリット〉
・売却価格が決まっていないので新居の購入予算を決めにくい
・売り急いで値下げせざるを得なくなる場合がある

売り先行
〈メリット〉
・売却価格が決まっているので新居の購入予算を確定できる
・売り急いで値下げなどをしなくてもよい
〈デメリット〉
・新居を買うまでの間、仮住まいの家賃負担が発生する
・新居をじっくり探す余裕がなくなる場合もある

「買取」がトクなのはどんなケース?

一戸建てを売却するには不動産会社に仲介(媒介)してもらって買主を見つけるケースが一般的です。
これに対し、不動産会社に直接買い取ってもらう方法もあり、これを「買取」と呼びます。

仲介による売却では買主を見つけるまでそれなりに時間がかかります。
特に高く売ろうと考えて売り出し価格を高めに設定しているケースでは時間がかかりがちです。
これに対し、買取の場合は不動産会社との合意が成立すればすぐに売却できる点がメリットといえます。

また仲介による売却では不動産会社に仲介手数料を支払うことになります。
仲介手数料の上限は「売却価格×3%+6万円+消費税」なので、売却価格が4000万円とすると最大で138万6000円かかる計算です。
しかし買取であれば仲介手数料はかからないので、それだけ負担は軽くなります。

とはいえ、買取の最大のデメリットは売却価格が低くなることです。
不動産会社は物件を買い取ったあとでリフォームなどをして売却する必要があるので、査定価格の7割前後で買い取るケースが一般的です。
仲介による売却では査定価格より高く売れる場合もありますが、買取ではそのようなチャンスは期待できません。

このように買取にはメリットとデメリットがあり、売却価格が低くなってでもなるべく早く売却して現金化したい場合にオススメといえるでしょう。

なお、買取はどんなケースでも可能だとは限りません。
買取を希望する場合は、不動産会社が応じてくれるかどうか確認してください。

一戸建ての売却について相談するイメージ

(写真/PIXTA)

媒介契約は一般と専任どちらがいい?

不動産会社に売却を依頼するときの媒介契約には一般媒介契約と専任媒介契約(または専属専任媒介契約)があり、いずれかを選べます。
媒介契約のタイプを決めるときは、それぞれのメリット・デメリットを理解して選びましょう。

まず一般媒介契約は複数の不動産会社と同時に契約できるので、それだけ広く買い手を探すことができる点がメリットです。
不動産会社が競い合うことで、買い手が早く見つかる効果も期待できるでしょう。

ただし、不動産会社にとっては他社に仲介手数料をとられるリスクがあり、売主への業務報告も義務付けられていないので、売却活動に熱心に取り組まない場合も考えられます。
また不動産会社のネットワークであるレインズへの物件情報の登録も任意なので、登録されないと買い手が見つかりにくいこともあるのです。

一方、専任媒介契約(または専属専任媒介契約)のメリットとしては、1社としか契約できず買い手が見つかれば不動産会社が確実に仲介手数料を稼げるため、熱心に売却活動に取り組むことが期待できる点が挙げられます。
また一定期間後のレインズへの登録も義務付けられており、登録されれば物件情報が他の不動産会社にも行きわたって買い手が見つかりやすくなる点もメリットです。

ただし専任媒介契約や専属専任媒介契約では、売却活動が契約した不動産会社の能力に左右されます。
もし契約後に不動産会社の能力に疑問がわいても、契約期間中は不動産を変えることはできません。

「一般媒介契約」と「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」のメリット・デメリット

一般媒介契約
〈メリット〉
・複数の不動産会社に依頼すれば広く買い手を探すことができる
・不動産会社の競い合いで買い手が早く見つかることもある
〈デメリット〉
・他社に仲介手数料をとられるリスクがあるので不動産会社が熱心に取り組まない場合がある
・レインズに登録されないと買い手が見つかりにくいこともある

専任(または専属専任)媒介契約
〈メリット〉
・仲介手数料を確実に稼げるので不動産会社が熱心に取り組みやすい
・レインズに登録されると買い手が見つかりやすくなる
〈デメリット〉
・契約した不動産会社の能力に左右される
・契約期間中は依頼する不動産会社を変えられない

仲介を依頼する不動産会社は変えられる?

売却活動中に不動産会社の対応に不満が出てくることもあるでしょう。
そんなときは担当者を変えてもらう方法もありますが、それも難しい場合は不動産会社ごと変えたくなるものです。
では依頼する不動産会社を変えることはできるのでしょうか。

前述のように専任媒介契約や専属専任媒介契約では同時に複数の不動産会社と契約することはできないので、契約期間中は依頼先を変えることはできません。
ただし、契約期間は法律で3カ月以内と決められているので、期間が終われば契約を打ち切ってほかの不動産会社と改めて契約を結ぶことは可能です。
3カ月たっても買い手が見つからない場合は不動産会社の営業方法に問題がある場合も考えられるので、依頼先の変更を検討してもよいかもしれません。

また一般媒介契約であれば複数の不動産会社と契約できるので、契約中でも別の不動産会社と契約することができます。
売却活動に不満のある不動産会社とは、契約期間が終了したら更新せずに打ち切ってしまえばよいのです。

不動産会社と売却の相談をする夫婦のイメージ

(写真/PIXTA)

一戸建てを売却するときに最初にすべきことは、売却相場を自分で調べることです。
レインズや国の公的なデータ、民間の物件情報サイトを使って確認しましょう。

売却相場をチェックしたら、不動産会社に売却価格の査定を依頼し、その結果を見て不動産会社と媒介契約を結びます。
売却の際は売り出し価格を慎重に決めるのはもちろん、状況に応じて適切に価格を見直すことも重要です。
無事に買主が見つかって売買契約を結んだら、翌年に税務署へ譲渡所得の申告をして納税しましょう。

まとめ

  • 一戸建ての売却は、売却相場を調べることから始まります。
  • 詳しい査定価格を知りたいときは、不動産会社に査定を依頼しましょう。
  • 一戸建てを高く売るコツは、信頼できる不動産会社を見つけることです。

記事のおさらい

一戸建ての売却価格を調べる方法は?

売却相場は、公的な価格情報や民間の情報サイトで調べることができます。「一戸建ての売却相場を調べる方法」で紹介している方法で、自分の家の周辺で、同じぐらいの広さや間取り、築年数や駅徒歩分数の物件がいくらで売却されているのかを確認しましょう。

一戸建ての売却にかかる費用は?

一戸建て売却には、仲介手数料・住宅ローン完済費用、税金などの諸費用がかかります。売却費用の多くは一戸建てを買主に引き渡して代金を受け取るより前に支払う必要があるので、手持ちの現金からまかなわなければなりません。諸費用の相場は「一戸建ての売却にかかる費用」を参照してください。

一戸建てを高く売るコツは?

一戸建てを納得のいく価格で売却できるかどうかは、仲介を依頼する不動産会社選びに左右されます。不動産会社選びに失敗しないポイントや、媒介契約の種類は「一戸建てを高く売るコツ」を参照してください。

イラスト/村林タカノブ

●構成・取材・文/大森広司
住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う
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