不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

東京都豊島区Kさん(30代)/家族が増えて手狭になった築古マンション。建て替え計画がとん挫し、手放すことにした

東京都豊島区Kさん(30代)/築52年・42平米の自宅マンション、子育てが始まったら手狭に。住民の高齢化による修繕計画の難航もあり、手放すことにした

東京都豊島区のマンションが家族4人で住むには手狭になり、住み替えを考え始めたKさん。マンションを購入したときに親切だった不動産仲介会社に依頼して、売却と住み替え先のマンション探しを同時に進めました。売却物件は築52年の築古物件ながら、駅から徒歩1分と立地・環境が良いことから、売り出しを開始して2週間で2人の内覧希望があり、そのうちの1人と売却契約が成立しました。

不動産区分 マンション
所在地 東京都豊島区
築年数 約52年
間取り・面積 2LDK(約42m2
ローン残高 1475万円
査定価格 (買取の場合)1800万円
売り出し価格 2500万円
成約価格 2500万円

家族4人になり2LDKマンションが手狭に。築50年以上で大規模修繕が決まり売却を決意

2014年、長女が1歳のときに、東京都豊島区の駅前にある中古マンションを1800万円で購入したKさん。約5年住んで、子どもが2人になり、今後の成長も考えると約42㎡・2LDKでは狭いため、2019年ごろから住み替えを考え始めました。築52年と年数は経っていても、最寄駅へは徒歩1分もかからず、主要駅が徒歩圏、大小のスーパー、郵便局、公園なども近くにある便利な場所で、大学も近くにある落ち着いた環境という好条件。住戸の窓から東京タワーや有名な花火大会が見える眺望も気に入っていました。

手放すのはもったいないくらい条件がいいマンションではありましたが、広さのほかにもうひとつ手放す理由がありました。「築50年以上になり、管理組合で建物の大規模修繕を行うか建て替えかの話し合いがありました。耐震性も十分ではないと思いましたし、これまでに積み立てた修繕積立金を使って大規模修繕したところで長く住むのは難しいでしょうし、私たちは建て替えを希望していました。けれども年配の居住者が多くて建て替えに賛成する人が少なく、大規模修繕することが決まり、持っていても意味がないと思ったんです。また、大規模修繕派と建て替え派でもめて、マンションの雰囲気もちょっと悪くなっていましたし、ちょうど住み替えるタイミングだと思いました」。こうしてKさんは、住んでいるマンションの売却を進めると同時に、住んでいるマンションの近隣で住み替え先のマンションを探すことにしました。

「そもそも一生住むつもりで購入したわけではありませんでしたが、東京都内の駅前の便利なマンションで1800万円は破格の値段だったと思います」と振り返るKさん。5年住んで、住宅ローンは1475万円残っていました。

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知り合いの不動産仲介会社に売却と住み替えを相談

Kさんは、マンションを購入したときに仲介してくれた、不動産仲介会社の担当者がとても感じが良かったことを思い出し連絡をとりました。けれども、その人が部署を異動していたため、同じ会社の売却担当者を紹介してもらうことに。電話をするとすぐに訪問査定に来てくれました。

「信頼できる人に紹介してもらったことが大きいですが、大手の不動産仲介会社なので、何かあったときのサポートなども安心だと思いました。また、以前もお世話になっていることもあり、仲介手数料を10%引きにしてくれるという話もありがたかったですね」。その会社に売却と住み替え先の購入についても依頼すると決めて、専属専任媒介契約を結びました。

Kさんが査定を依頼したのは一社だけでしたが、近隣の同じようなマンションがいくらぐらいで売却されているか、物件の近くに家族4人で住める広いマンションはないか、しっかりリサーチしていました。「住み替えたいマンションに目星がついているなら、そのマンションがいつ売れるか分からないので売却を急いだ方がいいと言われました。不動産仲介会社が買取るとすぐに売れますが、その場合は1800万円と言われて、その価格で売るのはちょっと安すぎると思いました。

築年数は古くても、購入した際はフルリフォームされていたので部屋はきれいでしたし、いつか住み替えるかもしれないと思い、壁に穴ひとつあけずにきれいに住んでいたので、不動産会社の方もそんなに古くは見えないと驚いていました。また駅前で便利ですし、購入当時に比べてマンションの価格相場が上がっていました。価格はいつでも下げられるので、まずは強気の価格でスタートしたいと話しました」

2019年のうちに引越したいとは思っていても安売りはしないで、まずはニーズがどれだけあるか様子を見たいと思ったKさん。担当者と相談して、2500万円で売却活動をスタートすることにしました。

売り出して2週間目に売買契約が成立

2019年8月、売却活動をスタートしました。不動産仲介会社のホームページや不動産ポータルサイトに掲載し、チラシを配布。モノを移動したり、使わないおもちゃはレンタルスペースに預けるなどして少しでも広く見えるように室内写真を撮影し、窓からの眺望写真を撮影するなど、たくさんの写真で物件の良さをアピールしました。

最初の1週間は、閲覧数やお気に入りマークはありましたが、問い合わせはありませんでした。2週目に内覧希望の人が2人現われ、9月初めに内覧を行いました。駅前で42㎡だったことから、2人とも単身者でした。内覧にはKさんも立ち会いましたが、かなり具体的なことを質問され、手ごたえを感じたそうです。

その後、不動産仲介会社から2人とも購入の意思があることを伝えられましたが、1人は値下げを交渉、当初の価格どおり2500万円で購入したいと申し出てくれた方に売却することを決意しました。「2500万円で買いたいと言ってくれた方は、感じも良くて。長く住んで近所とのコミュニティもできていて、いい人ばかりだったので、売るなら人当たりの良い人に売りたかったのもあり、すすめてくださいとお願いしました」。購入者もスムーズに住宅ローンの審査が通り、2019年10月に売買契約が成立、同じ日に住み替え先のマンションの購入を契約しました。

■住み替えは「売り」と「買い」のタイミングに注意!

Kさんの住み替えは、新居の購入と前の家の売却のタイミングがぴったり合った理想的なケースですが、一般に住み替える際はタイミングの調整に注意が必要です。
先に新居を購入する「買い先行」は、仮住まいの必要がなく、流れがスムーズです。ただし、新居の購入費を前居の売却代金から支払うことができないので、資金計画は慎重に見定める必要があります。また、前居に住宅ローンが残っていて新居でも新たにローンを組む場合は、ダブルローンになることにも注意が必要です。
前居の売却後に新居を購入する「売り先行」は、先に売却代金を受け取ってから新居を購入するので、資金計画としてはより安全ですが、仮住まいが必要になるケースがあります。
住み替えの際は、返済中のローンの残債があるか、新居がすぐ見つかりそうかなどを考え、自分の状況に合ったタイミングを考えましょう。

引き渡し時期や売却価格など要望は遠慮なく伝えたことで売却活動に後悔少なし

マンションの売却・住み替えを決意してから約2カ月ですぐに購入希望者が現れ、スピーディに住み替えたKさん。住み替え先に引越してから引き渡したかったので、購入者には物件の引き渡しを待ってもらったそうです。
「大きな買い物なので、不動産仲介会社に言われたままの価格で売り出すのではなく、意思をしっかりもって、自分なりにリサーチをして希望額を伝えて良かったと思います」。少しでも高く売りたいのはやまやまでしたが、リフォームをすることもなく現状のまま売却できたこと、住み替え先についても間に入ってもらったことも含めて100点中80点の満足度だそう。

時々、以前の住まいの眺望が恋しくなるというKさん。今の心境を聞くと「2019年に住み替えて、2020年はコロナウイルス感染症対策で学校や保育園が休みになり家にこもる期間がありました。以前の家だったら狭くて耐えられなかったかも (笑)。あのタイミングで決断して良かったと思っています」と、振り返っていました。

住み替え先の広いリビングでくつろぐ家族

2019年8月 ・売却と住み替えを検討し始める
・ネットで近隣の物件の売却価格の相場をリサーチ
・住み替え先の候補を見つける
・以前お世話になった不動産仲介会社に連絡
・電話した当日に訪問査定を受ける
・不動産仲介会社と面談、売却価格をすり合わせる
・専属専任媒介契約を結ぶ
・売却活動がスタート
2019年9月 ・内覧者から購入意思を伝えられる
2019年10月 ・売買契約が成立
・同日、住み替え先のマンションの購入契約が成立
・住宅ローンを返済する
2019年12月 ・住み替え先に引越す
・物件を引き渡す

まとめ

  • 物件を購入した際の不動産仲介会社に相談するのもひとつ
  • 買取はすぐに売却できるが価格は安くなる。十分に自分で相場をリサーチして希望額を伝えよう
  • 築古でもアクセスのよい物件は、買い手がつきやすい

取材・文/佐藤由紀子 イラスト/石山好宏

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