不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

セカンドライフを見据えて、3階建ての一戸建てから千葉のマンションに住み替え/東京都豊島区Nさん(60代)

東京都豊島区Nさん(60代)/セカンドライフを見据えて、3階建ての一戸建てから千葉のマンションに住み替え

豊島区の3階建ての一戸建てに住んでいたNさんは、よりよいセカンドライフを迎えるべく、定年を前に住み替えることに。旧居の売却と新居の購入の不動産仲介会社を一社に絞り、売却活動前に仮住まいをすることで、効率的に実施しました。

不動産区分 一戸建て
所在地 東京都豊島区
築年数 築12年
間取り・面積 1LDK2S(約85m2
ローン残高 400万円
査定価格 4825万円
売り出し価格 5280万円
成約価格 4900万円

豊島区にある3階建ての自宅を、年齢の変化を見据えて手放すことに

Nさん(60代)は、東京都豊島区で家族3人暮らし。住まいは2009年に建売住宅で購入した3階建てで、1LDK2S・約85m2。徒歩5~15分圏にJR・東京メトロ・都営地下鉄の各駅があり、通勤・通学にとても便利でした。
購入価格は4200万円。
そのうち2000万円で組んだローンは残額400万円で、数年で完済予定。これからも住み続けるつもりでいましたが、定年を目前にした2021年1月ごろ、妻からある提案をされます。

「『自分たちが70代~80代になれば、階段の上り下りが相当きつくなるはず。比較的、築年数が浅くて家が高く売れるうちに、売却して住み替えてはどうか』と言われたのです。
中古住宅は築10年前後を境に販売価格が下がると聞いていましたし、ここは都心に出やすいのが利点なものの、近隣にスーパーが少なく、やや不便さを感じていました。退職後はライフスタイルが変わりますし、よい選択だと思ったのです」

円滑な住み替えのために、新居購入予定エリアへの仮住まいを計画

住み替えを決めたNさんは、まず「いかにものごとを効率的に進めるか」を考えたと言います。

「物件が早々に売れたとしても、引っ越し先と、そこに入居する時期が決まらなければ、引き渡しできません。しかし売却益を新居の購入資金にあてるつもりでいたため、今の家がいくらで売れるかがわからないと、新しく物件を買えないというジレンマがありました」

そこでNさんは、一旦、賃貸住宅に仮住まいをしたうえで売却活動をし、並行して新しい物件を探そうと計画します。

「まず2021年3月~4月に集中して検討し、住み替え先のエリアを千葉県美浜区に選定。不動産会社のA社を介し、同じエリアに仮住まいを見つけました」

5月に入ると、一括査定サイトを使って4社に査定をしてもらいます。

「一括査定サービスを利用したのは、媒介契約する不動産会社を選ぶためというより、複数の会社と接触することで『物件の相場』や『売り出した後に予想される反響』『最低限、売れそうな価格帯』『具体的な営業方法』『売れない場合の対策』などを知るためです。
ここでプロの見解や市場の傾向をつかみ、今後の見通しを立てようと思いました」

早速、4社から返事がきますが、Nさんはその査定価格に驚きます。

「各社の簡易査定は購入時より遥かに高い4900万円~5200万円。
何でもこの辺りには、子どもの成長に合わせて賃貸住宅から広めの家に住み替えたいと願う若い夫婦が多いようで、ここ数年で中古の一戸建ての相場が上がっているというのです」

■「売り先行」と「買い先行」

現在、住んでいる自宅(不動産)の売却と住み替えを同時期に行う場合、先に物件を売却する「売り先行」にするか、まず新居を購入する「買い先行」にするかを考える必要があります。基本的には「売り先行」のほうが、資金計画を立てられるため安心ですが、居住中に内見を行わなくてはならないことや、引っ越しの時期が定まらないため、売却ができても、すぐに引き渡しができない欠点があります。そんなときは、賃貸住宅に仮住まいをするのも一つの手。デメリットを解消したうえで、ゆとりをもって売却活動ができるといえるでしょう。

売却と購入の不動産会社を、事情を知ってくれている一社に絞る

2021年6月に仮住まいへの引っ越しを控え、Nさんはいよいよ売却活動に本腰を入れることに。
パートナーに選んだ不動産会社は、以前、仮住まいを紹介してくれたA社でした。

「一括査定をした中にも信用の置ける会社があったので『売り』と『買い』で不動産会社を別々にして構わなかったのですが、双方の事情を理解してくれる一社に託したほうが、何ごとも話が早いと思ったのです。
A社では住み替え先も探してもらっていましたし、新居購入予定のエリアと売却する物件は遠距離だったものの、大手なので両方に営業所があり、社内で伝達体制があるため安心。営業担当が親身に相談に乗ってくれたのも決め手になりました」

A社に訪問査定をしてもらったところ、結果は4825万円でした。

「うちには喫煙者がいないためか、営業担当いわく『買った人がリフォームする必要がないほど、内装がきれいです』とのこと。加えて『需要の高いエリアだし、強気でいけますよ』とも言ってもらえました」

Nさんは査定価格に納得したこともあり、2021年5月にA社と専任媒介契約を結びます。

強気で売り出すも1カ月間決まらず、300万円を値下げ

物件を売り出すにあたりNさんは、A社からアドバイスを受けます。

「周辺におけるここ数年の中古住宅の販売実績を分析し、こう提案してきたのです。
『査定価格のまま売却できる可能性は70%ですが、仮に1割プラスしても売れる確率は約10%あります。少しでも買ってもらえる見込みがあるなら、最初は高値で売り出し、難しければ値段を下げていきませんか』と。
仮住まいをするほど費用がかさむため、長引かせたくはありませんが、まずはA社の言うとおりにしてみようと思いました」

Nさんは査定価格に1割ほどを上乗せした5280万円で販売をスタート。
A社では周辺で物件購入を検討している客層に訴求するべく、一帯の住宅にポスティング。自社のサイトのほか、大手不動産サイトに情報をアップします。

「すぐに反響があり、2週間で3組の内見を実施することになりました。しかし5000万円台だとハードルが高いようで、いずれも決まりません。さらに2週間待ちましたが、それ以上、内見を希望する人は現れませんでした」

NさんはA社と話し合い、「高値を狙って待つより、早く売ることを優先したい」と4980万円まで価格を下げることにします。

「すると1週間ほどしてA社から『購入希望者がいる』と連絡が。聞くと最初に内見した3組のうちの1組で、お子さんのいる夫婦。
『以前の販売価格だとローンを組めず諦めたものの、今の値段だと自己資金を足せば可能になるので買いたい』とのことでした」

そのころA社のほうで、見込み客に声をかけていたこともあり、新たに2組、内見を迎えましたが、購入には至りません。Nさんは「確実に買ってくれる人を逃したくない」と、連絡のあった夫婦に売却する意思を固めますが、売買契約の直前になって、先方からある依頼をされます。

「『やはり価格的に厳しいので、もう少し負けてほしい』と、値引き交渉されました。
値下げせずに済むに越したことはありませんが、4200万円で買ったことを思えば、4980万円はもともと十分過ぎる価格です。
『切りのいいところで4900万円なら』と伝えたところ、承諾してもらえました」

2021年9月、Nさんは買主と売買契約を交わします。

不動産売却で値引き交渉に対応するイメージ

段取りを考えたことが成功の秘訣。予想を上回る値段で売れて満足

2021年9月に買主に物件を引き渡し。
コロナ禍での新居探しは難航したものの、11月に無事に購入。その後、速やかに引っ越しを済ませました。
半年に及ぶ売却活動を、Nさんはこう振り返ります。

「『仮住まいをしたうえで行動に移したこと』『売りも買いも、A社に託したこと』この2つがカギになり、スムーズにことを進められました。物件の売り出し中は、A社に『なるべく早期に売却したい』と折に触れて話していたのに加え、家族と情報共有するため、営業担当から電話で聞いた内容を、メールでも送ってもらうようにしていました。こうした働きかけも、無駄でなかったのかもしれません。
予想より高値で売れたことに満足しています」

千葉県美浜区の新しい住まいは、築13年・3LDK・約72m2のマンション。購入価格は、すべて売却益で賄いました。

「駅から徒歩約5分の場所ながら、とてものどかな街。リフォーム済なので設備も内装もきれいで住みやすいです」

一つひとつの理知的な判断は、最良のセカンドライフをもたらす結果となりました。

2021年1月 ・一戸建ての売却を考えはじめる
2021年5月 ・4社で一括査定をする
・A社で訪問査定をする
・A社と専任媒介契約を結ぶ
2021年8月 ・購入者が現れる
2021年9月 ・買主と売買契約を結ぶ
・一戸建てを買主に引き渡す

まとめ

  • 自宅の売却と新居の購入を同時に行う場合は、一旦、仮住まいすると、資金や日程の計画を立てやすい。
  • 複数の不動産会社と一度にコンタクトを取れる一括査定サービスは、情報収集の場としても活用できる。
  • 需要が高いエリアの物件であれば、相場より強気の価格で売り出し、様子を見て値下げする手も。
  • 媒介契約をした不動産会社には、積極的に働きかけて、こちらの要望をしっかり伝えよう。
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取材・文/星野 真希子 イラスト/松尾達

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