不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

東京都豊島区Nさん(50代)/築40年のマンションを購入時より高値で売却。成功のカギは「同じマンションの住人」

東京都豊島区Nさん(50代)/築古の都内マンション。同じマンションの住人に購入時より高値で売却

独身時代に豊島区にマンション(3LDK)を買ったNさんは、約20年後、夫と千葉県に移住するべく売却することに。親身に相談に乗ってくれる不動産会社に依頼し、同じ物件の住人に購入時より高い値段で売却。並行して新居の購入も行いました。

不動産区分 マンション
所在地 東京都豊島区
築年数 築40年
間取り・面積 3LDK(約90m2
ローン残高 なし
査定価格 4000万円
売り出し価格 3980万円
成約価格 3800万円

約20年住んだマンションを、海沿いの町に移住するべく手放すことに

独身のころに都心で賃貸住宅を借りていたNさん(50代)は、「毎月、高額な支払いをするなら、自分の資産にあてた方がいい」と、都内のマンションに目を向けます。入手したのは東京都豊島区の築18年(購入当時)・3LDK・約90m2の物件。
十分な広さがあるうえ、南東向きの角部屋で日当たりが良く、勤務先までは歩いて行ける距離。4階建ての最上階でエレベーターがないのが少々難だったものの、徒歩約10分で東武東上線や山手線をはじめとした複数の路線の駅を利用できるほか、近隣には百貨店もありました。
3400万円で購入した後、ローンを完済。結婚してからも住み続けます。
しかし2020年の秋ごろ、住み替えを考えるように。

「夫が事業を始めるに当たり、物件を探していたのですが、たまたまネットで見かけた千葉県富津市にある中古の店舗併用住宅にひと目ぼれ。試しに内見したところやっぱり良くて、購入する話が持ち上がりました」

しかしその後、ローン審査が厳しそうだということが判明。Nさんは今のマンションを売り、その売却益でここを入手しようと考えます。

「インターネットで相場を知らせてもらえるサービスを利用したり、周辺にある同条件のマンションの販売価格をチェックしたりして、以前と比べて値段が上昇している情報を得ていました。
最初は夫がセカンドハウスとして使うつもりだったのですが、一緒に周辺を見るうちに私も『自然豊かな地域もいいな』と思うようになって。今の家に不満はありませんでしたが、今までと違う暮らしをしてみようと思ったのです」

親切心を感じたA社と媒介契約。新居探しと売却活動を同時に行う

売却に向けて動き出すことにしたNさんですが、その矢先、目当てにしていた富津市の物件が、先方の事情で買えなくなることに。
やむを得ず、同じ千葉県で新しい物件を探しながら、並行してマンションの売却活動をすることにします。

そこでNさんが仲介契約をすることにしたのは、富津市の物件を紹介してくれた、大手不動産会社のA社でした。

「『新居の購入とともに、売却をする』というわれわれの状況を理解してくれていただけに、話が早いと思ったのもありますが、一番の理由は、営業担当者の親切さに心を打たれたから。
実は同じくらいの時期に、『この辺りのマンションであれば5000万円くらいで売れます』と書かれたチラシがポストに入っていて、とある不動産会社(B社)に部屋を見てもらったのです。でも、やり取りを続けるうちに、よくわからないまま値段を下げられてしまって」

その後、A社に訪問査定をしてもらったところ、結果は4000万円でした。

「『購入当時より相場は上がっているものの、エレベーターがない分、近隣の高層マンションと同じとはいかず、B社では査定価格を下げざるを得なかったのでは』とのこと。
その理由に納得しましたし、何よりA社は千葉県の営業所から豊島区のマンションまでたびたび足を運び、やや遅い時間でもイヤな顔ひとつせず相談に乗り、私たちに寄り添ってくれました。
自分たちが信頼できる方にお願いしたいと思ったのです」

2020年12月、NさんはA社と専任媒介契約を結びます。

suumo.jp

約2週間で有力な候補者が現れるも、値下げ交渉され思い悩む

物件を売り出すうえで、Nさんは二つの工夫をしたと言います。

「『4000万円台だと高値の印象になるので少し下げた方がいい』とA社に促され、売り出し価格は3980万円に設定。リフォームで食器洗い乾燥機やミストサウナといった水まわりの設備を新しくしていたため、物件の紹介文に書いてもらいました」

そうして不動産ポータルサイトに物件情報をアップすると、すぐに「内見希望者がいる」と一報を受けます。

「それから1週間後、買主側の不動産会社と内見者、A社の営業担当を自宅に迎えることに。しかし滞りなく見学をしてもらったものの、先方から返事がなく……。結果的に売却にはつながりませんでした」

さらに1週間ほどして2組目の希望者が現れますが、内見の日時を決める前に立ち消えに。ほどなくして3組目の内見者の知らせがきます。
それは偶然にも、同じマンションの別の部屋を、賃貸で借りている人でした。

「早速、来ていただいたところ、物件の住み心地を知っているだけに本気度が高く、内見した直後にA社に連絡が入りました。しかし、まずもって言われたのは『購入の意思はあるが、3500万円に値引きしてほしい』ということ。
そのときはA社が『さすがにそれはない』と断ってくれましたが、『では3800万円ではどうか』と。さらに『2月中に入居したい』と交渉されました」

まだ千葉県でこれといった物件を見つけていなかったNさん。急ぐ必要はないだけに、断って4組目を待つつもりでしたが、A社からアドバイスを受けて思いとどまります。

「『このマンションの入居者であれば、物件の良し悪しを理解したうえでの判断でしょう。確実に売買契約につながるだろうし、後々のトラブルも避けられるはず。そうした人に買主になってもらえるのは幸運ですよ』と言われたのです。とはいえ新居が決まっていないのに、すぐに売買契約はできません。しばらく考えるために1月半ばまで待ってもらうことにしました」

■値引き交渉

不動産売買では、購入を検討している買主から「値引き交渉」をされることがよくあります。売却を決めるのはあくまで売主なので、応じるかは自由。しかし不用意に断れば、貴重なチャンスを逃し兼ねません。値引きはYES or NOの二択ではなく、臨機応変に交渉が可能。提示された金額が難しい場合は、引き渡しの時期を早める・リフォームを行う・一部の家具を譲るなど、相手のニーズに合わせて譲歩のかたちを変えてみましょう。値引き交渉されるのを見越して、販売価格を少し高めに設定して売り出すのも手です。

値引きを受け入れて譲歩する代わりに、引き渡し日を延ばしてもらう

年が明けて2週間ほど、千葉県で物件探しをしたNさん。まだ本決まりではないものの、「この調子であと1カ月動けば見つかりそうだ」と感触をつかみます。

「『同じマンションの入居者が買主になるのはいい』というA社の言葉には説得力がありましたし、断ったところで次の候補者が現れるとは限りません。
しかしさすがに2月に退去するのはハードルが高くて。そこで『3800万円への値下げを受け入れる代わりに、引き渡しを4月まで延ばしてほしい』とお願いしました」

しかし、相手から了承はもらえません。

「ただでさえ家賃が高いうえに、賃貸借契約の更新が迫っていて、早く引っ越したかったようです。そこで間を取り『3月に引き渡すのはどうか』と交渉。すると今度はOKしてもらえました」

2021年1月、Nさんは買主と売買契約を交わします。

タイトな日程だったけれど、購入時より高値で、かつ早期に売れて満足

その後、Nさんは2月に2960万円で千葉県内の中古物件を取得。3月に引っ越しを済ませ、同月にマンションを引き渡します。

「数カ月間、本当に目まぐるしく、繁忙期で引っ越し代も高くて。正直、もう少しスケジュールに余裕をもてるのが理想的でした。でも振り返ってみれば、もともとは3400万円で購入し、約20年も住んだ物件。400万円も高く、しかもこんなに早く売れたら万々歳でしょう。
新居については集中してたくさん内見をしたので、短い期間だからといって不本意に決めたということはありません。
売却活動中、A社の担当は『この値段に下げるくらいなら売らない方がいい』『時間を置いて考えてみたらどうか』など、売主の立場で親身に相談に乗ってくれました。ひとえに不動産会社との出合いのおかげだと実感しています」

住み替え先は、吹抜けのファミリールームがある店舗付き一軒家。車がないと不便な地域ですが、築浅である分、内装がきれいで、山林を宅地造成した一帯だけに、コミュニティが新しいのが気に入っていると言います。

無事にことを終えた今、「何ひとつ後悔はない」と言い切るNさん。その表情は新しい暮らしをは始める期待に満ちあふれていました。

住み替え先の生活イメージ

2020年11月 ・マンションの売却を考え始める
・B社で訪問査定をする
・A社で訪問査定をする
2020年12月 ・A社と専任媒介契約を結ぶ
・購入者が現れる
2021年1月 ・買主と売買契約を結ぶ
2021年3月 ・マンションを買主に引き渡す

まとめ

  • 売却活動はどの不動産会社に頼むかが要。売主に寄り添って相談に乗ってくれる会社を見極めよう。
  • リフォームで新しい設備に入れ替えた場合は、販売時に紹介文に書いてもらい、アピールすること。
  • 同じマンションの住人であれば、物件をよく知るだけに、前向きに検討してもらえる可能性が高い。
  • 4000万円よりは3980万円にするなど、売り出し価格は大台を少し切るよう設定してお得感を出す。
  • 買主から要求されることのハードルが高いときは、機会を逃さないよう譲歩しながらも要望を伝える。
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取材・文/星野 真希子 イラスト/石山好宏

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