マンションや土地、戸建などの不動産を売却するには、まず売却を依頼する不動産会社を選ぶことから始める必要がある。売却がうまくいくかどうかは、不動産会社選びによるところが大きいとさえいえるので、どのような観点から選べばよいかを知っておこう。
大手か中小か、そのメリットとデメリットは
大手にも中小にもそれぞれメリットがある
世の中には数多くの不動産会社があるが、大きく2種類に分けるとすると大手か中小かということになるだろう。テレビCMなどでだれもが名前を知っている大手のチェーン店か、それ以外の1人で切り盛りしている“町の不動産屋さん”も含めた中小の不動産会社か、の2種類だ。
大手は店舗や人員が多いので、手持ちの物件情報や顧客リストが豊富なため、買い手を探しやすい面がある。また、保証や各種サービスなどの社内体制が整っており、その意味からも有利に売却できる場合があることも確かだ。
一方、中小で地元に根付いて営業している場合は、大手にはない物件や顧客の情報を持っているかもしれない。決まったサービスメニューなどがなくても、担当者がきめ細かく対応してくれれば問題ないだろう。
会社の規模よりも担当者の仕事ぶりが重要
そもそも売却を依頼すると、不動産会社はレインズ(不動産流通機構)と呼ばれる情報システムに物件情報を登録するケースがほとんどだ。レインズはインターネットでどこの不動産会社も確認できるので、大手でも中小でも物件情報を広く公開できる点は変わらない。また民間の物件情報サイトに公開すれば、一般の人も情報を手軽に閲覧できる。
そういう意味では、会社の規模はさほど気にしなくてよいともいえる。「重要なのは担当者の仕事ぶりです」と指摘するのは、フリーダムリンクの永田博宣さんだ。
「この業界は担当者の権限がわりと強いので、希望どおり売却できるかどうかは担当者次第という面があります」
免許番号や行政処分情報でチェックする方法もある
免許番号のカッコ内の数字で営業年数が分かる
公的な情報を利用して、不動産会社についてチェックする方法もある。まず確認したいのが免許番号だ、これは宅地建物取引業の免許番号で、不動産会社の広告やHPの会社概要などに必ず書かれている。
免許番号は「国土交通大臣(4)第1234号」「東京都知事(2)第12345号」などと書かれており、複数の都道府県に事務所があれば国土交通大臣の免許、1つの都道府県だけなら知事の免許となる。
確認したいのは真ん中の( )の中にある数字だ。これは免許の更新回数を示しており、免許は5年ごと(1996年3月以前は3年ごと)に更新される。つまり数字が大きいほど営業年数が長く、それだけ経験もあると期待できるのだ。
とはいえ、長ければいいというものでもない。営業年数が長くても昔ながらの経営方針で最新のネット環境などをあまり活用していないケースもあるかもしれない。逆に更新回数が少なくても、優秀な会社や担当者はいるだろう。あくまで参考情報の一つにしておこう。
ネガティブ情報検索サイトで行政処分歴をチェック
不動産会社の概要を知るには、宅地建物取引業者名簿を見る方法もある。この名簿では役員の指名や兼業の有無、過去の行政処分歴などが確認できる。
名簿は国土交通省の地方整備局や都道府県の不動産業を所管する部署で確認できるほか、インターネットで検索できる都道府県もある。
また、国土交通省のネガティブ情報等検索サイトでは、不動産会社の行政処分情報を検索できる。依頼しようとしている不動産会社が過去に宅地建物取引業法に違反して行政処分を受けていないか、念のため確認しておこう。
査定の根拠と戦略を聞くことが重要
売却するまでのストーリーを聞いてみる
このように不動産会社をチェックする方法はいくつかあるが、最終的にはやはり「いい担当者に巡り合えるか」が重要といえる。そのためには複数の不動産会社に査定を依頼し、査定額やその根拠について説明を聞くことが大切だ。
「その物件をどのように売るのか、担当者の戦略を聞くようにしましょう。『まずいくらで売りに出して、最終的にはいくらくらいで売るのか』『もしなかなか売れないようであれば、どのように対応するのか』といったストーリーを話してもらうのです。何人かの話を聞いたなかで、『この人なら任せられる』という担当者を見つけて依頼すれば、失敗は少ないでしょう」(永田さん)
もし依頼したあとで「やっぱりこの担当者では難しい」と思ったら、その不動産会社に担当者を変えてもらう方法もある。それが難しい場合は、思い切って不動産会社を変えてもいいだろう。
不動産売却マニュアル
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住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う