マンションや戸建など自宅の買いかえでは旧居の売却と新居の購入を行う必要がある。それぞれの決済と引き渡しをスムーズに行うにはどうすればよいのか。
売却と購入のそれぞれで決済と引き渡しを行う
決済・引き渡しに必要な手続きとは
買いかえの決済・引き渡しでは、売却と購入のそれぞれで以下のような手続きが必要となる(詳しくは「契約から引き渡しまでのダンドリを知ろう」を参照)。
- 買主から購入代金を受け取る
- 住宅ローンを完済して金融機関の抵当権を抹消し、買主に所有権を移転する
- 建築書類や鍵を買主に引き渡し、仲介手数料を支払う
- 金融機関から住宅ローンを借り入れ、売却して手元に残った自己資金とともに購入代金を支払う
- 売主から所有権の移転を受け、金融機関の抵当権を設定する
- 売主から建築書類や鍵を受け取り、仲介物件の場合は仲介手数料を支払う
売却と購入を同時に行うのは難しい
売却と購入は、できるだけ同時に行うのが望ましい。もし売却したあとに購入まで期間があくと、その間は賃貸住宅などに仮住まいが必要になってしまう。逆に購入してから売却するとなると、売れるまで住宅ローンを二重で借りることになりかねない。
だが、ぴったり同時というのは難しい。売却と購入とでは、売買契約の相手がそもそも異なるので、同時並行で進めたとしても決済・引き渡しの日にずれが生じるのが通常だ。それでも決済・引き渡しの時期をなるべく近づけたり、仮住まいや二重ローンによる費用負担を抑える工夫はできる。
買いかえ先によって手続きのポイントが異なる
新築マンションは契約から引き渡しまでの間に売却できる
買い替えの決済・引き渡しをスムーズに行うポイントは、買い替え先の住まいの種別によっても異なる。未完成の状態で販売し、引き渡しまで1年前後の期間がある新築マンションに買い替える場合は、まず新築マンションの売買契約を結んでから、住んでいる自宅の売却に着手してもかまわない。
「引き渡しまでの期間が長かったり、資金計画に余裕がある場合は、旧居の売却の依頼先を任意で選べます。ただし、引き渡しまでに売却できないと困るケースではデベロッパーが指定する不動産会社と媒介契約を結び、旧居の売却を依頼することになるでしょう」と話してくれたのは、業界事情に詳しいフリーダムリンクの永田博宣さんだ。
早く売却できると新居の引き渡しまで仮住まいが必要になる。だがその場合でも、媒介を担当する不動産会社やデベロッパーが、仮住まい先を斡旋してくれるケースが少なくない。
中古物件は「売り先行」で進めるケースが多い
一方、個人が売主の中古物件に買い替える場合は、売買契約から引き渡しまでさほど期間が開かないケースが多いので、そこから旧居を売りに出すと売却の引き渡しが購入の引き渡しよりも後ろにずれてしまう。
住宅ローンを借りて住宅を購入するのであれば、購入の引き渡しのときにローンを借り入れる必要がある。一方で旧居の住宅ローンが残っている場合はその返済もしなければならないため、二重ローンの状態になるのだ。
とはいえ、二重ローンは年収が高いなど資金繰りにかなり余裕がなければ金融機関が認めてくれないだろう。そのため、中古物件への買い替えでは一時的に仮住まいが発生することを前提に、旧居の売却を先に進める「売り先行」のケースが一般的だ(詳しくは「買い替えのタイミングを見極めよう」を参照)。
仮住まいや二重ローンを回避する「裏技」とは
「先行引き渡し」や「引き渡し猶予」という手もある
個人が売主の中古物件に買い替える場合は先に旧居を売却しておくパターンが通常だが、仮住まいを回避する「裏技」もある。それがいわゆる「先行引き渡し」「引き渡し猶予」と呼ばれるものだ。
先行引き渡しとは、物件の引き渡しを先にしてもらい、入居後に購入代金の決済(支払い)を行うパターンのことだ。仮住まいを避けるために引き渡しを先に済ませるケースなどがこれにあたる。
一方、引き渡し猶予とは、買主から購入代金の支払いを受けたあとも、しばらくは物件を引き渡さずに待ってもらう状態をいう。旧居を売却して決済したあとに、買い替え先の決済・引き渡しが終わってから旧居の買主に入居してもらうケースだ。
猶予期間は長くても2週間程度まで
こうした先行引き渡しや引き渡し猶予は、売主と買主の両者の合意がなければできないことはもちろんだ。実施する場合は猶予期間中の権利関係や費用負担などについて「覚書」などの書面を交わすようにしたい。
「猶予期間は長くても2週間程度に設定することが多いようです。またこうした『裏技』は、売主側と買主側を同じ仲介会社が媒介するケースで、担当者が取引の全体をしっかり把握している場合でなければ難しいでしょう」(永田さん)
買いかえの決済・引き渡しをスムーズに行うためには、不動産会社の担当者と密に打ち合わせながらことを進めるのが重要といえるだろう。
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