不動産の土地取引では、まず土地の価値を把握することが重要なカギになります。
土地の価値を調べるには「公示地価」「基準地価」「実勢価格」「路線価」「固定資産税評価額」の5つの方法があります。
この記事では、公示価格の調べ方やそれぞれ他の4種類の土地価格との違いについて解説します。活用例も一緒に紹介するので、参考にしてみてください。
記事の目次
公示価格とは
「公示価格」とは、土地の売り買いにおいて、その土地にどれほどの価値があるのかを国が示した指標です。1969年(昭和44年)に「地価公示法」が制定され、客観的に地価を評定できる指標が重要視されるようになりました。
地価を開示する目的は以下の通り、同法第1条に定められています。
「第1条 この法律は、都市及びその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を開示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的とする。」
不動産にまつわる用語にはほかにもあり、公示価格は後述する「公示地価」および「基準地価」を合わせた用語です。ただ、不動産の評定が目的であることに変わりはないため、それら3つは同じ意味として使われることもしばしばです。
公示価格は周辺環境や経済状況、似たような物件の取引価格など、さまざまな要素を踏まえた上で毎年審査されるので、変動することは珍しくありません。不動産の売り買いを行う際は、公示価格を目安にして、取引価格が適正かどうかを確認することが重要です。
公示地価(地価公示価格)とは
「公示地価」とは、地価公示法に基づいて、国土交通省の中の機関のひとつである「土地鑑定委員会」が開示している土地価格です。
2023年(令和5年)における土地の評定対象として、全国約2万6000カ所が「標準地」として選ばれています。標準地の公示地価を見れば、その地域の地価の程度を判断できるため、不動産を評定する基準として欠かせない指標です。
なお、標準地を評定する際、建物などの環境条件を排除する目的で更地にした土地として、どの程度の価値があるのかがポイントです。毎年1月1日に、全国の不動産鑑定士によって土地の評定が行われた後、土地鑑定委員会が審査し、毎年3月に開示されます。
基準地価とは
「基準地価」は、都道府県が機軸となって開示している土地の価値を指します。前述の「公示地価」は、国が全国から標準地を選定し、その地域における地価を開示しています。
しかし、不動産の売り買い、あるいは税金を算出する際の評定などで、標準地以外に価格を知りたい土地がある場合、地価の基準値が分からなければ比較できません。つまり、各都道府県が基準地価として、さまざまな土地の価値を細かく評定して開示しているわけです。
前述した通り、公示価格および公示地価の目的と変わりはなく、多くのシーンで使われています。
公示価格の調べ方
不動産の売り買いに欠かせない公示価格は、どのように調べられるのでしょうか。以下より、国土交通省のWebサイトで確認する際の大まかな流れを紹介します。誰でも簡単に調べられるので、実践してみてください。
1. 不動産情報ライブラリにアクセスする
公示価格は、国土交通省のWebサイト「不動産情報ライブラリ」にて調べられます。トップページから「地図から探したい方へ」もしくは「地域から探したい方へ」をクリックします。
国土交通省「不動産情報ライブラリ」
2. 調べたい地域を地図上から探す
ここでは「地図から探したい方へ」を例に進めます。調べたい地域を地図から探しましょう。スマホなどのマップアプリと同じく直感的操作で探せます。例として、東京都渋谷区の公示価格を見てみます。
3. 価格情報から国土交通省地価公示を選択
調べたりエリアを表示したら、左上の<価格情報>をクリックして出てくるウインドウから、「国土交通省地価公示」にチェックを入れます。この際、条件設定で用途区分や調査年を設定することができるので、必要な条件を設定しましょう。また、都道府県がまとめている基準地価や実勢価格も一緒に調べられます。設定したら決定をクリックします。
<条件設定できる用途区分>
住宅地
宅地見込地
商業地
準工業地
工業地
市街地調整区域内の現況宅地
市街地調整区域内の現況林地(国土交通省地価公示のみ)
林地(都道府県地価調査のみ)
<条件設定できる調査年>
平成15年から令和6年(最新年)まで
4. 公示価格を確認する
知りたい土地の公示価格情報が地図上に表示されます。公示価格情報は地図上の〇印がついた数字です。クリックするとm2あたりの価格が表示されますが、詳細表示をクリックすると、過去の地価や対前年比変動率(%)など、より詳細な価格情報が表示されます。
ただ、前述した通り、公示価格は毎年評定が更新されて変動します。よって、取引価格の最新情報については、Webサイトで最新年度の公表資料を適宜チェックすることが大切です。
公示価格を使って実勢価格の目安を計算する方法
公示価格を調べる方法が分かれば、続いて実際に売り買いが行われた実績をもとに、不動産の実勢価格も併せて調べておくことがおすすめです。
実勢価格自体も国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で確認できますが、公示価格を使う方法もあります。計算方法は至ってシンプルなので、簡単に求められます。
実勢価格の目安=公示価格 (m2単価)× 面積(m2) × 1.1(1.2)
ただ、上記の式で導き出した実勢価格は、あくまで目安にすぎません。参考価格として確認する分には問題ないものの、より具体的な実勢価格を知りたい場合は、実際に不動産の査定を受けましょう。
公示地価と基準地価・実勢価格・路線価・固定資産税評価額の違い
不動産の評価額の指標としては、公示地価のほかに基準地価・実勢価格・路線価・固定資産税評価額があります。それぞれの違いについて解説します。
公示地価と基準地価との違い
公示地価および基準地価は、開示している機軸が異なるだけではありません。まず公示地価は、国全体の土地や建物など、不動産全般の評価額を測るために存在します。したがって、不動産の種類や地域などは関係なく、汎用的に使われる点が特徴です。
一方、基準地価は標準地以外の地価を補完するもの、と言っても過言ではないでしょう。公示地価の対象ではない地域における土地の評価額を知りたい場合は、基準地価を確認することをおすすめします。
表にまとめると、双方には次の相違点があります。
公示地価 | 基準地価 | |
---|---|---|
調査主体 | 国土交通省土地鑑定委員会 | 都道府県知事 |
価格の決め方 | 2人以上の不動産鑑定士それぞれが評定を行い、土地鑑定委員会が審査した上で決定する | 公示地価とほぼ同様だが、不動産鑑定士は1人以上いればよい |
評定時期 | 毎年1月1日 | 毎年7月1日 |
開示時期 | 毎年3月 | 毎年9月 |
調査地点 | 不動産の売り買いが想定される都市計画区域内 | 都市計画区域外も含む |
公示価格と実勢価格との違い
公的機関によって、不動産の価値を評定し、基準値を算出した後に開示されるものが、公示地価および基準地価が含まれる「地価公示価格」です。公示価格と略して呼ばれることもあるほか、公示地価と同義で使われることも見受けられます。これらは基本的に、不動産の売り買いや相続税・贈与税などの税金額を評定するシーンで多く活用されています。
一方、「実勢価格」とは実際に、不動産市場で売り買いが行われた価格です。公的機関で審査して弾き出された公示価格とは相違し、実際の不動産業界における売り買いのトレンドが反映されやすくなります。よって、不動産の売り買いで価格動向を把握したい場合は、実勢価格を目安にすることもおすすめです。
なお、公示地価、実勢価格とも国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で確認が可能です。土地や宅地、中古マンション、農地、林地などの価格を調べられます。
公示価格および実勢価格の相違点を表でまとめると、次の通りです。
公示価格 | 実勢価格 | |
---|---|---|
概要 | 毎年、公的機関が開示している土地の評定を示した指標 | 実際に不動産市場で売り買いが行われた土地の価格 |
価格の決め方 | 不動産鑑定士が土地を評定し、土地鑑定委員会や都道府県が審査を行った上で決定する | 土地の売り買いを行う当事者が自由に決められる |
評定時期 | 毎年1月1日(公示地価) 毎年7月1日(基準地価) |
特に定まった時期はなく、不動産の売り買いの都度評定される |
公示価格と路線価との違い
「路線価」とは、国税庁が機軸となり、特定地域における土地を評定した価格です。これまで紹介した通り、公示価格の特徴は国土交通省や都道府県などが開示する点でした。
路線価も、土地の価値を評定する点において、相違点はありません。ただ、主に相続税や贈与税を算出する際に使われ、土地が面している路線ごとに、1m2あたりの土地を評定して価格が決められます。国税庁が毎年1月1日に評定、同年7月に開示しますが、一般的に公示価格の8割と少し安価になるケースがほとんどです。
公示価格と固定資産税評価額との違い
不動産の評定基準である公示価格は、基本的に不動産の売り買いや税金を評定する目的で利用されるものです。
一方、不動産を所有している場合、定期的に納めるべき税金として、「固定資産税」があります。毎年、土地や建物の評定が行われ、税額が決定すると不動産の所有者へ通知されます。「固定資産税評価額」はその名の通り、あくまで固定資産税の課税基準として使われる評価額にすぎません。したがって、公示価格と固定資産税評価額はそもそもの目的が相違するため、混同しないように注意が必要です。
公示価格の活用例
現在、公示価格は不動産を取り巻くさまざまなシーンで活用されています。以下、主な3つの例を紹介するので、参考にしてみてください。
相続税や贈与税の評価基準
不動産を所有していた家族が亡くなって、その不動産を相続したり、贈与が行われていたりする場合、公示価格は重要な指標となります。相続税や贈与税の課税対象であれば、その不動産の価値を評定しなければなりません。その際、公的機関が開示している公示価格は信頼性が高いため、税額を決める目安にされることが多いです。
金融機関との取引における担保評価
不動産にどの程度の価値があるのかは、融資を行う金融機関にとっても重大な関心事です。なぜなら、一般的に融資は土地や建物の資産を担保にすることが前提だからです。
もし、担保とする不動産の公示価格が高ければ、担保評価額が上がり、融資を受けやすくなったり融資の条件が有利になったりします。逆に、公示価格が低ければ担保評価額は下がり、希望する融資を受けられない、あるいは融資を受けるのに厳しい条件をクリアしなければならない、などの状況に陥るかもしれません。
不動産取引の参考価格
公示価格が使われるシーンとしては、不動産の売り買いがメジャーです。売却や購入などの取引が行われる際、評定の基準がばらばらであれば、売り買いの健全性が損なわれてしまいます。
それを防ぐために、その不動産の価値を評定する際に公示価格が使われます。ただし、公示価格のみでは取引価格の適正度合いを正確に把握しにくいです。不動産業界のトレンドも含めて、具体的な取引価格を知りたい場合は、不動産サイトなどで実際に査定を受けてみましょう。
まとめ
公示価格は、主に不動産の売り買いや金融機関との取引における、担保評価額や相続税・贈与税の税金額を算出する際などに使われる土地価格の指標です。毎年、国土交通省や都道府県が審査して開示されているため、国土交通省のWebサイトで最新版の情報をチェックしてみてください。
また、公示価格以外にも土地を評定した価格には、実勢価格や路線価、固定資産税評価額などの種類があります。例えば、実勢価格は実際に不動産の売り買いを行った価格のトレンドを把握できるので、公示価格をもとに適正価格を算出してみることもおすすめです。
土地を評定するそれぞれの価格は目的が相違するため、シーンに応じて使い分けて確認しましょう。
●構成/文 かくたま