公示地価・基準地価・路線価の違いや調べ方をわかりやすく解説!【2025年最新】

最終更新日 2025年08月21日

公示地価・基準地価・路線価の違いや調べ方をわかりやすく解説!【2025年最新】

土地の価格を表す言葉として、「公示地価」「基準地価」「路線価」という3つの言葉が挙げられます。いったい何が違うのでしょうか。それぞれの言葉の意味や違い、活用できるシーン、調べ方などについて、不動産鑑定士の中村喜久夫さんに教えてもらいました。

公示地価・基準地価・路線価とは?3つの違いを徹底解説

公示地価・基準地価・路線価はいずれも公的機関が公表している、日本各地の「土地の値段」です。まずは、それぞれの言葉の意味や特徴、調査方法や発表時期から解説していきます。

公示地価とは

「地価公示価格」とは、地価公示法に基づいて、毎年1月1日時点における標準地の1m2当たりの正常な価格(売り急ぎなど、特殊な事情がない通常の売買で成立すると認められる価格)を表したものです。

「標準地とは、その名のとおりある地域の標準的な土地のことです。その地域の中でとても良い土地や逆に悪い土地の価格を調べても参考にはならないからです。また公示される価格は更地の価格です。もちろん、今どき建物のない土地なんて都市部にほとんどありませんが、建物が立っていても『ここが更地だとしたら』と仮定して価格が算出されています」(中村さん、以下同)

標準地を決めるのは、国土交通省の審議会のひとつである土地鑑定委員会です。
「そこで標準地をどこにするか決まりますが、ほぼ毎年同じ標準地を鑑定し、土地鑑定委員会で価格を決めます。同じポイントの価格を毎年公示するので、地価変動がわかりやすいというメリットがあります」

公示地価のイメージ

公示地価の目的と特徴

公示地価は、適正な地価の形成に役立てるために国が公表しているもので、一般的な土地売買の際の指標や公共事業の取得価格算定の基準となっています。

土地の価格は、本来位置だけでなくさまざまな要素によって決まりますが、単にそのまま市場原理に任せるだけにしておくと土地の乱高下などのリスクが生じる可能性があります。そこで1969年に施行されたのが、地価公示法です。同法には都市やその周辺地域において「一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等」のために「標準地を選定し、その正常な価格を公示する」と記載されています。

「かつてのバブル期のように土地の価格が乱高下することもありますし、それが経済に悪影響を与え、公共事業を進める際の妨げにもなりかねません。特に公共事業は税金を投入するため、取得価格が高いと税金の無駄遣いに、逆に低ければ所有者の財産権を侵害することになります」

公示地価の調査方法と発表時期

公示地価は「標準地」1m2当たりの価格について、2名以上の不動産鑑定士(鑑定評価員)の鑑定評価をもとに算定されます。評価時期は毎年1月1日時点で、発表時期は3月下旬です。

基準地価とは

基準地価とは各都道府県が選んだ「基準地(公示地価は「標準地」と表すが同じ意味)」の価格のことです。1974年に定められた国土利用計画法に基づき、都道府県知事が毎年基準地の価格を判定しています。

「鑑定する土地も、公示地価と基準地価で重複することもあります。公示地価とポイントが同じなら、同じ土地が毎年1月1日と、7月1日の年2回鑑定されるため地価の変化がより早くわかります。地価変動に注意が必要なところはあえて同じポイントになっていることもあるでしょう」

基準地価の目的と特徴

目的は適正な土地価格の形成など、公示地価と同じ。ただし公示地価と違い、都市やその周辺地域という縛りがありませんので、公示地価の補完的な指標といえます。

基準地価の調査方法と発表時期

基準地価は「基準地」1m2当たりの価格について、不動産鑑定士1名以上による鑑定評価をもとに算定されます。評価時期は毎年7月1日時点で、発表時期は9月下旬です。

路線価とは

路線価は、相続税や贈与税などの税金を計算する際の算定基準になる土地の価格のこと。税務申告する側とそれを受ける税務署が、いちいち土地価格の鑑定をしなくてもお互いがスムーズに行えるように公表されています。土地の価格が、その土地が面している道路ごとに設定されているので「路線価」といいます。

路線価の一例と見方
路線価の一例と見方
道路上に記載されている「510C」や「490C」といった表記の数字部分が路線価。その数字が指し示す矢印内の道路に面している土地の1m2当たりの価格で、単位は1000円。510なら51万円ということ。ちなみに数字の後ろ「C」は借地権割合を示す記号。A~Gまであり、Cは借地権割合が70%であることを示している(SUUMO編集部にて作成)

相続税路線価と固定資産税路線価の違い

路線価には国税庁が公表している「相続税路線価」と、市町村(東京都の場合は都)が固定資産税を算出する際に使用する「固定資産税路線価」の2種類があります。相続税路線価は相続税や贈与税の計算で使用する算定基準です。一方の固定資産税路線価は、固定資産税の課税の基準として使用されるもので、各市町村の税務部門が3年ごとに評価替えを行います。

「どちらも公示地価と連動していて、相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税路線価は公示地価の7割程度となっています」

なお、単に「路線価」という場合、国税庁の「相続税路線価」を指すのが一般的です。

路線価の調査方法と発表時期

路線価は、路線(道路)に面する土地の1m2当たりの価格について、公示地価や売買実例価格、不動産鑑定士などによる鑑定評価額などをもとに算定されます。評価時期は毎年1月1日時点で、発表時期は同年7月です。

公示地価・基準地価・路線価の違いと活用方法

目的や意味、調査方法などが異なる、公示地価・基準地価・路線価の違いについて整理していきましょう。

3つの価格の違いを比較

公示地価 基準地価 路線価
調査主体 国(国土交通省土地鑑定委員会) 都道府県 国税庁
価格の決め方 1地点につき不動産鑑定士2名以上による鑑定評価をもとに決める 1地点につき不動産鑑定士1名以上による鑑定評価をもとに決める 公示地価や売買実例価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額などをもとに決める
評価時期 毎年1月1日時点 毎年7月1日時点 毎年1月1日時点
発表時期 毎年3月下旬 毎年9月下旬 毎年7月1日
調査地点 「標準地」1m2当たりの価格 「基準地」1m2当たりの価格 路線(道路)に面する土地の1m2当たりの価格

混同されやすい言葉ですが、改めて整理すると公示地価・基準地価・路線価にはこのようにさまざまな違いがあります。よく「銀座の鳩居堂前が日本一高い」と毎年のようにニュースになるのは、路線価で最も高かったからです。また同じく銀座の「山野楽器が日本一」というニュースもよく聞きますが、これは公示地価です。

ちなみに2025年の鳩居堂前の路線価は4808万円/m2で、山野楽器の公示地価は6050万円/m2。同じ日本一でも調査主体や価格の決め方が異なるため、その際発表される価格が異なります。

それぞれの価格の活用シーン

公示地価・基準地価・路線価がどのような場面で使えるのか、活用シーンも比較してみましょう。

公示地価の活用シーン

  • 一般的な土地売買において指標(目安)を知りたいとき
  • 公共事業用地の取得価格算定時
  • 固定資産税評価や相続税評価の基準算定時

基準地価の活用シーン

  • 一般的な土地売買において指標(目安)を知りたいとき
  • 公共事業用地の取得価格算定
  • 固定資産税評価や相続税評価の基準

路線価の活用シーン

  • 相続税や贈与税の申告時
  • 固定資産税の納付時
  • 所有する土地を担保にして融資を受けたいとき

似たような言葉で、いずれも公的機関が公表する土地の値段ですが、その目的はさまざま。自分の目的にあった「土地の値段」を選んで活用しましょう。

最新の公示地価・基準地価・路線価の動向

ニュースでも地価上昇が話題になっていますが、最新の公示地価・基準地価・路線価はどのように変動しているのでしょうか。2025年版の最新動向をチェックしていきましょう。

2025年の公示地価ランキングTOP10

2025年度の最新公示地価(全用途)ランキングTOP10と、前年度からの変動率を見ていきましょう。

2025年の公示地価ランキングTOP10

上記のとおり、公示地価ランキングのすべてが東京都という結果に。ジャンル別(住宅地・商業地・工業地)に見ても同じくランキング上位10位はすべて東京都が占めていました。

地価変動の要因と今後の予測

表の一段目(全国)にあるとおり、全用途・住宅地・商業地のいずれの地価も4年連続で上昇し、上昇幅も拡大しています。

公示地価の概要
出典:国土交通省 令和7年「公示地価の概要」

エリア別の特徴としては東京圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏では全用途・住宅地・商業地のいずれも上昇し、上昇幅が拡大。一方、地方圏では商業地は上昇しました。

昨今の地価変動の要因のひとつといえるのが、コロナ禍収束後の景気回復やインバウンド回復が順調であること。実際に地方圏に特化して見ると、住宅地では北海道や沖縄など、別荘やコンドミニアム、移住者用住宅などのニーズが高いリゾートエリアを中心に上昇幅が拡大。商業地でも、観光地が多いエリアや店舗・ホテルの需要が顕著なエリアを中心に大幅な上昇を記録しました。

都市圏、特に都市部中心地では、マンション価格の高騰や再開発事業の進展も商業地の地価上昇に大きく影響しています。引き続き、オフィス需要や店舗需要が高い都市部の地価上昇が予測されるでしょう。住宅地においては、地方圏と都市圏での二極化がこれまで以上に進行する可能性があります。

公示地価・基準地価・路線価の調べ方

では、公示地価・基準地価・路線価はどこで確認できるのでしょうか。オンラインで調べる方法と、国税庁・税務署で調べる方法をそれぞれご紹介します。

オンラインで調べる方法

公示地価と基準地価は下記のURLから調べることができます。それぞれ別にも、あるいは一緒に表示することもできます。
国土交通省地価公示・都道府県地価調査

同じく、路線価もオンラインで検索可能。下記のURLから調べることができます。

路線価図・評価倍率表

ただし、
固定資産税路線価をホームページで公開しているかどうかは各自治体により異なります。各自治体で確認してみましょう。ちなみに東京都は下記で公開しています。

東京都主税局 路線価公開(23区)

「2019年から検索システムで公示地価を調べると各鑑定士による鑑定評価書も閲覧できるようになりました。そこには年間の変動率や、より詳細な標準地の情報、『土地需要が旺盛であることから地価は上昇傾向で推移している』といった市場の特性や、『地域要因に特段の変動はなく、当分は静態的に推移する』といった地域要因の将来予測も記載されています」

国税局・税務署で調べる方法

路線価については、全国の国税局(所)や税務署内にあるパソコンでも確認できます。先述したようにオンラインで検索できますが、路線価の確認にあたって何か疑問がある場合は、直接足を運ぶのも一案です。

なお、地域によっては路線価が定められていない場所もあります。その場合、地域ごとに決められた「評価倍率」を固定資産税評価額に掛けて計算します。「評価倍率」は上記URLから閲覧することができます。また固定資産税評価額は各自治体から毎年送られてくる固定資産税の「課税明細書」に記載されています。

不動産取引における公示地価・基準地価・路線価の活用法

では、不動産取引において公示地価・基準地価・路線価は具体的にどのように役立つのでしょうか。売却時や購入時の活用法について詳しく解説します。

売却時の参考にする方法

公示地価や基準地価は、土地の売却価格を考えるうえで参考になります。公示地価や基準地価がわかることで、適正な売り出し価格を把握しやすくなるためです。ただし、ここで注意したいのは公示地価や基準地価が必ずしも実勢価格とは限らないこと。

「公示地価や基準地価は、確かに実際の売買価格(実勢価格)とは異なります。公示地価や基準地価は土地の上に建物が立っていても『更地として』鑑定されますが、売り主や買い主からしてみれば上の建物次第で希望金額は異なることもあるでしょうし、どうしてもここで商売をしたいなど意思や状況次第で取引価格が上下するのは当たり前ですから。もちろん公示地価や基準地価どおりに売買しなければならない義務もありません」

公示地価と実勢価格が異なることを理解したうえで、あくまで目安となる指標として捉えましょう。

購入時の比較検討に使う方法

売却時だけでなく、不動産や土地の購入時にも活用できます。

「購入時に、例えば同じ港区でもこのエリアなら公示地価が○○万円で、このエリアは▲▲万円。それに対してマンションの価格は……という具合に、地域の価格水準の比較検討にも使えます」

さらに不動産鑑定書なども合わせてみれば、将来的な資産価値などの判断の参考にもなるでしょう。

まとめ

公示地価、基準地価、路線価はどれも公的機関が発表しているが、それぞれ調査主体や活用目的が異なる

土地の売買の目安は「公示地価」か「基準地価」で見る

路線価には、「相続税路線価」と「固定資産税路線価」があり、公示地価の7~8割となっている

2025年の最新発表によると、全国平均では、全用途・住宅地・商業地のいずれも 4年連続で上昇。地域や用途により差があるものの、三大都市圏では上昇幅が拡大し、地方圏でも上昇傾向が継続するなど、全体として上昇基調が続いている

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取材・文/籠島康弘 
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