不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

都心に購入した投資用マンション。サブリースから集金代行に切り替えて売却に成功/東京都新宿区Kさん(50代)

東京都新宿区Kさん(50代)/都心に購入した投資用マンション。サブリースから集金代行に切り替えて売却に成功

投資目的で都心にマンションを購入したKさんは、相場が上昇するなか「タイミングを見失わないうちに」と手放すことを決意。サブリース契約が売り難さの理由だと知ったことから、不動産管理会社との契約を集金代行に切り替えて売却しました。

不動産区分 マンション
所在地 東京都新宿区
築年数 築18年
間取り・面積 1K(約22m2
ローン残高 1730万円
査定価格 2100万~2200万円
売り出し価格 2500万円
成約価格 2280万円

将来の蓄えをつくるべく、利便性のいい都心に1Kのマンションを購入

神奈川県に妻と子ども2人の4人で暮らすKさん(50代)は、2012年ごろ「万一の蓄えに」と、マンション投資に目を向けます。
30件以上の候補から選んだのは、東京都新宿区にある1K・22m2の単身者向け物件。
竣工は2003年で、2012年の当時で築9年。最寄駅まで徒歩約6分で、JR山手線をはじめ、複数の路線が使えて利便性がいいのはもちろん、近隣に大学があるため、需要が絶えることはまずありません。
「今、マンションが底値をつけている」と不動産会社から聞いたことに加え、35年ローンを組んでも月々、採算が取れる家賃収入を見込めることが決め手になり、2160万円で購入します。

その後、順調にオーナーを務めていたKさんですが、8年がたった2020年になり、売却を考えるようになりました。

「中古マンションの相場は上昇傾向でしたが、いつまで上昇傾向が続くのかもわかりませんし、タイミングを見失う前に手放さなくてはと思いました。
コロナがはやり出し、家でじっくり検討する時間ができたのも大きかったです」

一括査定サイトを使って10社に連絡し、2社と一般媒介契約

Kさんは、プライバシーを守りながら信頼できる会社を探そうと、匿名でやり取りが可能な一括査定サイトを利用します。

「10社ほどに簡易査定を依頼しましたが『2400万~2500万円で売り出し、2100万~2200万円を落としどころにする』というのが、各社のおおよその見解。どんな見込み客がいて、そのうえで売却までどのようなシミュレーションを立てられるか、具体的かつ正確な提案をしてくれる会社を見定めていきました」

結果、大手A社・B社に絞り込んだKさん。「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」で1社に託すのはリスクが高いと考え、2020年7月、A社・B社の両方と「一般媒介契約」を結びます。

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見込み客に声をかけてもらうも、A社・B社ともに決まらず

販売価格は、値引き交渉を見越して2500万円に設定。2300万円くらいで売却することを目指して販売活動をスタートします。
しかしA社・B社の双方で見込み客に声をかけますが、どちらも条件に折り合いがつかず、決まりません。
その後、両社は自社サイトや不動産ポータルサイトに情報をアップして反響を待ちます。

「『一般媒介契約』なので活動報告の義務はなかったものの、2社とも数日に一度はメールで様子を知らせてくれました。
しかし強気の値段だったためか、有力な候補は依然、現れません。
そのうちA社からもB社からも『2000万円くらいまで値下げしないと難しい』と打診されてしまって。でも、私としては売らずにこのままでも構わなかったため、すぐには了承しませんでした」

サブリースから集金代行に契約を切り替えることで、売却に成功

そのころKさんは、ふとしたことから物件がなかなか売れない理由を知ります。

「実は売却しようとしていた物件は、かねてから不動産管理会社のC社との間で、『サブリース契約』をしていたのですが、たまたま営業電話をしてきた不動産仲介会社D社から『サブリースだといい値段で売れないんですよ』と聞いたのです。
D社に詳しく説明してもらったところ、『集金代行契約』に切り替えた方が得策とのこと。そこでC社に交渉することにしました」

C社との交渉は難航しましたが、2020年9月に晴れて集金代行契約に切り替えられました。 一連の交渉をサポートしてくれたD社では、以前から見込み客を抱えていて、「一般媒介契約」を結ぶと同時に売却へと話が進みました。

Kさんは集金代行契約に切り替える際、「半年間は売却しない」とC社と約束していたため、半年後の2021年3月、2280万円で売買契約を交わします。

サブリース契約の解約を交渉するイメージ

■サブリース契約とは

サブリース契約とは不動産会社などの事業者が、不動産のオーナーから物件を一括して借り上げ、第三者である入居者に転貸し、部屋の管理を行うこと。その分、オーナーは手数料を払いますが、部屋が空室になっても一定の賃料収入が見込め、かつ建物の管理業務の手間を省けるのがメリットです。しかし物件の売却時にサブリース契約を継承すると、契約していない場合より家賃利回りが下がるため、売買価格が下がる傾向があります。中途解約はできるのか、解約した場合は違約金が発生するのか、確認するようにしましょう。

思いがけない経験に見舞われるも、マンション投資の意欲は十分

2021年3月に買主に物件を引き渡し、1730万円のローン残額を一括で完済したKさん。
9カ月の売却活動を、こう振り返ります。

「サブリース契約がここまで売却価格に影響するとは知らず苦労しましたが、A社・B社では難しいと言われていたなか、偶然、D社に出会え、理想的な価格で売却できてホッとしています。
自分でもしっかり調べ、複数の不動産仲介会社から情報収集することが大事なのだと思い知らされました」

実はKさんはもう1件、都内に投資用マンションを所有していて、こちらは利回りがよいため、長く所有するつもりなのだとか。

「自分たちの世代は、年金の受給開始年齢がますます引き上げられるはず。老後の安定収入のためにも、手元に置いておきたいと思っています」

経験からしっかり学ぶKさんであれば、手堅い運用をしていくことでしょう。

2020年6月 ・マンションの売却を考え始める
・一括査定サービスを使って簡易査定
2020年7月 ・A社・B社と一般媒介契約を結ぶ
2020年9月 ・サブリースから集金代行に契約を切り替える
・購入者が現れる
・D社と一般媒介契約を結ぶ
2021年3月 ・買主と売買契約をする
・マンションを買主に引き渡す

まとめ

  • 不動産仲介会社を絞り込むときは、見込み客の有無や具体的かつ正確な提案があるかで見極めよう。
  • 販売価格は、値引き交渉が入ることを見越して高めに設定するのがベター。
  • 自分で調べるのはもちろん、不動産仲介会社とのやり取りのなかで情報収集することを心がけよう。

取材・文/星野 真希子 イラスト/石山好宏

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