不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

再建築不可の古家付き土地を相続。隣家に交渉して売却成功!/東京都新宿区Kさん(50代)

東京都新宿区 Kさん(50代)/相続した再建築不可の古家付き土地。不動産仲介会社が隣家に交渉して売却

両親が亡くなり、東京都新宿区にある築約50年の実家を相続したKさん。立地条件は良いが、建築基準法上、再構築ができない土地で、買い手を探すことが難しいと思い、不動産仲介会社に相談。プロが間に立って隣人に交渉し、相場より安い金額でしたが、お互いに折り合いがつく価格で売買契約が成立しました。

不動産区分 古家付き土地
所在地 東京都新宿区
築年数 50年以上
間取り・面積 4LDK(延床面積…約44m2、土地面積…約51m2
ローン残高 なし
査定価格 1500万円~2000万円
売り出し価格 4000万円
成約価格 2000万円

親から譲り受けた東京都新宿区の実家。再建築不可の古家付き土地を売りたい

千葉県の自己所有マンションに住んでいるKさん(50代)。実家に一人で住んでいた母が2019年に亡くなり、遺産相続で実家を譲り受けました。「生前、実家を売ってマンションに住み替えたら、と母に助言したこともありましたが、地域のコミュニティーもあり、最期まで住み慣れた所で暮らすことを希望したのでそのままにしていました」

1969年に隣の家の人から中古住宅を購入して約50年。Kさんやきょうだいにはそれぞれ持ち家があり、誰も住む予定はなく、築50年以上の古い住宅は売ることも貸すことも難しいと思いました。また、間口が狭く、道路の接道義務を果たしていないため、一度更地にして家を新築することができない「再建築不可物件」でした。

■再建築不可物件の売却

再建築不可物件とは、現在ある家を解体して更地にすると新たな家を建てることができない土地のこと。建築基準法の規定で、都市計画区域と準都市計画区域内に限り、幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないという「接道義務」を果たしていない土地などです。再建築不可物件が売りにくくエリアの相場より価格が安い理由は、建て替えや建築申請が必要な増改築やリフォームができないことと、物件の担保としての価値が低く、多くの場合住宅ローンを組めないため。売り方が難しいので、不動産仲介会社と方針を相談しましょう。

「荷物置き場、資材置き場にするといった方法があるかもしれませんが、間口の狭い土地なので使いにくいでしょう。駐車場にするとか、家をリフォームして売る方法もあったかもしれませんが、そういう労力もかけたくないですし、売るのが一番いいと思いました」

実家は都営地下鉄の駅が目の前で、発着路線が多いもうひとつの地下鉄駅も徒歩10分とアクセスが便利。周辺はオフィスビルが連立し、日常に必要なほとんどが揃うスーパーもあり、暮らしやすい場所にありました。新宿区で土地の相場価格は高いと思いましたが、まずはどのくらいで売れるのか、不動産仲介会社に聞いてみることにしました。

不動産仲介会社2社に相談するも、条件が厳しく査定額は決められない

Kさんの勤め先は、複数の提携不動産仲介会社があり、仲介手数料が割引になる制度があったため、そのうち知名度がある大手の2社に、実家の相場価格を聞いて相談しました。

「不動産仲介会社が買取ってくれるなら、それもいいと思いましたが、2社ともに、隣の家の人に買ってもらうのがベストだと言いました。

A社には、隣の人に売るとしたら1500万円~2000万円くらいだが、一般に売りに出す価格を設定しにくいと言われました。再建築不可という条件をどう考えるか、たまたまニーズに合う人が見つかればいいが、売るには時間がかかるだろうということでした。B社にも、隣の家の人と話をしてみないと分からない、査定価格は出せないと言われました。

A社、B社ともに3回以上会いましたが、A社の営業担当者の感じがよく、話をよく聞いて分かりやすく説明してくれるなど、信頼がおけると感じました」。そして2019年12月、A社と専属専任媒介契約を結びました。

不動産仲介会社が隣の家に売却を交渉。更地にすることを条件に売買契約が成立

不動産仲介会社は、自社のホームページで物件情報を掲載。最初は高めの価格設定でというKさんの希望で、4000万円で売り出しをスタートしました。同時に、実家の隣の家を訪ねて交渉を開始。隣の家が土地を買ってくれれば、敷地を拡張して、古家を解体して新築住宅を建て替えることもできるし、駐車場として使うなど、使い勝手が広がる、という形で交渉すれば、隣人も検討の余地があるだろうということでした。

隣家との交渉イメージ

隣の家のうち1軒との交渉は不成立でした。もう一方の隣の家は、「4000万円では買う気はないが、価格次第では購入を検討してもいい」という回答でした。

広告を出して募集しても買い手がつきにくいと思ったKさんは、できるだけ高く売りたい気持ちはありましたが、欲を出さず売ることを優先しようと決意。

その後は隣人との間に不動産仲介会社が立って、何度か価格交渉を行いながらお互いに折り合いがつく価格を探り調整。最終的には、Kさんが古家を解体して更地にして渡すという条件付きで、2000万円で売買契約が成立。古家の解体費用は約160万円かかりました。

相場より安くても確実に売ることを優先し価格交渉は不動産仲介会社にまかせる

「東京都内の駅近で本来なら相場の高い立地のはずですが、建て替えができないという条件がネックでした。エリアの相場通りの価格で売ることはできないし、隣人に売る方法がベストで、それ以外の売り方は難しいという話だったので、強気で高く売ろうとしないで、ある程度譲歩する必要がありました。

実家の隣の家といっても、会えば挨拶をする程度の関係で、特別な付き合いはなく、たとえ近所付き合いがあったとしても、直接交渉をするのは難しいし、避けたいと思っていました。特に意識したのは、お互いにわだかまりを残すことにならないよう落ち着いて穏便に進めることでした」

欲を出さないスタンスで、隣の家の人に買ってもらうという方法を確実に進めて、スムーズに売却することができたKさん。「100点満点ではありませんが、3カ月で契約が成立し、お金のことでトラブルになることもなく、専門の不動産仲介会社に間に入ってもらって良かったと思います」と振り返りました。

▼関連記事を読む

2019年5月 ・実家(古家付き土地)を相続
2019年9月 ・不動産仲介会社2社に査定を依頼し売却を相談
2019年12月 ・不動産仲介会社1社と専属専任媒介契約を結ぶ
・売却活動を開始。不動産仲介会社のホームページに掲載
・隣の家の人に売却の交渉を開始
・更地で渡すことと価格次第で購入を検討するという回答を得る
・価格交渉を行う
2020年1月 ・古家の解体を開始
2020年3月 ・売買契約が成立
・古家の解体工事終了
2020年4月末 ・土地を引き渡す

まとめ

  • 道路に接している幅が狭い土地は、建て替えが出来ない土地(再建築不可物件)かどうかの確認が必要。
  • 再建築不可物件は査定価格を出しにくく、立地条件が良くても相場より大幅に安くなる。
  • 再建築不可物件は、隣人に購入の意思がないか探ってみよう。

イラスト/村林タカノブ

●構成・取材・文/佐藤由紀子
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