
緑豊かな風致地区にある一戸建てに住むMさんは、日当たりに問題を感じて住み替えを決意。新居を紹介してもらった不動産会社と媒介契約を結び、値段にお得感を出して販売をスタート。3カ月後に不動産会社に売却しました。
| 不動産区分 | 一戸建て |
|---|---|
| 所在地 | 埼玉県さいたま市大宮区 |
| 築年数 | 築5年 |
| 間取り・面積 | 3LDK(延床面積…約100m2、敷地面積…132m2) |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 3700万円 |
| 売り出し価格 | 3400万円 |
| 成約価格 | 3250万円 |
念願の一戸建てを購入するも、日当たりの悪さから住み替えを決意
妻と成人した子どもの4人で、長年マンションに住んでいたMさん(60代)は、「一戸建てでのびのび暮らしたい」と、新居を購入することに。入手したのは、埼玉県さいたま市大宮区にある、4200万円の新築の一軒家。不動産会社が一帯の土地を購入して建てた分譲住宅で、敷地の広さは132m2。2階建ての3LDK・約100m2の住まいでした。
最寄りの駅までは徒歩で約25分かかり、車を数分走らせないとスーパーがないため、利便性が良いとはいえませんでしたが、何よりMさんが引かれたのは、自然の多い「風致地区」にあること。複数の公園に囲まれ、「毎日、ジョギングをする時間が楽しみだった」と話します。
しかし、入居後まもなくして住み替えの話が持ち上がるように。
「ついのすみかのつもりで買ったのですが、リビングの窓が家の側面に設計されており、当初から日当たりの悪さに悩まされていたのです。
もちろん購入前に内見しましたが、行ったのが真夏のよく晴れた日で、部屋の薄暗さに気づかなくて。
とくに家に居ることの多い妻は『ここに一生は住めない』と、ずっと言っていました」
少しずつ物件を探しはじめ、入居してから4年がたった2020年9月ごろに、ハウスメーカーのB社を訪れます。
「B社からは既存の住居を解体して3階建てにすることを提案されたのですが、設計図をつくってもらったところ、空間にゆとりがなくなるとわかって振り出しに。ほかの土地を購入して注文住宅を建てるか、あるいは中古住宅をリノベーションしようかと物件を探しますが、思うように見つかりません。
肩を落としていた矢先、不動産会社のC社から、今の住まいの目と鼻の先に条件にぴったりの中古物件があると聞いたのです」
Mさんは2021年5月に物件を購入。
「賃貸住宅にしたところで需要は低いはず」と見切りをつけ、早々に家を売却することにします。
■風致地区とは?
「風致」とは、水や緑といった自然の要素に富んだ土地で見られる、良好な景観のこと。「風致地区」とは、こうした景色の維持を「都市計画法」で定めた地域で、一定の建築や開発を認めながら、建築物の建設や宅地の造成などに制限を設けています。10ha以上は都道府県の政令市、10ha未満は市町村が指定し、風致政令における行為規制は「建築物の建築そのほか工作物の建築(建ぺい率・高さ・壁面後退)」「宅地の造成など(適切な植栽などにより覆われた率・のり)」「木竹の伐採」などがあり、いずれも許可が必要です。
いち早く売却するため、すぐに住み替え先を購入したC社と媒介契約
かつてマンションを売却した経験があり、ここ数年で中古物件を探し回ってもいたMさんは、複数の不動産会社と面識がありました。そのため、同時にいくつもの会社に声をかけて比較することもできましたが、すぐに新居を購入したC社に販売活動を託すことを決めます。
「より高く売るなら、会社をじっくり選定したほうが良かったのでしょうが、とにかく煩わしいことを避けて簡単に済ませたかったのです。というのは、最終的に高値で売れたとしても、たどり着くまでに時間がかかれば、その間、大きなプレッシャーを抱えるでしょう。早々に売却して心理的な負担から解放される方が、自分にとっては重要でした」
その意味でC社はベストな選択だと思ったと言います。
「私たちはC社で『家』という高い買いものをしています。そうした相手をむげに扱わないでしょうし、しっかり責任をもって取り組んでくれるはず。一番、確実で手っ取り早い道だと思いました」
早速、C社に訪問査定を依頼したところ、結果は3700万円。近隣の中古住宅の相場をつかんでいたMさんは、的確な価格だと納得。
「万一、買主が現れなかったとき自分で見つけられるように」との思いから「専任媒介契約」を選び、2021年6月、C社と媒介契約を結びます。
一度、内見した不動産会社が3カ月後に再び現れ、購入の意思を示す
査定価格は3700万円だったものの、「できるだけ早く売りたい」と考えたMさんは、売り出し価格を300万円低い3400万円に設定。
C社では自社で運営するサイトのほか、大手不動産ポータルサイトに物件情報をアップ。
すぐに反響があり、2週間で6組の内見者が自宅に訪れます。
「2日にわけて3組ずつ対応しましたが、ほかにも候補物件がたくさんあったのでしょう。そのうち1組の不動産会社(D社)は熱心だったものの、結局、すべて断られてしまいました」
Mさんは、売却につながらなかった理由をこう分析します。
「内見を行ったのは、まだ住み替え先に転居する前。部屋に家具などが入った状態だと入居後のイメージがつかないものですし、ただでさえ見学の時間が限られているのに、その場に売主がいたら、気を使ってじっくり見られないでしょう。
以前のマンションでは退去後に売れたため、今回も居住しているうちは難しいだろうと踏んでいました」
その後は一週間に1組ほど内見を迎えますが、状況は変わりません。Mさんは、引っ越しを済ませてからの動きに期待をかけます。
約1か月後の2021年8月にMさん一家は新居に住み替え。すると、ほどなくしてC社から一報が入ります。
「以前、物件を見に来たD社から再びコンタクトがあり、『まだ売れていないなら、ぜひ買いたい』とのこと。
ただ、『3200万円にしてくれないか』と値引き交渉をされました」
部屋を自由に見てもらえるようになっただけに、もう少し粘って様子を見ることもできたMさんですが、すぐに「D社に売ろう」と心を決めます。
「私が最も避けたかったのは、交渉が長引いてやきもきすること。もともと、そこまで値段にこだわりはなく、3000万円まで下げて構わないと思っていたので、迷うことはありませんでした。
ただ、D社は購入の意思が固そうだっただけに、そのままは受け入れず『3200万円ではなく3250万円ならOK』と提案。するとありがたいことに、承諾してもらえました」
2021年9月、MさんはD社と3250万円で売買契約を結びます。
もっと営業に動いてほしかったものの、ある程度の条件で売れて安堵(あんど)
Mさんは売買契約をしたのと同じ月に物件を引き渡し。
3カ月に及ぶ売却活動の幕が下りました。
「振り返ってみると、善かれと思ってC社に販売活動を任せたものの、もう少し考えれば良かったかなと。
というのは、C社は2週間に一度『営業活動報告書』をメールで送ってくるなど、最低限の対応はしてくれましたが、積極的に売ろうとする姿勢が見られず、有効なアドバイスもありませんでした。仕方がないと半ば諦めつつ『もっと見込みのあるお客さんにアプローチしてほしい』と感じていたのです。
ともあれ、値段も売れるタイミングもまずまずの結果。心からほっとしています」
新しい住まいは、築25年・約130m2・4LDKの一軒家で、5200万円で購入してすぐ、リノベーション。売却益で足りない分は、自己資金で賄ったと言います。
「築年数がたっているものの、しっかりとしたつくりで、部屋が増えた分、家族一人ひとりのプライベートスペースが確保できました。
何はさておき外せなかったのは日当たりです。
その点、ここは日差しを遮る建物がないうえ、窓が大きいため、さんさんと陽光が注ぎます。妻をはじめ、家族全員が大満足。時間はかかりましたが、探し続けて良かったです」
そう言って笑顔を見せるMさん。一家の新たな暮らしがここからスタートします。

| 2021年5月 | ・一戸建ての売却を考えはじめる |
|---|---|
| 2021年6月 | ・C社で訪問査定をする ・C社と専任媒介契約を結ぶ |
| 2021年9月 | ・購入者が現れる ・買主と売買契約を結ぶ ・一戸建てを買主に引き渡す |
まとめ
- 早期の売却を目指す場合は、相場と同等か少し低めで売り出すと、購入検討者が見つかりやすい。
- 一度、内見をして購入しなかった人が、後日、再検討してくれることもある。
- 入居中の物件は生活感があるため、住み替え後の空室を見てもらったほうが、検討してもらいやすいことも。
取材・文/星野 真希子 イラスト/石山好宏


