不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

土地価格の上昇の機を逃さず、旧借地権の一戸建てを売却し住み替え/東京都品川区Aさん(40代)

東京都品川区Aさん(40代)/土地価格の上昇の機を逃さず、旧借地権の一戸建てを売却し住み替え

東京都品川区のAさんは、築10年の一戸建て(2LDK+S)を売却しました。土地の価格が上がっているのを感じていたので、いい買い替え先が見つかれば具体的に売却に動こうと思っていました。家は旧借地権物件だったので、敬遠されることもあるかなと思いつつ、いい時期に売却したいと思っていたそうです。

不動産区分 一戸建て(旧借地権)
所在地 東京都品川区
築年数 約10年
間取り・面積 2LDK+S(延床面積…約85m2、敷地面積約80m2
ローン残高 2980万円
査定価格 5180万円~5280万円
売り出し価格 5480万円
成約価格 5480万円

もう少し実家や駅の近くに住みたいという希望に合った土地と出合う

東京都品川区在住のAさん(40代)は、10年住んだ一戸建てを2021年8月に売却しました。同じ分譲地で先に売り出しのあった家の価格や、近所にできたマンション価格から、自分たちが購入した当時より地価が上がっていると感じていました。高く売却するチャンスと感じていたものの、次の家を買うのも高いということを理解していたので、あくまでも良い買い替え先が見つかったら売却を考えよう、という程度に思っていたそうです。そんな意識の中、2020年8月ごろから隣町にあるAさんの実家に近いエリアで土地探しをスタートしました。子どもを実家近くの小学校に通わせていたので、もう少し通学しやすく、また、将来高校や大学に電車通学をする際に心配がないよう、駅に近い立地に引っ越したいと思ってのことです。

地価の上昇をつかみ不動産売却を検討

「2021年の1月に、実家に近く、最寄駅まで徒歩6分の立地で土地が見つかりました。広さは元の家と同じ程度の土地です。建築条件付き土地ですが、所有権なので安心感がありました」

2021年5月に住み替え先の売買契約が成立し、着工が9月、新居の引き渡しが2022年1月末とスケジュールが見えたので、いよいよ元の家を売却することになりました。

「売却する家は、山手線の駅からも徒歩圏で、複数の駅まで7~10分程度。大きな商店街も近く便利な立地です。高い建物が建てられない用途地域にありました。全ての区立小・中学校で、小中一貫教育を実施している品川区は、英語教育にも熱心ですし、近くには大きな公園もありますから、子育て世帯からも注目されやすい条件がそろっていると感じていました」

隣家は旗竿地だったので、狭小の土地に3階建ての建物がある割に隣家との距離には少し余裕があります。2面採光で家の中は明るく、全てのフロアの天井高は2.4mとれていて、ゆとりのあるつくりだったそう。

売り出せば需要は見込めると思いつつ、一方で少しだけ心配なことも。

「実は、旧借地権の土地に立つ家なんです。旧借地権なので、地主の方が了承してくれる限りは立ち退きの必要はないのですが、所有権じゃないことに引っかかる方もいるかなと思って」

また、新居の完成が少し先だったこともあり、そのタイミングを計りつつ売却する難しさも感じていたそうです。

■借地権とは

土地の権利に「所有権」があります。その「所有権」とは、実は「底地権」と「借地権」が合わさったもの。「借地権」は建物を所有する目的で地主の持つ土地を借りて利用する権利のことで、「借地権」を持った他人が建物を所有し使用している場合は、地主は「底地権」のみを持つことになります。1992年より前に土地を借りていた場合は「旧法借地権」、1992年以降に土地を借りた場合は現行の「借地権」が適用され、旧法か新法かで規定される契約の期間等に違いがあります。
借地権の物件は、所有権の物件よりも安く購入できるメリットがありますが、一方で期限付きの借地契約を心配に思うかもしれませんしかし、更新することで継続利用が可能で、借地権は一度手に入れれば半永久的に土地を利用できます。

購入と売却、双方の仲介先を一本化してスムーズに

実はAさんは、住み替え先を探している最中に大手不動産会社に勤務する友人に相談し、自宅の査定をしてもらったそうです。5180万円という回答があり、なんとなく相場をつかんだ上で、住み替え先の話を進めていました。住み替え先の売買契約が終わり、いよいよ売却に着手するとき、買うときにお世話になった不動産会社からも声がかかり、売却の査定をしてもらいました。査定額は5280万円でした。
どちらの会社も大手で、紹介してもらえる顧客は多そうだったので、Aさんとしてはどちらに依頼しても良いと思っていました。仲介手数料の割引率なども同等で、当の友人から「購入と売却の相談窓口がまとまっていた方が手間がかからず良いのでは」と言ってもらえたこともあり、新居の購入先と同じ不動産会社と専任媒介契約を結ぶことに決めました。

「ただ、売却に当たり一つ迷っていたのは、売却活動のスタートをいつにするかという点でした。5月に仲介の依頼先を決めたものの、新居の完成が翌年の1月末と時間があったので、あまり早く売却できてしまうと間に賃貸への引っ越しを入れなければいけないと思って。売却活動のスタート時期は夏が終わったころでもいいのかなと思ったり。ですが、不動産会社から早い時期に一旦反響を見ておいては、とアドバイスがあり、結局6月に売り出しました」

売り出し価格については、地価が上昇していると考え、査定価格よりも上げた金額での設定を希望しました。

「不動産会社からはチャレンジ価格といわれましたが、マーケットアウトしてしまう金額設定でなければ出してみましょうという話になりました。近所に似たような物件で5600万円の値付けで売れていない物件があったので、値ごろ感を感じやすい5480万円で設定することになりました」

ダブルローンにならない期間中は値引き交渉に応じないと決めて情報公開

6月にWEBサイトへの掲載と折込みチラシで情報を公開しました。毎週レポートで反響の報告があり、コンスタントに閲覧数があることがわかりました。ただ、旧借地権物件だからか、お気に入り登録までで具体的な話に進むまでには至らないことが多いと感じていました。Aさんは、「売却は、ダブルローンにならなければ問題なし」と考えていたので、10月くらいまで話が進まないようなことがあれば価格交渉に応じたり、クリーニングなどの対策を検討しようと思っていました。結局、3週間ほどで4件の内見希望があり、事前にかなり調べた上で内見に来てくれた1組目の方と話が進みました。

チャレンジ価格だったものの、価格交渉は入らず、内覧した週の週末(7月頭)には契約とスピーディに進みました。ただ、購入者から「8月半ばに引き渡してほしい」と希望があり、つなぎで暮らすための賃貸物件を急いで探しました。また、借地権を持つ地主への確認や譲渡承諾料の支払いなど煩雑な事務方の処理は、不動産仲介会社が進めてくれました。新居の打ち合わせをしながら短期間で進める必要があり、かなり忙しかったので、窓口がまとまっていて良かったと感じたそうです。

仮住まい期間が発生したものの、十分な売却価格で満足な結果に

地価の上昇の機運を逃さず、買い替え・売却活動を進めたAさん。家は購入当時よりもずっと高く売れたので、住宅ローンの残債や借地権の譲渡承諾料を支払っても、新居の頭金にまとまった額が残りました。10年間暮らした分の住居費は、税金分を差し引いても実質ゼロどころかおつりがくるものになり、申し分ない結果だと感じているそうです。
一方で、予定外だったのは、売却があまりにスムーズで、仮住まいの賃貸期間が思いのほか長くなったことだそう。短期間であれば実家に身を寄せることを考えたそうですが、新居への引っ越しまで5カ月間もあったので、短期賃貸の物件に引っ越すことになったそうです。仮住まいのつなぎ賃料は、買い替えのリスクの一つ。今回は売却益が大きかったのでAさんは金銭面ではあまり気にならなかったのですが、仮住まいは家族5人と家財を収めるには少し狭く、少し不便だなと感じているそうです。

今回の売却については、「家が築10年とまだ不具合もないときに売れたのも良かったのかな」と振り返ります。Aさんは、あと2~3年売却のタイミングが遅かったら、家に何かしらの不具合が起こっていて値引き交渉の種になったかもしれない、と思うそう。地価の上昇をとらえ、家の売り時を上手く見極めて進められた今回の売却に、Aさんは「これ以上は望めない」と満足そうに語りました。

2020年8月 ・住み替え先探しスタート
2020年12月 ・不動産会社に勤める友人に自宅の査定を依頼
2021年1月 ・住み替え先の土地を見つける
2021年5月 ・住み替え先の土地の売買契約
・自宅の査定を依頼
・土地の購入でお世話になった不動産会社と売却のための専任媒介契約を結ぶ
2021年6月 ・売却活動スタート
・購入希望者が現れ内覧
2021年7月 ・売却の売買契約
2021年8月 ・物件を引き渡し売却活動終了
・仮住まいの賃貸に引っ越し
2021年9月 ・新居着工
2022年1月 ・新居引き渡し

まとめ

  • 地価の状況を見て、最良の売却タイミングや売り出し価格を考える
  • 旧借地権の土地では、地主へ売却の許可や譲渡承諾料の支払いが発生する
  • 売却のタイミングと新居の入居のタイミングがずれると、つなぎ賃料が発生することも
売却査定する

取材・文/竹入はるな イラスト/めんたまんた

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