不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

東京都武蔵野市Mさん(60代)/26年過ごした愛着あるマンションを、若い子育て世代に売却して住み替え

東京都武蔵野市Mさん(60代)/26年過ごした愛着あるマンションを、若い子育て世代に売却して住み替え

実家の建て替えに伴い、武蔵野市の自宅マンション(3LDK)を手放すことにしたMさん。懇意にしている銀行から紹介された不動産仲介会社と媒介契約を結び、マメに連絡を取り合うことで着実に売却のステップを踏みました。

不動産区分 マンション
所在地 東京都武蔵野市
築年数 26年
間取り・面積 3LDK(78m2
ローン残高 なし
査定価格 6280万円
売り出し価格 6280万円
成約価格 5700万円

子育ての思い出が残るマンションを、建て替えによって手放すことに

2人のお子さんに恵まれたMさん(60代)は、26年前に東京都武蔵野市のマンションを新築で購入し、子育て期間を過ごしてきました。住まいはマンション1階の3LDK・78m2。大小の公園が点在するのどかな住宅地ながら、10分ほど歩けば駅や商店街があり、暮らしやすさは上々。しかし何より心を捉えたのは、室内から外へのアクセスの良さだったと言います。

「バルコニーから直接、外に出られるつくりで、向かいが駐車場だったんです。子どもたちが小さいと、買いもの袋を抱えて家に入るだけでも一苦労。でも、玄関を介さずすぐに車に乗り込めますし、思い立ったときに気軽に子どもを遊びに連れ出せもして、助かりました。1階なので、子どものバタバタとした足音が階下に聞こえないか心配する必要がなく、ご近所の顔ぶれがわかる2階建ての小規模なマンションなので安心感が。まるで戸建てにいる感覚でいられました」

お子さんたちが巣立った後も愛着をもって住んでいたMさんご夫妻ですが、都内で1人暮らしをしていた義母が介護施設に入居することになったのを機に、夫の実家を建て替えする話が持ち上がります。

「夫は『定年になったら生まれ育った場所に戻りたい』と以前から話していました。マンションを賃貸に出すこともできましたが、不動産会社を間に入れるとはいえ、入居者とトラブルが起きそうで、人に貸すのに抵抗がありました。子どもたちのライフスタイルからして今、譲るのは現実的でなかったため、売却することにしました」

今後の賢い資産管理のため、信頼する銀行のグループ会社と媒介契約

2021年1月に実家を建て替えたMさんご夫妻は、いよいよマンションを売却することに。しかし丁度、世間でコロナが騒がれはじめます。「不動産価格が下落するのでは」「内見者を迎えられないかもしれない」と心配になり、しばらく様子を見ることにしました。

「最初は慎重でしたが、世の中の動向を見ていると、コロナ禍だからといってマンションの価格が下がっているわけではないことが見えてきました。私たちが住んでいたのは、滅多にマンションは売り出されないエリアなだけに、需要はゼロではないはず。時期としては間違っていないと考え、売却活動をはじめることにしたんです」

同時に複数の不動産仲介会社とコンタクトも取れたMさんですが、まっすぐにある場所に向かいます。

「相続の方法や保険の選び方など、いつも資産管理について相談する銀行の担当者がいたんです。私たちにとって売却ははじめての経験。どうステップを踏んでいいかわからなかったので、まずはその方に話を聞きにいきました。そのタイミングで『グループ会社に不動産仲介会社(A社)があるのでいかがですか』と紹介を受けて。早速、訪問査定をしてもらうことにしました」

査定価格は近隣で売り出されている物件と同じ価格帯の6280万円。参考になるさまざまな売却事例や市場の動向・販売活動の進め方などを教えてもらえて、対応に細やかさを感じたと言います。しかしこれだけが決め手ではありません。

「私たち夫婦は終活というにはまだ早い年齢ですが、今後、節税できるところはするなどして、元気なうちに資産管理を徹底していきたいと考えていました。懇意にしている銀行のグループ会社であれば、何かあったときにトータルでアドバイスしてもらえて便利だろうし、私たちのペースで進められるとも思ったんです」

2021年2月、MさんはA社と専属専任媒介契約を結びます。

物件をマメに手入れして印象アップ。2回の値下げで納得したうえで売却

新居完成の翌月には、引っ越しを済ませたMさんご夫妻。媒介契約をした後、A社に旧居の鍵を託し、販売活動がスタートします。

「『ゆくゆく値下げするとしても、まずは反応を見てから』と、売り出し価格は査定額と同じ6280万円に。A社では不動産サイトに物件情報をアップするとともに、市内の住宅にポスティングを行いました」

すでにローンは完済し、新居の資金計画も万全だったMさん。5000万円の大台は切りたくありませんでしたが、高値を狙ったり、売り急いだりはしていなかったといいます。

「かといって長く空き家にしていると、気になってしょっちゅう手入れに帰ることになるでしょう。『物件を気に入ってくれさえすれば値段にはとらわれないけれど、速やかに引き渡したい』と思っていました。そのため『駐車場に草が生えていないか』『ゴミ集積所が散らかっていないか』を見に行ったり、部屋の窓を高圧洗浄で掃除したり。内見する人に心地いいマンションだと思ってもらえるよう努めました。一方で、長年お付き合いをしてきたご近所への配慮も大切にしたいと思いました。いくらで売り出したか知られないようA社には、近隣のエリアを避けてビラ配りするよう依頼しました」

しかし1カ月で6件の問い合わせと、2組の内見者を迎えたものの、契約には至らず、その後の反応も思わしくありません。

「A社からはサイトの閲覧数や内見の件数などが週1回、報告されていたのですが、状況が見えないと不安になるので、なぜ契約に結びつかなかったかなどを逐一、教えてもらうようにしていたんです。すると皆さん、物件自体は好ましく思ってくれるのですが、自分たちで改装することを前提にしているため、その費用を含めると予算オーバーになるようでした」

このタイミングでA社から、「6000万円台と5000万円台にするのとでは検索される数が違う」とアドバイスを受けたMさん。
2021年3月に5880万円まで値下げします。

「すると閲覧数が増え、再び問い合わせが入るように。新たに3組の内見者が訪れ、そのうち1組に、値引きを条件に買ってもらえることになりました」

Mさんは180万円の値下げ交渉に快く応じ、2021年4月、5700万円で売買契約を交わします。

■空き室での売却活動について

すでに住み替え先に転居した場合は、空き室の状態で売却活動をすることになりますが、不動産仲介会社に鍵を預けておけば必ずしも内見に立ち会う必要はありません。互いにスケジュール調整する必要がなく、内見者は売主に気づかわずに部屋を見られるため、かえって売却につながる場合も。一方で、空き室にすると埃が溜まる・臭いがこもる・日差しで床が傷むなどのデメリットが。こまめに換気や掃除・キッチンの水を流すなどして手入れすることが大切です。また、空き家の状態でも物件を所有している間は修繕積立金などの費用が発生するため、売れるまでにどの程度かかるか見積もっておくのが賢明でしょう。

家を手放す寂しさはあるけれど、気に入った人に買ってもらえて満足

約2カ月の売却活動をMさんはこう振り返ります。

「気軽に何でも話せる不動産仲介会社の存在は重要だなと実感。A社にはどんな小さなことも報告してもらっていたのですが、そのおかげで『今、どうなっているか』を常に把握できて、やきもきすることがありませんでした。
買主はお子さんのいるご夫妻で、私と同様、小規模マンションで安心感があるところが良いと感じたよう。正直、好きな家を手放す寂しさはありますが、親しんだマンションが子育て世代の新しい家になるのはうれしいです」

買主の子育てファミリーにマンションを引き渡す

新築した戸建ては将来を考え、移動や掃除がしやすいフラットでシンプルなつくりに。全館空調なので、どの部屋にいても気持ちが良いのだといいます。

大切にしてきたマンションを納得するかたちで売却し、これからの暮らしに最適な住まいを手に入れたMさんの瞳は、いきいきと輝いていました。

2019年8月 ・マンションの売却を考えはじめる
2021年2月 ・訪問査定をする
・不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ
2021年4月 ・購入者が現れる
・買主と売買契約を結ぶ
・マンションを買主に引き渡す

まとめ

  • 売却物件は、家を探す人の検索条件を意識した値付けをすることで、より多くの人の目に留まる可能性がある
  • 内見者は部屋の状態だけでなく共用部分の管理状態もチェックしている
  • こまめに連絡してくれる不動産仲介会社だと、次の手を考えられ、安心もできる
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取材・文/星野 真希子 イラスト/めんたまんた

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