
子どもの誕生をきっかけに住み替えることにしたKさん。新居の契約を済ませてから、東京都足立区の築6年・3LDKの自宅マンションの売却に取りかかりました。売却活動はスムーズでしたが、その前後に迷いや戸惑いがあったと話してくれました。
| 不動産区分 | マンション |
|---|---|
| 所在地 | 東京都足立区 |
| 築年数 | 6年 |
| 間取り・面積 | 3LDK(約75m2) |
| ローン残高 | 約2500万円 |
| 査定価格 | 4300万円 |
| 売り出し価格 | 4280万円 |
| 成約価格 | 4280万円 |
子育てのために、妻の実家近くに住み替えを決意
2018年に東京都足立区から埼玉県熊谷市に住み替えたKさん。それまで住んでいたマンションを売ることにしたのは、前年に子どもが誕生したことがきっかけだったといいます。
「実家の近くで子育てをしたいという妻の希望で住み替えを決めました。熊谷なら私も通勤可能な距離ですから。里帰り出産だった妻はそのまま子どもと一緒に実家に滞在していたので、まずは新居を建てる段取りを優先。新居の契約を済ませてからマンションの売却にとりかかることにしました」
Kさんのマンションは新築で購入し、入居してから6年が経っていました。間取りは3LDK、広さは約75m2。最寄りの私鉄駅から徒歩3分、少し歩けばJRや地下鉄も利用できるロケーションでした。
「入居した当時はまだ開発中のエリアで商業施設は多くありませんでしたが、近くにショッピングモールがオープンするなど、どんどん便利になっていました。総戸数は250戸ほど。ゲストルームはありましたが、共用施設はさほど多くない、シンプルなマンションです。少し前に売却された住戸の売り出し価格を調べたところ、価格は上がっている様子。同じ時期に数戸が売り出されていました」
4社に訪問査定を依頼し、1カ月かけて仲介会社を比較検討
2018年3月、新居の契約を済ませたKさんは、マンションの売却活動をスタート。まずインターネットの一括査定を利用し6社から簡易査定を取り、そのうちの4社に訪問査定を依頼しました。
「査定価格は4300万円前後。予想通り、購入時より高い価格で売却できそうだとわかりました。住宅ローンの残債約2500万円は完済できます。問題は仲介業務をどこに任せるかです。マンションを売り出すのは新居への引っ越しを済ませた5月以降と決めていたので、時間をかけて選ぶことに。4社に現地を見てもらい話を聞きました」
以前にも自宅マンションを売却した経験があるKさん。その際は居住中だったため、検討者が内見に訪れると片付けや対応が大変だったといいます。また、売却が決まるまで半年かかり、不動産仲介会社に不満が残ったとも。
「現地査定では、早く売りたいなら3900万円とか、4500万円でも売れるという会社もありました。査定価格が高い会社より、堅実な価格を提示した会社のほうが信頼できると感じましたね。4社ともそれぞれ特色があって悩みましたが、同じマンションで数件の販売実績がある不動産仲介会社を選びました。担当者がマンションとエリアに詳しかったことが決め手です」
2018年4月、Kさんは仲介会社と契約。責任をもって売ってもらおうと、専属専任媒介を選んだそうです。
「査定価格に準じて4280万円で売り出すことにしました。売り出す前に、不動産仲介会社が契約の際に提供してくれた水まわりのクリーニングサービスを利用しました。築6年で室内はまだきれいでしたが、水まわりがピカピカになって、印象がさらに良くなったと思います」
値下げ交渉には応じず、3カ月目に売り出し価格で売却が決まる
2018年5月、新居に引っ越しを済ませたKさんは、マンションを売り出しました。不動産仲介会社は自社のホームページや物件ポータルサイトに広告を載せたり、チラシを入れたり売却活動を行い、すぐに反響があったといいます。
「不動産仲介会社に家の鍵を預けて、内覧の対応は任せていました。内覧があるときは必ず担当者から事前にメールがあり、反応を知らせてくれました。内覧者は全部で10組ほど。同じマンションでほかにも売り出し中の住戸があり、比較検討のために見に来た人もいるようです。売り出して2カ月で2組の検討者から値下げ交渉がありましたが、夏までは売り出し価格で行こうと決めていたので断りました」
多少時間がかかっても一定以上の価格で売りたかったとKさん。新居の住宅ローンも始まり、しばらくは2重にローンを払うことになりますが、どちらも金額は低く、さほど負担ではなかったそうです。そして売り出して3カ月目、売り出し価格での購入希望者が現れました。
「エリアに詳しい若いご夫婦です。何度も内覧されて、じっくり検討されたようです。値下げはできませんかと打診されましたが断ると、売り出し価格で購入を決めてくれました。その後の段取りはスムーズに進み、2020年8月に売買契約を結び、9月に物件を引き渡しました」
売り出し価格で成約してホッとしたKさん。しかし、売却益が出たために、その年度の確定申告で困ったことになったそうです。
「マイホームを売って利益が出ても3000万円までは課税対象にならない(3000万円特別控除)ので、税金の心配はしていませんでした。ところが、新居のほうで住宅ローン控除を利用すると、3000万円特別控除は使えない。どちらかを選ぶ必要があると、確定申告に行って初めて知りました。結局、3000万円特別控除を選びましたが、それで良かったのかどうか? しかも、売却で利益が出たためにその年の所得がアップし、妻が扶養控除から外れ、税金を追加徴収されることに……。税金については勉強不足でした」
■住宅ローン控除とは
ローンを組んで家を買ったりリフォームしたときに、年末の住宅ローン残高の0.7%相当額が一定期間所得税や住民税から減税される制度。控除を受けるには、住戸の床面積(登記簿面積)が50m2以上)、控除を受ける年の合計所得が3000万円以下(※3)、住宅ローンの返済期間が10年以上、などの条件を満たした上で、入居の翌年に確定申告が必要です。すまい給付金、住宅資金贈与の非課税の特例などとの併用が可能。ただし、自宅を売ったときに譲渡所得から3000万円を差し引ける「3000万円特別控除」と併用はできません。
悩んだのは不動産仲介会社選び。スムーズに売却できたが、税金対策の必要性を実感
2度目のマイホーム売却を終えたKさんは、「仲介会社選びが難しかった」と振り返ります。
「終わってみればスムーズでした。ただ、仲介会社を選ぶ際は悩みました。最近の仲介会社はさまざまなサービスを用意していて、中には空き室に家具を入れてモデルルーム風にセッティングするという会社も。結果的には水まわりのクリーニングで十分でしたが、そういったサービスも悩みどころになりました。仲介会社の担当者はよくやってくれましたが、税金についてのアドバイスがなかったのはちょっと残念です」
今は、新居の一戸建てに家族3人で暮らすKさん。子育てはもちろん、コロナ禍で増えたテレワークの環境も良好だと笑顔で話してくれました。
| 2018年4月 | ・4社がマンションを現地査定 ・同マンションで売却実績のある不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ |
|---|---|
| 2018年5月 | ・4280万円で売り出し |
| 2018年6~7月 | ・購入検討者から値下げ交渉があるが断る |
| 2018年8月 | ・購入希望者が現れる ・売買契約を結ぶ |
まとめ
- 不動産仲介会社は査定価格の高低より、実績やサービスで比較検討して選びたい
- 売却活動に入る前に、売却にかかる時間と売却価格の優先順位や妥協できるラインを決めておこう
- 不動産を売却する前に税金について調べておこう
イラスト/めんたまんた
▼「マンションの売却」のおすすめ記事を読む


