不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

築31年の実家を売却。病気の父が暮らしやすいマンションに住み替え/神奈川県横浜市Kさん(30代)

神奈川県横浜市Kさん(30代)/築31年の実家を売却。病気の父が暮らしやすいマンションに住み替え

60代の父が体を壊し、交通の便が悪いので買い物もできなくなったと聞いたKさん。駅やスーパーへ近いマンションに住み替えるように両親を説得し、築31年になる横浜市の一戸建て(80m2・4LDK)の売却を主体になって行いました。

不動産区分 一戸建て
所在地 神奈川県横浜市
築年数 約31年
間取り・面積 4LDK(延床面積…80m2、敷地面積…135m2
ローン残高 なし
査定価格 4500万円、4900万円
売り出し価格 4900万円
成約価格 4500万円

父の病気で買い出しが負担に。交通の便が良い場所への住み替えを両親に提案

2017年4月に帰省した時に、体を壊した父親から、階段の上り下りや買い出しが負担になっていると聞いたKさん。実家は横浜市内の築31年になる80m2・4LDKの2階建てで、最寄駅からはバスで30分近くかかります。1999年に7000万円で購入し、Kさんも小学校3年生から独立するまで過ごしました。

「転勤の多かった父が子育てのために定住しようと求めた家で、両親はとても愛着をもっていました。住宅ローンは支払い終えていて、家族に住み継いでもらいたいと願っていたようです」

当時、Kさんは都内で忙しく仕事をしており、実家に住むのは無理でした。このまま実家を引き継ぐかどうかを曖昧にしておくのはよくないと考え、両親に住むことはできないとはっきり伝えました。

「同時に、駅やスーパーに近いマンションに住み替えるように言いました。その方が老後のセカンドライフを楽しめるよと説得したんです。両親は私が実家に住まないとわかって、がっかりしたようですが、子どもに無理は言いたくないと、住み替えを前向きに考えるようになりました」

住み替えの提案イメージ

不動産会社探しや売り出し価格の設定など、両親と一緒に売却活動を行う

2017年末ころから、Kさんが主体になって、不動産仲介会社を調べ、両親は住み替え先を探し始めました。Kさんは、一括査定はせず、勤め先の会社と同じグループの不動産会社に訪問査定を依頼。4900万円の査定価格でした。母親も地元の不動産仲介会社に話を聞きにいきましたが、査定価格は、4500万円。査定価格が高く、仲介手数料の割引がある最初の不動仲介産会社と2018年3月に専属専任媒介契約を結び、販売活動をスタートしました。

母親は、「引っ越しが面倒なので仮住まいはしたくない」と要望していました。横浜の街に愛着があった両親は、横浜市内で物件を探し、すぐに気に入ったマンションを内見。ところが、決断しないうちに売れてしまいました。

「やはり、いい物件はすぐに売れてしまうんだなと。そこで、次に、駅やスーパーまで徒歩5分の場所にある70m2・3LDKのマンションを見つけた両親は、購入を即決し、4700万円のローンを組みました。自分としては時期を急がずに先に売却したほうが高く売れると思ったのですが、最初の苦い経験から気に入った家を先に手に入れてしまいたいと思ったようです」

買い先行となった売却活動において、両親から出された条件は、住み替え先のローンをできるだけ残らず支払える売却価格であること。さらに、「愛情をこめて住んできた家を大事に使ってくれる人を選びたい」と希望していました。

両親は早い時期での売却を希望、住み替え先のローンがほぼ支払える価格で即決

査定価格の最低ラインである4500万円以下では売らないことを両親とあらかじめ決めて、4900万円で売り出すことにしました。不動産情報サイトなどで販売活動を開始、築年数はあるもののきれいに使っていたので、写真の見栄えが良く、1週間で3人の内見者に対応しました。

購入検討者の人柄を見るため、内見には両親も同席しました。母は水まわりや内装などこだわりの場所を熱心にアピール。2週目に「4500万円なら契約したい」という家族が現れると、両親はKさんに「即決したい」と伝えてきたのです。

「売却活動をはじめて、住み替え先のローンを抱えていることが不安になってきた父がすぐに決めてしまいました。自分はもっと粘れば高く売れると説得したのですが、最終的に両親の意向を尊重して2018年4月に4500万円で売買契約を結びました」

最低査定価格で売却したが、買い先行で両親が気に入った家に住み替えられた

「先に家を売ってから、住み替え先を買えば、もっと高く買ってくれる購入者を待てたのではないかという思いはあります。ただ、それは気に入った家が手に入ったから思うこと。いい物件はすぐに売れてしまうので、両親のクオリティオブライフを考えると買い先行で良かったと思います」

住み替え先の4700万円の住宅ローンは、売却価格に預金を足して、一括で繰り上げ返済しました。2018年4月に住み替え先に引っ越した後、5月に物件を引き渡しました。

売却を意識し始めてから、1年間に及び、売却活動を行ったKさん。「今回のことで両親は、世代交代を意識するようになり、これからのことは任せると言っています。できる限り支えになれれば」。両親と一緒に思い出の詰まった実家の売却活動を行い、家族の絆が深まりました。

■繰り上げ返済

繰り上げ返済とは、ローン返済中、通常の返済とは別に、元金の一部(または全部)を前倒しで返済する方法です。元金を減らすことで、その元金にかかるはずだった利息を払わなくて済むため、当初の予定よりも完済までの総返済額を減らす効果があります。繰り上げ返済には、毎月の返済額はそのままで借入時に設定した返済期間を短縮する「期間短縮型」と、返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」の2タイプがありますが、「返済額軽減型」より「期間短縮型」のほうが利息軽減効果が高いです。また、繰り上げ返済の時期が早ければ早いほど利息軽減効果は高くなります。繰り上げ返済をする際は手数料に注意。ネット経由で繰り上げ返済をする場合、多くは手数料無料ですが、窓口や電話で手続きをしたり、残りの元金全額を一括で繰り上げ返済する際には手数料がかかるケースも。事前によく確認してから繰り上げ返済をしましょう。

2017年4月 ・売却を意識し始める
2017年12月 ・簡易査定・訪問査定を行う
・4500万円、4900万円の査定額が出る
・住み替え先を探し始める
2018年3月 ・不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・住み替え先が決定
・4900万円で売り出す
・購入検討者が現れる
2018年4月 ・住み替え先の売買契約を結ぶ
・4500万円で売買契約を結ぶ
・住み替え先に引っ越し
2018年5月 ・物件の引き渡し

まとめ

  • 子どもが実家を引き継げない場合は早めに伝え、両親の老後の住まいを一緒に考える
  • マンションは階段がなくバリアフリーなので、シニアの住み替え先として人気がある
  • 買い先行は、気に入った物件を買い逃さないというメリットがある
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取材・文/内田優子 イラスト/カワモトトモカ

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