不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

賃貸していた築38年のマンション。売り出し後3日で購入希望者が登場/東京都大田区Yさん(60代)

東京都大田区Yさん(60代)/賃貸していた築38年のマンション。売り出し後3日で購入希望者が登場

家族で住んだ後、20年前から賃貸に出していた大田区の築38年のマンションを手放すことにしたYさん。売却活動は入居者に退室してもらう交渉からスタート。空室にして売り出したところ、意外なところから問い合わせが入りました。

不動産区分 マンション
所在地 東京都大田区
築年数 約38年
間取り・面積 2LDK+S(納戸)(約78m2
ローン残高
査定価格 5300万円
売り出し価格 5290万円
成約価格 5290万円

駅近立地の小規模マンション。共有名義の息子が売却を希望

2018年、東京都大田区のYさんは、自宅近くに所有するマンションを売却することにしました。新築で購入し家族で十数年住んだ後、約20年間、賃貸に出していた物件です。

「私と祖父の共有名義で購入し、売却時には、息子との共有名義になっていました。あるとき息子が、将来的に自分はあのマンションに住む気はないから、今のうちに売却しようと言い出したのです」

Yさんのマンションは、最寄駅から徒歩5分に立地。周囲は閑静な住宅地で、近くに公園や学校などがそろう暮らしやすい環境でした。

「総戸数二十数戸の小規模なマンションで、住人はお互いの名前と顔を知っています。私も近くに住んでいて、管理組合の役員を務めたこともあり、住人とはほとんど顔見知りでした。愛着のあるマンションですから、売却することは考えていませんでした。とはいえ、築38年と古い。これまでの大規模修繕では修繕積立金の追加徴収はありませんでしたが、次はあるかもしれません。最近は自然災害による被害も増えているので、なるべく早く手放したいというのが息子の希望でした」

Yさんは息子さんの意向に沿って、マンションを売却することにしました。当時、都心の不動産価格が上昇傾向だったことも売却を決断した理由だといいます。

「しかし、10年以上住んでいる賃貸の入居者がいたので、どうやって退去してもらおうか悩みました。事情があって契約を打ち切りたいとお願いすると、『もう少し広い家に住み替えを考えていたところです』と快諾してくれました」

■マンションの築年数と修繕積立金

マンションでは十数年ごとに大規模修繕が行われます。マンションの経年劣化を修復し、資産価値を守るために必要なもので、その費用に充てられるのが「修繕積立金」です。長期修繕計画に従って積み立てていきますが、2回目、3回目の大規模修繕では資金不足になるケースも。その場合は、修繕積立金を値上げしたり、一時金を追加徴収するなどの対応が必要になります。また、分譲時は修繕積立金を低めに設定し、段階的に増額する方式を採用しているマンションが多く、築年が経つほど金額が上がる傾向があります。

友人が推す大手の不動産仲介会社を選び、リフォームなしで売り出す

2018年10月、Yさんは空室になったマンションの売却活動をスタートしました。

「不動産に詳しい友人にマンション売却について相談すると、大手の不動産仲介会社を薦められました。このエリアでマンションや一戸建ての売買実績が多い会社だというので、信頼して仲介業務を任せることにしました」

Yさんは、不動産仲介会社と専属専任媒介の契約を結びました。事前に調べて相場を把握していたので、複数の会社に査定を依頼することはなかったそうです。

「不動産仲介会社の担当者に現地を見てもらうと、相場は5300万円ぐらい。売り出し価格は、早く売りたいか、それとも高く売りたいかによって、4800万円から~5500万円が妥当だろうということでした。どちらかというと価格より早さが優先だったので、相場に近い5290万円で売り出すことにしました」

築年の古い物件の場合、リフォームを入れてから売り出すという方法もありますが、Yさんはリフォームを入れることはまったく考えなかったといいます。

「そういう売り方もあると、不動産仲介会社から説明を受けました。しかし築38年の物件ですから、いずれにしてもリフォームは必要です。それなら、売り手が見た目の印象を良くするために手を入れるより、買い手が自分たちのライフスタイルに合わせてリフォームをした方がいいと考えて、現状での売却を依頼しました。もちろん売り出す前にハウスクリーニングは入れています」

マンション内に購入希望者が! 売り出し価格ですんなり合意

2018年11月、Yさんのマンションが売り出されました。すると3日後、いきなり購入希望者が現れたといいます。

「同じマンションの住人から、私に直接問い合わせがありました。売却物件より狭い住戸にお住まいのご夫婦でした。今の家が手狭になり、住み替え先を探しているところだったそうです。このマンションが気に入っているので、ぜひ売ってほしいと言われました」

不動産仲介会社からレインズ(不動産流通標準情報システム)に登録し、自社サイトに掲載したという報告があった矢先のことでした。前述したようにYさんは今もマンションの住人と交流があり、購入希望のご夫婦とも顔見知りだったそうです。

「こんなに近くに購入希望者がいたとは驚きました。このマンションから売却物件が出ないか、不動産仲介会社に依頼してウォッチしていたのかもしれません。価格交渉はなく、売り出し価格で購入したいということでしたから、もちろん異存はありません。ただ、不動産仲介会社とは専属専任媒介契約を結んでいたので、改めて仲介会社を通して購入の申し込みをしてもらいました」

仲介の契約には3種類あり、複数の会社に仲介業務を任せる一般媒介、1社にのみ仲介業務を任せるが専任媒介と専属専任媒介です。専任媒介は自分で買い手を発見した場合も取引が可能ですが、Yさんが選んだ専属専任媒介の場合は、自分で買い手を発見することができません。

「結果的に専属専任媒介にする必要はなかったわけですが、不動産仲介会社の担当者はよくやってくれました。売り出し前には必要にして十分な情報提供があり、会社としての提案や選択肢を提示してくれたので、判断がしやすかったですね。買い手と気持ちのよい取引ができたのも、優秀な担当者のおかげです。2018年12月に売買契約を結び、2019年2月に物件を引き渡しました」

事前の段取りでスムーズに売却。売却後の税金対策も必須

売却活動を振り返って、「価格は予想通り。早く売れて満足しています」とYさん。

「想定していたよりずっとスムーズでした。賃貸の居住者に出て行ってもらうのは心苦しかったですが、あのマンションが好きで住み続けたいという人に買ってもらえて良かったです。 ただ、売却後の税金はやっぱり高かったですね。事前に税理士さんに相談し対策をしていましたが、その年は所得がアップして社会保険料なども跳ね上がりました。売却を考えている人は、売った後にこんなはずではなかったとならないように、専門家に税金の相談をしておくべきだと思います」

今も近くから売却したマンションを見守っているYさん。ちなみに、不動産仲介会社の担当者とはその後も付き合いが続いているそうです。

2018年9月 ・賃貸の入居者が退去
2018年11月 ・不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・5290万円で売り出す
2018年12月 ・購入希望者が現れる
・売買契約を結ぶ
2019年2月 ・物件を引き渡す

まとめ

  • 賃貸中物件を空き室にして売る場合は、賃貸借契約を終了するため居住者と交渉が必要
  • 売り出し価格を決めるときには、売却までの期間か、それとも価格か、どちらにこだわるかよく考えて決めよう
  • 灯台下暗し。同じマンション内に購入希望者がいる可能性もある
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取材・文/小宮山悦子 イラスト/めんたまんた

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