不動産は「一物五価」といわれているように、評価方法はひとつではありません。一物五価とは、一般的に「固定資産税評価額」「路線価」「公示価格」「基準地価」「実勢価格」を指します。この記事では、これに「不動産鑑定評価額」を加えた6つの不動産評価額について解説します。
不動産評価額とは?6つの評価額の種類と調べ方・目的を徹底解説

不動産(土地)評価額は大きく分けて6種類ある
不動産の評価額は、次の6つに大別されます。それぞれの評価額には目的があり、必ずしも不動産の取引を目的として評価しているわけではないという点に注意が必要です。
1.固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、各市町村(東京23区は東京都が課税)が固定資産税の計算に用いる基準価格を指します。固定資産税だけでなく、不動産の相続税や登録免許税、不動産取得税の計算にも用いられます。
宅地の固定資産税評価額は、後述する「地価公示価格」などの7割がめどになっています。一方、家屋については、再建築価格と経年減点補正率に応じて評価額が算定されます。簡単にいえば、再建築した場合に想定される建築費から、家屋の築年数に応じた金額を減価して算出するということです。
固定資産税は、3年に1回の「評価替え」で価格の変化が反映されます。価格の変動が大きく、税負担が激変する場合は、負担調整措置も検討されます。
2.路線価
路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額のことです。1月1日を評価時点としており、1年間の地価変動などを考慮して算定されます。
路線価は「相続税路線価」と「固定資産税路線価」に分けられますが、「路線価」というと不動産にかかる相続税や贈与税などの評価額基準となる相続税路線価を指すのが一般的です。固定資産税路線価は、固定資産税評価額などを算定する基準になる価額を指します。
相続税路線価は地価公示価格の8割、固定資産税路線価は同7割をめどに算出されます。
固定資産税納税通知書にある固定資産税評価額を把握できるのであれば、固定資産税路線価を調べる必要はありません。
| 相続税路線価 | 固定資産税路線価 | |
|---|---|---|
| 基準とする評価額 | 相続税・贈与税など | 固定資産税・都市計画税・登録免許税・不動産取得税など |
| 評価時点 | 1月1日 | 基準年の1月1日 |
| 評価主体 | 国税庁 | 市区町村(東京23区は東京都) |
| 算定の目処 | 公示地価の8割 | 公示地価の7割 |
注意が必要なことは、同じ路線に面している土地であっても、たとえ隣り合っていたとしても、適正な価格は大きく異なる可能性があります。それは画地形状が異なる等個別的な条件が異なるからです。したがって、税額を算出する以外の目的で使用する場合は、あくまで参考程度に留めましょう。
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3.公示価格
公示価格とは、国土交通省が地価公示法に基づき、適正な地価形成を目的に調査・公表する評価額です。
毎年、1月1日時点の約26,000の標準地点の1㎡あたりの価格を3月に公示しています。公示価格は、国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」で閲覧可能です。
4.基準地価
基準地価もまた適正な地価形成を目的に調査・公表されるものですが、調査主体は都道府県です。公示価格の標準地点は都市計画域内ですが、基準地価の地点には都市計画区域外も含まれます。
評価時点は、7月1日。公示地価の半年後となっているため、基準地価は公示地価を補完する役割も担っています。
| 公示価格 | 基準地価 | |
|---|---|---|
| 評価時点 | 1月1日 | 7月1日 |
| 評価主体 | 国土交通省 | 都道府県 |
| 対象 | 都市計画区域内 | 都市計画区域外も含まれる |
5.不動産鑑定評価額
不動産鑑定評価額とは、不動産鑑定士が経済価値の観点で不動産を評価した価格を指します。ひとつひとつの不動産を評価する点は不動産会社の査定額と同様ですが、鑑定評価額と取引(実勢)価格は異なります。
取引価格あるいは後述する実勢価格と呼ばれるものは、不動産の価値だけでなく、売主や買主の事情や意向にも少なからず影響を受けます。例えば、売主に「価格は安くてもできる限り早く売りたい」という事情があれば、当然、取引(実勢)価格は安くなるでしょう。
不動産鑑定評価では、こうした事情や意向に鑑みず、不動産の収益性や過去の事例をもとに客観的に不動産を評価します。鑑定評価が必要になる局面は、一般的には、相続時や裁判における不動産評価(離婚時の財産分与等)です。
鑑定評価は、不動産会社の売却査定と異なり費用がかかるため、その費用に見合った利益が期待されるときに利用されます。利益というのは、例えば「鑑定評価を受けることで相続税が下がる」「財産分与額が増える」「裁判で有利になる」といったものです。
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6.実勢価格
実勢価格は実際に市場で不動産が売買される価格であり、厳密にいえば「評価額」とは異なります。取引が成立した時点の価格を指すため、正確な金額を予想することは容易ではありませんが、実勢価格に最も近い金額になると考えられるのが不動産会社による「査定額」です。

どのようなときにどの評価額を使う?
不動産の6つの評価額は、目的や利用されるシチュエーションが異なります。それぞれが何の目的で、どういった用途で使われる評価額なのか、あらためて整理していきましょう。
不動産売買をするときは実勢価格
不動産の取引価格は、すなわち実勢価格です。実勢価格は実際に取引される価格のため、不動産会社の査定によって推測する必要があります。
不動産会社は、物件種別や用途に応じて、収益性や過去の取引実績や類似する不動産の売り出し事例を参考にしたり、再建築した場合に想定される費用から築年数に応じた金額を減価したりすることで査定額を算出します。
売り出し事例は不動産ポータルサイトで、過去の取引事例は「不動産情報ライブラリ」や指定流通機構が運営する「レインズ・マーケット・インフォメーション」などで確認できます。ただ先述のとおり、たとえ隣り合っている不動産でも取引価格が大きく異なる可能性があるため、こうした方法で調べたデータが取引価格やそれに近い金額とは限りません。
不動産会社は、売り出し事例や成功事例を参考にすることはあっても、その事例の適正性を精査し、物件の個別要素を評価したうえで査定額を算出しています。「いくらで売れるか」を知るには、不動産会社に無料でできる査定依頼してしまったほうが手っ取り早く、自分でデータを参照して推測するよりも精度が高いといえるでしょう。
取引価格の指標になるのは公示価格や基準地価
公示価格や基準地価は、適正な地価形成を目的に調査・公表されますが、取引価格とイコールではありません。
とはいえ、取引価格とまったく関連性がないということではなく、不動産会社は地価やその推移、他のエリアとの比較なども加味して不動産を査定します。また、市況やトレンド、将来性を推察するためにも公示価格や基準地価が用いられます。
税金の計算に使われるのは固定資産税評価額や路線価
固定資産税評価額や路線価は、公示地価の7〜8割が目安になっていますが、いずれもあくまで税金の計算に使われる評価額であり、割り戻したところで取引価格を算出することはできません。
ただし、金融機関が担保評価をする際に路線価などを用いることは往々にしてあるため、取引価格にまったく影響しないということでもありません。担保評価によって融資の可否や融資額が決まるため、路線価が低いエリアでは好条件の融資が組みにくく、それによって取引価格が下がってしまうということもあるでしょう。

それぞれの評価額の調べ方
不動産評価額は種類によって調べ方が異なります。ここでは、評価額ごとの調べ方をそれぞれ解説します。
実勢価格・公示地価・基準地価は不動産情報ライブラリで調べる
実勢価格や公示地価、基準地価は国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べられます。実勢価格は、所有する土地と条件が似ている過去の不動産取引情報から推定しましょう。
不動産情報ライブラリでは、主要都市については、土地面積あたりの土地取引単価の平均値や標準偏差なども公表されているため参考にしてください。
公示地価と基準地価は、所有する土地に近い土地の価格を参考にします。必要に応じてデータをダウンロードして活用しましょう。
固定資産税評価額は課税明細書で調べる
固定資産税評価額を調べるなら、固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書を確認しましょう。課税明細書は発行する自治体により書式が異なりますが、一般的に、明細書の「価格」や「評価額」の項目に評価額が記載されています。
なお、固定資産税評価額は市区町村役場に申請して得られる「固定資産評価証明書」や、市区町村役場で閲覧できる「固定資産課税台帳」でも調べられます。
路線価は全国地価マップで調べる
固定資産税路線価と相続税路線価は、一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」や、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べられます。郵便番号や住所、地図から、路線価を調べたい土地を検索しましょう。
不動産鑑定評価額は不動産鑑定士に依頼をする
不動産鑑定評価額を調べるなら、不動産鑑定事務所を探して不動産鑑定士に評価を依頼しましょう。依頼に必要な書類は、登記事項証明書や建物図面などです。鑑定方法は、一般鑑定と簡易鑑定の2種類で、それぞれ費用が異なるため目的に合わせて選択しましょう。
不動産評価額と実際の取引額に違いがある理由
評価額は、税額を算定するなどそれぞれ異なる目的や用途があるため「評価額=取引価格」となるわけではありません。「取引」は一度きりのものです。瞬間風速的に価格が上がることもあれば、下がることもあります。逆に、課税を目的とした評価額には、安定性や継続性が求められます。市況などで変わることはあっても、大きな変動は好ましくありません。
また、不動産の数や取り引きの数だけ、売主や買主の事情や意向が異なることもあって、取引額は「評価」だけで決まるわけではありません。したがって、各種評価額は不動産を購入してからの市況の変化やトレンドを把握するために参考する程度に留め、不動産会社に査定を依頼するのが効率性、適正性からして賢明な判断です。1社の見立てだけでは不安な場合は、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。
不動産の6つの評価額には、それぞれ異なる目的や用途があります。路線価や固定資産税評価額、地価などは、市況やトレンドを読み取るうえでは役立ちますが「いくらで売れるか」を知りたい場合は、不動産会社に査定を依頼しましょう。
まとめ
- ・不動産評価額には、固定資産税評価額、路線価、公示地価、基準地価、不動産鑑定評価額、実勢価格の6つがある。
- ・目的や用途に合わせて、評価額を選択しよう。
- ・不動産の売却相場を調べたいなら、不動産査定を依頼するのもおすすめ。
●取材協力/監修
株式会社よつば鑑定
不動産鑑定士 河野栄一
●執筆
株式会社realwave
不動産ジャーナリスト 亀梨奈美


