不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

仲介手数料を値切るのはNG?値引き交渉だけじゃない不動産売却のコツ解説

仲介手数料を値切るのはNG?値引き交渉だけじゃない不動産売却のコツ解説

仲介手数料として一般的に提示されるのは、法定の「上限額」のため、不動産会社に仲介手数料の値下げや値引き交渉をするのは可能です。

この記事では、仲介手数料を値引き交渉しやすい物件の条件、交渉の仕方やタイミングを解説。
また、仲介手数料がかからないケースや、売却物件の価値向上につながる売却サービスなど、仲介手数料の値引きに匹敵するオトクな情報も紹介します。

それぞれの特徴やメリットを知った上で信頼できる不動産会社を選び、不動産売却を成功させましょう。

記事の目次

仲介手数料とは?

仲介手数料は、住宅や土地の売買に伴う「仲介業務」の対価として、不動産会社に支払うお金です。

仲介手数料は、売買契約が成立した時点で発生する成功報酬です。不動産会社に売却を委託したものの、所定の期間内に買主が見つからなかった場合、仲介手数料の支払いは不要です。

不動産仲介の解説図

売主と買主の仲介を異なる仲介会社が行うケースもある(画像作成/SUUMO編集部)

不動産売買の仲介手数料の相場は「売買代金の約3%」

仲介手数料は「(売買代金×3%+6万円)+消費税」と計算するのが一般的です。

仲介手数料の金額は、法律により「上限額」が定められています。そして、不動産会社の大半が、この上限額を仲介手数料と決めています。このため仲介手数料は売買代金の約3%といわれているのです。

なお、上の式は、売買代金が400万円を超える場合の「仲介手数料(上限額)」の計算式です。売買代金が400万円以下の場合は計算式が異なります。また、売主が不動産会社に「特別な広告を依頼する場合」や「遠隔地への出張を依頼する場合」などには、仲介手数料とは別にその費用を支払うことがあります。

「仲介手数料の計算方法など」についてもっと詳しく→
不動産売却時にかかる仲介手数料とは?計算方法や上限額について解説 - 【SUUMO】住まいの売却ガイド

【表1】仲介手数料の上限額早見表
売買代金 仲介手数料 (消費税込み)
200万円 10万円 (11万円)
400万円 18万円 (19.8万円)
1000万円 36万円 (39.6万円)
3000万円 96万円 (105.6万円)
5000万円 156万円 (171.6万円)
※代金800万円以下の空き家などの場合、上限は「30万円+消費税」となる。

【表1】を見て分かる通り、売買代金が3000万円になると仲介手数料は100万円超に。大きな出費となる仲介手数料ですが、値引きや値下げ交渉はできるのでしょうか? 

仲介手数料を値切ることは可能

先述した通り、法律が定めているのは仲介手数料の「上限」だけなので、仲介手数料の値引きや値下げ交渉をすること自体は法的に問題ありません。しかし、仲介手数料の値下げ交渉をしても、希望通りに値引きされるわけではありません。

仲介手数料は不動産仲介会社の主な収入源であり、「仲介業務」にかかる人件費や広告費、交通費などの諸経費はもちろん、会社の維持費用などもかかっています。このため一部のケースを除いて、仲介手数料の値引きや値下げ交渉をしても、断られることが多いのが実情です。

主な仲介業務(不動産売却の場合)

1)購入者を探す
レインズに登録、不動産情報サイトなどへの情報掲載、購入希望者の見学案内、定期的な報告・助言など

2)購入希望者との契約条件の交渉の仲立ち
売買代金や引き渡し時期など、契約条件について売主と買主の要望を調整し合意に導く

3)契約事務
売買契約書、重要事項説明書の作成、契約時には買主に重要事項説明を行う

4)引き渡しまでのサポート
残金決済や引き渡し、不動産の所有権移転登記の手配など

仲介手数料を値切ることによるデメリット

仲介手数料を値切ることで、売却が計画通りに進まなくなることもあります。

「仲介手数料の値引きや値下げ交渉のデメリットは、『仲介会社との信頼関係が築きにくくなる』ことだといえます。また、一度断られてしまうと、後になって『やっぱりその会社が良かった』と思っても、再度依頼するのはなかなか難しいでしょう。

値引き交渉にこだわりすぎることで不動産会社の選択肢を狭めてしまい、思うように売却が進まなくなる可能性もあります(岡本さん、以下同)」

実現しやすいケースは?仲介手数料の値引き交渉を成功させるコツ

仲介手数料の値引きは絶対無理というわけではありません。
例えば、地元密着型の仲介会社など、中小規模の不動産会社は営業担当者個人の裁量が比較的大きい場合もあり、大手不動産会社に比べて値引き交渉をしやすい傾向があります。

また、次の2つの条件を満たす場合は、不動産会社のメリットも大きいため、比較的値下げ交渉がしやすいといえます。

(1) 高額物件や希少物件の売却や、住み替えの依頼などの場合
(2) 売却を委託する際に「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」を結ぶ場合

「(1)の取引は、仲介会社にとってメリットが大きい点がポイントです。また、(2)の『専属専任媒介契約』『専任媒介契約』は、通常3カ月間、1社だけに仲介を委託する契約です。不動産会社にとっては、3カ月以内に売買契約が成立すれば、仲介手数料収入が得られる見込みが高いというメリットがあります。ただし、(1)(2)の条件を提示しても、仲介手数料の値下げを断られることもあります。」

ここからは、(1)の「仲介会社にとってメリットの大きい取引」について説明しましょう。

高額物件の売却

仲介手数料は、売買代金が高いほど高額になります。このため、売却価格が億単位になるような高額物件は、不動産会社にとって、多額の仲介手数料が見込めます。さらに、都心のマンションや、用途の幅が広い更地など、買い手がつきやすい条件の物件は、売却活動がしやすいというメリットもあります。

人気物件や希少物件の売却

人気の高い住宅地や大規模マンションの売却物件情報は、エリアでの注目度が高く、その窓口になることは不動産会社の広告にもなります。
また、売り出されたらすぐに買いたいという購入希望者が多いため、相場に合う価格で売り出せば短期間で売却しやすい点もメリットです。

角地にある一戸建てやマンションの角部屋など、希少性の高い物件の売却についても、不動産会社にとっては同じようなメリットが期待できます。

マンションの角部屋の画像

マンションの角部屋は希少性があり、採光や通風の良さから人気も高い(画像/PIXTA)

住み替えで一社に仲介を依頼する

ここでいう住み替え(買い替え)は、自宅を売却して、中古マンションや新築・中古の一戸建てなど「仲介」が必要な住宅を購入するケースです。売却と購入の仲介を、「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」を結んで1つの不動産会社に依頼すると、会社にとっては、2回分(売却と購入)の仲介手数料が見込めるメリットがあります。

「住み替え」についてもっと詳しく→
住み替えとは?売り先行・買い先行の流れやメリット・デメリット、住み替えの注意点を解説 - 【SUUMO】住まいの売却ガイド

仲介手数料を値切るタイミング

仲介手数料の値下げ交渉をうまく進めるには、不動産会社に持ちかけるタイミングが重要です。
ここでは仲介手数料の値引きや値下げ交渉をする場合、いつ、どのように行えばよいのか説明しましょう。

また、最近は、仲介手数料の安さを強みとする会社や、仲介手数料のかからない「即時買取会社」なら、値引き交渉する手間が省けます。最初からこういった会社を選ぶのも選択肢の一つです。

価格査定の結果報告時

売却の仲介を委託する不動産会社を絞り込み、「媒介契約」を結ぶ段階で値下げ交渉をしたものの、値引きを断られて媒介契約も結ばないとなってしまったら、不動産会社探しが振り出しに戻ってしまいます。

そこで、複数の会社に価格査定を依頼する際に「値引きが可能かどうか」を各社に軽く打診してみる方法があります。この段階で、値下げに応じてくれる会社がない場合には、以下のいずれかの方針に切り替えることをお勧めします。

  • 仲介手数料の値引きにはこだわらず、査定依頼した中から、売却活動やサービスの内容で不動産会社を選ぶ。
  • 仲介手数料の安い会社や仲介手数料定額制の会社なども含め、不動産会社を改めて探す。「買取会社」に査定を依頼して買取価格の目安を知ることも有効。

媒介契約の直前

価格査定をして、仲介を委託する会社が決まったら、その会社と「媒介契約」を結びます。媒介契約には下表の3種類がありますが、このうち、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」を結ぶことで、仲介手数料の値引きや値下げ交渉に応じてもらえるケースがあります。

複数社が仲介を行う一般媒介契約よりも、1社だけが仲介できる専属専任媒介契約や専任媒介契約のほうが、不動産会社に成功報酬(仲介手数料)が入る可能性が高いというメリットがあるからです。

不動産売却の媒介契約の種類の表

(画像作成/SUUMO編集部)

「不動産の媒介契約」についてもっと詳しく→
不動産売買の媒介契約とは?一般媒介契約と専任媒介契約、専属専任媒不動産売買契約の違いと選び方、メリットデメリットを解説 - 【SUUMO】住まいの売却ガイド

仲介手数料の金額は、不動産会社に売却を依頼する「媒介契約」の時点で決まり、契約書に明記されます。ですから、思うような値段で物件が売れそうにないからと、媒介契約後に仲介手数料の割引を求めると、契約違反ととられることもあるので注意が必要です。

一方、物件の購入希望者が現れて「売買価格の値下げ交渉」が入った際、それに応じるのと引き換えに仲介手数料を値下げしてもらったという事例もみられます。不動産会社のほうで、経費を使ってこれ以上売却活動を続けるよりも仲介手数料の値下げのほうにメリットがあると判断する場合は、値引きが実現することもあるのです。

しかし、売買価格の値下げ分と同じだけ仲介手数料を値引きして欲しいなど、強硬で理不尽な値引き交渉にはまず応じてもらえません。それどころか不要なトラブルになることもあります。
値引き交渉をする際には、交渉のマナーを守り、売主と不動産会社の両者にメリットとなる内容にすることが大切です。

仲介手数料の値引き交渉だけじゃない!不動産仲介会社の選び方

「不動産売却の仲介手数料を安くしたいなら、最初から、仲介手数料の割引サービスのある会社や「即時買取会社」を探すとよいでしょう。
また、不動産会社の仲介サービスは会社によって異なり、建物診断や建物保証などを無料で行うサービスによって、高めの値段での売却を可能にする会社もあります。

不動産会社を選ぶときには仲介手数料の金額だけにこだわらず、仲介サービスも含めて総合的に比較すると満足度の高い会社が見つけられると思います」

不動産の売却サービスを検討する夫婦のイラスト

(イラスト/PIXTA 図版/SUUMO編集部)

ここでは、仲介手数料の割引をはじめ、不動産会社の特徴的な売却サービスを紹介。それぞれの特徴やメリットを知った上で、不動産売却を行う本来の目的を考え、信頼できる会社を選びましょう。

仲介手数料の割引を強みにする会社を探す

最近は、「仲介手数料〇割引」といった広告を全面に出す、仲介手数料の割引を強みとする会社が増えています。
さらに、売却代金にかかわらず仲介手数料は同じとする「仲介手数料定額」の会社も。仲介手数料が定額だと、売却代金が高いほど、仲介手数料の節約額が大きくなります。

ただし、こういった会社の多くは、「取り扱う物件はマンションに限る」「割引率が高いのは一定の売却代金以上の物件に限る」など、割引の対象となる売却物件に条件などを設けています。

このため、仲介手数料が割引される物件の条件や、仲介手数料を割引できる理由、他に費用がかかることはないかを事前に確認しておきましょう。

また、仲介手数料割引のない会社にも価格査定を依頼して、売却活動やサービス内容を比較して選ぶことも大切です。

即時買取会社・買取保証のある会社も視野に入れる

不動産会社の中には、個人などから直接不動産を買い取り、リフォームなどをして再販する会社があります。このような会社は「即時買取会社」「買取再販会社」などと呼ばれています。
こういった会社に直接不動産を売却する場合には仲介手数料がかからないため、即時買取会社が「仲介手数料無料」という広告を出していることもあります。

「一般的に買取価格は、仲介市場で売却する場合の価格(市場価格)より安くなりますが、最近は買取再販会社の増加により仕入れ競争が激しくなっており、価格差が小さくなっています。買い取りの場合、仲介手数料はかからないので、即時買取会社に買取価格を査定してもらうのも一手です。

また、『買取保証』などのサービスがある不動産会社なら、仲介による売却価格の査定と併せて買い取りの査定もしてもらえます」

買取保証とは、仲介によって売り出した後一定期間中に買い手が見つからない場合、事前に決められた買取価格で不動産会社が直接物件を買い取るサービス。仲介期間中に売却できれば買取価格以上の利益が見込めます。

不動産の仲介と買取の違い

不動産の仲介と買取の違いを示した図

(画像作成/SUUMO編集部)

「不動産の買取」についてもっと詳しく→
不動産の買取・買取保証とは?仲介との違いや、メリットデメリットも解説 - 【SUUMO】住まいの売却ガイド

建物保証など売却代金向上につながるサービスの有無を確認する

大手不動産会社を中心に、売却(引き渡し)後一定期間内に建物や設備の所定の部分にキズや不具合などが見つかった場合、無料で補修を行うサービス(建物保証)を導入する会社が増えています。

建物保証では、売却前に物件の建物検査を行うため、買主にも建物の現況が分かり、安心して購入できるメリットもあります。

「『建物保証』などがつく物件は、購入者にメリットがあるため売却価格が上がる可能性があります。最近は、マンションの空室をクリーニングするサービスなども登場しています。

また、買主に対してリフォームやリノベーションのアドバイスができる会社の場合、買主のリフォーム費用も含めた査定や価格交渉をしてもらえることもあります。確認しておくとよいでしょう」

建物の調査をする人の写真

(画像/PIXTA)

大手デベロッパー系列の不動産仲介会社の中には、同系列のデベロッパーが分譲したマンションを売却する場合や、顧客の紹介で仲介を依頼した人、住み替えを行う人に対して、仲介手数料の割引サービスを行う会社があります。最近、住宅の売買をした友人などがいる場合は聞いてみるとよいでしょう。

このほか、入学や転勤などが多い年度末や9月頃に、期間限定のキャンペーンとして、仲介手数料を割引したり、数万円分のギフト券プレゼントなどの特典を設ける不動産会社もあります。

「不動産仲介会社の選び方」についてもっと詳しく→
不動産仲介会社(業者)の賢い選び方とは?売る力の高い会社を見極めるポイント - 【SUUMO】住まいの売却ガイド

仲介手数料値引き額より、高く売ってくれそうな会社を選ぶ

「仲介手数料を値引きして売るケース」と「仲介手数料の値引きなしで高めに売るケース」とではどちらがトクなのでしょうか?

「仲介手数料が半額」の場合と「仲介手数料の割引なしで、2%高く売れた場合」を比べると、手元に残る金額(売却代金-仲介手数料)は、後者のほうが高くなることが分かります(下表)。

また、「仲介手数料がゼロの場合」と「仲介手数料が上限額の場合」では、4%より高く売れれば後者がトクをする計算になります。

「仲介手数料半額」と「査定額より2%高く売る」場合の手元に残る残金を比較した表

(図版/SUUMO編集部)

「このように、仲介手数料の値引きや値下げ交渉にこだわって売出価格などの条件を譲歩するより、仲介手数料の割引がなくても、より高く売却できるノウハウやサービスのある会社を選ぶほうが良いことも多いのです。また、仲介手数料の安い仲介会社の中には、内見の立ち合いに同行せず売主に任せているケースもあります。この場合、売主の負担も増すので注意しましょう。

さらに、昨今は「仲介手数料の割引を強みにする会社」や「仲介手数料は上限額でも地域密着型で情報が豊富な会社」など、不動産会社のタイプが多様化しています。
中には、「ホームステージング」というインテリアコーディネートで部屋のイメージを高める提案をしている仲介会社も。入居後のくらしがしやすく売却にはプラスになるでしょう。」

このため不動産会社を探すときは、タイプの異なる複数の会社に価格査定を依頼し、有利な売却活動をしてくれる会社を見つけることがポイントとなります。

不動産仲介会社を探すなら「不動産一括査定サイト」の利用も便利。複数社に査定を依頼することで、希望条件に合う住まいの売却が依頼できる会社を見つけることができます。
査定の結果を伝えられたら、「なぜその価格で売れそうなのか」「その会社ではどのように売却を進めるのか」「どんな売却サービスがあるのか」を聞いて会社ごとに比較すると、有利な売却活動をしてくれる会社を見極めることができます。

「不動産を高く売る方法」についてもっと詳しく→
プロが教える! 住まい・不動産を高く売る方法、注意点 - 【SUUMO】住まいの売却ガイド

まとめ

  • 仲介手数料の相場は売却価格の約3%。値引きや値下げ交渉は可能だが、断られるケースが多い
  • 仲介手数料を安くしたいなら最初から割引サービスがある会社を選ぶことがお勧め
  • 仲介手数料の値引きよりも物件が高く売れるほうがトクなこともある

●取材協力/監修
不動産コンサルタント 岡本郁雄(おかもと いくお)さん

ファイナンシャルプランナーCFP®、中小企業診断士、宅地建物取引士、公認 不動産コンサルティングマスター。1989年にリクルート入社、不動産コンサルティング会社などを経て2004年に独立。不動産領域のコンサルタントとして、マーケティングやコンサルティング、住まいの選び方などに関する講演や執筆、メディア出演など幅広く活躍中。神戸大学工学部卒。

●取材・文/森島薫子
●構成/サクラサクマーケティング株式会社

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