不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

愛知県名古屋市中区Sさん(60代)/激務の夫のため会社の近くに購入したセカンドハウス、定年を機に売却

愛知県名古屋市中区Sさん(60代)/激務の夫のため会社の近くに購入したセカンドハウス、定年を機に売却

岐阜県に暮らすSさん一家。愛知県名古屋市の会社で忙しく働く夫のために、会社の近くにセカンドハウスをもっていました。夫の定年退職を機に老後の住まいについて再検討し、結局はセカンドハウスを売却することにしました。売却活動をどのように進めたのか、お話を伺いました。

不動産区分 マンション
所在地 愛知県名古屋市中区
築年数 37年
間取り・面積 3LDK(約59m2
ローン残高 なし
査定価格 1400万円未満
売り出し価格 1400万円
成約価格 1200万円

夫の定年退職を機に老後の住まいを再検討

今回Sさんが売却したのは、築37年のマンション。愛知県名古屋市中区にある、総戸数は20戸程度のコンパクトマンションです。名古屋市の官庁街という都心部にあり、地下鉄の駅からは徒歩3分という利便性の高い立地にあります。広さは約59m2、3LDKでファミリータイプです。Sさんは、岐阜県に一戸建ての自宅を所有していましたが、夫の仕事は夜勤があるため、会社がある名古屋市にセカンドハウスとして購入しました。実は、今回売却したマンションは2代目のセカンドハウスだといいます。

「最初のセカンドハウスは、東区にある1Rマンションでした。夫が平日に1人で暮らすための家なので、それで十分だったのです。金曜日の夜には岐阜の自宅に戻り、月曜の朝は岐阜から出勤するというスタイルでした。ただ、自宅が郊外だったこともあり、私もちょっと都心部で暮らしてみたいと思って、老後に夫婦で暮らせる間取りだといいなと思って買い換えました」

Sさんは、貯蓄に1Rのマンションを売却して得た500万円程度の売却益と保険を解約して得たお金などを合わせ、現金でファミリータイプの中古マンションに買い替えたそうです。セカンドハウスでは一般的に住宅ローンが利用しにくいため、現金をかき集めたといいます。新しいセカンドハウスに買い替えてからは、週末はSさんが夫のマンションに合流して過ごすようになりました。

マンションは官庁街にあるため、落ち着いた雰囲気で土日は静か。加えて、マンションの各フロアの住戸は2戸しかなく、真ん中のエレベーターで隣接しないよう振り分けられているため、プライバシー性が高いつくりでした。そのようなつくりの8階の住戸なので、静かで窓が多いという利点はあるのですが、残念ながら南側に隣接するマンションに遮られてしまい、日当たりはあまりよくなかったそうです。

「図書館が近く、コンビニもすぐ近くにあって便利な場所でした。最寄駅は徒歩3分ですが、名古屋駅までも歩いて行くことができます。ただ、近くに大きなスーパーがないので、日用品の買い物や生鮮食品の選択肢が少ない点が残念な部分でした」

Sさんは、週末だけではありましたが、憧れの都心暮らしを4~5年してみて、日常の買い物の不便さ、駐車場料金や習い事費用の高さなど、暮らしていくのには楽しさとコストのバランスが取りにくいと感じたそうです。Sさん自身の気が済んだことに加え、夫はもともと自然環境が豊かな住まいの方が好みだったこともあり、2018年3月の夫の定年を機に今一度住まいについて夫婦で話し合いました。老後の暮らしを都心でと思って購入したマンションではありましたが、売却することに決めました。

セカンドハウスのマンション売却を決意

マンション購入時にお世話になった不動産仲介会社に依頼

売却を決断した2018年3月、Sさんはセカンドハウスを購入したときにお世話になった不動産仲介会社に連絡を入れました。購入時に良くしてもらって対応に不満がなかったし、物件のことを良く知っていると思ってのことです。そのほかの不動産仲介会社には相談せずに、すぐに専任媒介契約を結びました。

実は、相談して最初に不動産仲介会社に勧められたのは、売却ではなく賃貸として運用することだったそうです。今回は自宅の買い替えではなく、セカンドハウスをどうするか、という相談なので、次の家を買うまとまった資金のために売却する必要ありません。また、マンションの周りは賃貸も多く、交通利便性を重視する共働き世帯からの需要が見込める立地で、賃貸であれば売却よりも築年数の古さが気にならないというメリットもあり、不動産仲介会社としては、賃貸で運用するのがベターとの提案だったようです。

「マンションの条件だけで考えれば、賃貸というのもアリだと思います。ただ、私たちは老後の暮らしを視野に入れなくてはいけないので、管理の手間などは煩わしく感じてしまいました。退職してからは名古屋に用事はないし、売却してスッキリしたいという気持ちだったのです」

■賃貸向きのマンションとは

住まなくなった物件を売却するか、賃貸で運用するかは迷うところ。では、賃貸に向くマンションとはどのような物件でしょうか。それは、賃貸物件として需要が見込める、空室リスクの低い物件。都心部や駅近のほか、大学や大きな会社など入学や転勤などで人が頻繁に入れ替わる地域も当てはまります。また、賃貸で運用する場合、物件のメンテナンスは大家の担当。それゆえ、コストをかけず募集をかけられる築浅の物件は賃貸向きと言えます。また、転勤など一時的に住まない家は、空き家に通風や湿気対策などの管理するよりも、賃貸したほうが家が傷みにくく、利益を生むので賃貸向けと言えます。
とはいえ、物件のスペックだけでは決められないのが、売却か賃貸か。Sさんのように老後に物件の管理が負担になる場合は売却が向くでしょうし、仮にSさんがセカンドハウスのマンションを相続したいと考えているなら賃貸を検討するのも手です。このように、家庭の事情やマネープランのほうが、物件のスペック以上に売却か賃貸かの決定には重要な要素となります。

一般的には、売却活動の最初に不動産仲介会社に査定をしてもらって、その金額をベースに売り出し価格を決めて行くことが多いと思います。でも、Sさんは、査定なしでまずは「自分たちが売りたい価格は1400万円」と伝えました。この金額は、自分たちが買った時よりも少し高い金額だったそうです。というのも、Sさんは、結婚してから何度か家の売買の経験があり、多くの場合で売却までに値引き交渉が入ることが分かっていたからです。そのため、もともと購入した価格に仲介手数料分と値引き交渉を乗せたくらいの売り出し価格を考えました。不動産仲介会社からは、「1400万円ではちょっと難しそうだけど、一旦1400万円で売却活動をスタートしてみましょう。それで反響がなかったら値下げしていきましょう」という話があり、値下げについては当初からすり合わせ済みで売却活動を始めることになったそうです。

そうして、基本的にSさんの意向を汲んだ売却活動がスタートしました。

反響が出ない……これを逃しては後がないと値引きを決断

Sさんの売却活動の方針としては、すぐにまとまったお金が必要なわけではなかったので、1年以内に売却できればという考えでした。ただし、部屋に風を通すために月に1回程度岐阜から通う手間や、古いマンションのため毎月の管理費・修繕積立金が4万5000円もかかることもあり、あまり売却に長い期間がかかると負担になります。売却期間と価格のバランスを見ながら進めていこうと考えていました。

Sさんのマンションは好立地ですから、不動産仲介会社から買取の提案も見込めそうでした。実際に不動産仲介会社から買取の説明はあったそうです。ただ、Sさんは経験上買取価格は仲介での売却価格よりもグッと低くなるという知識があったので、それは検討しないと決めていたそうです。

売却活動は、2018年4月頃からスタート。近隣へのチラシ配布やWEBサイトへの掲載です。残念ながら、1400万円では反響はありませんでした。そこで6月頃に1300万円に値下げしたそうです。2~3件問い合わせが入りましたが、具体的な交渉にはつながりませんでした。

さらに8月に1250万円まで価格を下げたところ、ようやく1件の内見希望が入りました。

「相手は外国人の方で、おそらく投資目的だったのでしょう。住宅ローンの審査などは関係なく、金額が見合えばキャッシュで即決のようでした。先方から1200万円なら決めるという話があり、応じることにしました。この時点で、売却活動自体は半年も経っていませんでしたが、これまでの反響の少なさを考えると、これを逃したら次がいつ来るかわからないと思ったんです」

こうして、9月に売買契約を結び、10月には引き渡しをしてSさんの売却活動は決着しました。

早めに決断をしてスッキリ。これからも今の暮らしに合う住まいを選んでいく

今回の約半年という売却活動を振り返り、「こんなものだと思いますよ」と朗らかに語るSさん。なかなか反響が出ない中、セカンドハウスということもあり、仲介会社に積極的に働きかけることもありませんでした。お互いにのんびりした活動だったなと振り返ります。買うときと同じ仲介会社に依頼したからこそ、「売却だと購入検討のときほどは仲介会社が積極的に働きかけてくれるわけではないんだな」と感じつつも、自分たちも積極的に関わろうとしなかったからお互い様かな、と振り返れば少し反省点もあるのだそう。

もとは、老後を見据えて住まいを購入していたセカンドハウスですが、実際に住んでみると自分たちに合った住まいではないと気づくことができました。Sさんは、定年を機に全体的に住まいを見直しました。自宅の一戸建ては二男ファミリーに譲り、岐阜県にある長男所有のマンションで同居しているそうです。今は仕事が忙しい長男のサポートをしながら、地元の充実した習い事環境やライフワークとしているボランティア活動に邁進しているそう。

「都心部では、ちょっと習い事をしようにも、サービスの質は良くても費用もアップするので回数に制限ができてしまったりして残念に思っていました。今は地元のサービスで参加しやすい費用で習い事に参加できるので、たくさん利用できて、自分のペースに合った暮らしができています」と楽しそう。やっと訪れた1回のチャンスで売却の結果を出せて良かったとホッとしているようです。

その時どきにちょうど良い住まいを選んでいるSさんですが、もしかしたらまた自分たちが選ぶべき住まいの形が変わる将来があるかもしれないといいます。そのときは、今回売却して得たお金を元に、自分たちに合った住まいを選ぼうと思うと語ってくれました。

2018年3月 ・夫の定年を機に老後の住まいを再考。セカンドハウスの売却を思い立つ
・セカンドハウス購入時にお世話になった不動産仲介会社に仲介を相談
2018年4月 ・不動産仲介会社と専任媒介契約
・1400万円で売却活動スタート
2018年6月 ・1300万円に値下げ
2018年8月 ・1250万円に値下げ
・初めての内見希望者が現れる。1200万円への値引き交渉に応じる
2018年9月 ・1200万円で売買契約締結
2018年10月 ・引き渡し、売却活動終了

まとめ

  • セカンドハウスは一般的な住宅ローンの対象にならない場合が多い
  • 中古の売却では、価格交渉が入ることが多い
  • 売却は、反響を見ながら期間と売却額のバランスで決断する

取材・文/竹入はるな イラスト/沼田光太郎

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