不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

神奈川県横浜市Sさん(60代)/10年前に相続した実家の維持費は年間100万円。コロナ禍を機に不動産仲介会社に売却

神奈川県横浜市Sさん(60代)/10年前に相続した実家の維持費は年間100万円。コロナ禍を機に不動産仲介会社に売却

2010年に横浜市の古い実家を相続したSさん夫妻。住む予定も使う予定もなくそのままの状態で10年が経過。新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、前向きに売却を検討。早く、手間をかけずに売りたかったことから、不動産仲介会社3社と相談し1社に買い取ってもらいました。

不動産区分 古家付き土地
所在地 神奈川県横浜市
築年数 約50年
間取り・面積 土地面積…約110m2
ローン残高 なし
査定価格 2200万円~2800万円
売り出し価格 (買い取り)
成約価格 約1960万円

集いの場として貸していた空き家、コロナ禍で売却を決意

10年前、両親が亡くなり神奈川県横浜市にある実家(古家付き土地)を相続したSさん(60代)。Sさんは同じ横浜市内の分譲マンション在住、2人の子どもたちも結婚・独立してそれぞれ自宅を購入済みで、相続した実家には誰かが住む予定もなく、すぐ使う目的もなくそのままにしていました。「子どもたちが欲しいなら譲ることもできましたが、いらないと断られ、むしろ私が元気なうちになんとかしてと言われました(笑)」

相続した実家は、JR「横浜」駅から急行電車で20分前後の最寄駅から徒歩10分、駅前にはスーパーなどが充実する暮らしやすい立地。閑静な住宅地で日当たりも良く、平坦地でほぼ整形の好条件。立派な庭と趣のある家だったことから、自治体の依頼で月に数回お茶会で使われていたため、水道や電気、警備会社の契約も継続しており、植木の手入れなどの維持費や税金などを含めて年間100万円はかかっていました。それでもSさんは「皆さんが喜んで使ってくれて、うれしい」と思っていました。

けれども、2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大して数々のイベントが中止になり、お茶会も開催されなくなったことから、「売れるときに売った方がいい」と、茶室として提供していた自治体に売却の意思を伝えました。

「仲介か、買取か、家を建てて売るか?」で悩み相談する不動産仲介会社3社を選ぶ

20代で購入したマンションを30代で売却し、売却した資金を頭金にして現在住んでいるマンションを購入したSさん。その際は仲介会社1社に頼んで売却した経験から、今回は数社に相談して比較検討したいと思っていました。情報を収集しようとインターネットで簡易査定を実施。数社から連絡がありましたが、Sさんが依頼したいと思う会社からは連絡がなかったので、自分で不動産仲介会社を選ぶことにしました。

Sさんが頼みたいと思う会社の条件は、「知名度や取引実績が多い大手で、担当者の人柄が良く間違いない対応をしてくれること」

売り方は、三つの方法を考えていました。
1. 不動産仲介会社に仲介を依頼する
2. 不動産仲介会社に買い取ってもらう
3. 不動産会社と契約して、家を解体し新築の一戸建て住宅を建てて売却してもらう

また、自分で調べる中で、家の解体費用だけでも数百万円かかると知り、家付きのまま売るか、家を解体してから売った方がいいのか、相談したいと思っていました。

「十数社からチラシの投げ込みがあり、その中から大手2社と地元に詳しい会社1社の3社を選んで、相談して、どんな提案をしてくれるか、比較検討することにしました」

売却・買取・建て替えを検討

価格より期間にこだわり、売却時期が見えない仲介より買い取ってもらうことを選択

2020年8月、Sさんは不動産仲介会社3社に相談し、実家の査定を依頼しました。仲介で売る場合、A社は2800万円、B社・C社は2200万円と600万円の幅がありました。ただし、買い取ってもらう場合は、B社・C社は解体費を含んで2000万円と仲介の場合とあまり差がなく、A社はそれよりグンと安い価格でした。買い取りの場合は、仲介手数料がかからないメリットもあります。

■買取のメリットと買取保証とは

買取とは、不動産仲介会社が買主になる売却方法です。①短期間で確実に売却できる ②早く現金化できる ③仲介手数料がかからない ④内覧の対応や準備などの手間がいらない というメリットがあります。買取には2種類あり、すぐに買い取ってもらう「即時買取」と「買取保証」があります。「買取保証」は、一定期間、仲介で相場に近い価格で売却活動を行い、売れなかった場合に不動産仲介会社に買い取ってもらう方法で、仲介と買取の「いいとこどり」ができて、予算計画が立てやすい方法です。

安いよりは高く売れた方がいいに越したことはありませんが、Sさんの場合はすぐに現金が必要な事情はなく、希望価格もありませんでした。「仲介契約の方が高く売れるかもしれないと思いましたが、広告やチラシで買い手を募集すると売れるまで時間がかかり、いつ売れるかわかりません。高く売るよりは、2020年末までに売ってしまいたくて、不動産仲介会社に買い取ってもらう方が早いと思いました。また、購入を検討している方が物件を内覧するときに何度も立ち会うのも面倒だと思ったのです」

3社と主にメールでやりとりをしながら比較検討して、最終的に、古家付き土地として買い取って、家を解体して新しく家を建てて売りたいと提案してくれた不動産仲介会社に依頼することを決めました。約1960万円という買い取り価格にも納得して、12月に不動産仲介会社と売買契約を結び、年内に売却価格が振り込まれました。

「不動産仲介会社に相談しながら、土地の測量の立ち合いや、解体費用などのリサーチ、家の片付け、家具の廃棄の見積もりを取るなど、やることがいろいろあって、相談から売買契約まで4カ月かかりました。契約した会社の担当者とは6回位会いましたが、年内に全部決められて良かったです」。その後、不動産仲介会社は実家の古家を解体し、新しい家を建てて3月に売り出し、4月には買い手が決まったと連絡があったそうです。

不動産仲介会社3社に相談して、納得できる売却価格・方法を選べたので大満足

仲介か買取かで迷いましたが、買取を選んで、スムーズに実家を売却することができたSさん。売却以外の手続きや役所とのやりとりが絡んでいたため、相談から契約・売却まで4カ月かかりましたが、年内に売却できたこと、自分が元気なうちに処分できたことで非常に満足しているそう。

「価格と期間のバランスもありますが、売却金額にこだわらない場合は、買い取ってもらう方が手離れがいいと思います。不動産仲介会社に、何をいつまでにするかなどもリードしてもらい契約や入金もスムーズでした。

不動産仲介会社を選ぶときは、最低3社に相談するといいと思いますが、3社以上だとやりとりが大変かなと思います。大手不動産仲介会社と鉄道会社系など、売りたいエリアのことをよく知ってる仲介業者に相談しながら、柔軟に考えると自分が納得できる売り方ができると思います」
10年間何となくそのままにしながら気にかけていた実家の土地の売却が決まり、ほっとしたような表情で語ってくれたSさんでした。

2010年4月 ・実家の土地と家を相続する
2020年6月 ・売却を意識し始める
・簡易査定を行う
2020年8月 ・不動産仲介会社3社に相談する
・現地査定を行う
2020年12月 ・依頼する不動産仲介会社を選び、買い取り契約を結ぶ
・物件を引き渡す
・入金される

まとめ

  • 相続した建物を空き家にしておく場合、維持費や税金がかかる
  • 簡易査定は複数の会社に依頼するといいが、多すぎてもやりとりが大変になる
  • 売却金額にこだわらず、なるべく早く不動産を売却したい場合は、買取だと契約から入金までのスピードが早い
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取材・文/佐藤由紀子 イラスト/めんたまんた

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