
気に入った物件と出合い住み替えを決意、千葉県市川市の自宅を売却することにしたSさん。売り出し時期にコロナ禍が重なってしまった不安から、高く売ることより、早く売ることを優先したといいます。
| 不動産区分 | 一戸建て |
|---|---|
| 所在地 | 千葉県市川市 |
| 築年数 | 約10年 |
| 間取り・面積 | 4LDK(延床面積…約110m2、敷地面積…約116m2) |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 3500万円 |
| 売り出し価格 | 3600万円 |
| 成約価格 | 3600万円 |
紹介された物件が気に入り、築10年の自宅を売却し住み替えを選択
千葉県市川市の一戸建てに住んでいたSさんが、自宅の売却を考えるようになったのは2020年3月ごろのこと。不動産会社に勤める知人から物件を紹介されたことがきっかけだったといいます。
「もうすぐ空き家になる物件があるから見てみないかと、知人から声をかけられたんです。それまで住み替えはまったく考えていませんでしたが、いい物件だからと強く勧められて、一度見てみることにしました。前の住人が出るのを待って見学に行ったところ、開放感のある間取りがすっかり気に入ってしまって……。すでに住宅ローンは完済していたので、新たにローンを組むことも可能です。自宅の売却は後回しにして、先に新居を購入することにしました」

Sさんが住み替え先に選んだのは、築3年の一戸建て。吹抜けのある3LDKの間取りが決め手になったそうです。一方、売却することにしたSさんの物件は、築10年の一戸建て。最寄駅から徒歩30分ほどの静かな環境にありました。
「土地を買って自分で建てた注文住宅で、むく材のフローリング、梁(はり)の見える天井、ウッドデッキなど、かなりこだわったつくりでした。ただ、4LDKの間取りはフレキシブルさに欠け、将来的に子どもたちが独立して家を出ていったら使わない部屋ができるでしょう。こだわりも愛着もある家でしたが、先々のライフスタイルの変化を考えると、紹介された家のほうが暮らしやすいだろうと判断しました」
Sさんは2020年5月に新居の売買契約を結び、6月に引っ越しを済ませました。
「期せずして、コロナ禍での住み替えになってしまいました。いざ売却に取り組もうとしたときには、感染が拡大し先が見えない状況に。果たして私の物件は売れるのだろうかと不安な気持ちになりました」
一括査定の3社から、見込み客のいる不動産仲介会社に仲介業務を依頼
2020年6月、Sさんは前居の売却に取り掛かりました。
「当初は、新居を紹介してくれた知人の不動産仲介会社に仲介業務を依頼するつもりでした。でも、まずは相場を知るためにインターネットの一括査定を利用。3社に簡易査定をしてもらったところ、査定価格は3000万円~3500万円でした」
より正確な査定価格を知りたいと思ったSさんは、簡易査定をしてくれた不動産仲介会社3社に訪問査定を依頼することにしたそうです。
「1社目の査定価格は3500万円でした。2社目に現地を見てもらったのは地元密着の不動産仲介会社で、ちょうど同じエリアで一戸建てを探している見込み客がいるとのこと。できれば3500万円より高く売りたいと伝えると、すぐに3600万円で交渉できると返事がありました。念のため、次に訪問査定を予定していた3社目と知人の会社にも電話で希望価格を伝えましたが、両社とも3600万円で売却するのは難しいだろうという反応。それなら、見込み客がいる会社に私の物件を託してみようと、仲介業務を依頼することに決めました」
2020年7月、Sさんは不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結びました。
「できるだけ高く売りたいと思っていましたが、どちらかというと早く売りたい気持ちのほうが強かったですね。コロナ禍で景気が悪化していましたから、焦ってはいないけれど、買ってくれる人がいるなら売ってしまったほうがいいだろうと。相手の希望によっては、ある程度の値下げも覚悟していました」
■一括査定サービスのメリット
不動産の売却は、まず信頼できる不動産会社を探すことがスタートになります。そこで活用したいのがWEBサイトの一括査定サービスです。一度の情報入力で複数の会社に査定依頼ができるため、一社ごとに電話相談や訪問相談をする手間と時間が省けます。一括査定サイトには、売却に自信をもつ不動産仲介会社がエントリーしており、全国展開している会社や地域密着型の会社、マンションを中心に扱う会社などタイプもさまざま。複数の会社を比較検討することで、相性のいい会社と出合えるのもメリットです。
内見に立会い相手の疑問を解消、価格交渉なしで売却が成立
Sさんの売却活動は、すでに購入検討者がいるところからスタート。すぐに内見が行われました。
「購入検討者は子育て中のファミリーでした。お子さんの学区内で一戸建てを探していたということで、私の物件のことは前から知っていたそうです。初回の内見は担当者に任せたのですが、先方から内装について詳しく話を聞きたいという要望があり、2回目の内見には私も立ち会いました。家を建てる際に天井の梁にライティングレールを埋め込んだり、いろいろと凝ったことをしていたので、不動産仲介会社の説明だけではわかりにくかったようです。私から直接説明すると、なるほどと納得していました」
ちなみにSさんは引っ越し後にクリーニング業者を入れ、いつ内見があってもいいよう準備をしていたそうです。2回目の内見の後、購入検討者はSさんの物件を購入することを決断しました。
「値段の交渉はなく、こちらが提示した3600万円で購入を決めてくれました。こんなに早く売れたのは、売り手と買い手のマッチングのタイミングが良かったからでしょう。加えて、不動産仲介会社の担当者もよくやってくれたと思います。フットワークがよく話が早い担当者だったので、だらだらするのが嫌いな私とペースが合いました」
その後の段取りはスムーズに進み、Sさんは2020年7月に売買契約を結び、8月に物件を引き渡しました。
一括査定を活用。コロナ禍での売却は価格、早さともに満足
売却活動全体を振り返って、Sさんは「満足しています」と答えてくれました。
「査定価格以上で売れて、かかった時間も予想以上に早く、トントン拍子の売却でした。ただ、意思決定にはコロナ禍であることが大きく影響しました。もしコロナの感染拡大がなければ、もっと価格にこだわって売却が長引いたかもしれません。不動産の売却は初めての経験で、とにかく相場を知ることが大事だと思っていました。その点、インターネットの簡易査定は本当に便利でした。査定価格だけで判断せずに、複数の不動産仲介会社と直接話してみたのも良かったと思います」
新居には専用のワークスペースができて、テレワークも快適だとSさん。売却した家のことは今も気になり、時々近くを通り、大事に住み継がれているのを見ると安心すると話してくれました。
| 2020年6月 | ・3社に簡易査定を依頼 ・3社に訪問査定を依頼 |
|---|---|
| 2020年7月 | ・見込み客のいる不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結ぶ ・希望価格3600万円で購入検討者と交渉 ・売買契約を結ぶ |
| 2020年8月 | ・物件を引き渡す |
まとめ
- 不動産仲介会社の中には、そのエリアで物件を探している見込み客を抱えているケースもある
- 一括査定は複数の不動産仲介会社を知るチャンス。実際に話をして、比較検討することが大事
- 購入検討者は売主から直接聞きたいこともある。必要に応じて内見に立ち会いたい
取材・文/小宮山悦子 イラスト/めんたまんた


