不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

きょうだいで相続した古家付き土地。平等に分けるため全員の同意を取りながら売却/東京都府中市Bさん(50代)

東京都府中市Bさん(50代)/きょうだいで相続した130平米の古家付き土地。分けるため全員の同意を取りながら売却

Bさんは、きょうだいとの共同名義で、母親から東京都府中市の100m2・4LDKの古家付き土地(130m2)を相続しました。売り出し価格や値下げのタイミングを皆で相談しながら、Bさんが取りまとめ、全員が納得できる4480万円で売却できました。

不動産区分 古家付き土地
所在地 東京都府中市
築年数 約50年
間取り・面積 130m2
ローン残高 なし
査定価格 4100万~ 4500万円
売り出し価格 5100万円
成約価格 4480万円

きょうだいで相続した家と土地。自分がまとめ役になり売却することに

都内に住むBさんは、2019年4月に亡くなった母親から、きょうだい全員の名義で実家を相続しました。最寄駅から徒歩8分にある築およそ50年の100m2・4LDKが立つ130m2の土地です。

きょうだいはいずれも住む予定がなかったので、売却して得た現金を分けることにしました。

「私がきょうだいの意見をまとめて、売却を進めることになりました。毎年1月1日時点の所有者に課税される固定資産税を来年も支払いたくないので、2019年12月31日までに売却しようと意見がまとまり、売却活動を始めました」

査定価格は4500万円、以前別件の売却を担当した不動産会社と契約

大手2社に査定を依頼。訪問査定で提示された価格は、それぞれ4100万円と4500万円でした。そのうち、査定価格が高い方は、以前Bさんが所有していた中古マンションを売却する際、契約していた不動産会社です。その時とエリアは違いましたが、対応が親切でまた任せたいと思いました。そこで、6月に専属専任媒介契約を結び、担当者と打合せをしました。

また、Bさんは付き合いのある税理士と話した際、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が適用になると聞きました。これは、相続により取得した被相続人の居住用家屋や敷地を譲渡するときに、一定の要件を満たす場合は、その譲渡所得から最大3000万円までが特別控除されて譲渡所得税がかからなくなる措置です。共同名義の場合は、相続人それぞれがこの特例を利用できるので、名義の人数分×最大3000万円が控除対象となります。

「うちは共同名義だったので、売却で得た利益のうち、名義の人数分×3000万円までは譲渡所得税がかかりません。担当者には、この特例を使いたいこと、ほかには、翌年の固定資産税が決定する前に売却したいことを伝えました。また、建物を解体してから売り出すことも考えたのですが、更地にした場合、売れないまま年を越してしまうと固定資産税が上がることがわかり、そのまま売り出しました」

全員の同意を取りながら、売り出し価格や値下げを決める

担当者やきょうだいで話し合い、最初は、査定価格より高い5100万円で2019年6月から売り出しました。不動産仲介会社は、不動産情報サイト、新聞の折り込み広告、チラシのポスティングをしたほか、ほかの不動産会社へも営業しました。サイトに掲載したときの反響はよかったのですが、内見希望者が現れず、2週間後に4980万円に値下げ。それでも希望者がなく、8月に入ってから、さらに、4580万円に値下げしました。

「売却は、きょうだい全員が納得できるのが一番いい。売り出し価格や値下げの金額、タイミングを決める際は、自分が声をかけてきょうだいで集まって相談。意見を取りまとめてから、担当者へ依頼しました」

4580万円に値下げ直後、すぐに購入希望者が現れました。値下げ交渉でさらに100万円値下げし、建物をBさんが解体することを条件に4480万円で9月に売買契約を締結しました。10月に建物を解体してから、11月末に引き渡しをしました。

■「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」の適用条件

「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」とは、相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等が、一定の要件に当てはまるとき、譲渡所得の金額から最高3000万円まで控除できる制度です。特例の対象となるのは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋(被相続人居住用家屋)で、主として被相続人の居住の用に供されていた建築物に限ります。さらに、次の四つの要件全てに当てはまるものをいいます。1981年5月31日以前に建築されたこと。区分所有建物登記がされている建物でないこと。相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。売却時までに売主が耐震リフォームか家屋の取り壊しをするか、改正後は売却した翌年2月15日までに買主が耐震リフォームか取り壊しをすること。この特例の期限は2027年12月31日までです。

税理士や不動産仲介会社と相談しながら、全員が納得できる売却ができた

「建物の解体後、1カ月以内に建物滅失登記(法務局の登記簿から建物がなくなったことを登記すること)を行いました。登記書類は、不動産会社とやりとりしながら作成し、翌年の確定申告に備えて特別控除の申請書類も作成。すべての手続きが終わったときはほっとしました」

売却して得たお金から、残置物撤去28万円、建物滅失登記5万円、測量35万円、解体170万円の費用を除き、残った現金をきょうだいで分けました。

「きょうだいは全員今回の売却に大満足。私も肩の荷がおりました」売却活動のまとめ役を無事終えたBさんの表情は晴れやかでした。

2019年4月 ・母から相続し、売却を意識し始める
2019年5月 ・簡易査定、訪問査定を行う
2019年6月 ・不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ
2019年9月 ・購入者が現れる
・売買契約を結ぶ
2019年10月 ・建物を解体する
2019年11月 ・物件の引き渡し

まとめ

  • 複数名義の売却は、全員の同意をとりながら進める
  • 共有名義の場合、条件を満たせば、名義人の数×3000万円の特別控除が受けられる
  • 1月1日時点の所有者に課税される固定資産税は、前年12月31日までに売却すればかからない
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イラスト/カワモトトモカ

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●構成・取材・文/内田優子
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