不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

熟年離婚の財産分与のために共有名義のマンションを売却/東京都府中市Fさん(50代)

東京都府中市Fさん(50代)/熟年離婚の財産分与のために共有名義のマンションを売却


数年前から妻とは家庭内別居状態だったというFさん。子どもの独り立ち後正式に離婚、財産分与のため、共有名義で購入していた東京都・府中市のマンション(築35年・3LDK)を1800万円で売却しました。

不動産区分 マンション
所在地 東京都府中市
築年数 約35年
間取り・面積 3LDK(74m2
ローン残高 なし
査定価格 2000万円
売り出し価格 2400万円
成約価格 1800万円

妻と共有名義で購入し、18年居住したマンションを財産分与のため売却

東京都府中市の築35年のマンションに、家族で18年間暮らしてきたFさん。しかし、数年前から夫婦は家庭内別居状態にあったそうです。2019年春に子どもが独立。その3カ月後に、2人は離婚に向けて動き出すことになりました。

「18年前に中古で購入したマンションは、妻と共有名義でローンを組んでいました。そのローンはすでに全額返済を終えていましたので、売却で現金化して折半しようという話になりました。妻とはすでに話し合いもできない状況でしたので、すべてメールでのやりとりですが……」

問い合わせ後の反応が早く、親切だった施工会社系列の仲介会社に依頼

2019年8月、Fさんは、離婚に向けた財産分与のために、本格的にマンションの売却に取り組み始めました。

売却する物件は見晴らしの良い部屋で、学校もスーパーもすぐ近くにありました。最寄駅からも徒歩5分以内の便利な立地にあるので、Fさんはすぐに売れるのではないかと考えていたそうです。

「不動産情報サイトの一括査定サービスを活用して2社に査定依頼をしましたが、簡易査定結果を知らせるメールと資料が送付されてきただけで、簡易査定結果が妥当なのか判断できませんでした。もう少し自分でも会社を調べてみようと、この物件を施工した不動産会社の系列仲介会社に相談したところ、すぐに来てくれて、丁寧に相場のことなどを教えてくれました。査定価格は2000万円。正直なところ思ったよりも低かったですが、担当者の対応が早くて親切だったので、専属専任媒介で契約することにしました」

水まわりなどをリフォームしていたので、査定価格より400万円高く売り出し

2019年9月にマンションを売り出しました。なるべく早く売ってしまいたいという思いはあるものの、少しでも高く売りたいという気持ちもあり、売り出し価格の設定は悩んだそうです。

「4月に一部剥がれていた壁のクロスを張り替え、蛍光灯と給湯器を取り替え、トイレをフルリフォームするなど気になる箇所は手を加えていたこともあり、査定価格よりも400万円高い2400万円で売り出しました」

売り出しから2020年2月までの約半年間に、月1件のペースで5組の内見があったそうです。新婚夫婦や年配の方が多かったとのことですが、値段と築年数、そして広さがネックとなり、なかなか購入検討にまで至る方が見つかりませんでした。

「思ったよりもコンパクトな住まいを求めている人が多くて苦戦しました。住みながらの売却活動だったので、内見の前には掃除をして、不要な物を少しずつ捨てて、部屋ができるだけスッキリと見えるようにしました。年を越えたころからは新型コロナの感染のニュースがあったので、換気にも気を使いました。生活感をどの程度見せるべきか迷いましたね。見にきていただく方がこの部屋での暮らしをイメージできるといいなと思いながら片付けていました」

「仲介会社とは専属専任媒介契約だったのですべてを一任する状態でしたが、広告活動のメインはレインズへの登録だけだったので、内見希望者がなかなか来ないのではないか、もっとポスティングや折り込みチラシなどをしてくれたら良かったのではないかと思います。でも、なんとかギリギリ3月末に買い手が見つかりました」

買い手は一般の方ではなく、中古物件をリノベーションして販売している企業でした。

「管理状態も良く、広さ的にも間取り的にもリノベーションしがいのある物件だと気に入っていただき、一旦スケルトン状態にして全面リノベーションし、再販売するとのことでした。価格交渉もかなり厳しくて、結局売り出し価格から600万円ダウンの1800万円で買い取っていただくことになりました」

買い手が見つかりホッとしたのもつかの間、すぐにリノベーションをして売り出したいという要望があり、引き渡しが2週間後に迫っていたため、Fさんは新しい住まい探しに奔走したそうです。

「4月から在宅ワークになることが決まっていましたし、とりあえず住み慣れた街で過ごしたくて、近所の賃貸物件を5〜6件ささっと見て決めました。引っ越しで出るゴミの処理費用が予想以上に高くつき、廃棄手続きも面倒で大変でしたね」

■リノベーションとは

明確な定義はありませんが、原状回復のための修繕・営繕、部分的な不具合や老朽化した部分への対処を「リフォーム」と呼ぶのに対して、「リノベーション」は躯体だけを残し、間取りや内装、配管などをすべて取り払って、機能性を見直し、新しい価値を生み出す改修のことを指します。リフォームと似た意味合いで使用されることもありますが、リノベーションではライフスタイルや生活環境に合わせて自由自在にアレンジできるという魅力があるのが特徴です。

コロナ禍で市場の動きが鈍る中、なんとか売れたことに安堵

じわじわとコロナ禍の影響が出てきた2020年2〜3月ごろの内見では、しっかりとマスクを着用して対応したそうです。ただ、コロナ禍で引っ越しをしにくい状況になり、市場の動き自体が鈍化していったとFさんは振り返ります。

「妻が売却価格に納得したかどうかはわかりませんが、とにかく売れたことにホッとしています。夫婦がコミュニケーションをしっかり取れない状況にあったため、仲介担当者さんには両者の間の連絡係となっていただいて、書類のやり取りなどをフォローしていただいたので、大変ご苦労をかけたと思います。年末年始は購入検討者の動きが鈍くなるそうで、さらに想定外のコロナ禍が重なったため、売り出しから成約までは半年かかりました。もう少し早くに活動を始めていれば年をまたがずにもっと早く売却を完了することができたのかなと思います。初めての売却体験で比較対象がないので難しいのですが、まずまず平均点の売却活動だったのではないでしょうか」と、慌ただしかった売却活動を振り返るFさんでした。

2019年3月 ・子どもが独立
2019年4月 ・一部剥がれていた壁のクロスを張り替え、蛍光灯と給湯器を取り替え、トイレをフルリフォーム
2019年8月 ・離婚に向けた財産分与のため、売却を検討
・ネットで2社に査定依頼
・売却物件を施工した会社系列の仲介会社と専属専任媒介契約
2019年9月 ・2400万円で売り出し
2019年10月〜2020年2月 ・月1件ペースで5組の内見希望者が現れる
2020年3月 ・企業から買取の打診がある
・1800万円で売買契約を結ぶ

まとめ

  • リフォームしても、その分、売却価格にのせられるとは限らない
  • 内見の際の印象アップのため、居住中物件の売却活動では室内の整理、掃除、換気が重要
  • とにかく早く売りたい場合は買取という手も。ただし売却価格は相場より約2~3割安くなる
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取材・文/馬場敦子 イラスト/松尾達

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