
母親から相続した東京都府中市の実家を取り壊し、土地(140m2)を手放すことにしたMさん。家族がいとしんできたからこそ高く売りたいと強気で価格設定。値下げ交渉をたびたび断り、待ちに待って心を定めて売却しました。
| 不動産区分 | 土地 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都府中市 |
| 築年数 | ‐ |
| 間取り・面積 | 140m2 |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 3800万~4000万円 |
| 売り出し価格 | 3700万円 |
| 成約価格 | 3480万円 |
姉と2人で実家を相続するも、維持が難しく売却を決意
妻と2人で千葉県千葉市の一戸建てに住むMさん(60代)は、母親から東京都府中市にある実家を姉と2人で相続。亡き父親が1974年に購入した建売住宅で、Mさんも大学時代から数年、過ごしたことがありました。
「都心部から郊外にかけて土地の価格が上昇していたころに入手した物件でした。世田谷区の土地を迷っているうちに手が届かない価格になってしまい、『八王子市にしようか、でも職場まで遠すぎるから駄目だ』などと父親が思案していたときに、勤め先のグループ企業から紹介してもらえることになった物件です」
場所は京王線とJR中央線の2つの駅が使える住宅街。駅まで徒歩約25分かかりますが5~10分間隔でバスが往来し、近くに学校があり、閑静で暮らしやすい環境でした。
「購入時の父親の奮闘ぶりを見ていましたし、家族の愛着が残る家なので、自分が受け継ぐことも考えました。しかし老朽化していて修繕するにせよ建て直すにせよ、高額な費用がかかるのは明らか。さらに私と妻だけで住めば、相続分の半額を姉に支払う必要があるため、多額の現金を用意しなくてはなりません」
千葉市には長年築いたコミュニティがあり、親しみがあったMさん。「現実を考えると売却して得たお金を折半した方がいい」と姉とも話し合い、手放すことを決意します。
大手不動産会社の仲介会社2社に連絡して査定を依頼
古家は解体することを想定し、土地を売却するべく仲介会社を探すことにしたMさんは、気になった不動産会社に直接連絡することにしました。
そこで見つけたのが、たまたまポストに入っていた仲介会社のチラシ。Mさんは複数の中から大手のA社とB社に目を向けます。
「身近に勤めていた人がいて親しみがあったのもありますが、大手だと判断基準が公平でつき合いやすそうなイメージがあったのです。遠方から売却活動するのを考えたとき、それが何より大切と思いました」
Mさんは早速、問い合わせをし、2社の担当者に実家にきて査定してもらうことに。
「私がより好意的に感じていたのは父親が仕事で関係していたA社でした。実際、会ってみると対応が親身で質問へのレスポンスも早く、それでいて無理強いする態度もなく、信頼ができそうでした。そこでA社にお願いすることに決めました」
2017年7月、MさんはA社と専任媒介契約を結びます。
空き家の特別控除制度を賢く利用。ゆとりある気持ちで買主を待つ
不動産仲介会社に査定を出してもらう前に、Mさんは不動産サイトで周辺の似た物件や、公示価格をチェックして、相場をつかむようにしていました。
「調べる限りでは3800~4000万円くらいが相場だと予想しました。この価格なら私としてはまずまず。しかし不動産会社の担当者に聞いたところ、『厳しいかもしれませんよ』と返ってきて。
バスがあっても徒歩だと駅まで遠く、かつ私のように相続した土地を売ろうとする人がいて今は供給過多。売買の動きが鈍くなっているようでした」
しかしMさんにとっては家族の思い出が詰まった大事な場所。「なるべく高値で売却するのが両親への孝行になる」と、値段だけは譲りたくない気持ちがありました。
「『4000万円だと大台で高すぎる』との担当者の意見があって少しだけ譲歩しましたが、それでも売り出し価格は3700万円にしてもらいました」
ある程度の期間は買主が現れるのを待っても構わないと思っていたMさん。
強気でいられたのには理由がありました。
「私の場合、古家を解体し、更地にして土地だけ売却さえすれば『空き家の譲渡所得の3000万円特別控除』の条件を満たせると税理士から聞いたんです。税金の負担を減らせると分かると気持ちがラクになり、ならば焦らず粘ってみようと思いました」
A社では、自社が運営する不動産サイトに写真付きでMさんの物件を掲載。Mさんは定期的に書類で報告をもらいます。
■空き家の譲渡所得の3000万円特別控除とは
相続した空き家や土地を売却する際、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3000万円まで控除を受けられる制度。空き家をなくすことを目的にしており、相続する直前まで親が1人で暮らしていたこと、1981年5月31日以前に建てられた家屋(店舗・事務所などを兼ねた区分所有建物は除く)と敷地、2016年4月1日から2023年12月31日までの間で、相続開始から3年目の12月31日までの売却であることなどが条件。建物が耐震基準を満たさない場合は耐震リフォームをするか、更地にして譲渡する必要があります。
媒介契約を更新して心ゆくまで粘り、納得したうえで売却へ
「そこそこ反響はあったようで数回、担当者から『買主の候補者が現れた』と電話をもらいました。しかし『もう少し値下げをしてもらえないか』という問い合わせばかり。
すべてお断りして3700万円で買ってくれる方が現れるのをひたすら待ちました」
3カ月の契約期間が過ぎ、Mさんは媒介契約を更新します。
「年を越して問い合わせが少なくなってきていたころ、A社から再び連絡が入ります。やはり価格の話になりましたが、そのころは担当者の方も焦ってきていたようで『これを逃したらもうないです』と気迫を込めて言われました。
私も『ここまで引っ張って売れなら難しいのだろう』とこの時点で納得。A社を介して先方と何度かのやり取りした末3500万円まで値段を下げ売却することになりました」
契約直前にさらに20万円の値引き交渉に応じ2018年3月、Mさんは3480万円で売買契約を交わします。
希望額にはとどかなかったものの、双方が幸せを感じられる売買と振り返る
2018年2月に更地にして、3月に買主に土地を引き渡し。その後、特別控除の申請も無事に通ります。
「すべて思惑通りにはいきませんでしたし、両親が買った土地を手放したことに今でも気がとがめます。でも買主は子育て中のご夫婦で、とてもよい方。心置きなく待ったうえで気持ちよく売却できて、相手にも求める価格で買ってもらえて。お互いにハッピーだといえるでしょう」
満足げに笑顔を見せるMさん。
家族がいとしんだ土地を納得するかたちで引き継げたその経験は、ますます実りある日々をもたらすことでしょう。
| 2016年2月 | ・土地の売却を考えはじめる |
|---|---|
| 2017年6月 | ・訪問査定をする |
| 2017年7月 | ・不動産会社と専任媒介契約を結ぶ ・3700万円で売り出し |
| 2018年2月 | ・購入検討者が現れる ・古家を解体して更地にする |
| 2018年3月 | ・買主と売買契約を結ぶ ・売却したマンションを買主に引き渡す |
まとめ
- 売却にあたり、価格や期限など譲れないものがあれば、はっきりと不動産会社の担当者に伝える。
- 公示価格や不動産サイトで相場を掴めば判断の目安に。不動産会社の担当者と自信をもって話せる。
- 相続時に利用できる税制などを調べたうえで売却活動を行う。
取材・文/星野 真希子 イラスト/カワモトトモカ


