不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

財産整理のため、相続した築30年のマンションをオーナーチェンジで売却/東京都港区Sさん(60 代)

東京都港区Sさん(60 代)/財産整理のため、相続した築30年のマンションをオーナーチェンジで売却

東京都港区に所有するマンションを賃貸していたSさんは、身軽になろうと売却を思い立ちます。税金がかかると知って一度は思いとどまりますが、やっぱり売ろうと決意。それからは意外なほどスムーズな展開だったといいます。

不動産区分 マンション
所在地 東京都港区
築年数 約30年
間取り・面積 4LDK(約100m2
ローン残高
査定価格 7900万円
売り出し価格 7500万円
成約価格 7500万円

賃貸中マンションの売却を思い立つ

東京都世田谷区在住のSさんは、2017年ごろからマンションの売却を考えるようになりました。きっかけは、片付けブームだったといいます。

「片付けが世間で注目され始めたのは、私が還暦を迎えたころです。夫が亡くなり、子どものいない単身者ですから、私もそろそろ身の回りの整理をしようと考え始めました。加えて、東京五輪の招致が決まり、都心の不動産価格が上がると予想されていたことも後押しになりました」

Sさんが売却しようと考えたのは、東京都港区に所有する4LDK、約100m2のマンションです。

「もともとは祖母が所有していた土地に等価交換で建った分譲マンションです。そのうちの1戸を父から相続し、ずっと賃貸物件として貸し出していました。地下鉄の駅から徒歩30秒に立地。幹線道路に面していますが、道路とは反対向きなのでとても静かです。ただ、築30年ですから設備が老朽化していて、メンテナンスなどが煩わしく感じていました」

2018年春、五輪の前に売却したいと考えたSさんは、いくらぐらいで売れるか、査定を取ることにしました。不動産情報サイトの一括査定を利用し、5社から簡易査定が届きました。

「査定価格は6000万円台から9000万円台までかなり差があり、あまり参考になりませんでした。そのうちの1社と直接会って話すことになり、賃貸中であることを伝えると、担当者に『居住用のマンションとは違って、投資用の物件は税金がかかりますよ』と指摘されたんです」

税金のことはまったく考えていなかったというSさん。驚いて、売却はいったん取りやめにしたそうです。

「でも、よくよく考えてみると、いつ売っても税金を逃れることはできません。半年後に、やっぱり売ろうと決めました」

■投資用不動産を売却したときの税金

不動産を売って売却益(譲渡所得)が出た場合、その譲渡所得に所得税や住民税がかかります。売却した不動産が自宅だった場合は、各種の特例や控除が利用可能です。代表的なものが、譲渡所得から3000万円を差し引いて譲渡所得税を計算できる「3000万円特別控除」で、譲渡所得が3000万円以下であれば譲渡所得税はかかりません。また、自宅を売ってより高い住宅に買い替える場合は、「買い替え特例」が利用でき、次に買い替えるときまで課税を繰り延べることが可能です。投資用不動産にはこうした特例や控除はありません。

法人の買い手を想定し、査定より低い価格で売り出す

2018年9月、Sさんは半年前に会った不動産仲介会社の担当者に連絡を取りました。

「担当者は誠実な人柄で相性がいいと感じたので、この人に任せようと思いました。やっぱり売ることにしたので仲介業務を依頼したいと伝えると、節税の方法があるかもしれないからと税理士さんを紹介してくれました。不動産仲介会社との契約は専属専任媒介です。以前に、自宅マンションを売ったときもそうでしたが、あなたに任せますよ!とプレッシャーをかけたほうがやる気を出してもらえると思ったので」

Sさんは賃貸中の入居者がいる状態での売却を希望。つまり、入居者は変わらず物件の所有者だけが変わる、オーナーチェンジと呼ばれる取引形態です。査定価格は7900万円でしたが、Sさんは担当者と相談し、査定価格より低い7500万円で売り出すことにしました。

「不動産仲介会社の担当者によると、オーナーチェンジ物件なので、一般の人より不動産会社が購入を検討する可能性が高い。その場合は価格が低めになるだろうということで、査定より低い設定にしました。担当者には、売却活動をダラダラと長引かせたくないとも伝えました。できれば年内、遅くても翌年の春までに売りたいと考えていました」

反応は上々。1カ月後に売り出し価格での購入希望者が現れる

2018年9月、Sさんのマンションは売り出すとすぐに複数の引き合いがありました。

「仲介会社の担当者から週に1度は電話やメールで報告があり、反響があると聞いて安心しました。予想していた通り、検討者は不動産業者がほとんどだったようです」

そして1カ月後、売り出し価格で買いたいという希望者が現れました。

「購入希望者は不動産関係の法人でした。賃貸中の住人がいるため物件の内覧はしていませんが、そのまま賃貸借契約を引き継ぐという条件ですんなり交渉がまとまりました。聞いたところによると、今の賃貸借契約が終了後にリフォームをして売り出す予定だとか。2018年11月に売買契約を結びました」

トントン拍子に売却が決まりホッとしたSさんですが、その後に思わぬトラブルが待っていたそうです。

「あまりにも早く売れたので、入居者の募集や賃貸借契約などを任せていた管理会社への報告が遅れてしまって……。マンションを売却したので管理契約を終了したいと伝えたところ、『報告が遅い。契約違反だ! 』と言われて揉めることに。その際も、不動産仲介会社の担当者が間に入って紳士的に対応してくれたので心強かったですね。何とか解決して、無事に物件を引き渡すことができました」

仲介会社の適切な対応のおかげでスピード売却。賃貸経営のストレスが解消

「終わってみれば、あれよあれよという間に決まったという感じです」と笑うSさん。売却活動を振り返って、満足していると答えてくれました。

「税金がかかると知って、一度は売却をあきらめかけましたが、思い直して良かったです。周囲には新築物件が増えていて、築30年のマンションは魅力的な賃貸物件ではないでしょう。利回りは下がっていたし、度々の設備の修繕や取り換えも負担でしたから、売却してストレスが解消しました。 最初から最後まで誠実に対応してくれた不動産仲介会社の担当者に感謝しています。今の自宅を売るときは、また同じ担当者に頼みたいし、売却を考えている知人がいたら紹介したいと思っています」

マンションを手放してスッキリした表情のSさん。今回の売却で得たお金で別の資産運用を始めたそうです。

2018年3月 ・マンションの売却価格査定
・仲介会社の担当者と会う
2018年9月 ・仲介会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・7500万円で売り出し
2018年10月 ・購入希望者が現れる
2018年11月 ・売買契約を結ぶ

まとめ

  • 賃借人が住んでいる物件は買主自身が使用できないため、一般的な物件より売却価格が安くなる傾向がある
  • 信頼できる不動産仲介会社と担当者を選ぶには、直接話すことが大事
  • 自宅用不動産と投資用不動産では利用できる税制・控除が異なるので事前に確認しておこう
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取材・文/小宮山悦子 イラスト/めんたまんた

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