
やんちゃな子どもたちが階下に気兼ねすることなく、のびのび暮らせるようにと築37年、2LDKのマンションから一戸建てへの住み替えを決めたYさん。スムーズな売却成功の秘訣はコミュニケーション力にありました。
| 不動産区分 | マンション |
|---|---|
| 所在地 | 福岡県福岡市南区 |
| 築年数 | 築37年 |
| 間取り・面積 | 2LDK(62m2) |
| ローン残高 | 900万円 |
| 査定価格 | 1100万円 |
| 売り出し価格 | 1198万円 |
| 成約価格 | 1198万円 |
コロナ禍でおうち時間が増え、マンションから一戸建てへの住み替えを決意
2020年5月、コロナ禍で増えたおうち時間をきっかけに、育ち盛りの子どもたちが出す生活音が近隣に迷惑をかけていないかが気になってきたというYさん。
「2016年に購入した住まいは築37年の小規模なマンションでした。新築当初から暮らしていらっしゃる方が多く、私たちのように小さな子どものいるファミリーはほとんどいない物件でしたが、『若い人が入って来てくれた』と住人の皆さんに歓迎していただきました。子どもの誕生をとても喜んで、孫のように可愛がっていただいていたんです」
お酒好きのYさんは、誰とでもすぐに飲み友達になってしまうというコミュニケーション上手。マンション内でもすぐに飲み友達ができたそうです。
「世代は違いましたが皆さん気さくに接していただき、住人同士の部屋を行き来して飲み会が開かれることもしょっちゅうありました。前理事長さんとは特に親しくしていただいて、なんでもご相談できる関係性でしたね」
とても気に入っていた住まいですが、Yさんには気がかりなことがありました。
「小さい子どもが2人いるので、階下の方にご迷惑ではないかと思うようになったんです。ちょうど新型コロナウイルスによる感染症が拡大し、わが家も在宅時間が増えました。子どもがはしゃぐ声や足音などを、階下の住人の方が気にされていると、近所の方がそれとなく教えてくださったんです」
ご近所付き合いの良さをとても気に入っていた大好きなマンション。仲良くしていただいている方々のご迷惑になるようなことはしたくない、との思いからYさんは住み替えを決意しました。
「築37年と古い建物ですし、子どもたちのこれからを考えると2LDKは手狭です。私も40代後半に差し掛かり、新たにローンを組むなら今がギリギリ。一戸建てに住み替えるなら、今がその時なのかなと思いました」
4年前の購入時にお世話になった不動産会社の担当者に売却を相談
Yさんは売却にあたり、まずはどのくらいで売れるものなのか、ネットの一括査定で調べてみたそうです。その結果、1100万円台が売却価格の相場だとわかり、今度は懇意にしている不動産会社の担当者に売却したい旨を連絡しました。
「4年前のマンション購入時にお世話になったのは、職場から目と鼻の先にある不動産会社でした。通勤時に毎日通りかかりますし、営業の方とは近くのコンビニなどですれ違うこともあり、なんとなく顔見知りのようになっていて、勝手に親近感が湧いていたんです。飛び込みで相談に行ったら、向こうも見知った顔だということですぐに意気投合。マンション購入を通じてさらに仲良くなり、今ではすっかり飲み友達になっているんです。なので、今回の売却にあたってもその方にお願いしようと、一括査定の価格を伝えて売却の相談に乗っていただきました」
住み替え先も同じ不動産会社の担当者に相談し、同時進行で探すことにしました。
「住み替え先はすぐに引っ越せる建売住宅限定で考えていました。エリアはそれほどこだわらず、広範囲で気になる10数軒を見学に行きました。その中で、妻の実家に近い場所に良い物件を見つけることができました。職場にもバス1本で通える場所で、売却するマンションへも車で約10分、バス1本の距離。ここなら住み替え後も、仲良くなったマンション住人の方と、変わらぬお付き合いができると思ってすぐに購入を決めました」
Yさんが購入を決めた物件は、敷地面積125m2、延べ床面積約100m2の2階建て4LDK。2020年5月から売却と同時に進めた新居探しでしたが、7月末には売買契約が成立。お盆には引っ越しも完了しました。
「価格は3598万円で売り出されていましたが、値引き交渉の末、3298万円で購入することができました。住宅ローンは担当者からのアドバイスに従い、金利の低いネット銀行で組むことにしました。契約後すぐに引っ越しができたので借り住まいする必要もなく、余計な出費がかからずにすみました」
売り出し価格は1198万円。端数価格表示で消費心理をくすぐる作戦に!
一方、売却する物件を4年前に購入した際の価格は980万円だったそうです。しかし、古い物件だったので、Yさんは入居前に簡単なリフォームをしていました。
「サッシの入れ換え、フローリングや壁紙の張り替えといった程度ですが、140万〜150万円ほどかかりました。1200万円を35年ローンで組み、今の残債が900万円。査定額は1100万円台でしたが、できればリフォーム代金の分も少し上乗せして、1200万円くらいで売りたいと伝えました」
すると、不動産会社の担当者からはこんな返答が返ってきました。
「売却する物件は築年の古いマンションな上、コロナ禍で購入検討者の動きが読みづらい。なので、端数価格表示で消費心理をくすぐる作戦に出ましょう。1200万円よりも1198万円の方が、なんとなく買いやすい心境になるでしょ?」
その提案にYさんも納得。1198万円での売り出し価格となりました。
■売り出し価格の決定方法
売り出し価格は査定価格を基準に決めるのが一般的です。できるだけ高値で売却できるに越したことはありませんが、適正価格よりも高く売り出し価格を設定してしまうと、販売期間に影響を及ぼしてしまいます。スムーズな売却を成功させるためには、3カ月程度で売れる適正価格で売り出すことが重要です。中古不動産の売買では値引き交渉が広く一般的に行われているため、売り出し価格と成約価格が異なるケースが多く見受けられます。成約価格とは、売主と買主の双方が最終的に合意に至った金額のことです。査定額や周辺相場、成約実績価格などを基に、住宅ローンの残債や売却諸費用、値下げ交渉なども考慮して、価格設定を行いましょう。物件情報サイトに掲載する場合は、「1490万円」「1980万円」など、500万円、1000万円といった金額の区切りで検索されづらくなってしまわないように価格設定することもポイントです。不動産会社の担当者とよく話し合って、売却しやすい適正価格を導き出すようにしましょう。
購入検討者と意気投合!飲み友達になって暮らしに役立つ近隣情報なども伝授
「新居への引っ越し後、空き部屋になった状態を何組かの購入検討者が見学に来てくださいました。その中で、即決で購入したいという方がいらっしゃって。どんな方が購入してくださるのか気になって私も立ち合っていたので、物件の特徴の他にも、ご近所付き合いの様子、近隣の紹介など、思いつく限りの情報をお伝えしました。おひとり暮らしの方でしたがとても気さくな方で、この方ともすぐに意気投合しちゃったんですよ。で、いろいろお話しするうちに飲み友達になっちゃいました。売却したマンションは駐車場がない物件のため、入居時は隣接する駐車場を別に借りていたのですが、その方も駐車場が必要だということを聞き、駐車場のオーナーさんもご紹介しました。大好きなマンションなので、長く楽しく暮らしていただけたら良いなと思いました」
誰とでもすぐに仲良くなれるYさんのコミュニケーション能力の高さで、築年の古い物件も売り出しから2カ月ほどでスムーズに売買契約が成立したのです。価格もYさんの希望通り。値下げすることなく売却できました。
「新居が先に決まったこともあり、最初はなかなか売れないなぁと思っていましたが、いま振り返ってみると売却の方も割とスムーズでしたね。初めての売却体験としては10点中8点くらいの出来だったのではないでしょうか。売れたこともうれしいですが、大好きな方々が暮らしている愛着あるマンションなので、良い方と出会えたことに感謝しています。今後もマンションの住人の皆さんと良いお付き合いを続けていければいいなと思っています」
| 2020年5月 | ・ネットの一括査定を利用 ・住み替え先の建売住宅を見学 |
|---|---|
| 2020年7月末 | ・住み替え先の売買契約が成立 |
| 2020年8月 | ・住み替え先を紹介してくれた不動産会社と売却物件の専属専任媒介契約を結ぶ ・1198万円で販売開始 ・住み替え先へ引っ越し |
| 2020年9月 | ・購入検討者が現れる |
| 2020年10月 | ・売買契約を結ぶ |
| 2020年12月 | ・売却物件の引き渡し |
まとめ
- 信頼できる不動産会社の担当者を見つけることができれば、売る時も買う時も心強い
- 「○○98万円」など端数価格で売り出して、購買意欲をくすぐる作戦を立てる
- 購入検討者には積極的に近隣情報などを伝えて、暮らしやすさをアピール
取材・文/馬場敦子 イラスト/カワモトトモカ


