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新型コロナのニュースに景気の悪化を予感し、投資用マンションの売却を決意/東京都港区Kさん(50代)

東京都港区Kさん(50代)/新型コロナのニュースに景気の悪化を予感し、投資用マンションの売却を決意

新型コロナウィルスのニュースが流れ始めた2020年のはじめ、Kさんは今後の景気悪化を案じて、投資用不動産の売却を決意しました。大手不動産会社の査定額に納得がいかなかったため、投資用マンションを購入した不動産会社の社長に声をかけてみました。その結果……。

不動産区分 マンション
所在地 東京都港区
築年数 約9年
間取り・面積 2DK(約47m2
ローン残高 4500万円
査定価格 5200万〜5300万円
売り出し価格 7000万円
成約価格 6000万円

コロナ禍スタートと「築10年の壁」を前に、都内でも人気の高額エリアの物件を手放す決意

埼玉県さいたま市に住む会社員のKさんは2013年、節税対策にと東京都港区に立つ当時築1年の投資用マンションを購入しました。
立地は東京都心の中でも特に高額といわれるエリア。六本木や渋谷にも徒歩15分程度、おしゃれな店が集まり、多くの人にとって憧れの街です。

「投資マンションを購入することで、所得税や住民税の節税対策になればと考えました。また、私に万が一のことがあったときの生命保険代わりにもなると思ったんです。投資はとにかく立地が重要。このマンションを7年間賃貸に出していましたが、ほとんど空室になりませんでした」

順調に投資用マンションとして活用していたKさんですが、2020年の1月中旬、新型コロナの話題がニュースで流れ始めた頃、売却を考えたといいます。

「実は前々から、ローンを抱えながらマンションという大きな固定資産を所有することにリスクを感じ始めていました。そんな中で新型コロナのニュースが流れ始めて、今後、景気が悪くなるかもしれない。そうすれば空き室が増えるだろうと考えました」

Kさんの家賃収入は、購入当初は管理費込みで24万6000円でした。その後、空室状態になったときのリスクを考え、家賃保証を受けられるサブリース契約に変更。以降、家賃収入は23万4000円になりました。
いずれにしろ約47m2としては高額な家賃です。コロナの影響で景気が悪くなれば、この額でこのマンションに入る人は少なくなるだろうと考えたといいます。
またマンションの築年数も売却に踏み切った理由でした。

「投資用マンションも、古くなるとなかなか買い手がつかなくなるし、家賃も下がっていくでしょう。やはり10年の壁を迎える前に売る方がリスクを抱えずに済むというのが一般的な考え方です。私自身もうすぐ定年を迎える年齢ですが、定年になれば収入が激減するので、税金も減り、当然ながら節税のメリットはなくなります。新型コロナと築年数、節税メリット、これら3つの要素が重なったのが売却の決め手になりました」

査定額は5200万円だったが7000万円で売り出しを開始

売却を決意したKさんは、まず大手不動産会社3社に簡易査定を依頼しました。
いずれも査定価格は5200万円前後。Kさんはこのマンションを5320万円で購入しています。

「購入時より不動産価格は上昇しているのに、売却益が出ないなんてありえないと思いました。そこまで下げてたたき売るつもりはありません。それなら売らずに持っていたほうがいいですね」

Kさんの住戸は12階建ての11階部分ですが、その頃、同じマンションの10階の住戸が7200万円という高値で売り出していました。

「そのことからも、5320万円は論外だと感じました。一般的な住宅街とは違う魅力があるのだから、この場所に住みたいと思う人は必ずいると強く確信しました」

大手不動産会社が出した査定額に納得がいかないKさんでしたが、結局、その中の一社と専属専任媒介契約を結び、自身が納得できる7000万円で売り出しを開始しました。

7000万円で投資用マンションの売り出しを開始

知り合いの不動産仲介会社が6000万円で買取を希望

2020年1月末に売り出しを開始しましたが、なかなか購入希望者は現れません。売り急いで価格を下げる気持ちはなかったため、しばらくそのままの価格で様子見していましたが、6月になり6800万円に売り出し価格を引き下げました。しかし、それでも反応はありませんでした。

8月になり、Kさんは知り合いの不動産会社社長にコンタクトを取ってみました。売り出しているマンションを購入した不動産会社の社長で、その後、別の不動産会社を立ち上げ、経営者となっていました。 かつて社長自身が扱った物件なので、価値や魅力は十分に分かっているはずです。Kさんは希望の売り出し価格は7000万円と伝えました。すると、その不動産会社の社長から、6000万円なら買い取るという申し出がありました。

「希望の7000万円より1000万円も低い額です。でも、ほかの不動産会社だと売り出し価格が5200万円前後で、その上仲介手数料もとられます。一方、こちらは不動産会社の買い取りなので、仲介手数料が必要ありません。仲介手数料なしの6000万円なら、約1000万円も違ってきます。5320万円で購入して6000万円で売れるのですから悪くはありません。節税対策にもなりましたし、潮時だろうと思いました」

2020年9月、売り出し開始から9カ月後に6000万円で売買契約を結ぶことができました。

■買取のメリット

不動産を売却する方法には、不動産会社に依頼して買い手を探す「仲介」と、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」があります。
一般的に不動産売買でイメージするのは「仲介」ですが、「買取」にもさまざまなメリットがあります。
「買取」の場合は、不動産会社が買い手となるため現金化が早いことが魅力です。また、不動産会社が直接買主となるため、広告等での買い手探しや現地への案内、交渉などにかかる仲介手数料が不要となります。 「仲介」による売却では、売却後に瑕疵が見つかった場合、売主が瑕疵担保責任を負うことがありますが、「買取」によって個人が不動産会社へ物件を売り渡す場合は買主が不動産会社のため、契約不適合責任を特約によって免責にすることができます。
ほかにも、ちらしや広告などで物件が販売中であることをご近所などに知られる心配がない、売り手が内見者への対応をしなくていいなどのメリットもあります。

ブランド力のある立地が売却の決め手に

実はKさんはほかにも西新宿などに2件の投資用マンションを購入していました。
港区のマンションは抜群の立地でブランド力のあるエリアだったため、結果的に高額で売却できたと考えています。
「ほかの2物件は築年数が増えるほど家賃がどんどん下がりましたが、ここはそうでもありませんでした。しかも結果的に8年前の購入金額より約700万円高く売れました。不動産は立地次第なのだなと思いました」

売却活動を振り返り、Kさんはマンション投資の難しさを感じたといいます。
「これからの時代、リスクはさらに高まると思います。新型コロナ感染拡大のように、世の中どう変わっていくか分かりません。私の場合、タイミングとエリアが良かったのが成功した理由だろうと思っています」

2020年1月 ・新型コロナのニュースに売却を考えはじめる
・簡易査定を受ける。査定額は約5200万円〜5300万円
・不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ
2020年1月 ・7000万円で売り出す
2020年6月 ・6800万円に売却価格を万円に変更
2020年8月 ・知り合いの不動産会社が6000万円で購入を希望
2020年9月 ・6000万円で売買契約を結ぶ

まとめ

  • 査定額にこだわらず、自分自身で納得がいく売り出し価格を貫いて成功することもある
  • 物件を購入した不動産仲介会社に声を掛けてみるのも手

取材・文/浅野真由美 イラスト/松尾達

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