
自宅のほか、以前住んでいた中古住宅(新宿区・築35年)を所有していたAさん。賃貸住宅として貸し出ししていましたが、賃借人の退去のタイミングで、新型コロナウイルス感染症が流行し始めました。「不動産売買が厳しくなる前に売りたい」と売却活動をスタートし、5800万円での売却を成功させました。
| 不動産区分 | 一戸建て |
|---|---|
| 所在地 | 東京都新宿区 |
| 築年数 | 約35年 |
| 間取り・面積 | 延床面積…96m2 |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 5750万円~6250万円 |
| 売り出し価格 | 6250万円 |
| 成約価格 | 5800万円 |
賃貸していた元自宅、コロナ禍を機に売却を決意
都内で、妻と子どもと3人で暮らしているAさん(50代)。自宅のほかに所有していた、新宿区の一戸建て(築35年)を2020年に売却しました。
売却した一戸建ては、1995年に自宅として購入した家でした。当時築10年だった中古住宅を、3000万円、15年返済の住宅ローンを借り入れて購入。
その後、子どもが生まれて生活スタイルが変化したため、新たな家への住み替えを決意。2010年に住宅ローンを完済した後、2013年に自宅を抵当に入れて、新居の住宅ローンを借りました。Aさん家族は新居に引っ越し、中古住宅は賃貸に出しました。
賃貸に出した住宅は最寄駅から徒歩5分の便利な駅近物件。住宅街にありながら、昔ながらの商店街や駐車場も近く、徒歩圏にコンビニエンスストアもあり、暮らしやすい地域にありました。ただし、敷地の北側が道路に接し、玄関が北向きであること、庭が狭かったのが気になっていたといいます。
新居は、以前住んでいた中古住宅の隣町にありましたが、用途地域は第一種低層住居専用地域の静かな環境にあり、周囲に高い建物がないため、見晴らしや日当たりが良く、生活環境は大きく向上しました。
■用途地域
用途地域とは、建築できる建物の種類や大きさ、高さなどの制限が定められ、用途に応じてエリア分けされた地域のことで、「住居系」8種、「商業系」2種、「工業系」3種の13地域に分かれます。「住居系」は住環境を重視した地域です。中でも「第一種低層住居専用地域」は高い建物が建てられないため日当たりが良く、大きな工場や商業施設も建てられないため閑静な住宅街が形成されています。用途地域の特徴を知っておくと、売却時のアピールポイントになります。
新居で快適な暮らしを送っていたAさんでしたが、2019年に貸していた一戸建ての賃借人が退去することになり、空き家になりました。
「新たな借り手を探そうと思いましたが、築35年の古い家では新たな借り手を探すのも難しいし、維持管理するためのお金や手間もかかります。
2019年に売却を検討し始めましたが、2020年に入ったころからコロナウイルス感染症の拡大で景気が悪くなっていくのを感じて、不動産を売るなら売れるときに、できるだけ高くと思い、本格的に売却活動を始めました」
地元の会社に仲介を依頼。一括査定サイトの最高額を売り出し価格に
2020年3月、Aさんは売却を依頼する不動産仲介会社をインターネットでリサーチをし始めました。不動産仲介会社のホームページ、不動産情報専門サイトを閲覧し、一括査定サービスで4社の不動産会社の簡易査定を受けました。親族や知人に欲しい人がいたら買い取ってもらうことや、リースバック(物件を売却後に、売却先と賃貸借契約を結び、物件に住み続ける方法)も検討。大手不動産会社にも直接電話をして、2社は訪問査定を受けて直接話を聞きました。
「結局は、売却物件を賃貸で出していたときの管理会社が不動産売買も行っていたので、そこに相談するのが早いと思いました。地元の小さな不動産会社ですが、以前からお世話になっていた関係で話もしやすく、地元に強いと思い、お願いすることにしました」
Aさんは、3タイプの契約のうち、どの契約がいいのか迷いましたが、不動産会社から「頑張りますから専属専任媒介契約にしてください」と言われて、その言葉を信じて専属専任媒介契約を結びました。
「不動産売却一括査定サイトで調べたところ、査定額は5750万~6250万円と500万円位の幅があり、同じ会社でも100万円~200万円の差がありました。
できるだけ高く売りたい気持ちで、売り出し価格は査定の最高額の6250万円にしましたが、期間も大事。ローンは完済していましたが、コロナ禍によって景気がどこまで落ち込むかの不安があり、売却期間が長引くのは避けたいと思っていました」と振り返ります。
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緊急事態宣言下で売却活動、購入希望者との交渉で価格を140万円下げることに
2020年5月、売却活動をスタート。信頼関係がある不動産会社に依頼したため、販売活動は安心しておまかせしました。Aさん自身は特別なことはしませんでしたが、少しでも物件の印象を良くするためにハウスクリーニングを実施したり、伸びていた庭木の伐採などを行いました。
「多分、その会社のネットワークで地元の見込み客に声をかけてくれていたと思います。購入検討者は4、5組いて、その都度報告してくれました。ただ、緊急事態宣言が出ていた時期だったので、大々的なオープンルームなどは行わず、内見希望者がいた場合は、周囲のひんしゅくを買わないようにひっそりと案内してくれる感じでした」
最終的な購入検討者は1組でした。不動産会社がしっかりと絞りこんでくれた相手で、1対1で交渉したため、特に問題がなくスムーズに進みました。「焦ったり急いだりはありませんでしたが、だらだらと交渉が長引くのも考えものです。できるだけシンプルに決めたいというのもあって、多少は譲歩しようと考えていました」
売り出し価格の6250万円を途中で下げることはしませんでしたが、購入検討者と交渉するなかで「買ってもらえる価格」を見極め、最終的に5800万円で落ち着きました。また、購入検討者からの購入条件として、古くて使っていなかった給湯器をAさん側で修繕して引き渡すことを約束。2020年8月に売買契約が成立しました。
コロナ禍でも売り出しから3カ月で契約成立、想定以上の価格で大満足
売却活動を開始してから3カ月、2020年8月に売買契約を締結。「コロナ禍で不動産の動きが鈍いと担当者から聞いていたので、契約は難航するかと思っていましたが、想像以上に早く決まってほっとしました」とAさん。
成約価格の5800万円から仲介手数料や印紙代、修繕費などの諸経費を引いて手元に残ったのは5600万円。「あまり欲を出すと成約は期待できません、と不動産会社の担当者からは言われていました。諸経費を引いて手元に最低でも5500万円残したいと考えていましたが、それより100万円高かったので、よしと手を打ちました」。売却した金額は、現在の自宅の住宅ローンの返済に充てました。
「コロナ禍の前だったら、またやり方次第では、もっと高く売れたかもしれませんが、購入者が安定した職業で会社から住宅補助も出るようでしたし、もともと地元に住んでいた方で長く住んでくれそうで、良かったと思います。後悔はありません」。売却活動全体については、10点満点でとても満足しているそう。
コロナ禍でテレワーク率が高まり、自宅で過ごすことが多くなったAさんですが、売却も成功し、静かな環境の日当たりの良いマイホームで快適な毎日を送っています。
| 2019年 | ・貸し出していた旧居の賃貸契約が終了し、空き家になる ・賃貸ではなく、売却を意識し始める |
|---|---|
| 2020年3月 | ・本気で売却を検討する ・不動産会社の一括査定サイトを利用 |
| 2020年5月 | ・地元の不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ ・6250万円で売り出す |
| 2020年6月 | ・購入検討者が現れる |
| 2020年8月 | ・購入検討者の要望で、水まわりの修繕を実施 ・5800万円で売買契約を結ぶ |
| 2020年9月 | ・物件の引き渡し |
まとめ
- 築古物件でも、駅徒歩5分の駅近アクセスはアピールポイントに
- 価格査定は、複数の不動産会社に依頼して、妥当なラインを見極めよう
- 「この価格以上で売りたい」という最低額を心中で決めておき、購入検討者と交渉する
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