不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

いずれ相続する実家の売却準備とは?税金・費用、売却のタイミング、実家の活用法などを解説

実家の売却にかかる税金と3つの注意点|相続から売却までの手順も踏まえて解説

「相続で実家を相続したものの使う予定もないので売却して現金化したい」「近い将来実家を相続することになるがどうやって処分すればいいかわからない」など、相続した実家の売却や活用法について悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

相続した実家を売却すると譲渡所得税をはじめとした税金や費用がかかります。場合によっては、親の生前に実家を売却するほうが良いケースもあるでしょう。

この記事では、相続で実家を取得した人や将来取得が想定される人に向けて、実家の売却にかかる税金・費用の詳細や押さえておくべき3つの注意点などを解説します。

記事の目次

実家を売却するのは相続前と相続後どちらが良いか

実家のリビングで父親と息子が座って笑顔で語らう様子

(画像/PIXTA)

今後実家の相続が見込まれるケースにおいて、実家を売却するなら相続前・相続後、どちらのタイミングが良いのでしょうか。売却のタイミングを判断するにあたってのポイントを解説します。

相続した不動産を売却する際にかかる税金の計算式、節税に関する詳細はこちらの記事で紹介しています。併せてご覧ください。

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実家の資産価値が購入時よりも上昇している場合は相続前の売却も要検討

人気エリアや都市部にあるなどの理由により実家の資産価値が上昇しているときは、譲渡所得税がかかることになります。

その場合、一定の要件下で親が自ら売却すれば「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」が適用され、譲渡所得から最高3000万円までの控除が受けられます。また、売却する年の1月1日時点で所有期間が10年を超えているなどの要件を満たしていれば「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」を併用でき、さらに税額を抑えられるかもしれません。

判断がつかない場合は相続後の売却をベースに考える

上記のように居住している本人しか使えない税制上の特例もあり、生前に売却のほうが大きな節税効果を得られるケースもあります。

ただ、不動産は相続税評価額が実際の価値(時価)よりも割安になる傾向にあり、同じ価値の現金や預貯金に比べて相続税を低く抑えることが可能です。実家を生前に売却すると相続財産に占める現金・預貯金の割合が増え、相続税評価額が上がってしまうかもしれません。実家を売却するタイミングの判断がつかない場合は相続後の売却をベースに考えるとよいでしょう。

実家の売却時にかかる税金と費用

不動産を売却すると譲渡所得税や印紙税などの税金や費用がかかります。それぞれの税金・費用がどのようなもので、どのようなケースでかかるのか見ていきましょう。

譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)

譲渡所得税とは、不動産を売却して得た譲渡所得がある場合に課される、所得税・住民税・復興特別所得税の総称です。

なお、譲渡所得は次の計算式で求められます。

譲渡所得 = 実家の売却価格 – 取得費 – 譲渡にかかった費用

取得費は数代前の先祖から伝わるものだったり、購入時期がはるか昔だったりする場合など、わからないことも多いでしょう。その際は「売却価格×5%」で求めた概算取得費を使用することができます。ただし、概算取得費は購入価格よりも低いことが大半のため、できれば購入価格を明らかにしましょう。

また、譲渡所得税は所定の税率をかけることで算出可能です。この税率は当該不動産の所有期間によって異なります。売却した年の1月1日時点における所有期間が5年以下の場合には「短期譲渡所得」となり、5年を超える場合は「長期譲渡所得」として、以下の税率(所得税・住民税・復興所得税の合計)が適用されます。

短期譲渡所得(所有期間5年以下) 39.63%
長期譲渡所得(所有期間5年超) 20.315%

相続財産に関しては、所有期間に被相続人の分も含めることができるため、実家売却は長期譲渡所得になるケースがほとんどでしょう。なお、相続した実家の売却では特例を適用できる可能性があり、課税対象となる譲渡所得が減額されるケースもあります。

例えば「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」があります。これは相続開始直前まで、被相続人が一人で居住していた空き家の実家を売却する場合に受けられる特例です。適用されると譲渡所得から最大3,000万円まで控除できます。

実家の取得にあたって相続税を納めた場合には「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が適用される可能性もあります。一定の要件を満たせば納めた相続税額の一部を取得費に加算でき、譲渡所得の圧縮が可能です。

印紙税

実家を売買する際に、買い主との間で締結する不動産売買契約書への印紙貼付により、印紙税を納める必要もあります。売り主・買い主どちらが負担するか特に定めはないものの、双方で負担するのが一般的です。

2025年3月31日までに作成される不動産売買契約書については軽減税額が適用されています。契約金額1,000万円超から5億円以下の場合の税額は次のとおりです。

契約書記載の契約金額 本則税額 軽減税額
1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円

仲介手数料

不動産会社に仲介を依頼して売買契約が成立したとき、不動産会社に対する成功報酬として仲介手数料を支払う必要があります。不動産会社が受け取れる仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限額が定められており、その範囲内の額を支払うケースが一般的です。

上限額は売却価格に応じて求め方が変わります。例えば、成約した売却価格が400万円を超える場合は、以下の速算式にて計算することが可能です。

仲介手数料の上限額(売却価格400万円超の場合) = 税抜きの売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税

具体的には、実家を税抜3,000万円で売却したとすると「(3,000万円 × 3% + 6万円)×1.1=105万6,000円」が上限となります。なお、土地には消費税がかからないため、厳密には土地・建物に分けて計算が必要です。

 

相続で取得した実家を売却するまでの5ステップ

相続の文字と家のイメージ

(画像/PIXTA)

まず、実家を相続して売却するまでの流れを見ていきましょう。売却に至るまでには次の5つのステップがあります。

  • 必要な情報を収集する
  • 相続登記を行なう
  • 不動産会社に査定を依頼する
  • 媒介契約を締結し売却活動を行なう
  • 売買契約を締結し物件を引き渡す

以下では、各ステップの内容を解説します。不動産相続に関する手続きや相続税については、こちらの記事でも詳しく紹介していますので併せてご覧ください。

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(1)必要な情報を収集する

実家を相続したら、その後の相続登記や売却を見据えて、戸籍や不動産に関する必要な情報を集めておきましょう。収集しておくべきおもな書類は次のようなものです。

全相続人の戸籍謄本 確定した相続人が存命であることの確認用
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本
・相続人を確定するために使用
被相続人の住民票の除票 登記された被相続人と戸籍上の被相続人が同一であることの確認用
固定資産評価証明書 相続登記時に納める登録免許税の算出に使用
登記事項証明書 相続登記時に現在の名義人を確認するときなどに使用
【遺言による相続】
遺言書
遺言書が遺されていれば記載内容にしたがって相続するのが原則
【遺産分割協議による相続】
遺産分割協議書
遺産分割協議での決定事項を証明する書類
【遺産分割協議による相続】
相続人の印鑑証明書
実印を押印した遺産分割協議書とともに提出

(2)相続登記を行なう

実家の名義を被相続人から相続人へ変更するため、所有権移転登記を実施します。相続時に行なう所有権移転登記は一般的に「相続登記」と呼ばれます。不動産は名義人(もしくは名義人から委任状を託された代理人)でないと原則売却できません。そのため、相続した実家の売却を予定している場合には、相続登記による名義変更が必須です。

従来、相続登記を行なうか否かは相続人の任意とされていましたが、2024年4月以降は申請が義務化されます。義務化後は相続による所有権取得を知った日から3年以内(遺産分割の場合は成立日から3年以内)に相続登記を行なわなければなりません。正当な理由なく違反すると10万円以下の過料を科されることがあるため、登記は忘れないようにしましょう。

相続に関するトラブルで3年以内に相続登記するのが難しいケースもあるかもしれません。このとき「相続人申告登記」を行なえば、申請した相続人の申告義務は満たされることになっています。

(3)不動産会社に査定を依頼する

前のステップで相続登記が完了したら、いよいよ実家の売却準備に移行します。まずは不動産会社に査定してもらい、売却価格の相場感をつかむことが重要です。より正確な相場感を把握し、信頼できる不動産会社を見つけるため、必ず複数の不動産会社へ査定を依頼するようにしましょう。査定依頼に際しては不動産一括査定サイトの利用が便利です。

並行して、自身でも近隣の類似取引事例をリサーチしておき、適正な価格水準を見極められるようにしましょう。査定の結果、ほかと明らかに価格が乖離している不動産会社があった場合、その会社への依頼は避けたほうが安心です。このように各社から提示される査定価格が依頼先を決める判断基準にもなります。

SUUMO売却査定は、大手不動産会社から地元密着型の不動産会社まで幅広い不動産会社へ一括査定依頼が可能。SUUMO売却査定を活用して、自分に合った信頼できる不動産会社に実家の売却を依頼しましょう。

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(4)媒介契約を締結し売却活動を行なう

各社からの査定結果や担当者とのやり取りを踏まえ、信頼できる不動産会社を選んだら媒介契約を締結します。媒介契約とは、不動産会社に物件売却の仲介を依頼する際に結ぶ契約のことです。

契約締結後、売却活動のほとんどは契約した不動産会社が行なってくれます。ただし、任せきりにするのではなく、売り主として最新の進捗状況は常に把握しておきましょう。購入希望者から現地内覧の希望が入ることもあるため、室内や外構は常に清掃・整理整頓を心がけるようにします。

(5)売買契約を締結し物件を引き渡す

売却活動により無事買い主が決まったら、売買契約を締結して物件を引き渡します。大半の買い主は住宅ローンを利用するので、ローンを申し込んだ金融機関の店舗や営業所で引き渡しの手続きを行なうのが一般的です。売却代金の決済が完了し鍵を引き渡せば、実家の売却手続きは完了となります。売買契約が成立したときには一般的に仲介手数料の支払いが必要です。

なお、実家の売却によって利益が出ると確定申告が必要となる可能性があります。利益が出ていなくても、特例の適用を受けるには確定申告が必要なため準備しておきましょう。

相続した実家を売却する際の3つの注意点

家財処分時に見つけた思い出の写真を眺める様子

(画像/PIXTA)

相続後に実家を売却する際には注意すべきポイントが3つあります。各項目の内容を詳しく見ていきましょう。

(1)ほかの相続人の同意を得ておく

たとえ自身が実家を相続することになっても、相続人が複数いる場合には、売却前にほかの相続人の同意を得ておきましょう。相続人のなかには実家に強い思い入れのあるきょうだいや親族がいるかもしれません。相続したからといって独断で売却すると、後々親族間のトラブルを引き起こすおそれがあります。

売却に反対する相続人がいるなら、あとの章で紹介する売却以外の活用法を検討するのも手です。

(2)遺された家財をあらかじめ処分しておく

相続した実家には家財が多く遺されていることでしょう。売却が決まってからこうした家財を処分しようとすると、意外に時間がかかって余裕がなくなるリスクがあります。家財には、実家で暮らしたきょうだいや親戚にとって大切な思い出の品なども含まれるため、独断で処分してしまうのも危険です。

売却が決まってから焦ることのないよう、相続した時点で親戚にも家財を確認してもらい、なるべく早めに処分しておきましょう。

(3)そのまま売却か更地にして売却かを検討する

実家の築年数が経過していて建物の状態が悪い場合、そのまま売りに出すと「古家付き土地」となって買い手が付きにくくなる可能性があります。築年数が耐用年数を大きく超えていて建物の資産価値が見込めず、売却の難易度が高いと想定されるときは、解体して更地にしたうえで売却するのも有効です。

ただ、思い出が詰まった実家を解体することに抵抗感を示す家族がいるかもしれません。家族の同意が得られたとしても解体費用が別にかかるため、現状有姿のまま売るパターンと十分に比較検討して判断しましょう。

売却以外に考えられる実家の活用法3選

戸建てリフォームのイメージ

(画像/PIXTA)

相続した実家は売却する以外に、次のような活用法も検討できます。状況に応じて最適な活用法を選びましょう。

(1)リフォームして自宅やセカンドハウスにする

最もシンプルな実家の活用方法は、そのまま自宅やセカンドハウスとして使用する方法です。現在賃貸に住んでいてマイホームを得たい人、マイホームを売却する予定のある人であれば、リフォーム費用を負担してでも実家への引越しを検討する価値はあるでしょう。自分で使う予定がなくても、居住を希望するほかの相続人に貸すという方法も検討できます。

(2)リフォームして賃貸物件として貸し出す

実家を貸家として第三者に貸し出す方法もあります。築古で状態が悪い場合には費用をかけてリフォームする必要がありますが、入居者さえ付けば継続的な賃料収入を得られる点が大きなメリットです。

ただし、賃貸ニーズを見込める立地でなければ賃貸経営は軌道に乗りません。マーケットを調査し、実家の立地でニーズが見込めるか、どのようなターゲットがいるのかを明確にしたうえで判断しましょう。

(3)更地にして土地活用する

貸家としては賃貸ニーズが見込めなくても、更地にすればニーズがあるかもしれません。建物を解体して土地活用を検討するのも選択肢の一つです。駐車場やトランクルームとして活用する、土地活用を希望する人に更地のまま貸すなどの方法を採れば、継続的な賃料収入を得られるでしょう。

この方法でも、実家の立地で想定用途に対するニーズが見込めるのか事前の確認が必須です。

まとめスーモ

  • 相続した実家の売却時には譲渡所得税や仲介手数料などの税金・費用がかかる
  • 親の生前に実家を売却したほうが節税につながるケースもあり、売却タイミングは十分な検討が必要
  • 自分で住む、賃貸物件として貸し出すなど、売却以外の活用方法も併せて検討すると良い

取材・文/サクラサクマーケティング株式会社

●取材協力/高槻翔太(たかつき しょうた) さん
不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。賃貸住宅の建築提案営業を中心に従事。宅地建物取引士、FP技能士2級、日商簿記2級。不動産・金融系のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。
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