
夫婦と子ども2人の4人家族で一戸建てに住んでいたHさん。子どもが成長し、自身の退職のタイミングで夫婦2人だけでのびやかに暮らせる家が欲しいと売却を決意。新しい趣味や望んでいた暮らしを手に入れた夫婦の売却ストーリーを紹介。
| 不動産区分 | 一戸建て |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府大阪市 |
| 築年数 | 約30年 |
| 間取り・面積 | 4LDK |
| ローン残高 | 約700万円 |
| 査定価格 | 2800万円 |
| 売り出し価格 | 2900万円 |
| 成約価格 | 2780万円 |
定年退職、子どもの独立、妻の暮らしへの希望。三方あいまって売却へ
1999年に大阪府内にあった築10年ほどの一戸建てを購入したHさん。夫婦と子ども2人がそれぞれ個室を持って住めて、さらに通勤、通学などの利便性を考えて決断したといいます。
その後、2011年にほとんど建て替えというくらい大掛かりなリノベーションを行います。「外壁など家自体の古さを払しょくし、住み始めて気になっていた動線を便利に、また、ゆくゆくは東京に住んでいる母を呼んで同居したいと考えて行いました」
4LDKから3LDKに間取りを変えて、フリースペースをつくるなどで一新した家で日々暮らしていたHさん一家ですが、Hさんの定年や子どもたちが成長して独立をするなどライフステージが変わっていきます。そして大きな決め手がHさんの妻の意向でした。2018年の夏ごろ、「購入当初は家の裏手が田んぼで隣家との距離もあって開放的だったのですが、20年ほどで家やお店など建物が建ってきて、気に入っていた開放感や通風が阻害されるようになってきたんです。特にそうした環境については妻がとても気に入っていたもので。では子どもが独立して、私も通勤がなくなる退職のタイミングで、もっとのびやかな環境の家に移り住もうかと売却を考えたんです」
希望通りの新居が見つかり売却活動も同時にスタート。売買一括でできる会社に依頼
まずは新居探しからスタート。「当然売却益を考えた住み替えだったのですが、住んでいる家がいくらで売れるかより、自分たちが住みたい場所、家を優先しました」といいます。とはいえ先立つものがなければ絵に描いた餅になりかねません。ざっくりとした予算は「5500万円ほどで購入した家だったので、大体半分くらいの2500万円~3000万円で売れればいいなと。リノベーション時のローン残債が700万円ほどあったので、それを完済して2300万円くらいの売却益ができる。そうしたら手持ちの資金と合わせて少額の住宅ローンで新居を購入できると思いました。新居は大体5000~5500万円くらいを考えていました」
2018年の夏ごろから探し始めてその年の10月。何件か見学して空振りに終わっていた新居探しでしたが、「ここなら夫婦のセカンドライフを満喫できる」という立地の一戸建てを隣県の奈良県で見つけます。 「周辺に建物がなくて風も心地よく、山々が見える自然環境。妻も納得の立地環境で、すぐその分譲地の会社に話にいきました」といいます。
相談しにいった会社は不動産の購入だけでなく売却も依頼できる会社ということで、同時に売却相談と査定依頼も行います。
実はこの会社へ査定依頼する前にも、数社でAIによる簡易査定を行っていたといいますが、「2800万円ほどと同じくらいの金額でした。当初想定からも大きく外れておらず、じゃあ手間がかからない売買一括でお願いできるこの会社に依頼しようと専属専任媒介契約を結びました」
内見時の注意点をしっかり実施。想定通りの価格で売却成功
最初は少し高めに出しましょうとの提案で2900万円で売却活動を始めたHさん。駅近や商業施設などが多い立地環境からか、ほどなく内見希望が入ります。
居住中での内見ということで不動産会社に注意点を聞いたところ「内見の方々が言い出しにくいけれど気になるのが窓からの景色の確認。だから窓を開けてお迎えしましょう」とか「もっとも見る人が多い設備が水回り。できるだけ片付けて、きれいにしておきましょう」などアドバイスを受けました。
その甲斐もあってか購入希望者が現れました。
「2780万円と少し価格交渉で下げましたが、その分、不動産会社が新居の購入価格を少し下げてくれました。もともと2800万円ほどの査定だったので、ほぼ査定通りと満足です。もともとすぐに売れなくても自分たちの納得いく価格でと考えていたので、心に余裕もありましたね。焦ったり、妥協するくらいなら大阪府の家に住み続けてもよかったですし。そうしたゆとりもいい結果に結びついたのかなと思います」
そうして、2019年4月売買契約を結ぶとともに、新居の購入の契約も済ませました。「新居竣工と同時に入居できるスケジュールで、仮住まいなど余計な経費をかけずに売却を成立できてよかったですね」と振り返ります。
■シニア世代の住み替えのポイント
シニア世代の満足いく住み替えを実現するには、20代30代など若いころに初めて家を買う際とは異なるポイントがいくつかあります。まずは間取りです。夫婦2人や単身であればもちろん子ども部屋などの部屋を考える必要がないほか、毎日階段を上り下りするのが苦痛になることも多いので、平屋なども候補に入ってくるでしょう。いまの住まいで不満な点を洗い出しておくと最適な間取りが見つかりやすくなります。次にエリアです。Hさんのようについのすみかとして周辺環境を重視したり、子どもや孫の近くに暮らしたい、買い物などなるべく便利に暮らせる街がいいなど暮らしの希望を明確にするといいでしょう。最後に売却額の目安を知っておくことです。売却して新たに新居を購入する場合の予算が分からなければ絵に描いた餅になりかねません。その際の査定は複数社にとっておくとより明確な目安が分かります。ちなみに住宅ローンを組んで購入する場合、年齢がネックになることもあるので覚えておきましょう。住宅ローンを扱う多くの金融機関では、借り入れる条件に「申し込み時年齢」と「完済時年齢」の制限を設けています。金融機関によって幅はありますが、前者は65歳〜70歳以下、後者は80歳までとしているところが多くなっています。また、年齢が高くなると健康状態によっては住宅ローンを組む際に原則加入が必要となる「団体信用生命保険」に加入できないケースも考えられます。自身がどういうローンを組めるのか、あらかじめ金融機関や不動産会社に相談しておくといいでしょう。
先々を見据えて売却計画を立てておくことで、買い替え先も価格も満足できる
新居での暮らしを満喫しているというHさん。大きな庭は芝生が青々と輝き、一角には新しい趣味となった家庭菜園も。じゃがいもなどの野菜を作る日々を過ごしています。「夫婦一緒にさまざまなことをトライできる暮らし。豊かな第二の人生が始まったなと毎日ワクワクしています」と笑顔で語ってくれました。
売却活動を振り返って重要だったことはなんですか?と伺うと「大事なのは焦らないことですね。時間的に余裕を持てるよう準備をしておくことがポイントだと思います」といいます。 「特に私たちのようにセカンドキャリアを考えている60代、70代はローンを完済しているか、残債があとわずかという方々も多いかと。自宅があれば住む場所がすぐになくなることはないので、大きく構えたほうがいいと思います。そうすれば気持ちに余裕ができて、買い替え先の新居探しも細かく、納得いくまでおこないやすくなります。また、売却活動でも、たとえば内見ひとつにしても期限が差し迫っているとその後のスケジュールを考えて、無理してしまい、週末が全部埋まったり、価格交渉に応じざるをえなかったり。これでは心身ともに疲弊してしまいますよね。長い目で自分たちの人生の住まいを考える時間を定期的に持つことで、よりよい結果に結びつくかなと思います」

| 2018年12月 | ・一戸建ての売却価格査定 ・不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ |
|---|---|
| 2019年1月 | ・2900万円で売り出し |
| 2019年3月 | ・3組ほどの購入検討者が内見 |
| 2019年4月 | ・購入検討者からの減額希望で2780万円を提示。購入検討者が価格に納得 |
| 2019年4月 | ・売却契約を結ぶ ・同時に奈良県の新居に入居 |
まとめ
- 今の住まいの不満点はどんなものなのかをクリアにすることでシニアの住み替え成功に
- 居住中の内見の場合、準備や心構えを不動産会社からアドバイスしてもらうことで成約確率を上げる
- 売却、購入とも時間的な余裕を持つことで妥協が少なく高い満足度につながる
取材・文/山口俊介 イラスト/沼田光太郎


