不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

兵庫県神戸市灘区Fさん(50代)/築17年の90平米超マンションは欲張らない価格に反響大。2カ月後、値下げなしで成約

兵庫県神戸市灘区Fさん(50代)/築17年の90平米超マンションは欲張らない価格に反響大。2カ月後、値下げなしで成約

定年退職を前に神戸市灘区の築17年のマンションを売却することにしたFさん。転居先のリフォームを皮切りに準備を進め、売り出すと内見の申し込みが続々と入ります。時間をかけずに納得の価格で売ることができた理由とは?

不動産区分 マンション
所在地 兵庫県神戸市灘区
築年数 17年
間取り・面積 専有面積…約92m2 3LDK+S
ローン残高 約650万円
査定価格 3700万円
売り出し価格 3790万円
成約価格(買取) 3790万円

定年を控え、所有する2物件のうち1つを手放すことに

2021年に神戸市灘区のマンションを売却したFさん。定年退職が近づいてきたことが売却を考えるきっかけだったといいます。

「売却した物件は、新築で購入した築17年のマンションです。結婚するかもしれないと思って買った家ですが、ここまでずっと独身できて、この先も結婚することはなさそうです。通勤に便利な立地ですが、定年になったら毎日出勤するわけではないので交通アクセスはさほど重要ではありません。となると、定年後もマンションに住み続ける理由はなく、実家に戻ろうかと考えるようになりました」

Fさんの実家は同じ灘区にある一戸建てです。ご両親はすでに亡くなり、Fさんが所有者になっていました。

「この先、2つ家があっても使い道はないので、マンションか一戸建てか、どちらか高く売れる方を処分することにしました。一戸建ては建物が古く、交通アクセスもマンションほどよくありません。高く売れるのは間違いなくマンションでしょう。数年前に同じマンション内の物件を売却した人によれば、購入時とほぼ同じ価格で売れたということでした。その情報もマンションの売却を決める後押しになりました」

Fさんのマンションは最寄駅から徒歩12分に位置する大型物件です。

「徒歩圏に複数の路線駅がありどこに行くにも便利。小学校や中学校、大きな病院、ショッピングモールも近くにそろっているので、子育て世代に人気のエリアです。私の物件は15階建ての12階部分で、専有面積約92m2の3LDK+S。入居する際に和室を洋室に間取り変更したので、その部屋をつなげるとリビングは約24畳にもなります。浴室サイズもワイドで、洗面室もゆとりがありました」

住宅ローンの残債は約650万円、あと7年ほど返済期間が残っていたそうです。

「高く売れればそれに越したことはありません。ただ、ローンが残っているので、あまり売却活動に時間をかけたくないと思っていました」

実家のリフォームから着手し、売却も同じ会社に依頼

マンションを売却することに決めたFさんは、まず実家のリフォームに取りかかったそうです。

「築70年の古い家ですから快適に住むためにはリフォームが不可欠。リフォームを先に進めて、転居の見通しがたってから売却活動を始めるつもりでした。どこかいい会社を知らないかと友人に相談すると、不動産会社を経営している親戚がいるというんです。聞いてみるものです。さっそく紹介してもらいました」

2020年7月、Fさんは友人の親戚が経営する地元の不動産会社に、実家のリフォーム工事を依頼しました。

「リフォームは社長が自ら担当してくれ、翌年春には工事が完了する段取りに。次はいよいよマンションの売却です。仲介業務を任せる不動産会社を探さなければと思っていた矢先、リフォームを依頼した会社に不動産部門があり仲介業務も手がけていることを知ったんです。社長に不動産部門の担当者を紹介してもらい、仲介業務もまとめて依頼することに。リフォームの仕事ぶりは信頼できるものだったし、社長から託された案件ですから担当者もいっそう頑張って売ってくれるだろうと期待もありましたね」

マンションの売却とリフォームを同じ不動産会社に依頼

2021年1月、Fさんはリフォームを依頼した会社の不動産仲介部門に訪問査定を依頼。2月に専任媒介契約を結びました。

「査定価格は3700万円程度ということでした。購入したときの価格は約3000万円。数年前には購入時と同じぐらいで売れたと聞きましたが、さらに相場が上がっていて驚きました。では、いくらで売り出すか。ちょうどその頃、同じマンションの別棟の物件が4000万円で売り出されていましたが、なかなか売れない様子でした。高く売り出して、売れずに値下げするのは好ましくありません。適正価格で早く売りたいと担当者に伝え相談した結果、3790万円で売り出すことにしました」

■専任媒介契約とは

専任媒介契約とは、不動産を売却する際の仲介業務を1社に任せる契約です。不動産会社には「物件の情報を指定流通機構(レインズ)に登録する」「2週間に1回以上、販売活動の状況を報告する」などの義務があります。自社で買主を見つけた場合には売主と買主の両方から仲介手数料がもらえるため、積極的な売却活動が期待できます。一方で、他社が買主を見つけた場合には、売主からしか仲介手数料をもらえないため、情報を広く流通させないケースも。また、売主自身で買主を見つけた場合は、不動産会社を介さずに取引ができます。

2カ月で内見8組。値下げはせず売り出し価格で成約

2021年2月、Fさんの物件は3790万円で売り出されました。

「不動産ポータルサイトに情報が掲載され、新聞に折り込みチラシも入れてもらいました。するとすぐに反響があり、内見の申し込みが次々に入りました。まだ居住中だったので、私の都合に合わせて日程を調整してもらい、1カ月の間に4組の内見に立ち会いました。購入申し込みには至りませんでしたが、順調な滑り出しでしたね」

2021年3月、一戸建てのリフォームが完了し、Fさんは転居。その後も内見の申し込みが途切れることはなかったそうです。

「引っ越し後は不動産仲介会社の担当者に対応を任せましたが、内見はトータルで8組ほどあったと思います。コンスタントに反響があったのは、売り出し価格が適正だったからでしょう。不動産仲介会社の担当者からはメールや電話で頻繁に連絡があり、コミュニケーションもうまくいっていました」

そして売り出しから2カ月目、ついに内見した1組から購入の意思表示がありました。

「購入希望者は値下げを打診してきたそうですが、不動産仲介会社の担当者は、値下げしなくても売れるという自信があったようです。私に『値下げはしないですよね』と確認したうえで相手と交渉し、最終的に売り出し価格のまま成約となりました。購入者は近隣に住むご家族です。その後の段取りは問題なく進み、2021年5月に売買契約書を交わし、7月に物件を引き渡しました」

ところで、Fさんのマンションは築17年とけっして新しくはありません。しかしリフォーム等は一切行わなかったそうです。

「一人暮らしだったので使っていない部屋もあり、かなりきれいでした。リフォームや特別なクリーニングは必要ないと考えて、現況のまま売却しました」

納得の価格で売れ、リフォーム費用もまかなえて満足

Fさんは今回の売却活動を「100点満点」と振り返ります。

「不動産会社選びに苦労することもなく、売り出し後の経過も予想以上に順調でした。購入時より800万円近く高く売れたので、実家のリフォーム費用もまかなえました。自分としては納得の価格ですが、もう少し高くても売れたかもしれませんね。

購入した時期がよかったと思います。そもそも当時の私はマンションを買おうとはまったく考えておらず、特典の図書券を目当てにモデルルーム見学に行ったんです。それで何となく申し込んだら抽選に当選してしまって慌てましたね。不動産に詳しい友人に相談すると、いい物件だからと購入を勧められました。アドバイスに従っておいて本当によかったです」

売却のプロセスで困ったことや後悔したことはないとFさん。コロナ禍であることも、特に影響はなかったといいます。リフォームした実家での新生活も順調だと、笑顔で話してくれました。

2020年7月 ・リフォーム会社と契約
・実家のリフォームを開始
2021年1月 ・マンションの売却価格査定
2021年2月 ・リフォーム会社の不動産部門と専任媒介契約を結ぶ
・3790万円で売り出し
2021年4月 ・購入検討者が現れる
2021年5月 ・売買契約を結ぶ

まとめ

  • 不動産会社を探すときは、周囲の人が持っている情報やコネクションを活用しよう。
  • 同じマンション内の売り出し情報はマストでチェック。価格設定の参考にしたい。
  • 値下げ交渉があったらどうするか、不動産会社とスタンスを共有しておくとスムーズ。

取材・文/小宮山悦子 イラスト/杉崎アチャ

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