不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

マンション査定は売却の第一歩。損しないための注意点やおさえておきたいポイントは?マンション売却の流れも解説

マンション査定は売却の第一歩。損しないための注意点やおさえておきたいポイントは?

マンションの売却を考えたとき、まず行うことといえば不動産会社による物件の査定。どうせ売るなら高く売りたい!と思うものですよね。スムーズな売却のために、査定にはどのようにのぞめばいいのでしょうか。マンション査定の流れや準備しておいたほうがいいこと。逆にしなくてもいいことなども含め、マンション査定の注意点を、不動産コンサルティングやホームインスペクションを行うさくら事務所の長嶋修さんに教えてもらいました。

記事の目次

マンション査定は売却のファーストステップ

マンション査定の依頼から引き渡しまで、期間は短くても3カ月

マンションの売却は、まず不動産業者に査定を依頼することからはじまります。

<売却(引き渡し)までの流れ>

不動産業者に査定を依頼

査定

仲介会社を決めて媒介契約を結ぶ

売り出し価格を決めて販売

売買契約

引き渡し

「売却にかかる期間はケースバイケースですが、査定を依頼してから売却・引き渡しまでは少なくとも3カ月程度はかかります。あまり長い期間市場に出ていると、売れ残りのような印象を持たれることもあるので、販売をはじめて1カ月程度を目安に売却できるような価格で売り出すケースが多いですね。売却を急ぐ場合は、何よりも最初のステップである査定を早めに依頼しましょう」(長嶋さん、以下同)

複数の不動産会社に査定を依頼する

マンションの査定額は不動産会社によって異なるものなので、複数の不動産会社に依頼するのが一般的です。個別に依頼するほかに、インターネットサイトから複数の不動産会社に一括査定を依頼することもできますが、いずれにせよ、3社程度の特徴の異なる不動産会社に依頼するのがおすすめです。

「大手系、地場系、ネット系の3タイプの不動産会社に査定をお願いするといいでしょう。まず知名度の高い大手不動産会社の場合、契約関係書類から人材まで、一定水準のクオリティが整っていて、サポート体制が充実しているなどの傾向があります。次に、地域密着型の地場系の不動産会社の場合は、その地域独自の情報やノウハウなどを持っているという強みが売却に有利に働く場合もあります。そして、ネット系の場合は店舗などにコストをかけないローコストな経営をしているため、仲介手数料を値引きするというケースもあります」

異なる特徴を持った不動産会社に査定を依頼することで、相場を把握しつつ、それぞれの会社の対応などを比較検討することができます。査定を依頼したら、その会社と媒介契約を結ばなければいけないということではないので、気軽に査定を依頼しても大丈夫です。

また、査定には電話やインターネットなどでおおよその額を教えてもらう簡易査定と、実際に物件を見て、より詳しく査定する訪問査定があります。まずは複数の会社に簡易査定を依頼し、その中で気になる会社を選んで訪問査定を依頼してもいいでしょう。

「マンション査定額=売出価格」ではない

マンションの場合、査定する不動産会社が買主ではない

マンションの場合、査定額は売り出し価格を決める参考値であり、査定額で売却できるというわけではありません。実際にマンションを売り出す際の価格は、媒介契約を結んだ仲介業者と相談して決定するものなので、査定額が高くても、売り出した価格で買い手が付かない場合などは価格を引き下げることもあります。

「査定を複数社に頼んで、1社だけ飛びぬけて査定額が高かった場合などは要注意です。査定額だけを見ると自分のマンションを高く査定してくれた業者に仲介を依頼したくなりますが、同じ物件を1社だけが高く売却できるというのは考えにくいものです。査定額の根拠は何なのか、売り出し価格はどのようになりそうかなど、きちんと確認をした上で、信頼できる不動産会社を選ぶことが大事です」

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不動産会社による不動産査定は基本的に無料

マンションの査定を複数の不動産会社に依頼しても、査定に対して手数料などがかかることはありません。不動産取引の場合、不動産会社には売買契約成立後に成功報酬として仲介手数料を支払うものなので、媒介契約後も、販売中にかかる広告宣伝費用などについて費用はかからないのが通常です。

なお、仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法で決められています。ただし、決められているのは金額の「上限」のため、不動産会社よって金額は異なる場合があります。媒介契約を結ぶ仲介会社を決める際には、仲介手数料についても留意しておきましょう。

仲介手数料の上限
取引額 報酬額(税抜き)
取引額200万円以下の場合 取引額の5%以内
取引額200万円超~400万円の場合 取引額の4%以内
取引額400万円を超えるの場合 取引額の3%以内
※依頼者の一方から受領できる報酬額
※別途消費税がかかる

査定額を左右する注意点は?ポイントを知っておこう

査定額アップのため、直前でもできることがある

不動産価格を評価する方法にはいくつかありますが、マンションを査定する際には「取引事例比較法」という方法が多く使われます。取引事例比較法では条件の似ている物件の成約事例を元に、条件を比較して項目ごとに点数をつけて査定を行います。その際、過去の取引事例と比較する項目、すなわち、査定額を左右する項目というのは、マンションの場合は、立地のほか、住戸位置、階数、広さ、間取りなどがあげられます。ほかにも、設備、築年数、構造、管理状況、共用施設、駐車場など、さまざまな項目を比較した上で査定額を算出します。

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評価を左右するポイントの多くは、査定額アップを狙いたいといっても、査定の時点で変えることはできないものがほとんどなので、マンション購入をする場合は、査定額を左右する項目を知った上で購入するのが賢明です。ただし、査定額アップのために、売主ができることもあります。

「整理整頓がされていなかったり、荷物が多すぎて散らかったりしていると、印象は悪くなるものです。荷物が多い場合は、トランクルームに預けたり、キッチンやバスルームなどの水まわりは、大掛かりなものでなくても、ハウスクリーニングなどプロにお願いしてきれいにしたりしておくと、評価につながることがあります。また、査定に必ず必要なものではありませんが、分譲当時のパンフレットや図面、重要事項説明書、管理規約なども早めに準備しておくといいですね」

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査定前のリフォームは必要なし

査定に際し、リフォームを検討する人もいるようですが、査定前に大掛かりなリフォームまで行う必要はありません。

「あまりにもキッチンなどの老朽化が進んでいる場合は、設備の交換などをしてもいいかもしれませんが、大掛かりなリフォームをしても、買い手が気に入るかどうかはわかりません。リフォームや修繕については、査定の際などに不動産会社に相談するといいでしょう」

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マンション査定は、売却のパートナーとなる不動産会社を選ぶ上で重要なプロセス。よりスムーズに納得して売却できるよう、査定の段階で気になる点や不安はきちんと解消しておきましょう。質問や相談をすることで、知識も増え、各社の対応などを比較することもできます。不動産会社には売却までに準備しておいた方がいいことや、売り出し方など、しっかりと相談をして、信頼できる仲介会社を選びましょう。

まとめ

  • 売却を決めたらまずは複数の不動産会社に査定を依頼
  • 不動産会社への仲介手数料は売却後の成功報酬。査定や宣伝広告は無料
  • 査定前のリフォームは不要

●取材協力
長嶋 修さん

不動産デベロッパーで支店長として不動産売買業務全般を経験後、1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社、不動産の達人 株式会社さくら事務所を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して"第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント"第一人者としての地位を築く。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。TV等メディア出演、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。業界・政策提言や社会問題全般にも言及。新著に『100年マンション 資産になる住まいの育てかた』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)、『不動産格差』(日本経済新聞出版社)他、著書多数

取材・文/島田美那子 イラスト/いぢちひろゆき

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